太陽は空高く真上に。真夏の午後は体温を挑発して吊り上げる。  
 家の中。部屋の中。壊れたクーラーを見上げて二人は佇む。  
「マジかよ!? こんな時に……」  
 汗を垂らし、二重の意味で汗るのは一人の少年。今年18を迎える源 紫琉(みなもと しりゅう)。  
「どうするの? これじゃ、とても勉強なんてできないわ」  
 その横で見上げるのは、ルビーの様に赤い瞳。日焼けを知らない白い肌。腰のラインまで長い黒色の髪。抜群のプロポーションを持つ高坂 初音(こうさか はつね)。  
 紫琉は、クーラーで暑さが凌げないよりも、幼馴染みで在る初音の機嫌を損ねるのが怖かった。  
 同い年で小学生に入る前からの長い縁。  
 その頃から紫琉は初音が好きで、つい一週間前に告白してオーケーを貰ったばかりなのだ。  
 だから、いつ呆れられて別れを告げられるかと不安でいっぱい。  
「暑いし、さ……プールでも行かない?」  
 とにかく初音の事を第一に考え、行動する。  
「っ……はっ、行かないわ。一人で行ってきたら?」  
 そんな思いも伝わらず、初音は勉強道具をまとめると、スタスタ部屋から出て逝ってしまう。  
「あっ……」  
 後に残された紫琉は、呆然と立ち尽くすだけ。別れを告げられなかった事だけに、安堵の溜め息を吐き出すだけ。  
 
 初音は喜怒哀楽を殆ど表に出さず、僅かな眉の上げ下げだけで気分を示す。  
 毒を含んだ言葉でも躊躇無く述べるので、クラスの空気を頻繁にギスギスさせてしまう。その度に紫琉がフォローして来た。  
 クールと言うよりも刺々しさを、幼い頃からずっと守って来たのだ。  
 故、一層に思いは強い。何を考えてるか分からなくても、表情を読めなくても、付き合ってる彼女を離したくない。  
 紫琉の思いはそれだけ。恋焦がれてた人が隣に居る、それだけで嬉しかった。例え初音が紫琉を好きじゃ無くても、断るのが面倒だからオーケーしたとしても、紫琉は幸せで溢れてた。  
「一人で、行こ……」  
 結局、初音の意志を尊重して引き止めず、一人で町民プールに行ったのだった。  
 
 
 明るい空は黄金色に。ヒグラシの鳴く涼しくなった夕方。  
 紫琉がプールから帰り、自室に入ると初音がベッドに腰掛けて足を組んでいた。  
 白いタンクトップにジーンズの昼間と同じ恰好で、部屋に入って来た紫琉を、いつもの冷めた赤い瞳で見詰めている。  
「お帰りなさい。どこに行ってたの?」  
「えっ……と、プールに」  
 その視線で、紫琉の身体は硬直した。手荷物はボトリと床に落ちる。  
「私は行ってないのに?」  
「だって行かないって……」  
 急激な体温下降で痙攣仕出す。  
「そっ、じゃあ別れましょうか?」  
「や、ヤダッ! 初音と離れたくないっ!!」  
 それでも、最悪の事態は回避する為に口は動いた。  
 初音はその台詞を聞くと、ベッドから腰を上げ、紫琉と息が交わる程の目前で膝立ちになる。  
「別れたくないなら、私が良いって言うまで動かないで。声も出しちゃ駄目よ?」  
 恐らく最後のチャンス。そう感じ、紫琉は首を縦に振るだけ。  
 そこからはアッという間。初音は紫琉のベルトを外すと、下着ごとジーンズを膝上までズリ降ろした。  
 そして両腕を紫琉の背中に回して組むと、唾液を溜めた口を拡げ、戸惑いもせずに縮んだたペニスを咥え込む。  
「えっ? んんっ!?」  
   
 ぢゅぷっ、ぢゅぷぷぷっ、にゅくにゅくにゅくにゅく……  
 
「んちゅっ、ちゅちゅっ、んぢゅんぢゅ……ぢゅちゅちゅっ」  
 ヌルヌルと糸を引いて絡み付く、暖められた唾液に満たされる蜜壷。  
 唇は柔らかくペニスを揉みほぐし、舌は優しく全体を撫で上げる。  
「はつ、ねぇっ……」  
 いきなりとは言え、好きな人が与えてくれる初めての感触に、紫琉のペニスは即座に反応して棒状に変化した。  
 した所で、  
「ちゅぷっ……はい、おしまい」  
 初音はあっさりと口からペニスを放す。  
「えっ、どうし……」  
 そして立ち上がると、さっきと同じ様に紫琉を見詰めた。  
「次は追い掛けて来なさい。彼氏なんでしょ? 私を一人にしないで」  
 微かに頬も赤く染めて、顔を寄せ、耳元で囁く。  
「それから、まいにち抱かれる覚悟してるんだから、さっさと手を出しなさいよ。その時に……続き、してあげるわ」  
 ここまで言わせて、紫琉はやっと気付いた。  
 普段は無表情で、クールで、ツンツンしてる……ように見えるけど、考えてる事は普通なのだと。  
「まっ、たく。処女を失う前にフェラするなんて思わなかったわよ。あっ、それから紫琉?」  
 初音は身体を離すと、紫琉を通り過ぎて部屋のドアノブを手に取る。  
 そして振り返らず、ドアを見たまま……  
「いままで言ってなかったけど、私、紫琉の事……だ、だっ、だっ……大好きだからなっ!!」  
 初めての告白をして、部屋から出て階段を降りて行く。  
 残された紫琉は目を見開いて驚き、その後に初めて思いを聞かされて、翌日までニヤケるのだった。  
 
 
 

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