『大きい旦那様と小さな奥様』  
エピローグ  
 
 
 
「……お母さん、お母さん、起きてよ」  
誰かの声がします。  
「こんな所で寝ちゃって……お父さーん」  
ん、んん…誰の声だ?  
私の小さい頃の…いや、妹の朋子(ともこ)の声によく似た声です。  
妹は現在17歳、花のセブンティーンな女子高生。  
ちなみにお姉ちゃんの名前は朝子(あさこ)  
私より2つ上の26歳でこちらも専業主婦で2児の母です。  
「……明子、明子、おい…」  
これは龍一さんの声です。なんかいつもよりダンディに聞こえるぞ?  
「明子」  
うっすらと目蓋を開けました。  
ぼやけていた龍一さんの輪郭が鮮明になります。  
「ん……龍一さん?」  
「な……え?」  
「ええーお母さんがお父さんの事、名前で呼ぶの初めて聞いちゃったぁ!  
んふふ、龍一さぁ〜ん…だって」  
「ど、どうしたんだ、明子?」  
「ん?…え…あ、あれ?龍一さん、いつの間にかダンディになって…」  
目の前の龍一さんは、いまから10年後ぐらいしたらこんなカンジかな?  
ってくらいにダンディです。シブイです。ナイスミドルです。  
と思って、うっとりしていたら、その横に子供がいます。女の子です。  
「あれ…龍一さん、この子は?」  
「もぉ〜お母さん、何言ってんの……お父さん、  
昨日の夜、激しく責めすぎたんじゃない?」  
「な、何を…そういう事はまだ早い!」  
むむむ、何だこの生意気な子はまるで朋子の生き写しです。  
ここはビシッと言ってやりましょう。  
「あのねー貴女はどこの子?ここは私と龍一さんの家よ。  
勝手に上がり込んで何様のつもりなの?」  
「ぷ…ぷぷ…あーはっはっは、冗談キツすぎーマジで笑えるよ」  
あーひゃっひゃ…と笑い転げる子供。ますます生意気です。  
何者なんでしょう。  
これが戦国時代なら私は『であえ、であえであえ!曲者じゃ』  
と声を張り上げています。お手打ち御免です。  
「り、龍一さんも何か言って下さい!この子に――――」  
「……んん、僕達の娘に…いつもの事じゃないか…どうしたんだ、明子」  
「え…わ、私達の…む、娘?」  
え、えええええええっ!?  
「あ、あの…龍一さん、今、何歳ですか?」  
「え…あ、ああ…40だけど?」  
「って事はわ、私は…さ、さんじゅうご?じ、11年後!?」  
な、何がどうなっているんでしょう?タイムスリップですか?140キロに達した時、  
魔法の呪文を言うとタイムスリップするアレですか?未来の自分と接触すると  
消滅しちゃうアレですか!?  
「ま、待って、じゃ、じゃあこの子の名前は!?」  
「えー私?あっはっは、お母さん、私の名前はねぇ――――――」  
 
 
がばっ!!  
私は眼が覚めると同時に起きあがりました。  
こ、ここは……?  
まだ薄暗いです……ん、布団?横に寝ているのは龍一さん?  
あれ子供は!?名前は!?タイムスリップ!?  
私は枕元にあるデジタル目覚まし時計を掴み、睨み付けました。  
ええ、もうそれはガンつけです。穴が空くくらいのガン付けです。  
そこに表示されていたのは  
――2008:4:06(日)6:18――  
ああ、よかった…現代だ…………なんだ、あれは夢ですか。  
ホッと一安心しました。ああ〜日曜日だぁ…しかもまだ6時です。  
「ん……んん?」  
何か、少し肌寒いです……上半身裸…!?い、いや全部何も真っ裸です!?  
トロ……  
し、しかも…あ、ああ…あ、アソコから…し、白い…龍一さんのDNAとか  
ミトコンドリアとか含まれてる液体が…ぎ、逆流して…エッチです、エッチすぎます!  
はやく拭わないと!ティッシュに手を伸ばした時、その手が掴まれました。  
「明子……」  
「あ、ああ…龍一さん、おはようございます」  
「まだおはようには早いよ…」  
龍一さんが私のアソコを撫で回します。  
あ…ゆ、指が…ん、んん…か、感じちゃう……  
「ん、で、でももう朝ご飯の用意――」  
布団から抜け出そうとする私を龍一さんは組み伏せて、耳元で囁きます。  
「朝ご飯は目の前にあるからいいよ」  
「へっ?」  
「明子っていう朝ご飯がね」  
「え、えええっ!?」  
「いただきます」  
「あ…ダ、ダメ…いただいちゃダメッ」  
………とか何とか言いつつ、3回もいただかれちゃいました。  
……正夢にならなければいいけれど。  
この後、お姉ちゃんや妹の訪問とかあったんですが  
それはまた別のお話です。  
 
END  
 

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