小さな街の片隅にぽつんと建っている榊ヶ原孤児院。  
ここで暮らしているすべての子供を足しても22人にしかならない。  
この小さなコミュニティでは『サヨナラ部屋によばれた奴がいるらしい』  
という噂が全員に行き渡るのに30分もかからなかった。  
「サヨナラ部屋ってなあに?」  
「ああ……お前は先月来たばかりだからしらないな」  
庭の花壇に水をやっていたリーダー的存在の男子が小さな女の子の質問に答えた。  
「正式名称は面会室……ここで住んでる奴の里親や奉公……というと微妙だけど……  
まあ、住み込みで働ける仕事先が決まったとき、その先方と会う部屋なんだ」  
男の子は息を弾ませ自分の事の用に喜んで言った。しかし女の子は質問を重ねる。  
「……つまり、なんでサヨナラ?」  
「ええと……まあ、呼ばれた奴はその新しい家族だか奉公先で暮らすことになるから、この“家”を出ていくわけでだな……」  
「あ、じゃあ……本当にさ、さよなら……なんだ……」  
目を潤ませる少女の頭を、屈んで視線を合わせ、少年が撫でる。  
「……そいつとはサヨナラだけど、そいつは幸せになりに出ていくんだ……いい事なんだ」  
「いい事?」  
「そうとも、先生方も一生懸命俺達の行き先を探してくれてる……いつか俺達にも番が来る」  
「……」  
「その時は確かに悲しいかもしれない……でも、幸せになりにいくんだぞ?楽しみだろ?」  
「楽しみ……かな?」  
そうとも、と少年は立ち上がる。少女はしばらく考えて、言った。  
「じゃあ……今日はお祝いだね?」  
「ああっ」  
『おい、出て来たぞ〜!』  
叫び声に子供達の視線が玄関に集まる。  
少年は出て来た仲間の顔を目を細めて確認する。  
そして、ほっと胸を撫で下ろした。  
「…………な?幸せそうだろ?」  
「うん……そうだね」  
少年は早くも送別会の段取りを頭の中で組み立てていた。  
 
 
†  
 
 
街の端っこの小さな孤児院で小さな送別会が行われた翌日。  
見たことも無いようなスケールの大きいお屋敷の威圧感に少女はすくみ上がっていた。  
「……で、ここがご主人様の部屋ね」  
案内をしてくれている先輩メイドが木製のしっかりしたドアを指差して言った。  
「くれぐれも粗相の無いようにね……って言っても優しい方だから緊張しなくて平気よ」  
「は、はひっ!……えと……」  
「奈津美って呼んで……じゃ頑張ってね、清水さん」  
「あり、ありがと、ござました!!」  
大丈夫?と苦笑いを浮かべながら先輩メイドが去っていく。  
主の部屋の前に一人残され、彼女は心臓が飛び出すような思いだった。  
 
榊ヶ原グループといえば様々な業界いくつもの会社を持つ、誰もがはっとするような企業である。  
また、トップに君臨する榊ヶ原家頭首は慈愛に満ちた人間であることが世間で知られ、  
榊ヶ原孤児院も彼の活動によって建てられ、経営されているものなのだ。  
つまり、慣れないメイド服に“着られ”た少女が主の機嫌をそこねた場合、孤児院に悪影響が及ぶ恐れがある。  
「(皆に迷惑だけはかけられない……よ、よしっ)」  
孤児院に迎えに来たのはメイド長だったので少女は初めてご主人様と顔を合わせる事となる。  
ファースト・インプレッションは重要だ、と孤児院の皆にもアドバイスされてきた。  
彼女はガチガチと奥歯を打ち鳴らしながらも、なんとかドアにノックした。  
「…………どうぞ」  
中から返事が返る。  
大丈夫、私なら出来る!  
「し、しちゅれ、しゅまあっ!?」  
バターン!  
まさかの展開である。  
凄まじい勢いでドアを開いた彼女は、そのまま部屋にヘッドスライングし……止まった。  
「…………」  
「…………」  
部屋に沈黙が充満する。  
「(ま、まだ、これから……)」  
彼女は気を取り直しで立ち上がるとスカートのホコリを掃い、視線を主へと向けた。  
「し、失礼しまし、た!私は、今日、から、こち、  
こちらでお世話様になりまする、清水と、もうしまっ!」  
「……もうしま?」  
「…………」  
新米メイドにご主人様の微妙な視線が突き刺さる。  
終わった、彼女は絶望感にうちひしがれた。  
 
「ふ、ふぇ……」  
「は?」  
「ふぇええええ……ごめん、なさぁい……」  
「…………」  
メイドはあろうことかご主人様の泣き出してしまった。  
いきなり現れた知らない顔に泣かれた方は堪らない。  
25歳という有り得ない若さでグループを引っ張る主は、しばらくしてやっと調子を取り戻した。  
「ひぐっ……私はどうなってもいいので……孤児院だけは〜」  
「なんだか知らんが、メイド!」  
「は、はい!」  
突然叫ばれ、彼女はなぜか背伸びをした。  
「人間は失敗しても、それを糧に成長していくものだ!」  
「はい!」  
「……茶を淹れてこい」  
「はい……え?」  
彼女が聞き返すと、主は穏やかな笑顔で言った。  
「緊張するのは仕方がないことだが……メイドならメイドらしく、お茶を淹れて失敗を挽回しろ」  
「……ご主人様……かしこまりました」  
静かに部屋を出る。もう緊張はしていなかった。  
「……本当に、優しい人」  
まだ会って一、二分。しかし彼女はすでに主に一生を捧げる決意をしてしまっていた。  
「なんて……ステキな方なんだろう……」  
これから始まるであろう厳しくも楽しい生活に胸を踊らせながら、彼女は玄関へと駆けていく。  
「あれ、清水さん、どこ行くの」  
「あ、奈津美さん。お茶を買いに行ってきます!」  
「へ?」  
奈津美は新入りの言葉に戸惑う。  
「紅茶なら厨房に沢山……」  
「はい!でも私、ほうじ茶しか入れたことがなくって……」  
彼女は少し顔を俯かせて言う。  
奈津美はそこになにか乙女の恥じらいのようなもの敏感に感じ取った。  
「ご主人様にお茶で失敗を挽回しろ……って言われて、それで今日は自分の得意分野で勝負したいんです……  
もしかしてほうじ茶もあったりします?」  
「あ、いや、無いかな?買ってきなよ、清水さん」  
「解りました。では、5分で戻ります!」  
彼女はぺこりと頭を下げて走り出したが一度ふり返って言った。  
「私も下の名前で呼んで下さい!菜々子って言います!」  
では!と彼女は屋敷を飛び出した。  
奈津美はしばらくそれを見守ってから、ぽつりと呟く。  
「なんだか、面白い娘」  
菜々子はきっかり5分で帰ってきたのだった。  
………  
……  
…  
 
「>>337-344で思い出したが、あの時飲まされたほうじ茶はものっそい濃くてまずかったなあ?」  
「……返す言葉もこざいません、ご主人様」  
「あの話の流れだったら普通上手に淹れるだろうに」  
「反省してます……」  
「……まああれから数年たった訳だしお前も成長した。  
ということでほうじ茶を淹れてくれたまえ!」  
「畏まりました!では早速……」  
「いかーーん!」  
「ひえぇ!何ですか!?」  
「まだ湯呑みが冷えているだろう?  
お茶は少しでも熱い状態にした方が美味しいのだぞ!」  
「まったく、微妙な知識だけはあるんですから」  
「……お前、変わったな」  
「では、湯呑みを一度熱湯で温めましてから……どうぞ、ご主人様」  
「うむ」  
ズズズズズ  
「い、いかがでしょう」  
「ふ〜む。ほうじ茶特有の香ばしい風味がたまらないな。あまり渋味がないのもいい」  
「あ、ほうじ茶って葉を焙じた時に苦味成分が壊れちゃうので、渋味は少ないんですよ〜」  
「17へぇ」  
「……古い」  
「今、古いとか言ったんべ?」  
「い、いえ、別に」  
「言ったんベな?」  
「群馬弁は無駄に威圧感があるのでやめて下さい……」  
「なんだい、なんだい!ちょっとお茶トリビアしってたぐらいでいい気になって!」  
「は、はあ」  
「じゃあお茶クイズで勝負だ!」  
「何ですかその展開!ぶっとんでませんか!?」  
 
ソレカラソレカラ  
 
「やって来ましたお茶クイズ大会!司会は学園長だ!」  
「ふぉっふぉっふぉっ、司会の田中タカシじゃ」  
「学園長先生いい加減にしてください!四針縫った時点で懲りて下さい!」  
「……勝った方が、なんでもいうことを一つ聞く……真剣勝負だ!」  
「わ、わかりました……」  
「ふぉふぉ!では第一問じゃ。DEATH N〇TE単行本で表紙の色が黒いのは何巻でしょう?」  
「そして、お茶関係ないし!」  
「はいはいはいはい!」  
「ふぉっふぉっ、ではご主人様さんどうぞ!」  
「二巻だ!」  
「残念」  
「くそぉおおおおお!!!!」  
「そんな悔しがらなくても……」  
「ふぉっふぉ、菜々子さんはどうですかな?」  
「一巻でしょうか?あといちいちふぉっふぉ、って言うのやめて下さい」  
「菜々子さん正解じゃ!」  
「あ、やりました!」  
「ふ、ふん、試合はこれからだ!」  
「ふぉっふぉ、ではラスト問題じゃ」  
「はやっ」  
「いい加減にその場をやり過ごす事を何を濁すというでしょう?」  
「あっはい、それならわかります!」  
「しかし菜々子に解答権はない」  
「え」  
「ふっふ、これを見ろ」  
「…………なんですかそれ」  
「ゴールデンハンマーだっ!!」  
「うわ、せこっ!いきなり新ルール持ち出して来てセコいです!」  
「なんとでも言え!」  
「では、ご主人様さんどうぞ!」  
 
「信念を濁すっ!」  
「…………」  
「…………」  
「……なんだ、正解か?」  
「……大ハズレですご主人様……」  
「ふぉ、優勝は菜々子さんですな」  
「はい!学園長は帰って下さい!さよなら…………ふう」  
「この俺が、負けただと……?」  
「悔しがりすぎですよ」  
「俺は……」  
「?」  
「……俺はこの試合に勝ったらこう言うつもりだった……一生、俺のためにお茶を淹れてくれ、と」  
「あ……」  
「不甲斐ないな……俺も……んぅ!?」  
「んちゅ……ん、ふ……んむう……」  
「む……ぷは、な、菜々子!?」  
「へへ、私からキスしちゃいました……勝ったんですからいいですよね?」  
「お前……」  
「私は一生ご主人様にお仕えするって、あの初めて会った日に決めたんです。  
ご主人様が嫌だと言っても……いいえ、嫌だと言われないようにガンバリますねっ」  
「……あの日は、菜々子がこんなにしっかりするとは思わなかったなあ」  
「私もあの日はご主人様がこんなにヘン……こ、個性的な方だとは思いませんでした」  
「……来年もよろしく頼むぞ、菜々子」  
「はい、畏まりましたご主人様!」  
「ふぅ……一段落ついたら喉かわいたな。菜々子のほうじ茶でも飲むか。んくっんくっ」  
「ああっ、それはクイズの前に入れて出しっぱなしだったやつ……」  
「…………は、腹、が……」  
「ご主人様のばか〜〜」  
 
ほうじ茶はタンパク質を含むから腐敗がはやいぞ!気をつけてね!  
あとクイズハンターは1993年放送終了のだから今20歳の人は当時5歳だね!  
ゴールデンハンマーとか超古いね!  
――――ご主人様の日記より  
 

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