「おかえりなさい、加奈」  
 
お母さんに玄関で迎えられ、わたしは驚きのあまり立ち竦んでしまった。  
今日はクリスマスイブ。  
でも、いくらクリスマスイブだからってわたしに浮かれている余裕はなかった。  
イブだからって洗濯物は取り込まないといけないし、掃除だって、晩御飯の準備だっていつもと同じにある。  
だからいつもと同じでHRが終わるなり急いで帰ってきたんだけど。  
 
「ほら、そんなところに立っていないで、早く着替えてきなさい。  
 ちょうどご飯の準備もできたところだから」  
 
笑顔のお母さんにそう言われて、わたしはようやくあたりに漂っている匂いに気づいた。  
おいしそうな香ばしい匂い。  
何が何だかわからないまま、自分の部屋に向かって制服から着替える。  
それからリビングに行くと――、  
 
「う、わぁ……」  
 
そこには信じられない光景が広がっていた。  
テーブルの中央には大きなケーキ。  
その周りには色とりどりの料理。  
それはどれもお母さんの得意料理で、デリバリーや出来合いのものじゃないことは明らかだった。  
そしてテーブルの向こうにはお母さんの笑顔。  
何もかもが、信じられなかった。  
 
幼い頃、わたしは確かに幸せだった。  
お父さんがいて、お母さんがいて、お金はそんなになかったけど家族3人で幸せに暮らしていた。  
その歯車が狂ったのは、わたしが小学1年の時。  
お父さんが事故で帰らぬ人になってしまったんだ。  
十分な蓄えがあったわけでもないから、お母さんが働きに出ることになったのは自然の成り行きだった。  
いわゆる夜のお店。  
学校に行くわたしと入れ替わりになるように夕方でかけていって帰ってくるのは朝。  
寂しかったけど、お母さんはわたしのために働いてくれているから我慢しなきゃと思った。  
そして、我慢するだけじゃなくて家事全般をわたしが担当するようになったのは小学3年の時。  
日に日に消耗していくお母さんが見ていられなかったから。  
それから数年は、苦しいながらもまだ幸せと言えなくもない期間だった。  
 
転機はある朝のこと。  
お母さんが結婚を申し込まれたことをわたしに打ち明けてくれた。  
相手はお店のお客さんで、わたしも何度かあったことがある大きな会社の偉い人。  
わたしが反対するなら再婚はしないって言ってくれたけど、わたしは賛成した。  
本心ではわたしのお父さんはお父さん1人しかいないけど、それでお母さんが楽になるなら、そう思ったから。  
 
今にして思えば、あれが失敗だったとも思う。  
もし反対していればと、それから何度もわたしは考えるようになる。  
最初にそう思ったのは、あの男に無理やり組み敷かれた時。  
再婚から、まだ1月も経っていなかった。  
 
大人の男性に力づくで押さえ込まれたら、抵抗なんてできるはずがなかった。  
週に1、2度、お母さんの目を盗んで関係を強要される生活。  
耐え切れなくなったわたしは、全部お母さんに打ち明けてしまった。  
この家を出て、また貧しくてもお母さんと2人で幸せに暮らせたらと、そう思ってしまったんだ。  
だけど、お母さんは一度手に入れた裕福な暮らしを捨てられなかった。  
捨てられるのが怖いから、あの男には怒りをぶつけられない。  
その矛先は全部わたしに向けられた。  
 
お母さんには辛く当たられ、あの男からはもう隠れてする必要がないと毎晩のように何時間も弄ばれる。  
地獄だと思っていたそれまでの毎日は、ほんの入り口にしか過ぎなかったと思い知らされた。  
 
わたしが、悪かったんだ。  
わたしが再婚に反対していたら。  
わたしがあの男からされていることを全部自分の中に溜め込んでおければ。  
後悔しても、もう遅い。  
だからこれは罰。  
選択を間違えたわたしへの罰。  
そう、思っていた。  
 
「今まで、ごめんね、加奈」  
 
わけもわからないまま食事をしていると、ふいにお母さんがそう切り出してきた。  
 
「……え?」  
「一番辛いのは加奈だったのに、お母さんどうかしてた」  
 
言葉は耳から入ってくるのに、その意味がよく理解できない。  
だけど――、  
 
「今すぐは無理だけど、準備ができたらこの家を出ましょう。  
 お金はなくなるけど、私はあなたさえいてくれればそれでいいから」  
 
そこで、わたしの中で全ての言葉が意味を持って繋がった。  
 
「今更こんなこといっても信じてもらえないかもしれな――」  
「――そんなことない!」  
 
思わず立ち上がっていた。  
夢みたいだった。  
ずっと願っていたことなのに、実現すると受け止め切れなかった。  
それでも、テーブルを迂回してお母さんがこっちまでくると、自然と涙が溢れ出していた。  
もう、涙なんて枯れ果てたと思っていたのに。  
 
「加奈……」  
 
お母さんに抱き締められる。  
叩かれるのは日常茶飯事だったけど、抱き締められるのは何年ぶりだっただろう。  
 
「はい、これ」  
 
大声を上げて泣くだけ泣いた後、ようやく落ち着いたわたしにお母さんは一つの箱を渡してくれた。  
ちょうどバスケットボールがはいりそうなサイズの包み。  
綺麗な包装紙とリボン。  
お母さんからの何年ぶりかのクリスマスプレゼント。  
 
「開けていい?」  
「もちろん。  
 きっとあなたに似合うと思って用意したのよ」  
 
その言葉と箱の大きさから、わたしは服かなと予想をつけた。  
そして逸る気持ちを抑えて包装紙を破らないよう慎重に開封していく。  
よく見るとリボンの結びも包装紙の角も少しずつ乱れがある。  
たぶん、お店の人じゃなくてお母さんが自分でラッピングしてくれたんだ。  
そう考えると一分の隙もない完璧なラッピングより、こっちの方が何倍もいいなと思えた。  
やがて包装紙を外し終え、あとはふたを開けるだけにある。  
 
「開けるね」  
 
ここにきてなんとなくもったいなく思えてきて、わたしはもう一度お母さんに確認をしてしまう。  
お母さんは笑っていた。  
本当に、嬉しそうに。  
 
「え、きゃっ!?」  
 
ふたを開けた途端、黒い何かが飛び出してくる。  
細くて長い、何本もの何か。  
細いといってもそれぞれわたしの腕くらいはあるそれが、驚くわたしの体に巻きついてくる。  
そうしてわたしがようやく我に返った時には、もうわたしはどう頑張っても動けないくらいにがんじがらめになっていた。  
足の裏の固い感触が消える。  
自分が黒い蛇に似たそれに持ち上げられていると認識した瞬間、視界の隅に黒蛇の頭がいくつも滑り込んできた。  
その先端がぱっくり開いて、そこから白みがかった液体を一斉に浴びせかけられる。  
 
「――ぉ、ぷ……」  
 
ドロドロしたそれは色といい匂いといい、男のあれを連想させる。  
反射的に込み上げてきた吐き気をわたしは必死に抑え込んだ。  
この期に及んで、せっかくお母さんが作ってくれたんだから、なんて考えながら。  
だけど、わたしが今こんな状態になっている原因はあの箱の中身で、それをくれたのは他でもないお母さんだった。  
 
「お、おか……」  
 
かろうじて動く首を捻ってお母さんを見る。  
お母さんは宙に持ち上げられたわたしを見て、笑っていた。  
 
わたしは何かを言おうと口を開く。  
助けて、なのか、どうして、なのか。  
どちらを言おうとしていたのかは自分でもわからない。  
 
「――は、むぅ!?」  
 
なぜなら、実際に言う前に口を塞がれてしまったから。  
蛇の1匹がわたしの口の中に潜り込んでくる。  
口の中でその先端を開いて、わたしの舌を咥えこんでまできた。  
噛まれたと一瞬思ったけど痛みはない。  
その代わり、蛇の口の中は柔らかい毛みたいなものがいっぱい生えてることが舌から感じ取れた。  
 
「ひゃ、ひゃめへぇ……」  
 
舌の表も裏をくまなくくすぐられるようなかゆみ。  
そして、今度は舌の上に直接あの液体を穿きかけられる。  
反射的に喉が動いて飲み込んでしまう。  
あの男に仕込まれた最初のこと。  
口の中に出されたものは残さず飲み込むこと。  
吐き出すなんてもってのほかだし、少しこぼしただけでお仕置きが待っていた。  
だから、もうどんなに嫌でも反射的に飲み込んでしまうようになってしまっているんだ。  
 
「よくもまあ、そんなもの飲めるもんだねぇ」  
 
そんなわたしをお母さんがあざ笑う。  
その間も液体は吐き出され続け、さすがにその勢いに負けて口の端から零してしまう。  
あごを伝ったそれが胸に落ちる。  
その感じに違和感があった。  
 
「――!?」  
 
視線だけ下に下ろすと、いつのまにかわたしは裸になっていた。  
床の上には服の切れ端が水溜りの中に浮かんでいて、それも見る見るうちに小さくなっていく。  
あの液体には服を溶かす作用があったことを知らされた。  
 
恥ずかしさが込み上げてくる。  
わたしの体は醜かった。  
腕や顔みたいに外から見えるところはともかく、普段服の下にある場所には縦横無尽に痣や傷跡が刻まれている。  
あの男に刻み込まれた奴隷の印。  
お母さんにそれを見られるのは初めてだ。  
全部を打ち明けたあの日も、恥ずかしくてこれだけは直接見せられなかった。  
 
「ふぅ、ぁう!」  
 
口から零れて胸に落ちた液体を刷り込むように蛇が肌の上を這いずり回る。  
クラスの平均と比べてもかなり小さな乳房。  
その中心を蛇のお腹に擦りあげられびりびりした刺激に背筋が震えた。  
やがて蛇はその小ささが不満だとばかりにきつく締め上げてきて、その上で立ってしまった乳首を先端の口で咥え込んでくる。  
 
「――――ッ!?」  
 
さっきまでのとは比べ物にならない刺激に頭が痺れる。  
蛇の口の中は毛がいっぱい生えているんだ。  
そんなので敏感なそこを責め立てられたらたまらない。  
 
続けて蛇に狙われたのはお尻だった。  
これもまたあの男に叩き込まれた条件反射で、中心を軽くつつかれただけで力を抜いてしまう。  
お腹の中に易々と潜り込んでくる黒蛇。  
腸に無理やり詰め込まれた分、肺からは押し出されるように息が漏れる。  
それがよだれと液体の泡となって唇と蛇の隙間からぶくぶくと溢れ出していく。  
 
「――――っ! ――――――!?」  
 
声も出せないままお腹の中を蹂躙される。  
あの男の手で今まで色んなものをそこに入れられたけど、そのどれとも違っていた。  
指よりはるかに柔軟に動くし、男の人のあれよりはるかに太くて熱い。  
そして今まで潜り込まれたことのない深さで、またあの液体を吐き出される。  
体が内側から焼き尽くされる。  
そのまま前後にピストン運動を開始する蛇。  
耳を塞ぎたい音を立てながら、我が物顔で恥ずかしすぎる穴を出入りされる。  
 
そこまでくれば、当然のようにそのそばにある場所も無事ではいられなかった。  
もったいぶることなく容赦なく、一気に奥まで突き入れられる。  
子宮の入り口をこじ開けようとしているような激しい突き上げ。  
そして、お決まりの射精。  
そう、これはもう射精以外のなにものでもなかった。  
一瞬で子宮を埋め尽くされて、お尻と同じでぼとぼとと床に零してしまう。  
そこまででも、もう十分すぎるほど限界だったのに、とどめに一番敏感なクリトリスにしゃぶりつかれた。  
そこでわたしの意識は一度途切れた。  
 
パシャパシャという音と、瞬く光。  
意識を取り戻したわたしは、お母さんがこちらに向けてカメラのシャッターを切っている姿を視界の端に捉えた。  
蛇たちはわたしの意識なんてお構いなしで今もまだ動き続けている。  
だけど、その光景に全身の熱が一気に引いた。  
そのカメラには見覚えがあった。  
古ぼけたカメラ。  
お父さんが、わたしの成長を収めるんだって買ってきたカメラ。  
結局ほとんど使われないままになってしまっていたカメラ。  
 
「ひぃやあああああ! やめへぇぇぇぇぇぇ!?」  
 
それまでにない恐怖と恥ずかしさに、全身を暴れさせる。  
それでも両手足を絡めとった蛇はびくともしない。  
だというのに、わたしは髪を振り乱して抗った。  
 
おかしな話だけど、今まではまだ我慢できた。  
得体の知れないものに犯されることなんて大したことなかった。  
あの男に抱かれることに比べたら。  
あいつがすることは痛くて苦しくて気持ち悪いことばかりだった。  
だけどこれは違う。  
なぜかはわからないけど、いままで感じたことがないほど気持ちいい。  
だから、まだよかった。  
でも、こんな姿をあのカメラに収められることだけはたえられない。  
こんな惨めなわたしを天国のお父さんにだけは見られたくなかった。  
 
「ふん、やっとそれっぽい表情になったじゃないか」  
 
お母さんが吐き捨てるように言う。  
その間もシャッターは切られ続け、わたしの心を削り取っていく。  
やめてと叫びたくても口の中の蛇のせいでまともな言葉にはならない。  
仮に言えたとしても、今のお母さんがわたしの願いを聞いてくれるはずのないんだけど。  
と、ふいにお母さんの指が止まる。  
どうやらずっと手入れされてなかったせいで調子が悪くなったらしい。  
ようやくこの地獄のような時間が終わる。  
わたしの中で込み上げる期待。  
だけど現実は甘くなかった。  
 
「これだから安物は嫌いなのよ!」  
 
お母さんは苛立たしげに叫ぶと、フィルムだけ抜き出したカメラの本体を、床に――。  
 
「―――――――――――――やめてぇっ!!」  
 
自分でも信じられないくらい奇跡的な力で口の中の蛇を押し退け叫ぶ。  
だけど、できたのはそこまで。  
フローリングに力任せに叩きつけられたカメラが部品をまき散らしながらバウンドする。  
妙に軽い破砕音。  
同時に、わたしの中でも何かが壊れた。  
 
お母さんが笑っている。  
気が狂ったみたいな高笑い。  
そのところどころにある言葉を繋ぎ合わせると、お母さんの狙いがわかってきた。  
要はこんな化け物に犯されるわたしの姿をあの男に見せ付けるつもりなんだ。  
馬鹿な人だと思う。  
可哀想な人だと思う。  
だけど徹底的に壊してしまったのはわたし。  
あの時打ち明けていなければ。  
もう何度目かわからない後悔。  
 
だいたい、仮にこの写真であの男がわたしに幻滅したら、2人揃って捨てられるだけだ。  
そんなの、少し考えればわかることなのに。  
それに、きっとそんなことにならないという確信もわたしの中にはある。  
だって、あの男の部屋には、こんな感じのパソコンゲームがいっぱい――――  
 
あの後どうなったのかは詳しくはわからない。  
体力も気力もそこをついて完全に気を失うまで、わたしはこの子に犯され続けた。  
それで次に目を覚ました時はここにいた。  
見知らぬ部屋。  
檻の中。  
裸でこの子だけ全身に絡みつかせたまま。  
それ以来、わたしはこの檻から一歩も出ずに生活している。  
ご飯はこの子が出すあの液体、排泄はお腹の中でこの子が処理してくれるらしい。  
そうなれば、本当に動く必要がない。  
 
時々あの男が部屋に来て、檻の外からわたしたちの愛し合う姿を観察する。  
直接手を出すことはなく、自分で自分のあれを擦り上げて。  
 
お母さんとはあれ以来あっていない。  
どうしているのか、檻の中のわたしには知る術がない。  
 
あの男から犯されることもなく、お母さんに辛く当たられる事もない生活。  
ただただこの子の与えてくれる快楽に溺れていればいい日々。  
わたしは幸せだった。  
 
お母さん、素敵なクリスマスプレゼント、ありがとう  
 

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