ちょっと遠め(だが品質がいい)のスーパーまで夕飯の買出しに来たところ、ケーキの予約のチラシや大きな靴の形をした入れ物に  
入ったお菓子など、クリスマス直前な雰囲気が伝ってきた。  
「もうすぐクリスマスだなぁ。」「そうだねぇ。」  
隣にいるのは俺の彼女・・・ではなく、幼馴染の美紀。久しぶりに夕飯に誘ったら意外にもOKしたので、  
『飯食べるなら買出しくらい手伝え』と言ったら『お小遣いくれる?』とかふざけたことを言い出したものの、結局着いて来た。  
コイツは俺を困らせてそんなに楽しいのか?  
 
それはさておき、今日の夕飯は何にしようか。  
「美紀、何か食べたいものはあるか?」  
「んー、お寿司!」「そんな予算はどこにも無い。」回るお寿司屋だって、意外とその金額が俺の食生活に響くんだ。  
「うー、じゃあピザ!」「手作りピザは今度食わせてやる。」クリスマス辺りにな。それにアレは準備に時間がかかるんだよ。  
「えー!じゃあ、蟹!」「お前、蟹アレルギーだろうが。」それにそんな高いもの却下だ却下。  
「むー!ワガママだよたっちゃん!」「お前のオーダーが極端すぎるんだよ。」最初の二つなんか出前の定番メニューか何かか?  
「うーん・・・じゃあ、グラタン。」「ようやっとまともなメニューが出たな。」  
「なによー!まだ何か文句あるの!?」「んにゃ、じゃあグラタンでも作るか。あったまるしな。」  
と言うわけでグラタンの材料を買い、さっさと飯を食べることにしよう。  
 
 
たっちゃんお手製のグラタンとサラダを食べたら、お腹も心も幸せになっちゃった。  
たっちゃんが台所でお片付けしてる間に、私は友達にメールを送ってクリスマスイブの予定を聞いてみる。  
紀子は家族と帰省予定。瑞希は彼氏と・・・お幸せに。湊は予備校・・・頑張るなぁ。  
てことはみんなと遊べるのは23日までかぁ。うーん、24日どうしようかなぁ。  
 
「何ケータイにキスしながら難しい顔してるんだ?」いつの間にやら私の目の前に立っていたたっちゃん。びっくりして思わずへんてこな声が出る。  
「わぁ!たっちゃん終わったならなんか言ってよ!」「これでも3回くらい呼びかけたんだけどな。」  
「ふぇ!?そうなの!?」「そうだよ。せっかくクッキー焼き立てなのに、冷めちまうぞ。」  
「え!?たっちゃんのクッキー!?食べる!食べるからちょっと待ってよ!」「わかってるっての」  
苦笑しながらテーブルにクッキーを置くたっちゃん。んー♪バターのいい香り♪  
「でもなんでいきなりクッキー?」「あぁ、グラタンの材料が微妙に余ったから、なら作っちまおうと思ってな。」  
なるほどねぇ。・・・そうだ!  
「ねぇたっちゃん、23日暇?」「現状では何も予定は無いが。」  
「その日ね、みんなでパーティしようと思うんだけど、シェフ役やってくれない?」「構わんが、材料費はウチの財布からは出せないぞ。」  
「大丈夫!その日はみんなで出すから!」「それなら構わんよ。ところで美紀、24日は空いてるか?」  
「うん、その日からみんな忙しいみたいだから、大丈夫だよ。何で?」「いや、俺とデートしないか?」  
「うん、たっちゃんとでー・・・デート!?」「おう、デートのつもりだが、ダメか?」  
「たっちゃんとデートねぇ・・・」「まぁ無理にとは言わない。ちょっと行きたいだけだから。」  
「ところでどこに行くの?」「ん?ああ、ちょっと遊園地のタダ券貰ってな。1人じゃ寂しいから。」  
「他の友達は?」「お前と一緒でみんな彼女やら勉強やらで無理だとさ。」  
「そっか・・・そうなんだ・・・」「なぁ、頼むよ。」  
たっちゃんからのお願いなんて珍しいし、こんなに頼み込むのなんて初めて見た。思わず頬が緩む。はっ!いけないいけない!  
「うん、わかった。でも、その日はたっちゃんのおごりだからね?」「ああ、それくらいなら貯金崩して頑張るさ。」  
 
たっちゃんとデートなんて始めてかも。しかもたっちゃんの方からのお誘い。  
思わず緩んでしまった頬は甘いクッキーのせいにして、今は素直に喜ぼうと思う。しっかし、たっちゃんの料理は本当に美味いなぁ。  
 
この何気ない幸せが、ずっと続けばって信じてやまない私だった。  
 

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