「うっ…。ぐすっ。メイド長ったら、ひどい…」  
私は物置に逃げ込んで、後から後からこぼれてくる涙をエプロンで拭いました。  
今さっき、ふとしたミスをメイド長にきつくとがめられ、どうしようもなく悲しくてしょうがなかったのです。  
こんな顔のままでは、お仕事に戻れません。  
さっさと持ち場につかないと、また叱られるに決まっていますのに。  
気持ちの切り替えができなくて、私は物置の床にぺたんと座り込み、止まってくれない涙を押さえていました。  
 
「誰かいるの?」  
その時、鈴を鳴らすような美しい声が聞こえ、物置の扉ががらりと開きました。  
「あ…」  
なんてことでしょう、ここに逃げ込んだ時、鍵をかけるのを忘れていたみたいです。  
みっともなく泣く姿を、まさか、この方に見つかってしまうなんて。  
今日は本当に運が無いと、私はまた悲しくなってしまいました。  
「真美ちゃん?どうしたの、何かあったの?」  
涼やかな声の主は、カツカツと音を立てて私のほうまで歩いてこられました。  
「黙ってちゃ分からないわ。話してごらんなさい」  
このように優しくおっしゃるのを聞いてしまえば、お言葉のとおりにするしかありません。  
「ぐすっ。お姉、さま…」  
私は何とか声をしぼり出して、目の前にいらっしゃる方のお顔を見上げました。  
 
私に声をかけてくださったのは、先輩メイドの亜矢子さんです。  
まだ22才とお若いのに、そのお仕事ぶりは素晴らしく、ご主人様やメイド長の信頼の厚い、いわばエリートさんです。  
私達後輩メイドの憧れの的で、そのために皆から尊敬を込めて「お姉さま」と呼ばせていただいているのです。  
この方が憧れの対象になるのは、単にお仕事ができるからだけではありません。  
庶民育ちとは思えないほどの美人で垢抜けたその雰囲気は、メイドにしておくには惜しいくらいで、いずれどこかの若様に見初められて令夫人となられるに違いないと、皆で今から頷きあっています。  
お顔だけではなく、スタイルもいいしお優しいので、この方の短所を挙げろといわれてもすぐには思いつきません。  
このようにたいそう尊敬している方に心配していただき、私は先程叱られたことを洗いざらい話してしまいました。  
 
「メイド長は、今日は少し機嫌が悪いみたいなの。だから、あんまり落ち込んでは駄目よ」  
お姉さまは話を聞いてくださった後、そう言って優しく私を抱きしめてくださいました。  
私をすっぽりと包み込んでくださった憧れの方の胸元からは、とてもよい香りが漂ってきて、うっとりとなってしまいました。  
この香りは香水なのでしょうか、それとも、美しい方は体の匂いもこのようにかぐわしくあられるのでしょうか。  
涙がすっかり引っ込んでしまった私は、お姉さまの背中に腕を回して抱きつきました。  
お姉さまの豊かな両の胸が頬に当って、ものすごくいい気持ちです。  
 
豊かな、胸…。  
この言葉が頭をよぎった途端、私はハッとして、弾かれたようにお姉さまから体を離しました。  
「どうしたの?」  
お姉さまがびっくりしたようにおっしゃって、私は申し訳ない思いで一杯になりました。  
「あの…」  
何か言おうと口を開いた瞬間、扉の向こうから、メイド長が苛立った様子でお姉さまを探している声が聞こえてきました。  
いけません、このまま引き止めていては、この方までメイド長に叱られてしまいます。  
私は必死で扉を指差し、口パクで「早く行ってください」とお願いしました。  
お姉さまも、メイド長のヒステリックな声には怖気づかれたようで、頷いて腰を上げられました。  
「何か心配事があるのなら、私が聞くから。晩に部屋へいらっしゃい」  
メイド長の声が遠ざかったのを確認して、お姉さまは私のゆがんだブリムを直してくださってから、物置を出て行かれました。  
 
お言葉のとおり、私は夜更けにお姉さまの自室へ向かいました。  
当屋敷のメイドは、新人の頃は2人で1つのお部屋を使うのですが、経験を積むと個室が与えられるのです。  
ノックをしてドアを開けると、お姉さまは運動着のような物をお召しになり、何か美容体操風のことをしていらっしゃいました。  
こういう隠れた努力をなさっているからこそ、美しさが保てるのでしょうか。  
ぴったりとした服では胸のラインも一目瞭然で、その大きさと形の見事さに、私は失礼とは思いつつも釘付けになってしまいました。  
「ごめんなさい、こんな格好で」  
お姉さまは私を招き入れ、ベッドに座らせてくださいました。  
「昼間は悪かったわ。話を十分に聞けないまま出て行ってしまって」  
いい香りのするハーブティーを淹れてくださってから、お姉さまがおっしゃいました。  
「いいえ!私の方こそ、申し訳ありませんでした」  
2回も謝っていただくなんて、畏れ多いことです。  
立ち上がって深々と頭を下げますと、お姉さまは微笑んでくださったので、少し救われた気持ちになりました。  
 
「それで、昼間はどうしたの?」  
お姉さまに問われ、ここへ来た目的のことを思い出しました。  
恥ずかしいのですが、ここは打ち明けるべきなのでしょう。  
お姉さまは聡明な方ですから、きっと素晴らしい答えを思いついてくださるはずです。  
「あの、私、胸が小さくて…」  
思い切って、お姉さまに悩みを打ち明けました。  
くだらないことなのですが、私にとってみれば、世界平和や人種問題と同じくらい深刻なのです。  
「胸?あなたさっき、そんなことで泣きべそをかいていたの?」  
予想通り、お姉さまは呆れたような口調で呟かれました。  
「いいえ、さっきは本当に、メイド長に叱られて…」  
「ええ」  
「でも、あの。その、なんて言ったらいいのか…」  
お姉さまに抱きしめていただいた時の、胸の感触がうらやましくなったとは、さすがに言いにくいです。  
あの豊かな胸と、自分のぺったんこのそれを比べて悲しくなったなどとは、とても…。  
 
言葉を濁して下を向いたのですが、お姉さまには私の頭にあることが全てお分かりになったようでした。  
「あなたはまだ16才でしょう?胸なんて、これからいくらでも成長するでしょうに」  
慰めるように言っていただいたのですが、その内容は、たとえ尊敬する方のお言葉だとしても聞き流せないものでした。  
「お姉さまは、ご自分の胸が大きくていらっしゃるから、私の悩みなんかお分かりにならないんですっ!」  
逆ギレともいえる剣幕で、私は尊敬するお姉さまに恨みがましく言いました。  
「Aカップのブラを買ったら合わなくて、AAカップにすべきなんだけどそれだけはイヤ、何て思われたことなんてないんでしょう?」  
「……」  
「やっぱり、ないんだ。私、一生このままだったらお嫁にもいけない」  
お婿さんに裸を見られた瞬間にがっかりされるでしょうし、そもそも、服の上からも平たい胸が分かってしまうようでは、私を見初めてくれる人なんていないでしょう。  
お婆さんになっても独身のままでしょう、年をとっても胸が垂れるという心配からはあらかじめ解放されてはいますが。  
「お姉さまは、初めてブラをつけたのはいつですか?」  
「え?し、小学5年生…」  
「でしょう?私なんか、本当は今だって必要ないのに、見栄でつけてるだけなんですっ」  
もう涙どころか鼻水まで出てきて、顔がぐちゃぐちゃになってしまいました。  
そのうちとか、遺伝や個人差なんていう言葉では、もう慰めにもならないのです。  
 
「下手な慰めを言ってごめんなさい。あなたにとっては、とても大きな悩みなのね」  
みっともなく泣いている私の肩に手をかけられたお姉さまが、申し訳なさそうにおっしゃいました。  
その言葉に頷いて、私はパジャマの袖で拭ってから顔を上げました。  
目の前にある、私を労わってくださるお姉さまのお顔は、目を凝らした表情もいつもと同じに美しいものでした。  
私も、この方のように美人でスタイルがよければ、どんなに人生が楽しいでしょうか。  
また俯いてしまった私のあごにお姉さまの指がかかり、今度は顔を上げさせられました。  
「真美ちゃん。その場しのぎに聞こえるかもしれないけれど、本当に、あと何年かしたら胸が大きくなるチャンスはあるのよ?」  
「えっ」  
「あなたが男性と付き合ったら、その人に触ってもらえば、マッサージ効果で成長する可能性は十分にあるわ。それに子供を産んだら、絶対に大きくなるって言うし」  
でも、それがまた問題の始まりなのです。  
「だって、今のままだったら、誰も私なんかとお付き合いなんかしてくれませんもの」  
「どうして?」  
「こんな体だったら、好きになってくれる人なんか、きっといません!」  
「そんなことを言うもんじゃないわ。私は真美ちゃんのこと大好きよ?」  
「えっ」  
憧れの方が、私のことを、好き…?」  
「メイドとしてはまだ修行中の身だけれど、毎日辛い仕事も、明るく一生懸命にやっているじゃない。そこを見ている人はちゃんといるのよ?」  
「そうでしょうか」  
「そうよ。体とか関係なく、本当にあなたのことを好きな人、好きになってくれる人はいるわ」  
にこやかにおっしゃって、お姉さまはさながら女神様のように優しく微笑んでくださいました。  
そのお言葉と優しさが、私の胸にじんと染み渡りました。  
 
とても嬉しかったのですが、しかし、問題は解決したわけではないのです。  
「お姉さま、あの…。おっしゃることはよく分かりました。でも、やっぱりなるべく早く、大きくしたいんですけど…」  
こんなにしつこく言うと、せっかく好きだといってくださったのに、嫌われてしまうかもしれません。  
でも、どうしても、このままぺったんこの胸ではイヤなのです。  
「そんなに、胸が大きいのがいいの?」  
「はい。お仕事の時はエプロンをつけていますからいいですけれど、私服になると、やっぱり…」  
「そうねえ。年頃なんだから、大胆な服を着たいっていう気にもなるでしょうね」  
「はい」  
きっとお姉さまなら、私の年で十分ボディコンシャスな服を着こなしていらっしゃったと思います。  
「うーん。急に大きくというのは無理だろうけど、マッサージをしてみれば、少しは変わるかも知れないわ」  
「本当ですか?」  
考え込むようなお姉さまの言葉に、まるで真っ暗な空から一筋の光明が差したように思えました。  
「やってみたい?くすぐったいからって、逃げちゃ駄目なのよ?」  
「はい。お姉さまがしてくださるんですか?」  
「ええ。自分でするっていうわけには、いかないでしょうからね」  
それはそうです、自分でなんて、どうやっていいか分かりませんもの。  
「ぜひお願いします。私の胸を、大きくしてください」  
頭を下げて頼み込むと、お姉さまはまた優しい笑顔をお見せになって、頷いてくださいました。  
 
そして私はお姉さまのベッドに横たえられ、ご指示のとおりに体の力を抜きました。  
美しい指でパジャマのボタンを外してもらい、ブラも取り去られて、何も隠す物のなくなった胸が憧れの人の目に晒されました。  
「やっ」  
あんなに頼んだのに、いざこの状況になってみると恥ずかしくて、私は両手で胸を隠してしまいました。  
本当に小さいですから、労せずに隠せるのがまた悔しいのですが。  
「駄目よ。我慢するって言ったのは、誰?」  
お姉さまにメッとたしなめられて、私はしぶしぶ手を脇へどけました。  
「可愛い胸ね。本当に、可愛いわ」  
「小さいですから、その…」  
「そうじゃないの。可愛いにも、いろんな意味があるのよ」  
「あっ!」  
お姉さまがいきなり姿勢を低くされ、私のわずかな膨らみにそっとキスをなさいました。  
私のお腹にはお姉さまの豊かな胸が押し付けられる格好になり、その柔らかさに息を飲みます。  
マッサージをしてもらえば、私の胸も、この方のように大きく魅力的になる。  
その幸福な未来図は、私の腕からさらに力を奪い、羞恥心をも胸と同じに小さくしてしまいました。  
「いい子ね。じっとしていれば、いっぱいマッサージしてあげる」  
ぞくりとするほど色っぽい目をなさったお姉さまが、私の耳元にささやかれました。  
 
お姉さまはお言葉のとおりに、たっぷりと時間を掛けて私の胸をマッサージしてくださいました。  
柔らかくてきれいなお手で体を撫でていただくと、背筋がぞくぞくして、身震いが止まらなくなってしまいます。  
でも、お姉さまの手の平が触れた場所はあべこべに熱を持ったようになり、ぽかぽかと暖かく感じられるのです。  
寒いのか暑いのか、初めての経験に頭が混乱している私にはもう判断がつきませんでした。  
「真美ちゃんの胸は、今だって十分に素敵よ。ほら、ここだってこんなにピンクで綺麗」  
「あっ!」  
お姉さまの指が乳首をかすめ、私の口からは思わず高い声が出てしまいました。  
「初めてなのに、感じるのね」  
「え…あんっ!」  
お姉さまは楽しげに笑いながら、胸をマッサージしつつ両方の乳首を代わる代わるに指先で弾かれました。  
そのたびに、普段の話し声とは全く違う上ずった悲鳴のような声が、勝手に口から漏れ出てしまうのです。  
どうしてでしょう、服やバスタオルが触れても、こんな風になったことは一度も無いというのに。  
みっともないから口を閉じようとしても、思うようにはなりませんでした。  
「我慢しないで。声を出してくれた方が嬉しいわ」  
「お姉、さま…」  
「ここにいるのはあなたと私の2人だけよ。恥ずかしがることなんてないの、いいわね?」  
「はい。あ、ああんっ!」  
急に指とは違う物が乳首に触れ、驚いて叫んでしまいました。  
何事かと下を見ると、お姉さまが赤い舌を出して、その場所をえもいわれぬ力加減でお舐めになっていたのです。  
「お姉さま、んっ…。あ、あの…マッサージは…」  
「ん…。これもマッサージのうちよ?いっぱいしてあげるって、言ったでしょう」  
「そんな…あっ、ん…。やぁぁ…」  
私は胸を大きくしてほしいのであって、乳首を舐めてほしいとは一言も申してはいないのですけれど、もしや忘れておしまいになったのでしょうか。  
それは結構ですとお断りしたいのですが、お姉さまの舌が乳首を這うと、さっきと同じ背筋のぞくぞくが生まれるのです。  
胸やお腹がきゅうっと切なくなって、息が荒くなって、さらには足の指にまで緊張が走ってしまって。  
必要ないはずなのに、お姉さまが一瞬でもそこから舌を離されると、身をよじるくらいに悲しくなってしまうのです。  
ご遠慮申し上げるつもりはどこへやら、いつの間にか私の手はお姉さまの首に回り、お体を引き寄せていました。  
「もうおねだりするの?真美ちゃんはいけない子ね」  
「そんな…」  
さっき、いい子だと褒めてくださったばかりなのに、今度は叱られてしまいました。  
でも、もうそれでも構いません、もっともっとお姉さまに触ってほしいのです。  
 
「んっ…。もう、悪い子、でいいです…。ですから、あっ…」  
息を乱して途切れ途切れに言いますと、お姉さまは私の乳首を舐めながらクスクスと笑われました。  
その吐息さえもが気持ち良くて、私はまた高い声で喘いでしまいました。  
後でお叱りをうけることになったとしても、今のこの快感が1秒でも長く続くのを願わずにはいられないのです。  
「お姉さま…。気持ちいい、もっと…」  
引き寄せる腕に力を込めて頼みますと、お姉さまは私の望むようにしてくださいました。  
「あっ…あ…ん…あああっ!」  
お姉さまに触れられて、限界まで追い詰められた体が急に大きく跳ねたのは、そのすぐ後のことでした。  
体の中心で育っていた熱の塊が大きくなって弾けてしまったかのようで、苦しくて喉がヒューヒューいっているのが分かります。  
まるで海で溺れた時にも似て、私は必死でお姉さまに抱きつき、意思とは裏腹に震える体を立て直そうとしました。  
 
「真美ちゃん、大丈夫?」  
しばらくして、お姉さまが上ににじり上がってこられ、放心している私の頬を優しくさすってくださいました。  
おぼろげに見える白く美しい指が、今しがたまで私の小さな胸に触れていたのかと思うと、また頭に血が昇ってしまいそうです。  
「相当、気持ちよかったみたいね」  
手近な物で私をあおぎながら、お姉さまがにこやかにおっしゃいました。  
なんてお返事をいいのか困ってしまい、私は目の前の方から視線をそらしてしまいました。  
「いいのよ、大丈夫。恥ずかしがることなんてないわ」  
目を合わせないのをとがめることもせず、お姉さまは私の脇に横たわられておっしゃいました。  
「あの…」  
「初めてなのに、胸だけでイくなんて。素質は十分だもの」  
「『イく』って何ですか?素質って…」  
「ああ、今はまだ分からなくてもいいの。さっきみたいに、体がびくびく跳ねて、気持ちいいのが爆発したみたいになることを言うのよ」  
「…はい」  
「あれが、イくってことなの。これを続ければ、胸だってきっと膨らんでくるわ」  
「そうでしょうか…」  
思わず下に目をやり、お姉さまの旨を凝視してしまいました。  
マッサージしていただくのを続ければ、私もいつかこのようになれるかも…。  
「あの、お姉さま。ちょっとでいいので、お胸に触らせていただけないでしょうか」  
「まあ。私の胸に触りたいの?」  
「はい。こうなりたいって、イメージトレーニングしたいんです」  
恐る恐る申し上げると、お姉さまは少し驚かれはしたものの、にっこりと頷いてくださいました。  
「いいわ。ただし今日のところは、服の上からね」  
「えっ」  
直接は、触らせていただけないのでしょうか。  
日ごろ忙しくお仕事をこなしているお手でさえ美しいこの方ですから、胸はきっと、私なんかの想像もつかないくらい美しいのに違いないのに。  
「いやなら、やめても…」  
「そんな!ぜひぜひ、お願いいたしますっ」  
ご機嫌を損ねないように平身低頭で頼み込みますと、お姉さまは微笑んで私の手を自らの胸に導いてくださいました。  
「あ…。す、すごい…」  
初めて手で触れたお姉さまの胸は、とても大きくて柔らかくて、服の上からでも十分心地良く感じられました。  
私のもこんな風になれれば、どんなに幸せでしょう。  
 
夢中でその感触に酔ってお姉さまの胸を堪能していますと、不意に身を引かれて、受けていた重みを失った手が急に淋しくなりました。  
「えっ、もう終わりですか」  
あんなに丁寧に私の胸をマッサージしてくださったのですから、ご恩返しがしたかったのに。  
「今日はここまで。次に真美ちゃんがきちんとマッサージを受けることができたら、また触らせてあげる」  
「本当ですか?本当の、本当?」  
「約束するわ。だからあなたが望むように胸が大きくなるまで、私の言うことを聞かなくては駄目」  
「はい。お姉さまのおっしゃるとおりにいたします。私も約束します」  
「そう。やっぱり、真美ちゃんはいい子ね」  
私の髪を優しく梳いてお姉さまがおっしゃった言葉に、私は天にも昇るほど舞い上がってしまいました。  
尊敬する方には、悪い子だと思われるより、やはりいい子だと思われたいに決まっていますもの。  
「さあ、そろそろ自分の部屋に戻りなさい。あまり遅いと同室の子が妙に思うでしょうから」  
「は、はい」  
「今日のことは誰にも内緒よ。胸を大きくするためにマッサージしてもらうことが、人に知れたらいやでしょう?」  
「いやです、そんなことがばれたら…」  
なんと馬鹿な子なんだろうと、知った皆さんに思われるに違いありませんもの。  
「ね。だからこれは、私と真美ちゃんだけの秘密」  
いたずらっぽく片目をつむって、お姉さまが念を押されました。  
私はそれに頷き、ベッドを借りたお礼とマッサージのお礼を丁重に述べ、元通りにパジャマを着ました。  
「あ、それともう1つ」  
「えっ?」  
お部屋を去り際、お姉さまが私を呼び止められました。  
「明日、ブラをつけるのは禁止よ。素肌にワンピースとエプロンをしてお仕事なさい」  
「え…」  
「マッサージの後は、できるだけ自然にしておくのがいいの。ブラで押さえつけていては、効き目が減ってしまうわ」  
「かしこまりました」  
お姉さまのおっしゃることだから、きっとそうするのが正しいのでしょう。  
日中ブラ無しなんて少し恥ずかしいですが、まだぺったんこなので、たぶん人にはばれないと思います。  
 
部屋に戻ると、私の心配をよそにルームメイトはすやすやと眠っていました。  
秘密のマッサージを、この子だけではなく誰にも知られてはなりません。  
もしお姉さまのお部屋に通っていることを知られたら、なんと言って誤魔化しましょうか。  
至らぬ新米メイドを、お姉さまがスパルタ夜間教育なさっているとでも言えば、ついて行きたいとは誰も言わないでしょうか。  
引き出しに持ち帰ったブラを片付け、なぜか濡れていたパンティも替えてベッドに横になり、さっきのお部屋でのことを思い出しました。  
お姉さまの胸は本当に柔らかくて大きくて、素晴らしいのがとてもよく分かりました。  
いつか直接素肌に触れさせていただいて、私もあの方をマッサージしてみたいものです。  
そして、私のこの胸もお姉さまと同じくらいになれば、これ以上幸せなことはありません。  
そうなる日が早く来ればいいなあと、私は思いつく限りの神様に祈ってその日を終えたのでした。  
 
 

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