「『俺、死ぬ直前は「幼馴染が・・・欲しかった・・・ぜ・・・」って言う事にしたんだ 』っと・・・」
私の幼馴染の翔太が何か掲示板か何か見ながら言ってる。はっきり言って怪しいわよアンタ。
「幼馴染ならここに居るじゃない」
「お前みたいなガサツなヤツじゃなくて、こう、朝は優しく起こしてくれて、ちょっと引っ込み思案で、俺のことを好きでいてくれるようなのがだなぁ・・・」
「はいはい。私に構ってもらえるだけでもありがたいと思いなさいよ変態」
「わからないよなぁ、モテモテさんには。お前なんて彼氏なんかよりどりみどりだろ?」
自覚はないのだけれど、私は学校内では屈指の美人らしい。確かに告白はよくされるけど・・・
「・・・あんな下心丸出しの連中なんか、彼氏にしたくないもの」
「はいはい自慢乙」
翔太のふざけた態度についイラッとくる。誰のせいでこんな想いしてると思ってるのよ!
「あんたねぇ・・・!」
「それとも何か?俺に惚れてるとか?」
いきなり核心を突かれてギクッとする私。だからムキになって反論する。
「何馬鹿な事言ってるのよ!私がアンタに惚れる!?冗談じゃないわ!」
「そこまで思いっきり拒絶されるのはさすがに凹むな・・・」
うなだれる翔太を見て、してやったりな気分になる自分と、ああどうしようって焦る自分がいる。
でも、さすがにどんよりした空気を浮かべる翔太が可哀想になって、フォローの言葉を付け加える。
「はいはい悪かったわよ。でも、多少なりとも好きじゃない異性の部屋になんて来ないと思うわよ?」
「そうか、そうだよな!やっぱり綾香は俺のことがす「調子に乗るな!」いてぇ!」
さっきまでいじってた∞プチプチを投げつけると、調子に乗った翔太の頬に命中。いい気味だわ。
「綾香ってさぁ、そういう話になると無性に怒るよな・・・」
「そ、それは・・・気付かないアンタが悪いのよ・・・」
小声でそう反論する。もちろん、後半の部分は翔太の耳に届かないように。
「何か言ったか?」
「何も言ってないわよ!ド変態!」
私からの『変態』ワードは聞き飽きたのか、翔太は∞プチプチを潰し始めた。
『幼馴染のまま?』
突然、∞プチプチからそんな言葉が聞こえた。『幼馴染のまま』か・・・私はどうしたいんだろう。
確かに翔太は変態だけど、普段は面白いヤツだし、顔もそんなに悪くない。私には、というか女の子には優しいし。
・・・こんなくだらないやり取りをするのもいいけど、やっぱりもう少し進んだ関係になりたい。
どうやったら、振り向いてくれるのかな?いつもの私らしくないけど・・・素直になれば、いいのかな?
「ねぇ、翔太」
「ん?なんだ?」
「・・・私が翔太のこと、好きだ、って言ったら、驚く?」
「おいおい、冗談はよせよ。お前が俺を好き?いっつも突っかかってるくせに?」
翔太が私の言葉を嘘と受け取ったせいで、胸がひどく痛い。
「そ、それは・・・」
素直にす、好きなんて言えないもの・・・。黙り込んでしまった私の様子が気になるのか、翔太は私の顔を覗き込みながら、
「・・・なぁ、綾香。マジ、なのか・・・?」
「・・・じ、冗談に決まってるじゃない!何本気にしてるの?」
あぁ・・・またやっちゃった。
ちょっと勇気を出せばキスできるくらいの距離に居たのに、私の天の邪鬼な性格のせいで、いつもこうなっちゃうんだ。
「な、なんだよ、俺が童貞だからってからかうのはマジで止めてくれよな」
「ふんだ!童貞の翔太にレイプされる前にとっとと帰るわ!」
私は翔太の部屋の窓から自分の部屋に戻る。後ろは振り向かないように。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
はぁ、私何やってんだろ。
今まではこんな風に感情出さなかったのに、掲示板とかおもちゃに触発されたの?馬鹿馬鹿しい。
「あ、これ・・・」
翔太に貸してもらったカーディガンを付けたまま自分の部屋に帰ってきちゃったみたい。
「翔太の匂いがする・・・」
男の臭いなんてイヤな臭いだと思ってたんだけど、翔太のだけは別。
なんだか翔太に抱きしめられてるみたいで、恥ずかしいけど、嬉しい。
「・・・えへへ♪」
こんな笑い顔とか笑い声、翔太には絶対に見せられない。恥ずかしいもの。
・・・でも、翔太が抱きしめてくれたら、イヤイヤ言いながらもにやけちゃうんだろうなぁ。
『・・・このままオナニーしちゃったら、どうなるんだろ?』
突然邪な思いが、私の思考を埋め尽くす。翔太の匂いに包まれながらするオナニー。
体はとても正直に、気付けば下着の上からアソコを撫で始めていた。
「ふぅ・・・ん・・・」
私をダメにする、欲にまみれた快楽のパルス。電気が体を駆け巡るたび、私はだらしなく嬌声を上げてしまう。
「あん・・・しょうちゃん・・・気持ちいいよぉ・・・」
想い人の名前を呼びながら、想い人の匂いに包まれながらいやらしい行為をする。
後で寂しくなるのは分かってるんだけど、やめることは出来ない。
「はあっ、あんんっ!」
「しょうちゃん、しょうちゃん!」
目を瞑ると、本当の翔太に愛撫されてるような気分になってしまい、どんどん快楽の渦に飲み込まれていく。
下着の上からじゃ物足りなくなった私は、下着の中に手を入れて、私を直接触ってきた。
水っぽい音が部屋の中に響く。翔太に聞かれてる、そんな錯覚をした私は真逆の言動をしてしまう。
「やぁ、しょうちゃんそんなに音出しちゃやだぁ・・・」
言葉は否定をしているのに、音をわざと出すように手は動いてしまう。
「ダメダメ!しょうちゃ、イッちゃう!」
〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜♪〜〜♪♪〜
もうすぐ飛んでいける、そんなときに鳴り出した私のケータイ。しかもこの着うたは、私の想い人にしか設定してない着うた。
びっくりしすぎてもうすぐでイケそうだったことすら吹っ飛んでしまった。
「な、なに・・・?」
ケータイを見てみると『メール:1件』と表示されていたので、中身を見てみると、
『カーディガン、返すのは明日でいいから』
と言う、すごく連絡チックな内容だった。
「・・・はぁ」
そのメールの文面を見て、余計に切なくなってしまった私。
とっても面倒な私と翔太の距離感。その距離が今より縮まる日は来るのか、今はまだ分からないままだった。