雲が月を隠しあたりは暗闇だった、獣たちも眠りにつく時間・・・。  
ときおり冷たい風が吹き草を揺らす以外には何も動かない。  
時が止まったかのようなロンド平原に囲まれたフィア王国最大の町マルク。  
昔このあたりを荒していた巨鳥のモンスターを倒した騎士の名前からつけられている。  
 
そんなマルクを見下ろすようにそびえたつ巨大な影・・・フィア城である。  
静寂に包まれたロンド平原やマルクとは違いフィア城では慌ただしく人が走り回っていた。  
「はぁ・・・」そんなフィア城の一室でメアリーは今日何度めかもわからない溜息をついていた。  
フィア王国女王メアリー、女王となった今も彼女の立場は非常に不安定である。  
先代の王が早くに亡くなったため、唯一の直径の血筋であるメアリーが若くして王位を引き継いだ。  
しかし正式な手続きを経て女王となった今も反対派は多くいる。  
フィア国では前例のない女の王、人はいつだって変化を恐れるものだ。  
フィア国は今メアリー派と国防大臣ガルムを中心とした反対派とで半内乱状態にあった。  
 
しかし今メアリーにため息をつかせているのはそれが原因ではない。  
 
この国が不安定の中さらに新しい問題が起きたのだ。  
今日の夕方ごろ早馬によって届けられたそれはこんな時間になっても城中が慌ただしい原因でもある。  
フィア城よりはるか東の小さな村、ノストアにて突如開いた洞窟よりモンスターがあらわれ、  
調査に入った村人とフィア国ではそこそこ名の知れた姉妹の傭兵が行方不明になったのだ。  
この姉妹のことをメアリーはよく知っていた。  
まだ王位にもついていない昔、身近な部下だけをつれてお忍びで視察と名うって北の温泉へ行った時にその姉妹と出会った。  
元気で豪快な姉と人見知りだが優しそうな妹というのが最初に話した時の印象。  
自分が王家の人間と知ってもほとんど態度を変えなかったことと、年も近いこともありメアリーはすぐに二人を気に入った。  
一緒にいたのは数日だったがメアリーは自分が女王になったら、絶対にこの二人を自分直属の部隊にスカウトしたいと思っていた。  
また部隊だけでなく本当にいい友達にもなれると思っていた。  
「あの二人が失踪?」  
そうつぶやきメアリーはまた小さく溜息をつく。  
「メアリー様・・・お時間です」  
ふいに呼ばれ開け放たれたままのドアを見ると見慣れた顔が心配そうに覗きこんでいた。  
 
会議の時間を知らせにきてくれたルーシアだ。  
ルーシアはメアリー直属の部隊の隊長であり幼馴染でもある。  
メアリーを心配そうに見つめる瞳は今も昔も変わらない。  
 
メアリーの母はメアリーを生んだ際に死んでしまったらしい。  
父はすごく優しかったが父である前に王でもあった彼は幼いメアリーとなかなか遊んではくれなかった。  
そんな父の仕事も幼いながらにメアリーはしっかりわかっていたし、父のことは大好きだった。  
それでもやはり寂しいのは寂しいし勉強なんかよりもいつも遊んでいたかった。  
そんなメアリーとずっと一緒にいてくれ、遊んでくれたのがルーシア。  
母の妹の子供にあたるルーシアは大人だらけの城の中でのメアリーの唯一の親友であり一緒にいたずらをする仲間だった。  
二人の関係は女王と騎士の関係になった今も変わらない、欲望渦巻くフィア城の中で気を許せる数少ない人物のひとりである。  
 
そのルーシアに促されメアリーは部屋をでる。  
「ルーシア、ノストアのこと・・・ユノとシノのことをどう思う?」  
会議室へ向けて歩きながらメアリーは少し後ろを歩くルーシアに尋ねる。  
お忍び温泉旅行の時も一緒だったルーシアもあの姉妹のことは気に入っていた。  
 
「はい、あの二人は息もぴったりでしたし、腕もなかなかのものだと思います・・・簡単に魔物にやられるとは・・・」  
ルーシアの言葉にメアリーもうなずく。  
「ノストア周辺には強い魔物はもういないはず・・・山賊か、あるいは隣国の兵かしら?」  
ちいさな国であるフィア国でも山賊による事件は少なからず起きている。  
「いえ、その可能性は低いと思います、山賊であっても敵国の兵であってもこんなに目立った行動をする理由がないかと」  
ルーシアの意見はもっともだ、ユノとシノの二人だけならまだしも何人もの村人までもが行方知れずになっている。  
山賊であれば目立った動きをして国そのものを敵に回すようなことはまずしない。  
国の騎士団に動かれたら山賊に勝ち目はない、だから彼らが襲うのは証拠の残らない旅人ぐらいのものだ。  
一方隣国はどうか、彼らが王位継承で揺れる今を狙って国に攻め込むというのもありえなくはない。  
しかしそれならなおさらこんな目立った動きはしてこないだろうし、村人を襲った所で彼らに得はない。  
それにフィア国は小さいながらもフィア騎士団はこの近辺ではおそらく最強である。  
 
はるか遠方の大国ならともかくこの付近の国はでれもフィア国と似たような小国である。  
フィア国にどうどうと戦争を挑んでくるような者はいないだろう。  
「やはり魔物の線が一番濃厚ね・・・でもいったいどうして?」  
メアリーは小さくうめくようにそうつぶやく。  
「報告によれば洞窟から出てきたとありますが・・・実際に調べてみないことには何とも・・・」  
その言葉にメアリーは大きくうなずく。  
「やっぱり何としても臆病者の老人たちを説き伏せるしかないわね」  
そう力強く言い放ちメアリーは歩くスピードを速めたのだった。  
 
会議室から自室に向かうメアリーの足取りは重かった。  
予想通り事態は何一つ前進しなかったのだ。  
「彼らは村人やユノたちの命よりも自分の立場が大事なんですよ・・・」  
少し後ろを歩いてくるルーシアもまた疲れきった声でいう。  
国の王が変わり国全体が不安定な時期に起きた事件  
大臣達や会議に呼ばれた学者たちは自分の立場を守ることばかり考えていて無難な発言ばかりだった。  
犯人は魔物か他国のものなのか、魔物の場合は舵を切り間違えればさらにたくさんの犠牲者がでる。  
 
そうなれば下手な提案をすればその責任として今の地位を失いかねない。  
他国の場合は一歩間違えれば国の存亡にかかわる。  
もちろんメアリーはすぐに救助隊を出すことを提案した。  
しかし女王という肩書きに思ったほど力はないらしく、彼らの弱気な意見は変わらなかった。  
結局結論はさらなる被害の拡大を防ぐためノストアへ続く道の閉鎖。  
その上で調査隊を送り事態が把握でき次第必要であれば救助隊、あるいは討伐隊の派遣をするということになった。  
「自分たちの身の安全さえ保障されればそれでいいのかしらね・・・・一刻も早く何とかしないとユノ達が・・・あるいはもう・・・」  
そうつぶやきもう一度溜息を洩らすメアリー、もう少しでメアリーの部屋だが今日はあまり眠れそうにはなかった。  
「メアリー!!!下がってっ」  
疲れ切っていたメアリーの体が後ろに力強く引っ張られる、それと同時にルーシアの体が前に飛び出した。  
何者かが横の通路から飛び出してきたのだ。  
メアリーを狙う刺客か何かならこのままルーシアに切り捨てられるところだったが、結局ルーシアの剣は抜かれることはなかった。  
飛び出してきたのは見知った顔だったからだ。  
 
「はわわ・・・ごめんなさい、メアリー様、ルーシア様・・・モップに足払いをかけられましてぇ」  
そういって涙目になりながら二人の前にヘたれこんでいるのは城中メイドのミーナ。  
城内でもドジっ子で有名な彼女はどうやらモップにまで転ばされてしまうらしい  
「ぷっ・・・うふふふふ、そのモップにはきつい罰が必要ね。王国裁判にでもかけてやろうかしら・・・うふふ」  
再びルーシアの前に出てきたメアリーはそう笑いながらつぶやくと、ミーナに手を差し出してやる。  
「本当に申し訳ありません・・・メアリー様・・・」  
その手を掴み起き上がったミーナはもう一度ぺこりと頭を下げる。  
その頭を掴み髪をクシャクシャに弄びながら微笑むメアリー。  
そんな二人を眺めながらルーシアもまたほほえんでいた、誰にでも優しいメアリーである  
メアリーはきっと素晴らしい国のリーダーになるだろう・・・メアリーは何があっても守り抜くし、メアリーのためならなんだってやってやる・・・。ルーシアは心の中であらためてそう決心した。  
 
「私が、ノストアまでいって現状を確認し、必要なら魔物でもなんでも駆除してみんなを救い出してきます」  
 
部屋につくなりルーシアはメアリーに向ってそう話しかける。  
その瞳に誰が何と言おうと絶対に意見は変えないという意思を込めながら・・・  
「ルーシア・・・しかしノストアへの道はおそらく、すぐにでも閉鎖されてしまうし・・・仮にいけたとしても一人では危険だわ」  
ノストアへと続く道は両側を山に挟まれた一本道であり、その道以外にまともな道はない。  
険しい山を越えようとすると一日ではた取り付けない、人を襲う獣がうろつく中一晩すごすのはさすがのルーシアでも無事ですむ保障はない。  
「道ではなく森を抜けます、少し南に回りこめば山脈と山脈の間に森があります・・・多少不気味ですが、そこを抜ければ朝に出発して日が暮れるまでには村にたどり着けるでしょう」  
話しながらルーシアは戸棚の奥から、無くしたと思っていた地図を引っぱり出してくる。  
もしかしたらメアリー以上にこの部屋のことに詳しいのかもしれない。  
メアリーはあまりノストア近辺の地理には詳しくないので、よくわからなかったが確かに地図によるとそこには森があった。  
「この森は安全なの?」  
 
道があるのだからわざわざ森を通り抜ける人間はいないだろう、人間がいなければそこの魔物が巣にしていても不思議ではない。  
「メアリーさまが待っていてくれるなら地獄からだって無事生還してみせますよ」  
そう言いながら無邪気に微笑むルーシア。  
「もう・・・わかったわ、許可します、ただし一人では危険です。部下を何人か連れて行きなさい」  
大臣たちの同意もなければ動かせないフィア騎士団とは違い、通常の指揮系統とは別に機能するメアリー直属の部隊はメアリーの独断で動かせる。  
ルーシアを隊長とするそれはメアリーやルーシアが直接選抜した人間のみで構成されており、小精鋭ながら結束力も強い。  
今のような複雑な事態では特によく機能する  
「はい、ユノとシノの二人もかならず救い出してきますよ」  
ルーシアはそういってほほ笑んだあと、「お休み」とつぶやき部屋を出ていったのだった。  
 
「それは本当?リリス」  
小さなろうそくの光だけの薄暗い洞窟の中でリリアが陰に向かって話しかける。  
「ええ姉さん、この耳で直接聞いたんだから間違いないわ・・・あのメアリーの傍にいっつもひっついてる剣士さんが部下を何人か連れてこっちにくるみたいよ」  
 
影から現れたリリスと呼ばれた女の顔はリリアとよく似ている。  
「けどノストアへの道は予想通り閉鎖されるのよね?空でも飛んでくるの?」  
その言葉にリリスが小さく笑う。  
「まさか、私たちじゃないんだから・・・下の森から回り込んでくるんだって、女なのに以外と勇気もあるんだね」  
リリアもつられて笑いながら返事をする。  
「うふふふ、それは、チャンスね・・・あの子ちょっと邪魔だったのよ、あの子さえいなかったらメアリーなんて丸裸よ。  
よし、それじゃあ私が森までいって壊してこようかな・・・うふふふふ」  
「ちょっちょっと待ってよ姉さん、この前の双子も姉さんが独り占めしちゃったじゃない・・・ずるいよ、今度はあたしにやらしてよ」  
「だから姉の方はスラちゃんだって・・・今だって離さないでずっとくちゅくちゅしてるんだから、なんなら見てきなさいよ」  
少しうんざりしたようにリリアはそうつぶやく。  
「いやよ、とにかくあの剣士さんはあたしがもらうからね、姉さんはお留守番しててよじゃ行ってくるからね」  
そう言うのとほとんど同時にリリスは消えてしまった・・・そこには最初から何も無かったかのように。  
「うふふふ・・・しょうがない子・・・」  
 
森の中は予想以上に進みづらかった。道と呼べる道もなく草をかき分けながら進んでいく  
植物たちの強烈な緑の匂いが鼻に突き刺さったのも最初だけで今は慣れてしまったのか全く分からない。  
「がんばって、何としても日が暮れるまでに森を抜けるわよ」先頭を進むのは軽めの鎧に身を包んだルーシア、剣で邪魔な草や枝を切り払っていく。  
幼いころはメアリーと城の中を走り回っていたし、剣士の修行のために山籠りもしたことがあったので体力には自信があったがそれでもこの森は辛かった。  
顔や体には大粒の汗がまとわりつき髪や衣服が張り付いてかなり扇情的な姿だ。  
本当は今すぐにでも冷たい水で体中を洗い流したかったがさすがにこの不気味な森の中で裸になって水浴びをする度胸はない。  
「しかしルーシア様・・・アカネがそろそろ限界な感じですよ・・・あの子体力がないですからね  
この前なんて城の階段でもちょっと一休みとか言って座り込んでましたよ・・・」  
苦笑いを浮かべながらそう話すのはきれいな金髪を後ろで束ねてポニーテールにしているサラ。  
ルーシアとは違い普段着のような衣服に身を包んだ彼女は武闘家である。  
 
18の時にルーシアに誘われメアリーの部下になった彼女ももう二年目だ。  
年こそ若いが実力は確かで。兵士たちの酒の場では「サラを怒らせるとフィア城が崩れる」と笑いながら話される。  
昔サラに喧嘩を売った兵士が「家を壊すぞ」と脅されたらしい。  
「るーしあ様ぁ・・・さらぁ・・・まって下さい・・・あうぅ・・・」  
だらしない声をあげ最後尾を歩いているのは魔法使いのアカネ、遠い東の国から来たという彼女はとにかく体力がないらしい。  
魔法使い独特の地味なローブを身にまとった彼女は異国の魔法を覚えるために旅をしていて、フィア城の前で行き倒れていたところをメアリーに餌付け・・・助けられて仲間になった。  
とにかく体力のない彼女がどうやって遠い東の国からフィア城までたどり着いたかは、フィア国最大の謎かもしれない。  
メアリーの直属の部下は親衛隊などと気取った名前はついているが、実際はこの三人だけである  
そのため本当はルーシアは二人はメアリーの護衛に残したかったのだがメアリーがどうしても全員で行けと引かないので不運にも(?)アカネもこの過酷な任務に加わることになった。  
「しかたないわね・・・少し休みましょうか」  
 
そのルーシアの言葉にアカネはこの森に入ってから一番の笑顔になったのだった。  
 
「ルーシア様は今回の件どうお考えなんですか?」  
手近な石に腰かけたサラがそう切り出す。  
「一番可能性が高いのは突然あいた洞窟から魔物がでてきたってのでしょうね、もっともその洞窟はそもそも何なのかっていう疑問があるけど」  
そう話すルーシアの膝は、いまは荒い息をしながらもどこか幸せそうなアカネの枕代わりだ。  
「ただモンスターが出てきただけなら全部倒しちゃえば終わりなんですけどね」  
「あら、サラなら洞窟ごと壊せるんじゃない?」  
パンチのまねをしながらルーシアはそうつぶやくと、その振動にアカネが小さく呻く。  
「念のため言っておきますが・・・私はフィア城を壊したりしませんからね」  
顔を赤くしながらサラがそうつぶやくと、ルーシアは小さく笑いその振動でアカネが小さく唸る。  
「まぁ、とにかく行って見ないことにはね・・・・ねぇ、何か聞こえない?」  
ルーシアと同じくサラも耳を澄ましてみる、聞こえるのは木々や草のざわめきに遠くからする鳥の鳴き声・・・・アカネの唸り声・・・そしてそのアカネの声にまぎれている違う呻き声。  
 
「これは・・・人かもしれない・・・苦しそうな・・・すぐ近くです」  
「みたいね、アカネ・・・起きて」  
幸せの絶頂からいきなり現実の深い森に引きもどされるアカネ。  
「行って見ましょう、村人かもしれません」  
サラとルーシアが素早く立ち上がり声のほうに駆けだし、少し遅れてアカネも二人を追いかける。  
近くだとおもった声は意外と遠くなかなかたどりつかない、歩き辛い森の中を小走りで駆け抜ける三人。  
・・・こんなに遠かった?・・・いや・・・声のほうが離れて行っている?  
ルーシアがそう考えているのと後ろからアカネの鋭い声が響く。  
「二人とも、魔力のような物を感じます。何か危ないかも!!!止まって!!!」  
アカネがそう言い終わるのと同時に先を走っていたルーシアとサラの足元が輝きだし・・・・  
そのまま二人の姿は消えてしまった。  
 
「これは・・・転送の魔法か何か・・・でもこんな高度な魔法陣がなんでこんな森の中に・・・」  
呆然と立ち尽くしながらアカネは必死に思考をまとめようとする。  
突然聞こえてきた人の声・・・二人を飛ばしてしまった転送の魔法・・・どうかんがえてもよくない状況である。  
 
一番悪いパターンはこれが人為的な罠だった場合だ、何者かが一人ずつを確実に仕留めるために戦力を分断させたのか。  
「何とかして二人と合流しないと・・・そんなに大きな反応ではなかったから飛ばされた場所は近くのはず」  
遠くに飛ばすにはそれだけ大きな魔方陣が必要になるのだ、そもそも転送の魔法を使える魔法使いはほとんどいない。  
それほど高い魔力を必要とする上にデリケートな魔法なのだ。  
アカネは一つ大きく深呼吸してからあたりを見渡す、一面の草に木・・・相変わらず生き物の気配はない。  
これが罠であるなら必ず何かあるはずなのだが。  
もしくは標的はアカネではなく飛ばされた二人か・・・  
先ほどまで聞こえていた何かの呻き声のようなものはもう聞こえない、あれも何かの魔法の力だったのだろう。  
「わたしだって本気だしたら城だって壊しちゃうんだからね・・・」  
一人そうつぶやきアカネは歩きだす、ここで立ち止まっていても状況はよくならない。  
魔法使いはいつでも冷静に・・・それは魔法使いたちの合言葉のようなものだ。  
しかしアカネの冷静さは数分後には崩れ去っていた、突然何者かに足をつかまれたのだ。  
 
見ればそれは掴んでいるというより巻きついている、植物のツタのような物だろうか。  
あたりの草と同化していて見えなかったのだ。  
「あうううう・・・・やあああ・・・」  
城を壊せると意気込んだ娘はパニックになり、絡みついているツタをもう片方の足でけり飛ばそうとするがその足までも絡み取られてしまう。  
そのまま尻もちをつくと、涙目になりながらもがき続ける。  
しかし次の瞬間にはアカネの体がフワリと宙に浮いた、一瞬にして腰にもツルが巻きつきそのまま体を持ち上げたのだ。  
「あうううう・・・・はなせええええ・・・」  
地面がみるみる遠のき近くの木の中ごろまで持ち上げられる。  
「調子にのるなよぉ・・・アカネの名において命じる、炎よ刃となり薙ぎ払えええ」  
とたんにアカネのまわりに炎が渦巻き刃となる、そしてそのままアカネに絡みついていたツルたちを切り裂いたのだ。  
「みたか、変態植物め・・・あう?落ちる・・・あううう」  
そのまま落ちていくかと思われたアカネの体は地面には落ちずに何か袋のようなものに足からスッポリとおさまってしまった。  
「やあああ、何これ・・・」  
顔だけが外にでている状態、それ以外は手も足もぴくりとも動かせない。  
 
それは巨大なウツボカズラであった。  
眼には見えないが中はヌメヌメとしているのが体から伝わる感触でわかる、とてつもない気色悪さだ。  
ネットリとした感触が体中に広がる、中はほんのりと温かかい。  
足から首筋まで一面にねっちょりと張り付いてくる。  
そしてそれらはアカネの思考が状況に追いつく前に動きはじめた。  
中には無数のイボイボが付いていてそれらが体中を揉みほぐすようにバラバラにうごめきだす。  
足、腕、首、脇、お尻、胸、股間、余すところなく与えられた突然の刺激にアカネの表情が大きくゆがむ。  
「いやあああああ・・・ちょっと何?、やめてはなしてええええっ・・・」  
中からグニュグニュという湿った音だけが聞こえ、くすぐったいのと気持ちいいのが一気に体中に広がっていく。  
「いや・・・だめだよ、やめて・・・あうううううう」  
首をむちゃくちゃに振り回すが体は少しも動かせないので責められるがままだ。  
さらに不味いことに衣服が溶かされていってるのか体に触れたイボの感触がドンドンなまなましくなっていく。  
幸い溶けるのは衣服だけのようだったがとても安心などしている余裕もない。  
 
ぐちゅぐちゅと体中に与えられる責めは続き、特に胸や股間部分の動きは激しくなっていく。乳房は何十ものイボイボに揉みこまれ、それぞれが別々に動き回りこのまま溶けてしまいそうな快感が送り込まれてくる。  
その先端の乳首に触れたイボ達は細かく振動するように動いている、アカネの頭の中は気持ちよさで真っ白に染まっていく。  
股間に群がったイボたちは特に複雑にうごめいていた。  
クリトリス周辺のイボたちはその皮をむきあげ、中の真珠を余すところなく磨き上げていく。  
向いた皮の隙間にも入り込み、そこの汚れをこすり落とすように舐めまわす。  
膣周辺のイボたちは膣に浅く潜り込みヒダの一本一本までを擦りたて、穴のまわりも余すところなく責め立てていた。  
「あああ・・・いやああああああああっ・・・・あうう・・・」  
最初の絶頂はたちまち訪れた、唯一自由な首を折れんばかりの勢いでのけぞらせながら、アカネは達した。  
涙を浮かべた目はうれし泣きをしているようにも見え、口から垂れた涎はふき取ることさえできない。  
そんな絶頂の余韻に浸る暇もなく訪れたのは激しい快感に加えて激しい尿意だった。  
イッてしまい緩んだ尿道とその周辺までをイボたちは責め立てるのだ。  
 
「あああああ・・・もれひゃう・・・・あうぅ・・・うみゃだよぉ・・」  
うつろな目をし、意味不明な言葉で喘ぎ続けるアカネに我慢できるはずもなくあっさりと漏れ始める。  
入口を弄られているため尿は一度にはでずジワジワと少しずつしか出せない。  
出したいのにだせないもどかしささえも今のアカネには気持ちよかった。  
そして訪れる二度めの絶頂、オシッコを出しながらアカネは達してしまう。  
絶頂を味わっている間でさえもイボたちの動きは止まらず快感を送り込んでくるのだ。  
愛液、尿、汗や粘液で中は大変なことになっているのかグジュグジュという卑猥な音はさらに大きくなっていく。  
アカネは首だけを振り回しながら何度も何度も果ててしまう。  
やがて股間のあたりのイボたちが動きを変え始めた、その部分がイボごと膨らんでいき膣に潜り込んでいく。  
今まで浅いところばかりをかき回していたのがさらに奥へ入り込んできたのだ。  
「奥が・・・ふあああああああっっっ・あうう・・・おくがあああああああ」  
じわじわと奥へ進みながら膣壁一面を擦り上げていく、それが子宮口にたどり着くまでにアカネはさらに三回イッてしまった。  
 
そしてイボが膣内にまでみっちり包み込んだときアカネの体に広がる快感は暴力的なほどに強くなっていく。  
中のイボたちはあふれる愛液を掻きだしていき、どんどん新しい愛液をアカネから排出させる。  
子宮口までもを弄り、アカネの体に強すぎる快感を絶えず送り込んでくる。  
イッた瞬間には次の絶頂へむけて高められていき自分がいつイッてしまっているのかもわからないのだ。  
もう首を振り回すこともしなくなったアカネは、絶えず小さく痙攣を繰り返すのみであったが。  
植物による無慈悲な責めは終わらない。  
 

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