ねっとりと黒い闇の中に、濃密な匂いが溶け込んでいた。  
 獣臭にも似た、荒々しい欲望の匂い。  
 押し殺した吐息に混じる、熱い疼きの匂い。  
 幾度も打ち付けられ、泡立ち粘りを帯びた体液の発する、妖しく爛れた匂い。  
 幽かな秉燭の灯りに照らされて、雪の様に白い肌が闇の中に踊る。  
 長い黒髪が揺れる度に覗く背中から腰に掛けての線は、強く抱けば折れてしまいそうに細い。  
 自ら動いているのではあるまい。  
 むしろ、この可憐な肢体を持つ齢十七の女性――仏御前は、他見を憚り必死に身体の律動を止めようとして  
いた。  
 その健気な意志を、丁度野の花を踏み躙るかのように、御前の下で荒ぶる巨漢が蹂躙する。  
 まだ成熟し切っていない、小さな張りのある真白の尻。  
 その下に見える桜色の秘処を、あまりにも不釣合いに巨大でグロテスクな一物が楔のように貫いている。  
 それが打ち付けられる度、御前の華奢な体は小さく跳ね上がり、自らの意思を無視して覚え初めの官能の悦  
びに戦慄くのだ。  
 ともすれば、簾越しに見えるその光景に目を奪われそうになりながら、時忠は反問した。  
 「趣向……でございますか?」  
 「そうよ、趣向よ」  
 巨漢――清盛は俄かに身を起こし、御前を貫いたまま胡坐を掻いて時忠に向き直る。  
 「あれほどの女子ぞ。抱くに飽いて暇を出したとはいえ、野に捨て置くには些か、惜しい」  
 趣向とは、仏御前の前に清盛が囲っていた祇王の事であろう。  
 祇王は、かつて京随一の舞いと謳われ、清盛の寵愛を一身に集めた美貌の白拍子であった。  
 しかし、その情が仏御前に移ると同時に六波羅を追われ、町の噂では、今は嵯峨で母、妹と共にひっそりと  
念仏三昧の暮らしを送っているという。  
 「さよう……」  
 腕組みをし、首を捻って斜め上の虚空を見つめる振りをしつつ、ちらちらと清盛に抱かれて弾む御前の肢体  
を盗み見ながら時忠が応じた。  
 「按摩寺……は如何でございましょう」  
 「尼寺か」  
 「いやさ、按摩寺にござる。尼寺は尼寺なれど、些か修行が風変わり故……趣向としては、申し分無かろうか  
と存ずる」  
 「ふむ……」  
 清盛の腰の動きが急速に激しさを増す。  
 「しかっ…しっ、ハァッ尼寺っで……あれっ…ばっ、フウゥッ寺主はおなっ…ごでっ……あろっ?」  
 「いや……寺主は只のおなごではありませぬ」  
 にぃっ  
 と、時忠はイヤな笑いを浮かべた。  
 「あの寺主は……アレは、おなごに非ず……きびなごにござる!」  
 「おうっ……!」  
 清盛は一際強く腰を突き上げ、呻くように応じる。  
 幾度かの痙攣の後、接合部から溢れ出した情欲がドロドロと流れ落ち、御前は頤を反らせて堪えに堪えてい  
た嬌声を漏らす。  
 余韻と、暫しの沈黙。  
 「時忠っ」  
 「ハッ……!」  
 この時、日本史上かつて無い栄華を誇った一族の棟梁が、その側近に命じた極プライベートな指令。  
 「時忠……万事、そのおなご……きびなごに任せると伝えい!」  
 「時忠、承知して仕る!」  
 そこから、この歴史絵巻は始まる。 
 
 
続かない  
 

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