「ねぇ美里、なんか変だよ?」  
「何でもないったら、大丈夫だってば」  
「具合が悪いんなら、早退しなよ。終業式終わるまで、本当に持つの?」  
「平気だって」  
不審がる水原さんを必死に誤魔化す私。  
明後日だ。  
とっくにそういう欲は臨界まであがっていて、ちょっとした刺激、例を挙げるなら  
着替えの時の下着の感触とか、お風呂上りのバスタオルが撫でる感覚とかに  
私の身体は正直に反応してしまうのだ。  
心だってそうだ。何かある度に、これがひろちゃんの手だったらなぁ、とか思ってしまう。  
普段の何気ない会話や行動にも影響してしまい、こうして水原さんにも心配されてしまう。  
ひろちゃんは何も変わらない雰囲気だけど、阿川君のイタズラが回数を増している  
辺り、私には読み取れないような変化があるのだろう。  
あの日以来、ひろちゃんは阿川君に話しかけることが多くなった。  
阿川君も驚いていたようだったけれど、すぐにその理由を察したらしい。  
時折私に視線を投げかけ、笑いながら頷いたものだ。  
ひろちゃんが私との事を話すとは思えないけれど、それ以上に阿川君の  
眼力が優れていたのだろう。阿川君にもそれなりの経験があったから、  
それほどのものが身についたのだと思う。  
私がこれから得る様々な経験は、どんなものをくれるだろうか。  
 
がやがやと教室が賑わい、波になって流れ出した。  
私とひろちゃんは事前に申し合わせた通りに教室に残って、静かな廊下を  
ふたりっきりで歩く。  
学校で指定している内履きの底は決して硬くはないけれど、廊下の硬さと  
衝突すると小気味よい音を生み出す。  
とつとつとつとつ。  
 
こんな時が一番困る。ひろちゃんを意識せざるを得ない状況。  
私の中の本能がむくむくと首をもたげる感覚。  
少しでも抑えつけようと、考えなしのまま言葉を発した。  
「今年は、色々あったね」  
「全くだ。随分、変わったよな……」  
それが誰のことを指しているのかは定かではないけれど、  
この場で該当するのは二人だけだ。  
ひろちゃんの顔を盗み見る。平時の、感情を抑えた表情。  
この人とはちょっとしたきっかけで近づいて、ちゃんとした理由があって離れ、  
それを乗り越えて元に戻る。  
これからの人生から見れば些細な事だろう。  
それでも今の私達にとっては重大な出来事だし、ずっと忘れないと思うのだ。  
「………」  
「………」  
明後日の行為は今年最後の総決算みたいなもの、かな。  
生徒玄関、校門を通り抜ける。  
それでも私達は言葉を交わさなかった。伝え合う事なんてないし、話題も特に──  
あ、そうだ。  
「ねぇ、ひろちゃん」  
「ん、なに?」  
「初詣、一緒に行こうね」  
不思議そうな表情だ。私、変なこと言ったのかな。  
「当たり前だろ。他に誰と行くんだよ」  
……どうやらひろちゃんの中では既に決まっていた事項らしい。  
「だよね、うん」  
嬉しい。どうって事ない約束だけど、きれいに積み重ねていけば絶対に崩れない絆に  
なりえるだろう。  
 
どうせなら少しは驚かせてあげよう。数年ぶりに振袖姿でひろちゃんの家に迎えに行こう。  
お母さんの実家がそういう事にうるさくて、私も少しだけ作法を習ったし、  
ちゃんとした振袖も作って貰っているのだ。  
振袖姿はクラスの友達には見せた事がない。ひろちゃんだけが知っている私の秘密。  
子供じみたくすぐったい嬉しさが湧き上がる。  
どんなに大人になっても、こういう気持ちをずっと持っていたいものだ。  
「?」  
「何でもないって」  
 
 
そして、ひろちゃんの家の前。  
いつものように私の手を放さずに、ひろちゃんは鍵を開ける。  
私も無言で引かれる手に従うだけだ。変なことを言って、これから起こる欲情の津波に堤防を  
作ってあげる気がないからだ。  
『ぱたん』  
まだ、しない。  
私達は靴を脱いで、ひろちゃんは暖房の電源を入れて制服の上に着ていたコートを脱ぐ。  
私は先に脱いで居間のソファに座り、ひろちゃんを待った。  
鞄はテーブルに立てかけてある。私達がこれからそうするように、二つは寄り添っている。  
きしり。ひろちゃんは落ち着いた感じで私の隣に座った。  
私の中にある雌の部分に、厳重な檻で囲むイメージをした。  
勝手に暴れても良いようにする。とりあえずは表に出ないだろう。  
僅かな衣擦れの音に顔を向けると、ひろちゃんが私の頬に手を伸ばしてきている。  
迷いはない。その表情からは抑えられた興奮を感じ取れた。  
頬に添えられた手に、私も手を重ねる。離れないように。放さないように。  
ゆっくりとひろちゃんの顔が近づいて、言葉もなく私達は口付け合った。  
初めは軽い触れあい。唇の柔らかさとお互いの存在を確認する為の行為だ。  
ひろちゃんのもう一方の腕が背中にまわって来て、私の自由を奪う。  
本格的な交わりの為の布石。  
「ん……、──っ」  
 
私の閉じられた口内で生まれた喘ぎにひろちゃんはしっかりと反応する。  
「は、ふん……ん、あん……」  
開いた二つの唇の間で二枚の赤い舌が踊っている。  
表面の唾液を奪い合って、擦り付け合う。  
更に吸って吸われて。唾液の量はますます多くなって、だらしなく  
口の端から垂れ下がって、落ちる。  
「んぁあん……ん、んん」  
くちゃり。ぬちゅ。  
音がする度にどちらのものと言えない唾液が舌に乗って相手に渡る。  
何度も往復する熱い液体。思考を吸い取る粘液。  
「ん、ん、ん、……っ、ぷはぁ……」  
一度だけ大きく空気を吸いたくて唇を離した。  
「や、ぁあ…ぁ…っ!」  
ひろちゃんの唇は離れない。私の首筋にくまなく吸い上げて、それでも  
飽き足らずに耳まで愛撫し始めた。  
「ん!く、う!ひ、ろ、……っ!」  
耳の穴に吹き付けられる吐息が脳髄を痺れさせる。ぐらぐらと檻が揺れている。  
……止めよう。今日は、もう止めよう。  
我慢出来なくなってしまう。ひろちゃんとの約束、守れないよ。  
身を縮ませて必死に耐えるけれど、ひろちゃんの勢いは増すばかり。  
つるりと耳を舐められた瞬間、檻が爆ぜた。  
「ひろ、ちゃん!」  
抑圧されていた雌性が躍り出た。  
襲うようにひろちゃんをソファに押し倒して、お返しとばかりに耳を咥えていた私。  
腕はがっちりと頭を抱きしめ、その上、恥じらいもなく囁いた。  
「しよ。ひろちゃん、しようよ。我慢出来ないよぉ。  
 ひろちゃんだってしたいんでしょ?私だってしたいんだよ?  
 我慢するの、止めよ?私も我慢したくないんだよ?  
 ほら、こんなにどきどきしてるし、……ここだって硬いんだよ?  
 ひろちゃんはしたいんでしょ?私もしたいんだよ?  
 ね、今しようよ。明後日なんて待てないよ。  
 ひろちゃん、私を、抱いてよ。抱いてよぉ」  
 
その全身を撫でながら内側の猛りをぶつけた私は、ひろちゃんの顔を覗く。  
驚きと羞恥と欲情と興奮と抑制と暴発。  
どれを取ろうか迷っているひろちゃん。私は迷っていない。  
迷いを捨てさせるには、──そうだよね、それがいいんだよね。  
雌の教えに私は素早く従った。  
身体を起こして上半身の制服を脱ぎ捨て、下に着ていたセーターのラインがはっきりと  
見えるようにしてから、スカートをたくし上げた。  
薄いセーターに手を入れて、あまり大きくない乳房を揉む。  
形の変化が解りやすいように目一杯手を動かす。  
開かれた両足。丸見えになっている下半身の下着にも指を当て、秘所の入り口を  
くりくりと擦った。  
「くああ、ひろちゃん!ん、はぁん!ひろちゃぁぁぁん!」  
ひろちゃんの前で、私は激しい自慰を始めた。  
男の人にとって、大事な女の子が触れもせずに自分の意思に反して絶頂を迎える様を  
見なければならないのは、多分、一番つらいことだ。  
私の雌の部分が教えてくれた事。間違いじゃない。  
今だにひろちゃんの奥にいる雄の部分は出てきていないけれど、  
すぐにでも顔を出すに違いない。  
「ん!くぅん!──っ、……っ!ひあぁぁああん!」  
ひろちゃんだって我慢出来ない筈だ。私の痴態を黙って見届けるような人じゃない。  
絶対に何かをしてくる筈なのだ。  
「はぁー、はぁー、しよ、ひろちゃん……」  
下着の透明な染みが表面に出たのだろう。指の動きに合わせてごしごしと  
湿った衣擦れ音がするようになった。頬だって真っ赤、目尻も下がっているに違いない。  
…まだ、駄目なのかな。もっと激しい媚態をさらすべきなんだろうか。  
だったら、もっと解りやすいように、見えやすいように脱いでしまえ。  
セーターに手をかける。指に力を入れて、  
「待て、美里」  
「──っ!」  
大事なひろちゃんの言葉、あるいは最愛の雄の命令に私は停止した。  
 
でも、停止したのは外側だけだった。中はこれ以上ないってくらいにぐるぐると  
悦びが走り回っている。  
ひろちゃんに抱いてもらえる。やっとしてもらえるんだ。  
「待てってば……な、美里」  
私を優しい笑顔で押し倒しながら、そっと言い出したひろちゃん。  
「僕との約束、どうするの?」  
でも、したいんだよ。  
「僕は美里との約束、守りたい」  
守らなくていい。したい。  
「美里は僕との約束を破りたいの?」  
守りたいけど、……。  
うん、守ろう。破っちゃいけない事なんだ。  
「……ごめん、ひろちゃん」  
すう、と激情が冷める。……馬鹿みたい。一人で勝手に、何してたんだろ。  
ひろちゃんに約束させたのは私だ。  
私が守らなきゃ、ひろちゃんだって守らないだろう。  
「よろしい」  
「……うー」  
がしがし。頭を撫でられる。  
約束を取り付けたのは私なのに、何故守った事で褒められているんだろう。  
世の中は不思議だらけだ。  
「けど、なんだ、あれだよな」  
ひろちゃんはあやふやな言葉を口にする。視線は中空を泳いでいて、  
その顔もさっきとは全然違う年相応のものだ。  
何を言いたいのだろう。  
「すげー声だったよ、うん。びっくりした」  
「……わ、忘れてよぉ!」  
あの痴態を見せつけた事自体は納得してるけど、だからって言われてしまえば  
どうしようもなく恥ずかしい。  
 
ひろちゃんのからかう口調はまだ続く。  
「色っぽかったしなぁ。一生忘れられないだろうなぁ」  
にやにやと意地悪な笑み。私が嫌がってるのを知ってて、続けようとしている。  
「駄目!今すぐ忘れて!」  
こんちくしょう。こうなったら力づくだ。  
「だってさ──」  
「このっ!」  
その口を塞ごうと両手を突き出して、あっさりと抱きしめられた。  
ぼそぼそと私だけに聞こえるようにひろちゃんは言う。  
「あんな可愛い美里、初めてだったからさ」  
「〜〜〜〜っ!」  
ずるい。  
そんな事を言われたら、抵抗出来なくなってしまう。  
胸元に顔を埋めて、せめて羞恥の表情だけでも隠そうとする私。  
ひろちゃんはそれを咎めることなんてしない。私の心を安心させるように  
頬を頭髪に押し当て、私達が触れ合う面積は最大になった。  
「………」  
「………」  
静かな時間。  
さっきの自慰で多少は欲情を吐き出せたのだろう、昨日とは比べ物にならないくらいに  
心身が落ち着いている。……そんなの、私だけだ。  
ひろちゃんはそれなりにこみ上げるものを耐えているに違いない。  
だから。  
「ね、ひろちゃん」  
「なに?美里」  
「さっきは、ごめんね」  
「いいんだって」  
「ひろちゃんがしたいなら、もう少し先まで、してもいいよ」  
「………」  
「ちょっとだけ、楽にしてあげたいんだよ」  
私だけが楽になるなんて許せない。この身体をちょっとだけ自由にさせて、  
ひろちゃんにも楽になって欲しい。  
 
もっとも、男の人が欲情を吐き出せる行動なんてひとつしかない訳で、  
それをしてしまったら約束を破らせるだけなのではないだろうか。  
「ごめん、……無理だよね、そんなの」  
「あ、と……そうでもない、かな」  
身体を離して向き合うと、ひろちゃんは恥ずかしそうにぽりぽりと頬を掻いている。  
詳しい説明が始まらない。言葉を必死に選んでいる様子だ。  
「ひろちゃん?」  
「えっとな……」  
待ってあげよう。そんなに難しい内容なのだろうか。  
数秒して、意を決したらしいひろちゃんが言い出す。  
「美里はさ、さっきので、……イったのか?」  
興奮で赤い頬を隠そうともしないで、とんでもない事を口にしている。  
「あ、あの、…その……」  
私だって恥ずかしいし、その興奮もうつってしまう。  
どんな意図があるのだろう。私をからかっている様子ではない。  
ちゃんとした問いなんだから、ちゃんと答えないと。  
「…イってない、と思う」  
達するところまではしなかった、ような気がする。  
ひどく盛り上がっていたから、あまり明確に覚えていないのだ。  
「あの約束のひとつは『自慰するな』だよな。なら、その、  
 相手に慰めてもらうってのは、ありだよな?」  
私にして欲しい、ということだろう。  
でも、  
「それ、だと、」  
「解ってる。…ええと、出る寸前まで、して欲しいんだ。これなら約束を  
 破ったことにならないだろ。さっきの美里のは、半分くらいは僕がさせたことなんだから、  
 これでおあいこだよな」  
必死に理屈を言葉にするひろちゃん。  
この理屈がなければ一気に最後までしてしまうと感じているのだ。  
大した自制心だと思う。  
「う、ん、そうなる、かな」  
 
「もし我慢出来なくて…出たら、この場で美里を抱くよ。……これで、いいか?」  
断る理由なんてない。少しでもひろちゃんの為になるなら、なんでもしてあげたい。  
さすがにこの提案は思いもしなかったけど、ひろちゃんが望むならしてあげたいと  
思う。  
「うん、いいよ」  
なるべく真剣な表情で私は答えた。  
ひろちゃんも戸惑いを隠しきれず、それでも頷いてくれた。  
 
 
ズボンを足首まで下げたひろちゃんがソファに浅く座っている。  
やや開かれた股間に、硬直したひろちゃんの性器が天井に向いている。何もしてないのに  
先端が濡れていて、凄くいやらしい印象だ。  
私は彼の両脚の間に身体を潜り込ませ、その熱棒をまじまじと見詰めていた。  
最初はファスナーを下げて、ズボンの中から屹立した性器だけが飛び出していた状態だったけれど、  
私は全部見たかった。お願いしてズボンを下げてもらったのだ。  
こうして間近で見るのはこれが初めてだ。汗とは違う匂い。鼓動にあわせてゆらゆらと揺れている。  
見ているだけなのに、体温が上昇していく。やっぱり、本能的なものだろうか。  
その熱さを吐き出すようにため息を吐くと、ひろちゃんの性器がびくりと震えた。  
「ひろちゃん?」  
「…うん、そんなもんなんだよ。美里の大事なところと一緒だよ。  
 ……敏感、なんだ」  
頬を赤らめて言うひろちゃん。息がかかっただけなのに、大きな反応だった。  
その言葉は嘘じゃない。あんな事でも感じるんだ。  
「………」  
…見惚れてる場合じゃない。  
ちゃんと、してあげなきゃ。  
「いい?」  
「うん」  
私は決意して、指を数本だけ側面に触れさせる。  
「っ!」  
 
どちらかといえば色白のひろちゃんの身体で、唯一黒ずんだ所。  
その反応。同じ身体なんだ。そう知ってしまえば、触れることへの抵抗感は格段に減った。  
右手の指を全て使って、掴む。それだけで性器は僅かに太くなった。  
これって、  
「気持ちいいの?」  
「…いいよ、うん」  
なら、もっとしてあげよう。ゆっくりと手を上下させてみる。  
じんわりと漏れ出す液体が増えた。裏の筋を伝って、動いていた私の手に絡み付いた。  
じゅ、くちゅ、にちゅ。  
「ん、……く、ぁ……っ」  
粘っこい音だ。恐らくは相応の粘度なのだろう。私との性交を思わせるひろちゃんの表情。  
眉毛が寄って、目は閉じられている。私の手の動きに集中しているのだろう。  
ひろちゃんが私の行為に酔っている。加減も知らない愛撫なのに受け入れてくれている。  
興奮、してきた。  
手が往復する度に性器は熱くなる。太くなって、ふるふると悦んでいるようだ。  
私もうれしい。ひろちゃんに快感を与えることが出来ているから。  
「はぁ、はぁ、は…ぁ」  
私の呼吸も荒い。あそこがじんじんと疼いて、手を伸ばしたくなる。  
一緒にすれば、もっと気持ちいいんだろうな。──待った。今は、してあげるのが優先だ。  
黙って自慰をしても気付かれないだろうけど、約束は守ろう。  
万が一にも伸びないように両手でがっちりと掴んで、より力強く擦った。  
「は、……ぁ、いいよ、美里……っ」  
てらてらと光る性器が時折跳ね上がる。  
足りない。もっと、直に感じたい。指よりも繊細な神経が通っているところ。  
指よりも様々なものを感じる器官。膣内が一番だけど、それは駄目。  
二番目は、やっぱりここなんだろうな。  
「ひろちゃん、聞いてる?」  
夢中になっていた彼を快感の渦から引き戻す。  
何も言わないで始めてよかったのかも知れないけど、私は知って欲しい。  
「ん、んん、なに?」  
「口でしてあげるね、ひろちゃん」  
 
「無理、しなくても、──っ!」  
先端に口付けると、腰すらも跳ねた。  
「は!……ああ!ぅ……っ!」  
私の大事なところと同じだ。その形の頂点が、一番敏感なんだ。  
ひろちゃんは喘ぎ、爪をソファに突き立てて狂っている。  
私がもたらす快楽に狂っているのだ。  
濡れた手を放して、ひろちゃんの手に重ねる。とたんに掴まれ、私は口だけに集中出来るようになった。  
出来るだけ膣と同じ形にしよう。歯を立てたら駄目だ。顎を開いて、唇はすぼめる。  
そして、挿入。  
「ふ、……ん、んん!」  
さらに太さを増したひろちゃんの性器が口の中で暴れている。  
膣と間違えて蹂躙しようと動いているのかな。  
どっちでもいい。もっと、悦ばせてあげよう。  
奥深くまで含んで、裏筋を舌で撫でる。少しだけ口から引き抜いて、先端の割れ目に舌を押し付け、  
頭を退かせながらずるずると唾液を塗りたくる。  
「ふ、あ!美里、すご……っ!」  
ゆで卵みたいな先端への口付けに戻って、もう一度。  
「くぅぅぅぅ……っ!」  
ひろちゃんの性器を口いっぱい頬張って、続いて匂いも鼻腔に充満。  
昂られずにはいられない匂いと熱さだ。頭がぼおっとする。  
脳にきめ細かく造形を写したくて、先端を中ほどに位置させてから、  
頭の角度を変えながら舌に神経を集中させて、僅かな凹凸を確かめた。  
皺ひとつない先端。その向こうには鋭角な角があって、私は納得する。  
こんなので掻きまわされたら気持ちいいのは当然だ。  
その角を一番上からなぞると、だんだんと先端に近づいて割れ目のすぐ下に到達。  
びくんびくんとひろちゃんの腰が蠢く。ここが、一番いいらしい。  
「ふっ、……く!そこ、待てって……!」  
強すぎる刺激から逃れるように私の奥まで入ってきて、ひろちゃんは一息ついた。  
「は、あ。美里、もう、いいよ。これ以上は、ちょっと…」  
私は性器を口から抜いて、答えた。  
「駄目ぇ。もっと、ぎりぎりまでしよ?」  
 
そうなのだ。私はひろちゃんの追い詰められた顔が見たいのだ。  
それを見届けたくて、竿の横腹に口付け。  
「こら、美里、……うぅ!」  
つるつるの先端とは全く違うごつごつとした感触。逞しいとさえ感じてしまう。  
先端ののように敏感ではないらしいけれど、逆に鈍い快感がひろちゃんの心を煽るのだろう、  
さっきよりもずっとつらそうな、いい顔だ。  
「ん、んん、……はぁっ、は、ぁっ」  
目は閉じられているけど、これは無意識なのだろうか。  
ひろちゃんの腰が、僅かに前後している。性交の時のように、淫らにうねっている。  
やっぱりしたいんだよね。私の所為で、一生懸命耐えてるんだよね。  
……出させてあげよう。今日は本番をしなくてもいい。  
一回だけ射精させて、ひろちゃんを助けてあげよう。  
私は鼻先を擦り付けて匂いをかいで気分を盛り上げ、本格的な擬似性交を始めた。  
「ん、ふん!──ん!んん!」  
最奥まで届かせ、じゅぷじゅぷと表面の唾液ごと性器を吸い上げ、射精を促した。  
顎が疲れているけれど、気にしない。可能な限り、強く吸いついて、搾る。  
滅茶苦茶に頭を動かして、私自身も口内からの強烈な快感に溺れ始めた。  
「は、うう!美里ぉ!……う、ぁあ!」  
ひろちゃんの顔を見上げると、本当に達する寸前らしい。  
我慢しなくていい。出してもいいんだよ?  
頑なに耐え続けるひろちゃん。突破口を開けたくて、性器の割れ目に舌をねじ入れた。  
「うああ!やめ、出……っ!」  
ぐちゃぐちゃの口内をひろちゃんの膨張しきった性器が踊っている。  
こときれる寸前の舞。もうすぐ、陥落するんだ。  
「美里、っ!うぅ、……っ!は、う!」  
私の頭をひろちゃんの手が掴んで、ごつんと一気に貫かれた。  
がくがくと振動する灼熱の性器ときりきりと収縮する私の膣。  
そして──  
 
「……っ!う、はぁ!は、はあ……」  
出なかった。どくんどくんと脈動してるけど、射精しなかった。  
最後の一手を私にさせない為の貫通だったのだ。  
息も出来ない程、深くまで貫けば私は何も出来ない。それを知っての行為だ。  
本当、残念だ。私の顎は長時間の奉仕で疲弊しきっていて、もう動かせない。  
「ん、……は、くぅ、……ふう」  
ひろちゃんは快感が収まるのを待ってから、私の口から性器を抜いた。  
果てなかった性器は硬くて。まだ力を失っていないのに、私だけが続行不能。  
何だか、悔しい。  
「これで、おあいこだよな、美里」  
ひろちゃんは全身から快感の余波を滲ませながら言った。射精寸前の快感で  
少しは気持ちが晴れたのだろう、興奮が抜けきらないけどさっぱりした、という表情。  
いきり立っていた性器が、今日は終わりとばかりに垂れ下がってしまう。  
芯には硬さが残っているのか、完全には戻らない。  
私の秘所も蜜を滲ませていて、じくじくと疼いている。  
……うん、これなら良し。  
今日の分が上乗せされた明後日の性交は激しいものになるのだろう。  
ひろちゃんはティッシュで私の口を拭って、同じように性器を拭いてから  
下着とズボンを戻してから小さい声で言う。  
「なぁ、美里。……明日、どうする?」  
視線を合わせると、ひろちゃんは迷っている様子だ。  
毎日するって約束はどうなるんだろうか。  
「いや、明日もするけど、今日みたいに深いのはしない方がいいと思うんだ。  
 ……多分、我慢出来なくなる」  
ひろちゃんは何が何でも明後日にするという約束を守りたいのだ。  
その為の妥協。私の為の、提案だ。  
「私も、多分そうなると思うから、…うん、明日は軽く、しよ」  
私もひろちゃんの気持ちと同じだった。明日ならひろちゃんを落とせるかな、なんて  
少しは考えていたけれど、今の言葉でそれは却下だ。  
全力で明後日に備えよう。  
「よかった」  
ほっとしたように胸をなでおろすひろちゃん。  
 
心底思う。本当に私のことだけを考える人だ。  
……想像も出来ないくらいに深い孤独だった証拠。  
信じられないくらいに誰にも触れたことがない証明。  
それが覆った事を、もっと確かなものにしてあげよう。私の時間をひろちゃんの為に  
使いたいと本気で思い始めた瞬間だった。  
焦る必要はない。確実に進めるのが第一だ。  
私は制服の着て、乱れを直す。家に帰ったら、とろとろに濡れきった下着を換えなきゃ。  
幻想じみた交わりの時間は終わりだ。明日の幻想時間まで、現実に戻ろう。  
「じゃ、また明日ね、ひろちゃん」  
「うん、いつでも来ていいからな」  
 
 
昨日の口付けは本当に軽く、時間も短いものだった。  
それでも終わってから長い事見詰めて、明日、つまりは今日の情事を想像していたのだ。  
まあ、ひろちゃんはどうなのかは解らないけれど、……何の証拠もない妄想だけど、  
同じ事が頭をよぎっていたに違いない。  
早めの昼食を摂った私は、服装の事で悩んでいた。  
待ちに待った日なんだから一番いい服だろうか。でも、普段着の方がどう考えたって自然だし、  
ひろちゃんも落ち着くだろう。とはいえ、少しでも私を女の子だと感じて欲しいなら、  
いい服を選ぶべきじゃないのか。あからさまだけど、気を遣っているのを教えたいし。  
無理したところで不自然なだけだ。意味ない。でも、特別な日なのだ。普通が適切とは思えない。  
……朝からこの調子だ。終わらない。普段着の、膝まである長いスカートと厚手の長袖で  
家のあちこちをうろうろしている。  
とりあえず、下着は新しいのをおろした。ブラジャーはフロントホックのを選んだし、  
これは正しい選択だと思う。  
普段着にしろ外行きの服にしろ、ひろちゃんが脱がせやすい服なんてそう多くはない。  
……だからこそ、こんなに迷うのだ。  
『ぴんぽん』  
来た。  
『からからから』  
早いよひろちゃん。もう少し時間頂戴なんて考えは今更無意味。  
玄関に急行する。  
 
硬い顔。やっぱり緊張してる。ひろちゃんも普段着だったのが救いかな。  
「……美里」  
「……なに?」  
はぁ、とため息をはいたひろちゃんは背中を向ける。  
直後にかちりと鍵をかけた。  
振り返って、ずいっと私の前に立つ。  
「戸締りはちゃんとしろって」  
あう。早くも失点だ。機嫌、悪くしたかなぁ……  
ぐ、と両肩を掴まれて、  
「邪魔入ったらどうするんだよ、美里」  
甘い声音が耳に飛び込んだ。  
…本気だ。本気で、私を抱こうとしている声音だ。  
身体の芯が電熱線みたいに赤く、熱くなっていく感覚。  
私も対抗するように胸に飛び込んで、ひろちゃんの腰に手をまわす。  
頬擦り。そして上目で覗く。  
「いっぱいしよ、ひろちゃん」  
「うん、いっぱいしような、美里」  
いつもしていた、気持ちを確かめ合うような触れ合いは無しだ。  
私達は荒っぽい口付けで今日のスタ−トを切った。  
「ん、はぁ、ん!……ぅ、ぁん!」  
遠慮なんて微塵もない激しい結びつきが口で行われる。  
ずっと待っていた感触。背筋がびくびくと痙攣しながら伸びて、ひろちゃんの身体と  
ぴったりと重なるようになる。押し付けた胸はその鼓動を感知し、密着した腰はひろちゃんの性器が  
膨れ上がるのを感じ取っていた。  
私の血流も速くなる。大事なところが微妙な動きをして、私を責め立てる。  
早くひとつになれ。一番奥まで満たしてもらえ。  
「く、うぅぅん……ひろ、ちゃあん……」  
興奮に歯止めが効かなくなっていく。一度でもそれが暴れてしまえば、理性的な行動は不可能だろう。  
今、言わないと。  
「待って、ぁん、ちょっと、待ってよ」  
「どうした?」  
 
ひろちゃんは耳たぶを甘く噛んで、私のお尻の丸さを強調するような愛撫で言葉を遮ろうとしている。  
今すぐこの場で、強引にひとつになってもおかしくないくらいの獰猛さだ。  
嬉しい。けど、ちゃんと言わないと。  
「うん、聞いて、よぉ……今日は、つけないで、しよ?」  
ぴくん、とひろちゃんの身体が緊張して、私を正面から見据えた。  
避妊薬を使うことにひろちゃんは強い抵抗感を示す。それを使ったのは最初だけで、  
それ以外はひろちゃんは避妊具を使ってくれた。  
避妊具を使った方がより安全だとは知っているけれど、  
今日は直に触れてほしい。直接、ひろちゃんの想いを受け止めたいのだ。  
「………」  
興奮の中には決して小さくない躊躇が混じっている。  
……止めよう。  
私のわがままでこれからの行為に水を差すなんて、ひどい裏切りに思えた。  
撤回しよう。ひろちゃんには安心して私を抱いて欲しい。  
「解ったよ、美里」  
と、同意の返事。  
「本当に、いいの?」  
その顔から緊張が抜けて、照れくさそうな表情になる。  
「一週間も頑張ったからな、ご褒美だ」  
ちゅ、と私の頬をひろちゃんの唇が吸う。  
私もお返し。どうせなら三回して、嬉しさを教えてあげよう。  
心地良さそうに受け取ったひろちゃんは耳元に口を寄せる。  
「……どうする?ここで、する?」  
もし良いなら、ここでしたいとひろちゃんは思っているのだろう。それほどまでに  
昂っているのだ。  
鍵はかかっている。誰も来ない。ちょっと迷ったけど、私は決めた。  
「部屋で、しよ」  
 
「随分変わったな、うん」  
ひろちゃんは私の部屋に入るなり、そんな事を言った。  
前に入れたのはいつだったかな……たしか、中学の頃だった。  
受験勉強中にどうしても解らない所があって、ひろちゃんを呼んで教えてもらったのだ。  
その頃は完全な幼馴染だった。どこか大人っぽいひろちゃんは、子供っぽい私を  
妹のように扱っていたと思う。ひとつひとつを手取り足取り。厳しいようで、実は甘い。  
思い出してみると、あれはあれで恥ずかしい事だ。当時はそんな考えを持てなかったけれど、  
今では赤面するほどの思い出だ。  
──そして、今日。  
この部屋にひろちゃんとの新しい思い出が刻まれる。  
「変わらない方がおかしいでしょ」  
あちこちを眺めるひろちゃんにそう言って窓のカーテンを閉めようとすると、  
ぐいっと後ろから抱かれる。  
「女っぽくなったよ、うん」  
耳元での囁き。私の背中はひろちゃんの胸よりも小さい。  
包むような腕も太くて力強い。あの頃とは違う。男らしくなった、と思う。  
女っぽくなった。それは何の事を言っているのだろう。  
「それって、どんなところが?」  
「いい匂いがするようになったよ。見た目も、昔とは全然違うし」  
「本当に?」  
「本当に」  
即答だ。  
偽りのない言葉。誰にも言えない、私だけに言える本音だ。  
それに対して、私は本音を言い返さない。ひろちゃんも男らしくなったよ、と。  
言葉では限界があるし、いくらでも嘘を吐ける。だから、行動しよう。  
「待ってよ。ちゃんと見せてあげるから、……その後で、もう一回言って」  
首をまわしてひろちゃんに向けると、唇が重なった。  
力強く引き寄せられ、私は半ば倒れこむような姿勢になってしまう。  
ひろちゃんの身体はびくともしない。私の体重が加わっているのに、何ともないらしい。  
……私が思っていた以上にひろちゃんは成長している。  
 
成長期だから当然だけれど、そんな事にさえ、私は喜びを覚えてしまう。  
頼もしい人なったから。身体と心を預けるのに相応しい存在になったから。  
私のひろちゃんが、大きくなったから。  
吸い合っている唇に神経を集中していると、不意にスカートが脱げ落ちた。  
スカートを脱がして腰をまさぐっていた手が気持ちよくて、うっとりしてしまう。  
「んっ、はぁ、……、くぅん」  
それでは物足りないと、長袖のシャツに潜り込む。  
胸まで登ろうとしている手を、へその辺りで私は止めた。  
「ちゃんと脱がせてよ、ひろちゃん」  
「うん、解った」  
昂った声が聞こえて、私の身体はひろちゃんと向き合うように回転する。  
幾分楽しさが増した視線。服を脱がしてもらうのは前に抱いてもらった時が初めてで、  
ひろちゃんはやけに嬉しそうだった。目の前で私が裸になっていくだけじゃなくて  
そういう事をさせてもらえる、というのも嬉しいらしい。  
私としても間近で見てもらえる訳で、はっきり言えば気に入っている行為だ。  
ひろちゃんは笑みを浮かべて私の服を脱がす。  
優しい笑いの中には隠しようがない興奮が読み取れる。  
私もだんだんと気持ちが加熱していく。ちりちりと、日向ぼっこをしているような感覚。  
……私にとっての太陽、というのは大げさだろうか。  
私を下着だけにしたひろちゃんは額に軽く口付け、私達はベッドに座る。  
ぎしりと昔から使っているベッドが初めて軋んだ。  
「──あ」  
「どうした?」  
隠すことじゃない。教えてあげよう。  
「うん……私ひとりだと、こんな風に音がしないんだよ。こんな音、初めて聞いた」  
「ふたりであがってるんだもんな……」  
誰かと初めて使うベッド。その相手はひろちゃんなのだ。  
心拍が速くなる。……何だか、初めて抱いてもらった時みたいだ。  
「美里」  
声に振り向くと、ひろちゃんの手が伸びてくる。  
腰に巻きついて、胸も抱き寄せられる。……難しいことを考えるのは止めよう。  
ひろちゃんに、全てを任せよう。  
 
ひろちゃんは私を抱きしめながらベッドに押し倒す。ぎしり。  
また鳴った。お互いの舌を触れ合わせ、私はそんなことを考える。  
私が僅かに身体を捩るだけでも鳴っているようだ。  
これなら、  
「もっと鳴るな、美里」  
…ひろちゃんも同じ考えだった。  
さすがに壊れるなんてことにはならないだろうけど、少しは不安かも。  
「にしても、美里」  
ひろちゃんは私の胸の谷間に顔を埋めながら言う。  
「いい匂いだよ、うん」  
くりくりと鼻先で乳首をブラジャーごしに撫でている。  
敏感な突起から鈍い快感が染み渡るように広がって、自然に音声になってしまう。  
「ぁ、ぁぁん……きもち、いいよぉ……」  
頬や唇での愛撫も始まって、頭の芯がじんじんと疼いていく。  
「ん、あれ?」  
ひろちゃんは私の背中に両手をまわし、疑問の声をあげていた。  
「……あ、今日のは、前なんだよ。今、外すね」  
ブラジャーを外そうとしていたらしい。  
ひろちゃんは身体を少しだけ離して、私の行動を見守っている。  
羞恥を押しのけ、外れたとたんにひろちゃんの顔が真っ赤になった。  
「ひろちゃん?」  
「あ、いや、すげーえっちな感じだよ」  
「……そうなの?」  
まだ脱ぐところまではしていないのに、随分と興奮しているようだ。  
「うん。微妙に隠れてる感じがいいんだ」  
ひろちゃんはブラジャーと胸の隙間に手を滑り込ませ、すくい上げるように揉み始めた。  
優しく撫でるように、そうかと思えば握るように強く搾る。  
じいん、と身体全体の神経が敏感になっていくのが解った。  
「ん、熱くなってきたよ、美里」  
ひろちゃんも抑えが効かなくなっているらしい。だんだんと、手の動きが大胆になっていく。  
 
私達の呼吸のペースは変わらないけれど、一回毎に行き来する空気の量は格段に多くなっている。  
はぁー、はぁー。  
理性が崩れていない証拠。  
もっと、崩してあげよう。崩れてみせよう。  
「んぁあん…ひろちゃん、…ぅん、早く、してよぉ……」  
秘所の疼きを感じて欲しい。沸騰しきっている事を知って欲しい。  
黒い短髪に手を添えて胸に吸い付いている唇を剥がし、私の唇と密着させる。  
何度も何度も舌を押し込んで、こんな事をして欲しいと私は訴える。  
「ん、ああん、してよ、ひろちゃん、ねぇ、してよぉ……」  
「解った、んん、美里、離してくれなきゃ、出来ないぞ」  
知らず知らずにひろちゃんの首を腕で固定していた。  
「……、ごめん」  
力を抜いて、絡んでいた腕をほぐす。  
どんな顔をしているのだろう、ひろちゃんは数秒だけ私を見つめた後に、残った最後の下着に  
指をかける。  
皮膚に指が食い込む僅かな感触。ひくりと腰が震え、ひろちゃんは構わずに下着を脱がす。  
するんとあっけないくらいに簡単に引き抜かれ、私の両膝を思いっきり開けるひろちゃん。  
あそこの入り口も開いて、とくとくと液体が零れてお尻の穴が埋まる。  
「やぁ……恥ずか、しい」  
こんなにも淫らになっている事に激しい羞恥を感じてしまう。  
ひろちゃんは股間に顔を近づけ、私の大事な所を観察するように言う。  
「濡れてるよ美里。どんどん溢れてくる」  
言葉と視線に刺激された私はより高く興奮し、本当にどうにかなりそうなくらいに  
ひろちゃんが欲しくなった。  
その想いが自然と口から出た。  
「なら、しよ?」  
「うん、そうだな」  
ひろちゃんはそう言うと背中を向けてトランクスを脱いだ。  
振り返り、私の目は最大限に大きくなった性器だけを見ていた。  
これから一仕事しようという決意。  
最も深い所まで愛そうという意思。  
ごくり、と私の喉が鳴る。  
 
「……じゃ、いくよ」  
腰を落とし、反り返る性器を抑え付けながら前進するひろちゃん。  
じれったい。もっと一気に来てもいいのに、何でこんなにも慎重で、……優しいのか。  
つぷ、と先端が埋まっただけなのに、私の下半身は跳ね上がった。  
「……っ!」  
ふるふると膣が踊っている。待ちわびた瞬間の訪れに、最大の蠢動で悶えている。  
一呼吸したひろちゃんは、腰を進めて私と深く繋がった。  
「ひ、んんあぁぁあああぁああ!」  
直後にぱちんと意識が弾け、心が真っ白になる寸前に布団と背中の隙間に  
腕が差し込まれた。その感覚でどうにか失神を免れる。  
「ぁ、ぁ……ん」  
私を塗りつぶそうとする快感を際どい所でやり過ごしてひろちゃんを見ると、  
悩ましげに眉が寄っていて、濃密なため息を漏らしている。  
なんだか、凄く気持ち良さそうだ。  
「……ひろちゃん?」  
「うん、……美里の中、気持ちいいよ」  
目が開いて私を捉える。……私の心が落ち着くのを待ってくれているようだ。  
出来る限り私に優しくしようとの心遣いが嬉しい。  
「うん、いいよ」  
ひろちゃんは無言で頷くと、ゆっくりとした抽送を開始した。  
一秒近い時間をかけて腰を引いて、同じだけ時間をかけての挿入。  
「……ぁ、ぁああん……」  
聞き届けてから、もう一度。  
私の存在を確かめるような愛撫。  
「は、……んぁああ、ん……」  
ひろちゃんとの性交で、この時が一番好きだ。  
一緒に絶頂までの階段を登っている感覚。一歩一歩、着実に足を進める感じがたまらない。  
……今更だけど、実感した。ひろちゃんが戻ってきた事を。  
嬉しくて嬉しくて、何だか泣きそうになってしまう。  
「ん、どうした、美里?」  
「……やっと元通りなんだなって、思ったらさ、……うん、ごめん……」  
 
ひろちゃんは微笑んで、私に口付け。  
「こっちこそごめんな。寂しかったよな……」  
「ん、許してあげるから、……もっと、してよ」  
ゆったりとした快楽に身体が慣れてしまい、物足りなくなっていた。  
快感の小波よりも、その後からやってくる余韻の疼きの方が強いのだ。  
これはこれで感じるものがあるけれど、もっと大きな快感が欲しい。  
ひろちゃんは私を少しでも満足させようと舌を求めて、より強く腰を叩き付けた。  
「ん、……っ……は、ん……」  
私はひたすら酔った。喘ぐ声すらも快感に変換され、体内でうねっている。  
「……っ、ふは、ああん、くあぁ、……ぁあ!」  
唇が離れた途端に溢れ出す悦声。こうして間近で聞かれるのは恥ずかしい事なのかもしれないけど、  
私は聞いて欲しい。ちゃんと感じているのを理解して欲しいのだ。  
ひろちゃんは一定の間隔で私を突き上げる。気持ちよさそうだけど、私を観察する程度の  
余裕はあるらしい。  
「可愛いよ、美里」  
私だけが感じているみたいだ。ひろちゃんもそれなりの快楽を得ているらしいけど、  
もっと感じて欲しくて下腹に思いっきり力を入れた。  
「くぅ…っ!」  
ひろちゃんの顔から一気に理性が消えていく。  
「うわ、……ちょっと、待て……っ!」  
急激な刺激から逃れるように性器が引き抜かれ、腰に絡む私の両脚がそれを阻んだ。  
どすんと腰が密着する。  
「は、ああぁっ!」  
ぶるぶると太さを増した性器が振動している。  
私の膣にも伝播して、その快楽の大きさがよく理解出来た。  
「……美里、何するんだよ」  
「よかった?」  
苦笑いし、答えてくれた。  
「かなり、な」  
私だって好きな人に感じてもらえるのは嬉しい訳で、力を緩めないように気をつけながら口付け、  
ひろちゃんを促す。そろそろ高みに連れて行って欲しいと。  
 
ひろちゃんは止まっていた性器の運動を再開する。  
「ん、……絡みつくみたい、だ」  
見えないけど、繋がっているところがどんな状況なのか細かく想像出来てしまう。  
ひろちゃんの性器が往復する度に私の秘所からは液体が溢れ出し、  
じわじわとシーツを濡らしているのだろう。  
私から快楽を引き出して、叩きつける。もっと私を快楽まみれにしようとひろちゃんの  
ペースはあがっていく。  
「は、ああ!いいよぉ、んん!ひろちゃぁん……っ!」  
荒い息をしながらひろちゃんは行為を続行する。  
私を締め付ける腕に力がこもって、まるで抱きかかえられているみたいだ。  
「くう……美里、……、どんどん、締まってくるよ」  
がくがくと私の身体は揺さぶられ、絶頂に近づくほど、全身から力が抜けていく。  
快感への抵抗が弱くなってしまう。心も身体もひたすら快感を貪り、  
もっと脱力する身体とは裏腹に私の膣はより快楽を搾り出そうと収縮している。  
それに応えるようにひろちゃんの性器も膨張し、より深い所まで届く。  
「ふあぁ……んは、ぁあ、あああ!」  
奥深くまで触れて、ごりごりと肉壁を引っ掻きながら次の突入に備えるひろちゃんの棒。  
私はその摩擦が生み出す感覚に必死に耐えるだけだ。可能な限り、達してしまうのを  
遅らせようと快感を抑え付けるけど、余計に興奮の度合いが高くなってしまう。  
結果として快感がどうしようもないくらいに大きくなるだけだった。  
ひろちゃんの抽送は素早く、そして強いものになっている。  
口からは色めいた溜め息が何回も零れて、もっと動こうとする身体にブレーキをかけている  
ように見えた。  
「ひろ、ちゃん?」  
「ん、どうした?」  
停止したひろちゃんが私を見つめる。それだけなのに体温が上昇し、言葉を形にするのが  
難しくなってしまう。  
「……あの、我慢、しなくてもいいんだよ?」  
「……」  
ひろちゃんは丁度いい言葉を見つけられないのだろう、数秒だけ沈黙して、  
決意を私に伝えた。  
「痛かったら言えよ。すぐ止めるから」  
 
先ほどの行為は慣らし運動だと言わんばかりの律動。  
私は声すらも押し殺して、ひろちゃんの身体を抱き締める。  
「……っ!ん……ん!」  
一握りだって外に漏らしたくなかったのだ。この行為がもたらす幸福感に、  
思う存分浸りたかった。激しく愛される事の嬉しさをそのまま飲み込みたい。  
ひろちゃんの性器が私の子宮に直接精液を注ぎ込もうと、さらに膨張していく。  
「ふく、ぅう!当たっ……は、ひあぁあぁ!」  
「は、……ぁあ!美里……っ!」  
返事をする間もなく、私はひろちゃんに抱きかかえられた姿で真っ白な絶頂に到達した。  
 
 
最高の恍惚から覚めてひろちゃんを見ると、今だに射精の最中のようだ。  
眉が皺を作っていて、微かな呻きと共に何度か性器を往復させている。  
……お腹の中に、原始的でありながら官能的な熱さ。じんわりと全身に沁み込んで、心が高揚する。  
本能的なものだとは考えたくない。ちゃんと愛してもらった証拠だ。  
ひろちゃんの想いを直に受け取る事は、私にとってはこの上ない悦びなのだ。  
「ん……ふ……」  
重い艶声を漏らし、ひろちゃんは性器を引き抜く。  
快楽の余韻も重くて、全身から力が抜けてしまう。目を開ける分すらも溶けてしまったようだ。  
きし、とベットが鳴る。  
そして、ひろちゃんも身を横たえて、私を広い胸に抱きしめ──ない?  
予想を裏切られ、薄目でひろちゃんを見ると、座った姿勢で何だか思い詰めた表情だ。  
「美里、いいか?」  
「…え、なに?」  
少しだけ顔を伏せて、戸惑うようにひろちゃんは言い出す。  
「もっと抱きたい。もっともっと、美里の中に出したい。……つらくなったら言えよ。  
 自分でも、何回すれば収まりがつくか予想出来ないんだ」  
寝ている私からも見えるくらいに反り返っていくひろちゃんの性器。  
どくんと心臓が叫ぶ。私の身体も応えるように艶と力を取り戻したと思う。  
「……可愛いよ美里」  
ひろちゃんはくの字に重なった私の足を開こうとせず、覆いかぶさるように  
再度の挿入を始めた。  
 
その後、ひろちゃんは三度も想いを放ち、私が絶頂に至ったのはそれを超える回数だった。  
獣のように相手の身体を貪り合い、何ヶ月も逢えなかった恋人同士のように自らの愛を見せつけ合う交わり。  
「は、ぁ……」  
ようやくにして私はひろちゃんの胸に収まる。  
至福の時間。  
心地よく気だるい疲労を噛み締めあいながら、微笑みを見せる。  
ひろちゃんも荒い呼吸をしているけど、発作は起こっていないらしい。  
あれだけ激しい交わりだったのに、しっかりと体調を崩さないペースを守っていたようだ。  
この行為に慣れた証拠。その相手は私なのだ。  
私の気持ちには何の隔壁もなくて、ちょっとだけ考えた事が簡単に口から出てしまう。  
「もっと、こういうこと、したいね……」  
「毎日?」  
羞恥を覚えながら、素直に私は答える。  
「うん、出来れば、ね」  
「僕は月一回くらいにしたいけどな」  
……そんなものなのだろうか。この年頃の男の子なら、それこそ毎日でも可能な時期だと  
思うし、そういう欲情だってある筈ではないのか。  
「ま、そりゃあ、発作がない限りはしたいけどさ……」  
疑問の表情を覚えつつ私は訊く。  
「じゃあ、何で?」  
照れを隠そうともせず、ひろちゃんは私を見据えて言った。  
「今日の美里、可愛かったからな。前にした時よりもずっと可愛かった」  
咄嗟に返事が出来ない。何て言えばいいんだろうか。  
肯定するのはおかしい気がするけれど、否定したところでひろちゃんの気持ちは変わらないだろうし。  
悩んだ結果、  
「……本当に?」  
芸もなく確認の言葉が言えただけだった。  
ひろちゃんは何の臆面もなく私に言う。  
「うん、本当。ちょっとだけ我慢して今日みたいな美里を見れるんだったら、  
 毎日はしたくない。……美里はどう思う?」  
 
どうもこうもない。ひろちゃんが見たいものを見せてあげたい。  
「ひろちゃんがそれでいいんだったら、…いいけどさ」  
了承の印としての口付け。じっとりと汗ばんだ肌が重なる。  
さて、今日の目的を果たそう。  
「ひろちゃん、お風呂に入ろ?」  
かあ、と頬を染めたひろちゃんがしどろもどろに言葉を紡ぎだす。  
「その、一緒に?」  
「うん、一緒に」  
「ば、馬鹿、恥ずかしいだろ」  
「何で?こういう事しても、恥ずかしいの?」  
「いや、そうじゃないけどな、……いいけどさ……」  
何となく理解出来た。  
性交を前提にしないでの裸の晒し合いが恥ずかしいのだろう。  
私としては欲情を抜きにした冷静な目で見て欲しいのだ。  
「じゃ、行こ?」  
身体を起こしてひろちゃんの手を引く。  
「ふ、仕方ないか」  
苦笑いを浮かべ、ひろちゃんはベッドから降りた。  
 

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