「今からでもクリスマスに彼女と過ごせるようになる超能力が欲しくないか?」
「そりゃ欲しいが……もっと直接的に彼女が欲しい」
ビーカーの三級酒を俺はそう答えた。
アルコールランプで焙ったスルメをかじりながら友人は頷く。
「うむ、そりゃそうだな。だが、その超能力があれば自動的に彼女も手にはいるわけだから
超能力があれば問題は解決されるよな?」
「まあそりゃそうだ」
友人に習って焙ったスルメゲソを七味マヨネーズにつけて囓る。うむ、うまい。
「んだが、そんな超能力は彼女作るより難しいだろ」
「ああ、俺もそう思っていたんだ」
「……あん?」
「そも、なぜ彼女を作るのが難しいか。その原因は彼女を作る行動力不足にあると思う」
「ほほう」
「だが、その行動力というものは結局の所、思想や人格に左右されるわけだ。
恋愛という行為に勤勉である人間とそうでない人間が、同じ考え方であるはずがない」
「恋愛に勤勉なら彼女が出来るってのは短絡過ぎないか?」
「そりゃ勤勉なら必ず目的が達成できるわけじゃないが、達成する可能性は段違いだろう」
「それは、そうだな」
俺の空いたビーカーに、そいつが新しい瓶から酒を注ぐ。ん、これは……。
「菊正宗じゃないのか?」
「色々混ぜてアルコールを少し飛ばして大五郎混ぜてみた。まあそれはともかく、
じゃあ人格を変えずにモテモテになるにはどうすればいいのかと言う事を考えてみた」
「ほう」
「そいつがいるだけで、女の子が失敗しやすくなれば良いのではないかと」
「なんでそうなる?」
「うむ、まず目の前で女の子が困ってれば大概の男は助けるよな?」
「……まあ、そうかな」
「となると、自らナンパしにいかなくても、それだけで女の子に話しかける機会が増える。
助けられた方も、優しい人だと思うわけだ」
「ああー」
「そう言う観点から考えて、若い女性の判断力をほんの少し鈍らせる様な内分泌液を出すようになれば
モテやすくなるのではと思い、そういう体質変化する薬を作ってみた――と言うわけで、臨床試験よろしく」
「え?……まさか今の酒は」