「いつぞハいつぞハと狙いすましてゐた甲斐があつて、今日といふ今日、とうとうとらまへたア」
ぬるめいた物が足に絡まり、あっと思ったときにはもう、四肢を絡めとられていました。
これが物凄い力で、そのくせ妙に器用にするする蠢くもので、女の着物はたちまち脱がされてしまいました。
ここに来てようやく、女は悲鳴を上げましたが、手遅れです。
搗きたての餅のように滑らかで柔らかな乳房は、赤黒い触手に吸い付かれています。
触手には大小さまざまな吸盤がついておりましたので、乳房に巻きついたのは触手の1本だけと言っても、あちこち揉みまわされてしまい、つつましくあった乳首もたちまち尖りだしてしまいました。
優美な曲線を描く腰から、むっちりと肉付きのよい腿までは、また別の触手が絡み付いて、さらに奥を目指してうぞうぞとくねっています。
せめてあの部分だけは死守したいと、女は内腿に力を込めましたが、なにしろとらえどころのない粘膜に覆われた触手ですから、かえってその圧力を楽しむかのようにじわじわと、腿と腿の間を這いまわりました。
女の抗いもむなしく、触手の先端はさほど時間もかからずに隠しどころに到達します。
触手はその入り口を丹念になぞり、しかし中には入らず、その上にある陰核を狙いました。
小さくちぢかまった陰核を突つくと、女はさらに悲鳴をあげます。
触手は構わず、吸盤の小さいものを陰核の上にかぶせました。
触手よりもよっぽど細やかな収縮をしてみせる吸盤は、小さな陰核を逃がすことなく、づっぽりと張り付いてみせます。
ぐぬぐぬ ぐぬぐぬ
女の口からこぼれたのは、悲鳴と言うより、愉悦のそれです。
女の陰核というのは非常に敏感で、しかも性の快楽に直結している、それを吸盤にぐいぐい吸い揉みされるのだからたまりません。
異形が相手というのに、女のこつぼは耐え難い快さに膨れ上がり、淫水を零しだしました。
異形が待っていたのは淫水です。
すかさずひょっとこのような口を隠しどころに突き出し、ずるずるとすすりました。
アアと嬌声をあげて、女は腰を揺らします。
その拍子に吸盤が陰核から外れ、赤く熟れ膨らんだ陰核が外気に晒されました。
けれどそれも一瞬のこと、淫水を吸うのに気をとられた触手がおざなりに陰核を撫でるので、触手の粘膜にこすりあげられる新しい刺激が女を責めます。
女の様子から、陰核への刺激を変えることを学んだ触手は、触手の先端だけを陰核に当てて、小刻みに揺らしました。
女はすすり泣き声で答えます。
ぬらぬら、どくどく、淫水は尽きることを知らず溢れ続ける。
触手の1本がするするとこつぼに入りこみ、内側から陰核を押し上げます。
ますますいきり立つ陰核に、細い細い触手が絡みつき、きゅうきゅうと絞り上げました。
アーッと引き絞った声を上げて腰をそらし、女はついに気をやりました。
異形の大蛸は存分に淫水をすすり終わったので、口をこつぼから引き抜きます。
そこで、すっかり脱力してしまった女の首元から、乳房を通り、臍の下まで這うものがありました。
小蛸です。
「親方が仕舞ふと、またおれがこのいぼでさねがしらからけもとの穴までこすつてこすつて気をやらせた上ですいだしてやる」
参考:艶本『喜能会之故真通』(きのえのこまつ) 葛飾北斎