『日本は、職人の国です』  
と言ったのは、永六輔さんであるが、それを地で行くバカ・・・否、熱い男が、  
『ほころび工業』  
という有限会社にいた。  
 
「日本のテクノロジー、それと職人芸をかけあわせれば、出来ない事はない」  
そう言って、有限会社ほころび工業社長、蛇苺守(へびいちご・まもる)は今、  
全身全霊を込めて、あるモノの開発に熱中していた。守はいわゆる無機物フェチ  
で、ロボ萌えの性癖を持つ二十五歳の青年。それゆえか、彼は大学在学時  
から、人型ロボットの製作に傾倒していった。そう、あるモノというのは、人の形  
をしたロボットの事である。幸い、工業所を営む実家の助けもあり、現在はその  
野望が粛々と達せられようとしていた。  
 
「やったあ!出来たぞ!万能型メイドさんロボット、チビッコ沙希ちゃんが!」  
作業所の片隅で、守はメイド服に身を包んだ少女を前にして、歓喜の表情を  
浮かべていた。チビッコ沙希ちゃんと名付けられたメイドロボのなりを見ると、  
外見はせいぜい小学三年生といったところで、腰まで伸びた赤い髪が美しい  
少女である。そして、頭にはメイドさんがつける、あのヒラヒラがなびいていた。  
名は分からないが、エロゲーにおいては、たとえエッチシーンにあっても、決して  
はずされることの無い、必須アイテムのあれが。  
 
「耳にアンテナつけようかとも思ったんだけど、怒られちゃうからね」  
守は訳の分からない事を呟きながら、メイドロボ、沙希の赤い髪をそっと手で  
梳く。はっきり言って、二十五歳の青年がチビッコ少女を愛しげに見遣るという  
のは、危険極まりないとしか言いようがないが、それはさて置く。  
 
「さあ、亀頭・・・じゃなくって、起動するぞ。スイッチオン!」  
ノートパソコンからシグナルを送ると、閉じられていた沙希の目が開いた。  
そして、ゆっくりと体が動いていく──  
 
「ブートに入ります・・・メモリ、クリア・・・システムを更新・・・」  
沙希は自らの状態をチェックしつつ、両足に力を入れていた。己の意思で  
立ち上がる──そんな気持ちが伝わってくるようだ。  
 
「性交・・・じゃない、成功だ!やったあ!」  
天井を仰ぎ、ガッツポーズを取る守。大学時代からの夢、人型ロボットをつい  
に完成させたのである。その喜びは計り知れなかった。  
「さあ、自分の名前を言ってごらん」  
膝を折り、沙希と視線を合わせた守が問う。ここで、彼女が自分の名前を答  
える事が出来れば、システムが正しく動作されている事となる。  
 
「あ・・・た・・しの・・名前は・・・沙希」  
きゅっと肩をすくめるようにして、沙希は答えた。これは,システムに異常が無  
く、動作が正常に行われている事を意味している。そう、起動は大成功だった。  
 
「よく出来たね、沙希。僕の名前は守。君の創造主・・・いや、ご主人様ってトコだ」  
「守・・・ご主人様・・・記憶しました。ふつつかものではありますが、沙希をよろしく  
お願いしますね」  
主従の絆を確かめると、沙希は愛想良くぺこりと頭を下げた。こうして、本日この  
時をもって、メイドロボは生を受けたのである。  
 
 
「ふん、ふ〜ん・・・」  
と、沙希は鼻歌をまじえながら、ほうきを持ってほころび工業所内をかけ  
回っていた。これは、メイドさん機能の一つ、鼻歌付きお掃除である。  
 
「可愛いなあ・・・僕の沙希は」  
仕事は従業員に任せて、沙希の傍を片時も離れない守。今だって、目を  
細めては工業所内を見回るふりをして、沙希ばかりを見ているのだ。  
 
「守、お掃除終わったよ。次、何をしようか?」  
ほうきに身をもたげさせるようにして、ちょっぴりはすっぱな所を見せる沙希。  
主を呼び捨てにしているのは、健気だがフレンドリーなメイドさん、その上お生  
なチビッコ萌えという、難儀な性癖を持つ守を慮っての事。  
 
「そうだな。ちょっと休んで、五時ごろになったら夕食の買い物に行って貰おう  
かな。こっちへおいで、沙希」  
「うん」  
守に手招かれ、沙希は工業所奥の母屋へといざなわれた。そして、誰もいない  
寝室の襖を開けると、そこには大きな布団。更には、並べられた枕が二つと、  
趣味の悪い、花柄のカバーがかけられたティッシュの箱もあった。  
 
「あッ・・・」  
枕元に置いてあるティッシュを見て、絶句する沙希。これが何を意味し、どう  
リアクションを取っていいのかも、彼女にはプログラムされているのだ。  
 
「ふふふ・・・どうするか分かっているね、沙希」  
「は・・・はい。ご主人様・・・」  
守が意味ありげに言うと、沙希はうつむいてメイドさん服の胸元をさぐった。見れ  
ば顔が真っ赤である。カタカタと震え、言葉遣いにも変化が見られていた。  
 
「恥ずかしいから、向こうをむいていてください」  
守にぷいと背を向け、むずがるような様子を見せる沙希。今、このメイドロボ  
は衣服を脱ぎ去り、身には可愛い肌着しか着けていない。  
 
「沙希、こっちを向くんだ」  
「えっ・・・そ、そんな」  
「ご主人様の言う事が、聞けないのかい?」  
「わ、分かりました・・・でも、あんまりまじまじと見ないでくださいね・・・」  
 
守に乞われ、沙希はおどおどと身を翻した。するとどうだろう、まだ膨らみを  
持たぬ胸には、サクランボのごとく色づいた小さな乳首が見て取れ、少女が  
持つ美しさに花を添えているではないか。窪んではいるが、薄桃色の乳輪の  
真ん中には、つんと蚊に刺されたような乳頭もある。そして、視線を下に遣ると、  
ふっくらとまろやかな腰を覆うように、淑女の嗜みと言われている漆黒のガータ  
ーベルトが装着されていた。  
 
「これも、メイドさん必須。黒を選んだのは、チビッコに似つかわしくない所が、  
アンバランスでイイ!と思ったからだ。ふふふ・・・」  
「イヤな趣味ですわ・・・ご主人様」  
 
沙希の肌着は、すべて黒で統一されていた。ブラジャーは用を足さないので  
着けてはいないが、下腹部を覆うガーターベルト、それに吊られるストッキング、  
そして、ヒップを包むパンティに至るまで、深い黒色で染められている。ちなみに  
パンティは股ぐりが浅く、布地の面積は極めて少ない。その上、恥部を覆うはず  
のクロッチが無かった。当然、幼い割れ目は透けて見え、隠す事が出来ていない。  
 
「沙希、お布団に寝転ぶんだ。後は、僕がやる」  
「・・・はい」  
万能型メイド『ロボ』を謳っているので、夜伽もオーケー・・・ロボを強調  
したのは、ソフ倫とメディ倫の目を欺くため──では、決してありません  
ので、悪しからず。それはいいとして、こうして沙希は守に命ぜられるが  
ままに布団の上へ寝転び、身を固くしてギュッと目を閉じた。要約すると、  
メイドさん危機一髪モードに入ったのである。  
 
「さて、沙希のお味は・・・」  
「イヤッ!変なことしたら、たとえご主人様でも、許さないんだから・・・」  
守がパンティに手をかけると、沙希は抗うような姿勢を見せつつも、さっと  
腰を浮かせた。許さないとは言いつつ、さりげに下着を奪わせるという萌え  
ツボトを突いたのである。そうして、黒い淫ら下着は少女の足を抜け、部屋  
の片隅へ放り投げられてしまった。  
 
「おお、ぱっくりと・・・開いてないな」  
沙希の二枚貝はぴたりと閉じている。年齢的な事を考えれば当然と言える  
のだが、こういう仕様にしたのは他ならぬ守なのだ。もっとも、チビッコ萌え  
の男が、ズバーン!とかっぴろげられた恥唇を好むとも思えないのだが。  
 
「触ると、開くこと・・・知ってるクセに・・」  
「そうだったな。ははは・・・ごめんよ」  
 
両足を守の肩に担がれ、女にとってもっとも恥ずかしい場所を凝視される。  
沙希はその羞恥によって、はあはあと息を荒げていた。その上で、自分を  
辱めている男に対して、甘えるような視線を送る。  
 
「ご主人様、そこ・・・触って」  
 
「はあ・・・あ・・ん・・きゅんッ!い、いや・・・ああ・・・」  
「美味しいよ、沙希のアソコ」  
「い、いやッ!そんな恥ずかしいコト、言わないでェ・・・」  
 
沙希は腰を浮かされ、陰部を覗き込まれるような格好で、女肉を啜られて  
いた。くすんくすんと鼻をぐずらせ、甘えん坊な素振りを見せるあたりが、  
万能メイドロボと呼称される所以。  
 
「ああ、沙希・・・僕はもうたまらないよ」  
守がそう言って、ズボンのベルトをカチャカチャと鳴らした。その直後、ジッパ  
ーを通り抜けた男根が聳え立ち、幼い沙希の心を凍らせる。  
 
「こ、こんなに大きいのって・・・」  
目を丸くして男根を眺める沙希。と言うか、メイドロボ──を守は、  
「大丈夫、ちゃんと入るから」  
と、言いざまに少女を布団へ寝転がせ、自らはその上へ覆い被さっていった。  
 
「いやーッ!ご主人様、やめて!」  
「抗うんじゃない!」  
いざ!という時になって、沙希は抵抗の素振りを見せた。しかし、ご心配は  
無用。これは、メイドさん機能の中のひとつ、いやよいやよも好きのうち!で  
ある。別名、ちょっぴりバイオレンスに・・・これも、守の危険な性癖のひとつ。  
 
「やだーッ!」  
「おとなしくしろっての・・・この・・」  
じたばたと暴れる沙希の恥肉付近で、さ迷う守の男根。しかし、カリの部分が  
彫りの深い少女の割れ目を捉え、あさましくも強行突入の構えを見せた。  
そして──  
 
「キャーッ・・・」  
ぐんと背を仰け反らせ、目をむいた沙希。男根が恥唇を左右に広げ、  
膣肉を貪ったのである。  
「入った!ああ、入ったよ、沙希!」  
少女──というか、メイドロボの肢体を押さえつけ、醜い欲望の肉塊を  
捻じ込む守。幼穴は男を拒むように蠢動したが、青年はそれに構わず、  
男根を奥へ奥へと嵌め込んでいった。  
 
「ああ・・あう・・」  
男根が膣道を遡ってくると、沙希の目がとろんと妖しく蕩け始める。少女  
の幼穴は男根を半分も呑み込めなかったが、それでも守は男冥利を得る  
事が出来た。  
 
「す、すごい締めつけだ・・・ああ、沙希、沙希!」  
「ああん・・・ご主人様ぁ・・・」  
 
少女は──いや、いや、メイドロボはこの瞬間、破瓜を迎えた。時刻は  
午後四時半を少し回った所。やけに薄暗い、初秋の夕刻が迫る中で。  
 
 
「沙希、お前は最高だよ」  
布団の上でぐったりと身を横たえる沙希を見て、守は言った。自作の万能  
メイドロボの機能が、すべて上手くいっている。それが、満足だった。  
 
「はあ・・ん・・ありがとう、ご主人様」  
表情は蕩けていたが、沙希は立場をわきまえた言葉を繋ぐ。身に着けて  
いるものは、ガーターベルトとストッキングのみという艶姿。しかし、ロボな  
のでなんら問題は無し・・・と、言いたい所なのだが・・・  
 
「あッ、五時になった。お買い物行かなくちゃ!」  
不意に沙希はそう言って、布団から起き上がった。そして、半裸姿の  
まま、寝室の扉を開けて外へ出る。その姿を、主である守は笑って  
見ていたのだが・・・  
 
「おいおい、そんな格好で行く気か?服を・・・」  
着て行けよ・・・という守の言葉を、命令に従順な筈のメイドロボは聞か  
なかった。いや、実の所はそうではない。沙希は、先だって命ぜられた  
五時になったら、夕食の買い物に行ってくれ、という言葉を優先していた  
のである。それは、外に出る時は衣服を着なければならないという事を  
プログラムし忘れた、守の落ち度でもあった。  
 
「お買い物、お買い物・・・」  
ほころび工業所の中を、素肌を晒した沙希が行く。すると、従業員たちが  
いっせいに色めきたった。  
 
「わあ!裸の幼女が!」  
「ガーターしてるぞ!あッ、お股から、何やら怪しい液体が・・・」  
身には黒のガーターベルトとストッキングのみ。その上、股間からは男液  
と思しき粘液が・・・従業員たちは、守が沙希というロボットを作った事を  
知らない。そうなると・・・・・  
 
「社長が、幼女を連れ込んでいかがわしい事を!」  
「ギャー!三面記事の主役決定だ!」  
と、当然のごとく作業員たちが恐慌した。更にまずい事に、そこへ沙希を  
追ってきた、素っ裸の守がやってくる。  
 
「違うんだ、みんな聞いてくれ!」  
放精で萎えた男根をぶらつかせながら、必死に叫ぶ守。しかし、これは  
結果として火に油を注ぐ事となる。逃げるように走って行った、裸の幼女。  
それを追う、同じく裸の青年──と、くれば・・・  
 
「社長、あんたを見損なったよ!」  
「この、鬼畜!あんなチビッコに、中出しなんて!」  
従業員たちは守に詰め寄り、散々になじった。ついでと言っては何だが、こ  
の時、表通りからは悲鳴が聞こえてもくる。恐らく、裸の幼女が淫らな下着  
を身にまとい、ほころび工業所から出てきた事に驚愕しているのだろう。  
 
「ちがーう!とにかく、みんな聞いてくれ!あの子を外に出しちゃ、駄目だ!」  
今は、沙希を捕まえねばならないと説く守。しかし、憤った従業員たちに行く  
手を阻まれ、表へと行く事が出来そうにない。もっとも、それ以前に全裸で外  
へ行くのは、憚られるのではあるが。  
 
「外に出すとか、中に出すとか、いい加減にしろ!この、変態め!」  
「うっ・・・そ、それは・・・」  
従業員の一人が叫ぶと、守は言葉を失った。確かに彼は、先ほど沙希の胎内  
を汚している。すると、タイミング良く遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。  
 
「あんたを捕まえにきたんだ。観念しろ」  
従業員が冷たく言った。軽蔑と憎悪のまなざしで守を見据え、何もかもが終わり  
を告げた──そんな顔をしながら。  
 
(ど、どうすればいいんだ!こ、このままでは、俺は・・・)  
沙希がロボットである事が証明されても、自分が怪しい性癖を持って  
いる事が、天下へ晒されてしまう。そうなれば、罪には問われなくても  
身の破滅は免れない。そこまで考えると、守は身震いした。  
 
(どうすれば・・・ああ、そうだ!)  
僅かに逡巡した後、守は急に穏やかな顔つきとなる。どうやら、何か  
思いついたらしい。そして、唐突に両腕を頭上に上げると、  
「素晴らしい!ワイ・エム・シーエー!」  
と、某ヤングマンを歌い始めた。何と言うことか、追い詰められた守は、  
妙案が浮かんだのでは無く、頭のネジがいくつか吹っ飛んだのである。  
 
「社長が狂ったぞ!」  
踊り歌う守を見て、色を失う従業員たち。そもそも、メイドロボを作ろうなど  
と思う人間は、追い込まれればハイ、それまでよ・・・  
 
「守、感激!チンコと愛蜜、とろ〜りとけて・・・」  
ヨヨイのヨイ。そんな感じで踊る守。適当な節のつけかたが、狂乱の度合  
いを示しているようで物悲しい。そして、今際の一言が──  
 
「ギャラン・ドウ!」  
 
初秋の夕刻、空は薄曇となっていた。そして皮肉にも、ひとつのメイドロボ  
の誕生と引き換えに、ひとりの青年のすべてが終わりを告げたのである・・・  
 
おしまい  
 

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