何故……何故なんだろう。
何でこんなところに獣人族の少女が……?
見間違いなんかじゃない。俺みたいなすべらかな鱗ではなく、体中から生えている赤茶色の毛を見れば一目瞭然だった。話には聞いたことがあったが、本当に獣人族は体の一部分を隠すかのように服を着るみたいだ。
ふくよかな胸に当てられた白い帯状の布に、閉じられた股に履いている胸当てと同じ繊維であろう布が、それを物語っていた。
「……にしても、困ったなぁ」
他に誰もいないのにそう呟くと、頭の後ろを掻きながら思案をし始める。
家の前でどさりと何かが地面に落ちるような音がして飛び起きたけど、出て見てみればこの場所には似つかわしくない獣人族の少女。
今は月がはっきりと見えるくらいの深夜であることを考えると、わざわざ人目を忍んで国境を越えてきたに違いない。それを裏付けるかのように、少女の体のあちこちにる擦り傷や切り傷があった。
「とりあえず……家の中で寝かせておこう」
このままにしておくのはさすがに気が引けるので、少女を抱き上げて家へと戻ることにした。……と、決めたのは良かったのだけど。
「んっ……」
少女は目を一旦強く瞑り、そして月明かりに目を細めながらもゆっくりと目を開いていく。そしてその目の中に自分の姿が映ると、少女は目を瞬かせる。
「は、離してっ!」
自分自身がおかれている状況に気づいたのか、少女はその華奢な体からは想像もつかないほどの強い力で突き飛ばされた。その反動で勿論少女は倒れ込んでしまう。
倒れたのは大したことはないかもしれないけど、傷を負っている少女にとっては「痛っ……」と小さく声を上げてしばらく震えてしまうほどの追い打ちだった。
「来ないで……!」
心配して近づこうとすれば、少女は痛みに泣きそうになりながら足を引きずり後ずさる。
こうまで拒絶されるのは別に自分が強面というわけではない。竜人と獣人は昔から仲が悪く、どちらも『獣人は野蛮』だとか『竜人は凶悪』だとか教育しつつ忌み嫌い続けてきたからと言わざるを得ない。
しかし両者とも一歩譲らないために、両国の境には巨大な壁が建てられている。その国境をなぜこの少女は越えてきたのだろうか……。
とりあえず後ずさりし続ける少女にゆっくりと近づいてはみるものの、やはりまた後ずさりをする。いくら両種族の仲が悪いとはいえ、こうも避けられているのを間近に感じることはないだろう。
そうして後ずさりするのを一歩一歩追う状況が続くが、家の外壁に突き当たり、少女は逃げ場を失ってしまう。……こうやって考えてみると、自分はこの少女を追いつめるかのように近づいたみたいで、小さな罪悪感がわき上がってくる。
「来ないで……」
もう叫ぶ気力すらないのか、かすれたような声でこちらを睨む少女を見て、さすがにこちらから声をかけないとさらに警戒されることになる。
「だ、大丈夫だから。別に俺は君を襲ったりはしないよ」
とりあえずそう言ってはみるものの、やはり少女が警戒を解く様子はない。当たり前といえば当たり前だけど、警戒されているとなんだかこちらも声をかけにくい。しかし、声をかけないと何も進まないのは事実で……。
「とにかく、家に入らない? ここじゃ寒いし、君の傷の手当もしなきゃいけないし……」
警戒を解いてもらうようになるべく優しく語りかけるかのように聞いてみる。少女はこちらを潤んだ目で睨みながらもゆっくりと自分の手を取り、そして立ち上がってくれた。
ふらふらとおぼつかない足取りで家の中に入った少女は、家の中をきょろきょろと見渡す。俺はその様子を横目で確認すると、救急箱を取りに向かった。
「あ、あの……」
だいぶ落ち着いたのか、救急箱を探している最中に少女は話しかけてくる。「何……?」と手を動かしながらも返答をすると、少女は言った。
「なんで……助けてくれるんですか」
その言葉に一旦手を止める。それを見たのか少女が目の端でビクリと少し震えたのが見えた。
そういえばなんで助けたのだろう。倒れてたから? 傷ついてたから? ……そんな自問自答を繰り返し、出した答えはこれだった。
「よく分かんないや」
「そう、ですか……」
少女は何もなかったことに安心したのか、ため息をつくようにそう呟いた。
黙々と腕に消毒液を湿らせたガーゼを当て、傷の手当てをしていく。特にこの辺りは毒草があるから念入りに消毒をしないと、後で酷い痛みや悪くすれば膿んでしまう。
消毒が終わると包帯を腕にゆっくりと巻いていく。その間何故か少女が黒い鼻を動かしていたけどあまり気には止めなかった。
「あの、さ……。足は自分で出来る?」
「……?」
意味がよく分からないと言うように、少女は首を傾げた。言いにくいことなのだけれど言わないで任せるのもどうかと思うから一応言っておく。
「一応種族は違うとはいえ、俺も雄……だから。ここから先は言わなくても分かるよね?」
意味を理解したのか少女は頬を紅潮させながらコクりと小さくも頷く。このまま太股についた傷を消毒していたら、間違いなく少女のあれに触れてしまう。いくら布がかかっているとはいえ、ただ腰に巻いてあるだけなのだから。
消毒液を湿らせたガーゼを少女に渡すと、しばらくそれを眺めてから足の傷の方へと持っていく。とりあえず手順はさっき見せたから問題はなさそうだ。
そう思うより早く俺は立ち上がり、再び寝ようと寝床へ向かう。もう一度言っておくけど今は深夜。結構な時間眠りを阻害されたため、瞼はだいぶ重くなってきていた。
「俺は寝てるから。傷の手当て終わったらここから出て行ってもいいし、暖炉に火をくべて朝まで暖まっててもいいよ。寝るならどこでも構わないから」
そう言うと、少女はどれに頷いたのかは分からないけど小さく頷いた。とりあえず警戒だけは解いてくれたことは確かだからそれはそれで良としよう。
頭の中でそう考えをまとめて空っぽにすると、ベッドにくるまってゆっくりと瞼を閉じる。そして再び静寂の中に手を離していくのだった。
ふと何かがベッドの中に入ってきたのを感じ取り、眠いながらも何かを感じた反対側の方に寝返りをうってみる。そこには先ほどの少女がいた。
「……なんで俺のベッドの中に」
「……ご、ごめんなさい」
そう言って少女はあわてるようにベッドから出ようとしたが、それを俺は止めた。
「別に構わないけど、寝首を掻こうなんてこと考えないでね」
「……はい」
一応そうは言っておいたが、実際は彼女が入って来たときに何故かその体が暖かく感じたからだった。低体温な竜人族と違って、獣人は体温が高いと聞いたことがある。それだからか、妙にその暖かさが気持ちよかった。
どこでも寝ていいとは言ったものの、家にはベッドがこれ一つしかない。空け渡すべきだったかな……。
そんなことを思案しているうちに、後ろからはっきりと寝息が聞こえてくる。気づけば結構密着した状態で寝ていたのだ。寝息が俺の首にかかるほどに。
(……っ!)
いきなり少女の腕が伸びてきて抱きしめられてしまう。今まで同族でさえこんなに異性と密着したことがないために、だんだんと体が熱くなる錯覚を覚え、息が荒くなってくる。
やばい……もう我慢出来そうにない。
俺はくるりと少女のほうに向くように寝返りをうつと、ゆっくりとその体に手を伸ばしていく。頭の隅で何かが制止をかけているが、籠もっていてよく聞こえない。そんなことより……。
胸当てにゆっくりと手をかけると、ふくよかな胸の小さな谷間に指を差し入れる。そして下にずらすと、隠されていた乳房が露わになった。毛の色は全く同じだが、その中に点のようなものが見える。
淡いピンク色をしたそれに誘われるように指をもっていき、軽く触れてみる。少女の体が少し震えたが、目を覚ます気配はない。
……ならもっとやってしまえ。
頭の中で聞こえた悪魔のささやきに抵抗することもなく俺は更に下へと視線を移す。暗くてよく見えないものの、手探れば簡単に見つけられるだろう。
手をそのまま滑らせるようにして下へ持っていくと、また布に当たる。これだ。これを外せば彼女の花弁は露わになるのだ。
おもむろに布に手をかけると、ゆっくりとそしてなめらかともいえる動作で布を下へ下へとずらしていく。その間に少女が起きないか心配ではあったものの、それは欲望によって簡単にかき消されてしまう。
やがて布は足下に退かされ、彼女の花弁が露わになった。だが、いまいち暗くてよく分からない。もっとみたいと悪魔が再び囁く。ああ、分かってる分かってるさ。
少女をベッドの中央にずらし、その上に四つん這いになって腰が見える位置まで下がっていく。それは彼女の花弁を見るために他ならなかった。
下にずれていけばずれていくほど、だんだんと雌のにおいが近づいてくる。そのにおいに酔いしれながらも花弁を一目見ようと下へと向かっていく。
見つけた……。
彼女の花弁は乳房にあった点と同じく淡いピンク色だった。まだ何者の侵入を許していないそこは、まさに純白そのものだった。これをみたからにはある一つの欲望が生まれる。悪魔が囁く。
入れてしまえ、と。
だが、簡単に入れてしまうとそれはそれで面白味もなにもない。再び滑るように少女の顔と自分の顔が丁度目の前になるようにし、そして柔らかな乳房に手を乗せ揉みしだく。
「んっ……」
艶の入った声が少女の口からもれる。たがそんなことお構いなしに胸の愛撫を続ける。時にはゆっくりと、時にはゆがませるように。
しかし、そんなことをすればいくら熟睡していても起きるのは当たり前だった。少女は目を見開き、そして言った。
「きゃ、何するのっ!」
そうして暴れようとするがすでに手足を押さえ込んだ状態では、少女も上手く逃げ出すことは出来ない。手が使えないので仕方なく口を開けて長い舌で胸の膨らみを確認するように動かし始めた。
「んっ……くっ……やめ……」
いくら拒絶をしようとも、本能であるが故に全身を走る快楽。それに抵抗しても開いた口から賛美の声がただもれだすだけだった。
「やっぱり……んっ……そんな卑しい目的で……はんっ……」
その言葉を聞いたとたん、舌の動きが止まる。
「違う……」
口から出たのは否定の言葉。しかし、今実際にやっていたのはそうとられてもおかしくないような行動の数々……。悪魔の囁きに負けた自分自身の恥で思わずベッドから抜け出す。
「こんなことするつもりじゃ……」
だんだんと声が暗くなっていくのが自分でも分かる。少女は様子が変わっていく自分の様子を見て、荒げた息を徐々に整えていく。
「ごめん……」
ただそれしかいえなかった。今更言い訳を彼女にしたところで意味なんてない。だからといって謝ったとしても意味はないのだ。今の彼女は完全に竜人を、いや、俺を警戒しているのだから。
そっと目を瞑る。出て行くなら出て行け。殺すなら殺せ。もうどうにでもなれとさえ思っていた。ふと空気が揺らぐ。少女が動いたのだ。しかし目は開けない。開けたらきっと自分を責めるような目がそこにあるだろうから。
「ん……」
だが、その予想は的を大きくはずれてしまう。口に何かが当たった。いや、つけている?
ゆっくりと瞼を開けると、そこには少し戸惑ったような、頬を紅潮させた少女がいた。
「……助けてくれたお礼……私の体で、いいなら……」
さっきと全く違う態度の少女に、思わずこちらも戸惑ってしまう。どうしてと聞きたげな表情でも浮かばせていたのだろうか、聞くよりも早く少女は口を開いた。
「……よく分からない。でも、あなたとなら体を重ねても構わないような気がした……」
よく分からない……俺が少女に何故助けたかを聞かれた時に答えた言葉。何故かはしらないが、なんだか彼女の方がいろんな意味で一枚上手なような気がした。
「構わないのか……?」
俺の問いかけに少女はコクりと小さく頷いた。そして小さく笑顔を見せた。気づけば何故か自分も笑顔を見せていた。
「本当に、いいんだよね……?」
ベッドの上に寝そべる彼女に覆い被さるようになった状態で、俺はもう一度少女に問いかける。彼女は無言で頷くと、俺の胸板に手を当ててきた。
「緊張してるの……?」
「そ、それは……俺だって初めてだし……」
戸惑いながらもそう返答はしたものの、余程慌てた様子だったのか少女はまた笑う。そして一度お互いにゆっくりと深呼吸をする。
「それじゃ……いくよ」
その言葉に頷くのを確認すると、既にそそり立っている雄の象徴を少女の花弁に押し当てた。そしてゆっくりとその中へ肉棒を埋めていく。
「んっ……はぁっ……」
痛みなのか快楽なのかは分からないが、少女がくぐもった声をもらし、手でこちらを抱きしめてくる。それを受け止めながら更に奥へ奥へと埋めていく。そして何かが切れるようなほんの小さな音を感じ取ると、少女は口を開いた。
「きちんと……入ったね」
「恥ずかしいこと言わないでよ」
息を荒くしながらそんなことを言う彼女に、思わずそうツッコミを入れてしまう。未だにぎゅうぎゅうと締め付けてくる彼女の膣に耐えながら。
「動かして、いい?」
答えを聞くより早く俺は待ちきれずに動かし始めてしまっていた。しかし、少女はそれに抵抗することもなく、高めの声を上げながら快楽を全身で受け止める。
「はぁっ……んっ……あっ……」
「くっ……はっ……」
抜いたり挿したりを繰り返す度に全身に走る快感に身を任せながら一心不乱に腰を振る。少女もさらなる快感を求めるかのように自分から腰を浮かせ始めていた。
「あっあっんっ……はぁっ」
だんだんと喘ぐ声が大きくなってくる。それは暗に限界がくることを示していた。こちらもだんだんと何かがこみ上げてくるような感覚が近づいて来ていた。
「そろそろ……くっ……イくよ!」
「私も……あっ……限界いっ……」
その言葉を聞き取り、終わりへと更に近づかせるように腰を振る早さをあげていく。ぴちゃぴちゃと嫌らしい水音が時折部屋の中に響きわたり、気を更に高ぶらせていく。そして……。
『あぁぁぁぁあっ!』
二人が叫び声をあげた途端、びゅる、ぴゅるっと彼女の膣内に精を吐き出す。それを受け取るかのように、彼女の膣壁が肉棒をなで上げている。
だんだんと射精の音がなくなっていくと、荒れた息も少しずつ治まってくる。相変わらず少女の方はまだ荒い息ではあったが。……少し激しすぎたかな。
とりあえずこのままで寝るのも後々いやな思いをするだけなので、名残惜しくも少女の膣から肉棒を引き抜く。引き抜かれたそれがだんだんと縮んでスリットの中に収納される前に、こびりついた精液をふき取らないと後になって臭くてたまらない。
適当なタオルをとってそれで拭いていると、やがて少女の方がむくりと起き出す。どうやら少し落ち着いたようで、他のタオルを手渡すと顔を赤くさせながらも自分の体にこびりついた精液をふき取っていた。
「でさ……一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんですか……?」
自分の体を拭き終わり、次はベッドについたのを拭いている最中に頭の中にふと浮かんだ疑問があった。それを問いかけるために口を開いた。
「なんでわざわざ国境を越えてまで竜の国に?」
それを聞いた途端、少女の顔が暗くなる。何か悪いことでも聞いたのだろうか。答えなくてもいいよと言おうとしたところで彼女は口を開く。
「父さんの遺骨を取りに……」
話を聞いていると、どうやら少女は昔に起きた戦争で父親をなくしたものの、遺骨はこの竜の国に保管されたままらしい。戦後に遺骨の返却を求めたものの、それは断固として拒否されたらしい。だからそれを取り返すためにこの国までわざわざ来たらしい。
「それなら明日、王都に行って遺骨の返却を求めよう」
「えっ……?」
思わぬ言葉に少女は驚く。一応前までは王の側近として護衛を任されていたし、覚えているかは分からないが面会をして頼み込めばきっと大丈夫だろう。それを少女に話すとたちまち表情は明るくなり大きく頷いた。
「じゃあ、とりあえず寝ようか」
二人は再びベッドの中に入り、互いに確かな温もりを感じながら眠りにつくのであった。