閑静な住宅街で私は娘に手をひかれて歩いていた。  
春の最中暖かくも風はひんやりと、歩く体を冷ましてくれている。  
「涼しくて気持ちいいね!」  
私も今思っていたよ。そう告げると娘は嬉しそうに私の腕をぎゅっとかき抱いた。  
少々動揺してしまう。  
長い黒髪は腰まで伸びており、黒い瞳は光の加減で茶にきらめき黒へ戻る。  
動きやすそうなキャミソールとホットパンツから見える手足はすらりと細い。  
娘に抱かれた私の腕は薄手のキャミソールを凶悪に盛り上げる大きな胸へ挟み込まれていた。  
私はやんわりと歩きにくいよと告げると娘は慌てて胸から離し、元通り手を繋いで歩き続ける。  
春風が私達を優しく包み込むなか目的の自然公園へついた。  
この自然公園は今のご時世では子供が怪我をしてしまうと撤去されてしまうような  
アスレチックな遊戯がいまだ残り、十数年前同様とまではいかないがインドアの遊戯が発達した  
現代でも子供達が遊び続けるに足る魅力を誇っているようだ。  
公園の中心から広がる芝には娘と同年代の3人の少女達が楽しそうにおしゃべりをしていた。  
娘は待ち合わせをしていた友人達のところへかけていく。  
「お父さん行ってくるね」  
私はゆったりと頷くと公園中心を囲むようにあるベンチへ座り込む。  
自分ではまだまだ三十路を過ぎたばかりと思っていてもデスクワークに慣れた体では  
少々歩きつかれてしまったよう  
 
子供達の話し声が聞こえてくる。  
「うわぁー沙耶ちゃんのお父さん渋いー」  
「ナイスミドルってあーいう人を言うのかな?」  
「あたしのお父さんは渋いっていうよりくたびれてる気がするー」  
「えへへ……」  
少々照れ臭い。話し声はここまで届いてしまう。  
子供達はひとしきり話すとアスレチックジムへ突進し遊び始めた。  
小学校の校庭にある遊戯施設が全部組み込まれた物にトランポリンや  
とても長いスライダー、ロープに掴まってレールで滑る等定番の物  
スケボーの競技に使うようなリングまで用意されていて  
はては公園外周を使ったフィールドアスレチックなるコースも作られている。  
国の施設にしても思い切ったものだ。  
子供達はひとまずアスレチックジムで体を慣らしているようだ。  
……しかし娘もそうだがみな小学生にしては一部の発育が進んでいる。  
身長は年相応でどの子供も私の胸元程度なのだが―――  
快活なポニーテールの子はTシャツとスパッツを着ており、Tシャツに包まれた胸を大きく揺らし登り棒をひょいひょいと上っていく。  
Tシャツはヒラリヒラリと揺れ動いたが、登り棒へ密着した胸は棒をそのまま挟みこみ  
棒に押し込まれたシャツは体の線をはっきりとうつす。……どうみてもブラをつけていないとな  
「トリャートリャトリャー!」  
一人先に上っていく少女はそんな事もきにせずに登り続ける。  
棒を挟んた胸の頂からは薄いシャツからでも主張している乳首の影がよく見えてしまう。  
揺れ動く体に合わせて棒を挟んだ胸は上下動を繰り返し  
右手をあげた時棒を右胸で擦り上げ擦り下げる。左手を上げたとき左胸で擦り上げ擦り下げる。  
両手は鉄錆びにまみれるのも気にせずにしっかりと握り棒を昇りつめていく。  
見たことはないがポールダンスというのはこういうものに違いない。  
踊ってはいないが見てる感想は似たようなものだろう。  
「いっちばんー!!!」  
登りきった少女が段差から飛び降りる時等はシャツの下から胸が見えそうに……  
 
――あまり見ては不信に思われてしまう。そう考え周りのベンチへと眼を向ける。  
他のベンチには3人の男性が私と同じように座っており少女達の姿を優しく見つめていた。  
1人の気品のいい男性が話しかけてくる。  
「娘の美咲です。あなたも娘を連れてやってきたのですか?」  
私は笑顔で頷くと彼は幸せそうに  
「私もです。遅くできた娘でしてとても可愛く柄でもなくこんな所へきてしまったのですよ」  
もう1人の男性が答える  
「ええよくわかります。恥ずかしながら子離れできなくなってしまいまして」  
彼もまた幸せそうだ。私も今まで生きていて味わったことのない  
娘をただ見守るという換えがたい時間を幸せだと思う。  
 
会話の中心は当然ながら自分達の娘の話になっていた。  
ひたすらそれぞれの娘の長所を並べ続けている。  
もう1人の男性は3人目の少女の言うくたびれてるお父さんだろうか。  
私達の会話には参加していないが自然公園を満喫しているようだ。  
ただ娘達の成長の話しをした時だけ茜が一番大きいと  
ボソリとつぶやいたのが少し怖い。  
彼の斜め上向きの視線を見るとショートカットでTシャツ、ジーパンを穿いた娘さんが  
アスレチックコース6つめのウェーブウェブ(名前が書いてあるが洒落なのだろうか)を登っている。  
名のとおり網が波のように歪曲している変な登りコースだ。  
「ここって登りにくいんだよね」  
網目は大きく少女の片方の胸が丁度はまってしまうぐらいだ。  
こちらの娘さんはブラジャーをつけているようだがそれだけに胸の膨らみが  
網目に食い込むように動き、上る反動で下から上へとゆれ続けている。  
頑丈な網の隙間に入った胸は上から潰されて下に流れていく。  
胸がひっかからないように手の位置を変えようにも歪曲した網は  
手を網の奥まで伸ばさざるを得ないようにして胸を網に密着させてしまう。  
確かに他の子供達より大きいのは間違いない。だが大きさそのものよりも  
全体的な体付きが、太ってはいないがふっくらとしておりボーイッシュな格好とは  
裏腹に大人の女性のような色気を放っている。  
胸は張りだけではない柔らかさがあり、ジーパン越しの脚線は太ももをむっちりと  
お尻は腰のくびれとは対極に大きく私の両手でも掴めないだろう。  
多分きにしているんじゃないでしょうか。  
と、気づいたら呟いていたらしい。  
二人の男性はなにか警戒するような視線を。くたびれ父さんからはなかなかやるじゃないかと賞賛のまなざしを。  
私がしゃべった事は気にならないのだろうか。  
というかこのウェーブウェブがベンチから見て丁度いい距離にあるのは何故だろうか。  
あまり深くは考えたくないので先ほどの娘自慢へ話しを戻す。  
それからは波風立てる事なく会話をしていると太陽は夕日へと変わり子供達も遊び終わったようだ。  
子供達と父らはそれぞれの別れを告げ自然公園からそれぞれの自宅へ帰る。  
いや正確には彼らは自宅へ帰るのかもしれないが私達には別の帰る場所がある。  
 
 

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