……大丈夫、大丈夫。何ともない。  
「おーい、龍彦。聞いてんのか〜?」  
 そう、これは……そう、スキンシップ、ただのスキンシップだ。そ  
れ以下でもそれ以上でもない。  
「聞いてくれよ〜。えっちゃんとなえちゃんに勝ちたいんだよ〜」  
 だからこの、今、背中に当たってる物は別に何でもない。脂肪だ、  
そう脂肪。決しておっぱいじゃない。断じてだ。ただの柔らかい脂肪。  
ちょっと固い物も当たってる気がするけどそれも脂肪だ。ちょっと固  
い脂肪。よし、脂肪!  
 落ち着くんだ……。よし、大丈夫大丈夫。クールだ。クールに言う  
んだ。  
「離れろ、さゆ。わかったから。どうしたんだよ」  
 背中の感触が離れて行く。名残惜しいなんて思うな、俺。  
「スマブラで勝てない〜。教えて龍彦〜」  
「そんなもん一人でやれ。忙しいんだよ、俺は」  
 視線をテレビに固定して、冷静に、冷たく突き放すように言う。こ  
れであきらめてくれ。  
「お願いだよ。おっぱい見してあげるから〜」  
 思わず振り返るとさゆがにかっと笑っていた。しまった。なんて単  
純なんだ。  
「龍彦のスケベ〜」  
 くそっ……。こいつには毎回変にからかわれるわおもちゃにされる  
わで困る。  
 それにしても息子を除け者にしてみんなで外出するなんてうちの家  
族はどうかしてる。合格祝いで俺がいないってどういう事だよ。合格  
したのは俺だよ?頑張ったの俺だよ?なんで合格発表の翌日に机の上  
に「合格おめでとさん。龍彦の合格祝いにさゆちゃん家とみんなで出  
かけてきます。今日中には帰る」って置き手紙があるんだよ。何で起  
こしてくれないんだよ。俺が主役じゃないの?俺を祝うんじゃないの?  
あ、駄目だ……。泣いちゃう。  
「お〜い。どした、元気だせよ。龍彦」  
 それに何でこいつが家にいるんだよ。みんなについて行ったんじゃ  
ないのかよ。  
「寂しいんだろ?よしよし、あたしが遊んでやるからな」  
 そう言いながらさゆは俺の頭を撫でた。……別に寂しくなんてない。  
 目線と同じ高さにさゆのおっぱいがあった。つい目がいく。こいつ  
のおっぱいはハッキリ言ってでかい。小学5年生にしては発育が良す  
ぎる。サイズはわからないがでかいことは確かだ。今の格好も半ズボ  
ンにTシャツ。Tシャツが小さめだからか、胸周りがきつそうでおっ  
ぱいが強調されている。室内とはいえ寒そうだ。俺はコタツに入って  
いるからいいのだが、こいつは平気なのだろうか。  
 
「つーか、さゆ。何で家に?」  
「あたしがいないと寂しいだろ。やっぱりあたしがいないとだめなん  
だよ龍彦は」  
 意味不明さに俺がポカンとしていると、さゆは得意げにえっへんと  
ふんぞり返った。自然とおっぱいを突き出す格好になり、俺の目の前  
で大きな胸がふるんと揺れた。  
 ……落ち着け、俺。おっぱいを見るな。  
「じゃあ、今からスマブラやるからな。いいよな!」  
 結局、ゲームがしたいだけなのかよ。  
 どうやら家にいるのは遊びたいだけらしい。元々、家が近く、親戚  
関係だった俺とさゆは小さい頃からほぼ毎日遊んでいて、さゆに会う  
と必ず遊ぶ習慣がついている。だから受験の為にここ4、5ヶ月は顔  
すら合わせなかった。久しぶりに遊べる事が嬉しいのだろう。  
 ……照れくさいが、嬉しいのは俺も同じだ。  
 わかったと返事をするとさゆは嬉しそうにどたばたと走って行った。  
俺の部屋からゲーム機を取りに行ったんだろう。走って行く後ろ姿か  
らでもおっぱいがゆさゆさ揺れるのがわかる。さっき背中に胸が当た  
っていた時の感触からも思ったが、成長したなぁ。……おっぱい。  
 しばらくすると、さゆはゲーム機を抱えて持ってきた。  
「遅かったな。……ってロクヨン!?」  
 てっきりWiiだと思ってたのに……古いな。  
「えっちゃんとなえちゃんが強くてさ〜。全然かなわないの。龍彦な  
ら必勝法教えてくれると思って」  
 さゆは友達がいかに強いかを話しながらあっという間にケーブルを  
接続してゲームのスイッチを入れた。そのままコントローラーを持っ  
て、俺に座った。コタツであぐらをかいている俺に。  
「さゆ、何してんだよ!」  
「この格好は寒いの。龍彦ばっかコタツであったまっちゃったりして  
さ、そんなのずっる〜じゃんか〜」  
 なら最初からコタツに入ってろと言いたかったが、この状況だと目  
線を少し下げるだけでさゆのおっぱいの谷間が丸見えだ。眼福とはま  
さにこの事。  
 自然にゴクリとつばを飲み込む。……いや、駄目だ。画面を見ろ。  
「空中技が全然出せないの。どうやるかわかる?」  
 さゆが上目遣いに俺を見た。……かわいい。久々に会うとこんなに  
も愛しく思えるのか。もしかして俺……。  
「そんなに見るなよ……。龍彦のスケベェ〜」  
 からかい口調なのは照れ隠しだろう。ほっぺが少し赤くなっていた。  
その様子に俺も耳が熱くなる。  
 
「どれどれ〜。空中じゃあ技はこう出すんだよ!」  
 話をゲーム中心にするために俺もコントローラーを取った。  
「あれ……?」  
 おかしい。うまくいかない。昔はかなりやり込んだ。隠しキャラも  
出してみんな使いこなせたし、隠しステージも出したし、友達の間じ  
ゃあ1、2を争うくらいに勝ちまくりだったのに……。  
「龍彦あたしより下手くそだね〜」  
 さゆがにかっと笑った。自分より下手な奴を見つけて優越感に浸り  
やがって……。  
「カンが鈍ったかな−。少し時間をくれよ、な?」  
 このままだとかつて「キャプテン・龍彦」とまで言われたプライド  
が傷つく。  
 さゆはまだにかっと笑っている。できないと思ってんだろ。こいつ、  
絶対後でボコボコにやってやっかんな!!もちろんスマブラで!  
 俺はすぐに1Pモードにして修行を始めた。  
 しかし……。  
「まぁブランクあるし、このくらいは当然かな」  
 ゲームオーバー。  
「何、故だ……」  
 2回目。  
「くそっ!ミスった!」  
 ……8回目。  
「えっ、ここで!?」  
 に、じゅう……ぐすっ。  
 
 
「よし!よっしゃあー!!」  
 やった……。ついに、マスターハンドを倒した。……長かった。本  
当に長かった。  
 ありがとう本当に!応援してくれた脳内のみんなありがとう!  
 ……どうやら知らず知らずのうちに、ゲームのやりすぎで変なテン  
ションになってるみたいだ。ふと時計を見ると夜の9時を過ぎている。  
「あっ、そうだ」  
 もとはと言えばこれはさゆのスマブラ特訓はずだったのに。  
 さゆは最初俺が失敗する度に笑い声を上げていたのだが、今は静か  
にしている。もしかして怒ってしまったか。  
「さ〜ゆ〜?」  
 優しく語りかけるが反応が無い。もしや……。  
 耳を澄ますとやはりすぅ、すぅと寝息が聞こえた。やっぱり。  
 さゆは気持ちよさそうに俺に寄りかかって寝ている。……寝顔かわ  
いいな。  
 しかし困るのはやはり、おっぱいが見える事だ。いいや、大丈夫、  
困らない。落ち着け。深呼吸だ。  
 そのまま深呼吸をしながら、さゆのおっぱいを見る。……って落ち  
着ける訳ないだろ!  
 ……そうだ!逆にもっと密着すればいいんだ。  
 そう思ったときには自分の腕にさゆのおっぱいが乗っかるようにさ  
ゆの腹に手を回して抱きしめていた。  
 
 頭のどこかで何か違和感がしたが、無視する。  
 体、思ってたより小さいな。それに髪からいい匂いがする。  
 胸の谷間を見ていると自然と手が胸に吸い寄せられるように動いた。  
そのままTシャツの上から気づかれないように胸に手を重ねる。その  
まま撫で回した。  
「んっ……」  
 さゆの反応に動きを止め、まだ起きてない事を確認して今度はそっ  
と揉んだ。柔らかい。よくソフトボールみたいだという例えを聞くが、  
そんなんじゃない。もっとすごい、別の何かだ。  
「……あっ」  
 背中に胸を押しつけられた頃からずっと思っていたのだが、触れて  
確信した。さゆはTシャツの下には何も着ていない。  
 乳首のあたりを指でなぞって探し、場所を確かめて押しつぶす。  
「くっ、っん……!」  
 ぐにゃっと音がしそうなほどに握った。  
「はっ……あっ。んぅ」  
 もう、俺にはさゆが寝ているのか起きているのかどうでもよくなっ  
ていた。空いている手で自分の物を出してしごく。言いようのない興  
奮のせいでいつ出てもおかしくはない。  
 一旦自分の物から手を離し、両手でむにゅむにゅとひたすら大きな  
おっぱいを揉み続けた。  
「……ふっ、んっ。はぁ、あっ」  
 Tシャツの上からはっきり浮かんできた乳首をつまんだ。こりこり  
いじって、引っ張る。  
「や、ひゃっ……あっん、んぅ……!」  
 敏感なところを触るとぴくんっとする仕草が可愛らしい。いつまで  
もこの反応を見ていたい気分にさせてくれる。  
 ……いや、もっとだ。もっと、さゆの声が聞きたい。  
 体を掴んでさゆの体の向きを変え、対面させた。Tシャツをまくり  
上げるとぶるんっとおっぱいが飛び出た。すぐに乳首を舐めまわし、  
しゃぶりつく。何の味もしないはずなのに……おいしい。  
「あっ、んっ、んぁっ、あぁっ……やぁっ、っあ!……やっ!」  
 びくびく震えるさゆを抱きしめて顔を胸にうずめる。夢中で舌先で  
ぐりぐりと乳首をつついた。口に含んで軽く噛んだり、何度も何度も  
思いっきり吸った。  
「あっ……あぁっ!おっぱ、い、やっ……!やっ!やっ!あっ!た、  
ふっくうぅ、んぅ……!たっつひ、っこぉ……たつひこぉっ!」  
 さゆに名前を呼ばれて体が止まる。同時に自分の物が精液を吐き出  
した。射精によって高揚感が流れるように消えてゆく。後にはさゆに  
した事への罪悪感だけが残った。  
 さゆは何も言わずに荒い呼吸を繰り返していた。  
 
 半ズボンには俺の精液がかかり、胸は唾液でぬらぬらと光っていた。  
 何か言わなくてはと言葉を探すのにしばらく時間がかかった。  
「さゆ……ごめん」  
 もっと言うべき言葉があるはずだ。だけどすぐにはそれが浮かんで  
こない。  
「さゆ……ごめん」  
「龍彦……何で……」  
「……ごめん」  
 同じ言葉しか繰り返せない自分が情けない。  
「……龍彦の方からやられるなんて、龍彦は計画潰しだよ……」  
「……え、ちょっとどういう事だ?」  
「……えっとね、えっちゃんとなえちゃんにね『ゆうわくしかないよ  
っ!』って言われて……。ちょうどみんな出かけるって言うから、今  
しかないって……」  
 さゆは微かに体を震わせながら「計画」を話し初めた。  
 要約すると、スマブラで遊び疲れたところでTシャツを捲っておっ  
ぱいで誘惑。興奮させて襲わせてるのが目的だったらしい。何て過激  
な計画。なんて恐ろしい小学生達。道理でノーブラだったり、おっぱ  
いを強調するような事をする訳だ。  
「何でそんな事を……」  
「だって、龍彦ずっと会ってくれないんだもん!ずっと、ずっと……。  
あたしのこと嫌いになったんだと思ってた……。だから……」  
 それで友達に相談したら「エロい事をすれば仲直りできる」なんて  
そそのかされてこんな事したのか……。本当はそんな恥ずかしい事し  
たくはなかっただろうに。  
「……でも会えないのは、俺が受験生だって知ってたんだろ?」  
「受験?……え、え〜〜!?」  
 驚き方からすると全く知らなかったらしい。どうやら変な誤解をし  
ているみたいだな。  
「でも、龍彦はもう誰とも遊ばないって、おばさんが……」  
 元凶はうちのババアか……。でも今誤解が解けても、俺がさゆを襲  
ってしまったのは変わらない。変な気さえ起こさなければさゆは寝た  
ままで、誤解は時間が解決していただろう。さゆの計画は未遂に終わ  
り、後は何もなかったように今まで通り仲良くやっていけたはずだ。  
 でも俺は欲望に任せてそれを壊した。  
「さゆ、ひどいことしてごめん。こんな事になったのは全部俺の責任だ」  
 嫌われても文句は言えない。  
「でも、俺はさゆの事嫌いだなんて思ってない」  
「……じゃあ、どう思ってんの?」  
「その……好きだ。さゆが好きだ」  
 急な質問に何も考えず、反射的に口が動いていた。思わず出た言葉  
だがこれは嘘じゃない、本心だ。  
 
 さゆが口を開くのを待った。数分が何十分にも感じる。  
「……龍彦のロリコンスケベェ〜〜!でも……いいよ。びっくりした  
だけだから」  
 さゆはいつものように、にかっと笑った。俺のしたことは下手すれ  
ば犯罪だ。笑って許される事じゃない。  
「いい、のか?」  
「だって、だってあたしも龍彦……すっ、すき!……だ、から」  
 言い終わるとさゆは「しまった」という表情をして恥ずかしそうに  
俯いた。もじもじしながら、ちらちらと俺の様子を伺っている。  
「さゆ……」  
「まぁ、龍彦も男だしね〜。あたしのおっぱいどうだった〜?」  
 さっきのをごまかすようにからかい口調になって、さゆはぎゅっと  
谷間を強調してきた。  
「さゆ……」  
 そっとさゆを抱きしめる。今度はやらしい気持ちはない。  
「……ありがとう。さゆ」  
「今度はあたしにもっとえっち〜なことしてね……」  
 息がかかるくらい耳元で囁かれ、自分の顔が熱くなるのを感じた。  
「あはは!龍彦のスッケベ〜〜!」  
 俺の反応が面白かったのかさゆは声をあげて笑った。くっそ、こい  
つにはからかわれっぱなしだ。  
「じゃあ、今から、さっきの続きするか……?」  
 頬にキスして出来るだけキザに言ってみる。  
 
 宴会が終わった時には深夜で、馬鹿騒ぎでへとへとになった。ちな  
みに飲酒はしてない。買ってきた大量の酒はあっという間に全部アホ  
親共が呑んでしまったからだ。残ってても俺未成年だし呑まないけど。  
 ちゃんと動けるのが俺達しかいなかったので、べろべろに酔っ払っ  
てしまったさゆの両親をさゆと家まで送った。家に着くなり吐いて大  
変だったが、部屋に運んだ今はぐっすり眠っている。  
「ねぇ龍彦」  
 自分の家に帰るべく玄関で靴を履いているとさゆに呼び止められた。  
「あたしたち、恋人?」  
 お互い変な形だが、告白したのには変わりない。恋人って言い方は  
照れるが、俺達はもう恋人だ。何も言わずに頷く。  
「んへへ〜。じゃあ、今度デートしようよ〜」  
「わかった。週末に行こうな」  
 優しく頭を撫でる。さゆが嬉しそうに目を細めて、抱きついてきた。  
「龍彦だ〜いすき」  
「俺も好きだぞ〜」  
 すりすりしてくるさゆが愛しくて、強く抱きしめた。体にむにゅう  
っとしたおっぱいの感触が……。本当にやらかいな。  
「さゆ、大好きだ……おっぱいもな」  
「もぅ!龍彦のスケベェ〜〜!」  
 俺が笑うと、嬉しそうに、照れくさそうに、さゆがにかっと笑った。  
 
 
 
おわり  
 
 

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