私ね、結婚するの。キラキラ輝く指輪を撫でて彼女が言った。恋が何かを知らないときから馴染んだ目元が幸せそうに弛む。
黄昏は北風に追いやられてほんの名残を残すばかりだ。
一緒に通った通学路の途中、小さな公園は二人だけの隠れ家を何度も作った思いでの場所。彼女の言葉に何かが崩れてくすんでいくのがわかる。
嘘だろう、と口にしたいけどできない。だってあんまりにも幸せそうだから。
どんなやつだろう。ささやかなに光る幸せを大きな閃光でかきけして、彼女を染めてしまったのは。
強く強くまぶたを閉じれば、天地がぐるぐると回っていった。
ねぇ、起きて。少しずつ変わったけど一番耳に心地よい声に体を起こす。
細い指が頬をたどって、泣いていたのだとしった。
結婚する?
えぇ、するわ。
さっきの笑顔よりも輝いた瞳に自分が映っている。
とても悲しい夢を見た。
大丈夫、これからもずっとそばにいる。
でも大事なことに気づけた。
幸せになろうね。
うんと頷いて彼女の体を抱き締めた。あぁ夢でよかった!