『 触手とは、人の欲望が具現化したものである。よって、触手の源流は人間そのものに他ならない。  
それ故、その生態は、他のクリーチャーと大きく異なっている。  
 まず、触手は食物を必要としない。生まれた時から死ぬまでに必要なエネルギーを持って現界する。  
そして、エネルギーが尽きるまで捕食活動を繰り返す。  
一部の触手に、捕食対象から、生命エネルギーや魔力を吸収する行動が見られるが、それは単に愉しむ為であると見られている。  
 さらに、触手は、基本的に繁殖能力を持たない。捕食対象がいちいち妊娠しては、快楽を得られる期間が短くなる為である。  
捕食対象を受精させたり、産卵する個体の存在も知られているが、あくまで快楽のためであり、  
それらの個体は、種付けされた捕獲対象の絶望を愉しむという習性が知られている。(参考文献[Ar]pp.48-50を見よ。)  
通常の生物は、繁殖のために性行為が存在するが、触手は性的な欲求のためだけに繁殖を行う。  
 また、触手は全て、高度な知性を持っている。触手は慎重な性格のものが多く、巧妙な罠を張る。  
たとえ、外見が原始的な生物であっても、決して油断してはならない。  
多くが人語を解し、不可解な語尾変化等のスラングすら確認されている。  
文化的な行動を好み、初等的な宗教や、戒律が存在すると主張する研究者も居る。(参考文献[La]p168を見よ。)  
また、一部のコロニーでは、法律を作り人の行政機関を模する例が報告されている。(論文[Ni]より。)  
 次に身体機能の概略を述べよう。頭脳については、上に挙げた通りである。  
人間は、特定の発情期を持たない珍しい哺乳類の一つである。  
その影響を強く受け、触手の身体は、極端なまでに性行為に特化している。  
体重の50%以上が生殖器で占められ、体表の殆どを粘膜組織が覆っている。  
その脆弱な粘膜組織をコーティングし、保護するのが粘液である。  
魔力で生成される粘液は、銃火器、放射線、生物化学兵器、魔力の通わぬ全ての攻撃を退ける。  
また、多くの個体が粘液に催淫効果等の特殊な機能を持たせている。  
ある触手学者は、粘液が捕食対象を傷つけず、衣服のみを溶かす、驚くべき場面を目撃したという。(論文[Ca]より。)  
 ここまで効率的な生態を持つと、画一的なデザインになりそうなものなのだが、実際には、どれ一つとして同じ個体は存在しない。  
大雑把に挙げても、動物型、植物型、スライム型、寄生型、半人型、と多岐にわたり、触手の分類は一つの大きな学問分野となっている。  
 かつて、著名な推理作家チェスタトンは、次のように述べた。  
 
 「狂人とは理性を失った人間のことではない、理性以外のあらゆるものを失った人間のことである」  
 
彼の言葉に従えば、理性と効率の申し子たる触手は、在り方そのものが狂気であると言えるだろう。  
 後の章で詳しく触れることになるが、中でも寄生型触手は他に類を見ない奇怪な行動が知られており……』  
 
―――魔法学院図書館所蔵「触手概論(第一章:導入および基礎的な事実)」より。  
 
 それは巨大な一つ目の怪物だった。サイクロプス―――その強大な魔物は、幾人もの魔法少女を涅槃へと送っていた。  
少女の表情が凍る。万全の状態をもってしても、勝てるかどうか。なんとしても逃げなくては。  
絶望的な状況で、少女はロッドに縋り付くようにして、立ち上がる。ふらつく足に渇を入れ、ロッドを構えた。  
もう、これ以上、ロッドの力を使うわけには行かない。かと言って、自らの魔力など、とっくに尽きている。頼れるのは体術のみ。  
 体術?笑わせる。立っていられるだけでも、奇跡だというのに―――心中に自らの皮肉な笑い声が響いた。  
悲観的な自らの思考を脇に追いやって、考える。  
 何か、何か方法はないのか。巨人の手が伸びる。だが、少女の足は一歩も踏み出せない。  
巨人は造作も無く、少女を小さな人形のように摘み上げた。  
ここまでか……少女は、ロッドに力を込める。その時、意外なことが起きた。  
「待テ。危害ヲ 加エル ツモリハナイ。」  
巨人がしゃべった。地獄から響くような、低い声だった。今、こいつは何と言った?  
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに触手の所へ行かなければならぬ。放せ。」  
巨人が顔を近づける。少女は生臭い息に、顔をしかめた。  
「離サヌ。持物 全部 置イテイケ。」  
少女は怪訝に思う。追剥をするサイクロプスなど聞いたことが無い。  
「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから触手どもにくれてやるのだ。」  
がははははと、巨人が嘲笑う。  
「ソノ、体ガ 欲シイノダ。オ前ニ ワシノ 仔種ヲ クレテヤロウ。」  
そういうことか―――化け物どもときたら、女を犯すことしか考えていない。少女は、射殺す様な眼差しで、一つ目を睨みつける。  
「誰が貴様なんぞの仔種を欲しがるものか。怪我をしたくなかったら、早々に立ち去るがいい!」  
朗々と少女の啖呵が響く。巨人は、どこ吹く風と受け流し、唇の端を吊り上げた。  
「ソウカ?先程ハ 随分ト 楽シソウニ 見エタガナァ。」  
どくん、と心臓が高鳴る。……見られていた。少女の顔が、怒りと羞恥で朱に染まる。  
「くっ!貴様ぁ!」  
あからさまに動揺する少女を見て、巨人が嗤う。  
「オ前ノ様ナ 好キ者ハ アンナ フニャフニャノ 出来損ナイヨリ ワシノ 一物ノ方ガ 楽シメルノデハナイカ?」  
巨人の容赦ない言葉が、少女の心を抉る。少女は、目を逸らして俯いてしまった。  
視界に、巨人の剛槍が映り込む―――ごくんと少女の喉が鳴る。  
少女は、自分が無意識の内に、生唾を飲み込んだことに気づかない。  
「ふ、ふざけるな!そんな貧相な物など、私の趣味ではない!さては、触手どもの命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」  
屈辱を振り払うかのように、少女は半ば絶叫した。  
巨人の態度が目に見えて変わる。迂闊にも、誇り高き巨人の逆鱗に触れたのだ。  
巨人は、ものも言わず、いきなり少女を握る手に力を込めた。少女のか細い胴が、ぎりぎりと締め付けられる。  
巨人の鋭い爪が腹に食い込み、コスチュームに血を滲ませた。  
「や、やめ……あぎいぃぃいい!!」  
背骨が軋みを上げ、肺から空気が無理矢理押し出される。息が出来ない。  
「触手?アノヨウナ 下等ナ モノ供ト 一緒ニ スルナァ!」  
巨人の声が、腹の底に、ずんと響く。少女の足は力なく空を蹴り、手は巨人の指を開こうと、無駄な努力をしていた。  
「う……あぁ……あっ……」  
少女の手と足が、電池が切れたように、動きを止める。少女の目が、ゆっくりと閉じられた。  
妄執のなせる業か、それでも少女の利き手は、健気にもロッドを離そうとはしなかった。  
ただの人形になってしまった少女を、見つめる巨大な一つ目に困惑の表情が浮かぶ。  
「シマッタ。殺スツモリハ ナカッタノダガ。」  
巨人は、少女の片足を掴んで、ぷらぷらと玩具のように揺すってみる。  
少女の股がだらしなく開かれ、濡れそぼった少女の秘裂が巨人の目に晒された。  
興味の赴くままに、ぴん、と少女の股間を指で弾く。  
「……っ!」  
びくっと、海老の様に、少女の背中が仰け反る。巨人は面白がって、ぴんっぴんっと、何度も少女の股間を弾いた。  
「っ!!……っ!……っ!!」  
その度に爪先がクレヴァスに食い込み、巨人の指先がたちまち少女の愛液でコーティングされる。  
少女の口許に、細かい泡が浮かんだ。その閉じられた瞼の奥で、少女は白眼を剥いていることだろう。  
だんだんと、少女の反応が弱弱しいものに変わる。  
 もう、意識を失ったのか。巨人は、ふんっ、と鼻で嗤う。  
「詰ラヌ。人間ハ脆クテ カナワン。」  
巨人が少女の顔を覗き込んだその時―――視界が赤で塗りつぶされた。  
 
「ギァアアー!目ガッ!目ガァ!!」  
少女がロッドの先端を、巨人の眼球に突き立てていた。少女はひょいと、からだを折り曲げ、  
「気の毒だが正義のためだ!」  
と、さらなる猛然一撃、たちまち巨人は、少女の足を手離す。  
「がっ!!」  
少女は、受身も取れず顔から地面に激突する。口の中に鉄の味が広がった。歯が何本か折れたようだ。  
「貴様アァァァ!!!」  
巨人が棍棒をめくらめっぽう振り回す。風は唸りを上げ、掠った地面にはクレーターができる。  
少女は恥も外聞もなく、必死に地面を這った。運良く、痛みが良い方向に作用する。一時、体の疼きを忘れることが出来た。  
少女は、触手溜りの投入口に身を滑り込ませる。  
巨人が暴風雨のように荒れ狂う。ずしんずしんと、滅茶苦茶に棍棒が振り下ろされる。  
凄まじい衝撃は分厚いコンクリートすら震わせた。直撃すれば、ひとたまりもないだろう。  
少女は自らの体を抱いて、がくがくと震える。  
「女ァアアアア!!!ドコダァアアアア!!!」  
少女は生まれて初めて、心の底から恐怖していた。とくとくとく、早鐘のように心臓が鼓動する。見つかれば殺される。  
少女は、幾度となく恐怖に泣き叫びたい衝動に駆られ、これではならぬ、と気を取り直しては、歯を食いしばった。  
それでも、少女の奥歯は、かちかちと音を立てる。  
―――死にたくない。  
 魔法少女は正義の味方だ。戦いの中で命を落とすことも珍しくない。  
―――こんな所で死にたくない。  
慕っていた先輩が、自分を庇って四肢を失い、大蜘蛛に捕らわれた。  
必死に追って辿り着いた巣には、延々と卵を産み続ける先輩がいた。  
殺せと自分に命じるソレを、少女は燃やした。  
―――いやだ。  
自分を慕っていた後輩が、先走って罠にはまり、魔法植物に取り込まれた。  
顔だけになって、殺さないでと泣き叫ぶソレを、少女は叩き潰した。  
―――何も抵抗出来ずに、死ぬのだけはいやだ。  
 少女とて、戦いの中で死ぬ覚悟くらい有る。もし、戦うことができたならば、恐怖を感じることすら、なかったであろう。  
三日に渡る陵辱の連鎖は、確実に少女の精神力を削り取っていた。  
 
一刻も早く、この穴蔵から出て、向かわなければ、間に合わぬ。しかし、立ち上がることができぬのだ。  
こうして、膝を抱えて、小さな子供のように隠れることしかできない。  
『衣擦れに感じ入って足腰立たぬのだろう?この恥知らずめ!』ち、違う。  
少女は天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。  
ああ、あ、触手の濁流を泳ぎ切り、無数の触手を打ち倒し、ここまで突破して来た。真の勇者よ。  
『触手などにイキ狂わされる、救い難い淫乱が?』  
違う!―――くちゅ。  
今、ここで、臆病風に吹かれ動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。  
『臆病風?あそこは、巨人の槍で貫かれることを、こんなにも望んでいるのに?』  
違う!違うっ!!―――くちゅり。  
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく触手どもの思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。  
『自ら望んだことだろう?触手に滅茶苦茶にされたかったのだろう?』  
そ、そんなこと……無い!―――くちゅ……くちゅ。  
ひんやりとしたコンクリートにごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。コンクリートの冷たい感触が心を蕩かせた。  
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。  
私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。  
『そうだ。お前は常に、陵辱される選択肢を選んできた。』  
違……う―――くちゅ、くちゅ、くちゅ。  
神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで戦って来たのだ。私は不信の徒では無い。  
『お前は化け物に犯されたくて、戦ってきたんだ。』  
やめろ!―――ぐちゅ、ぐちゅ。  
ああ、できる事なら私の胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。  
愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。  
『では、胸は悪魔に捧げよう。幾度と無く精液で白く染め上げられ、触手に乳首を勃起させる穢れた胸は、悪魔にこそふさわしい。』  
「もう……やめてくれ……」  
少女は、いつの間にか、声に出して答えていた。  
外からは、ずぅん、ずぅん、と巨人が荒れ狂う音が未だ伝わってくる。  
内からは、自らを責め苛む少女自身の声が響いてくる。どこにも逃げ場が無い。少女の心が軋む。  
このままでは、頭がおかしくなりそうだ。少女の弾劾は続く。  
『また、仲間を見殺しにするのか?おまえの被虐趣味のせいで、あの小さき友は死ぬというわけだ。度し難い色狂いだな!』  
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な女だ。  
いいや、お前は不幸ではないよ―――内に巣食う黒い感情は、羽毛のように柔らかい声で少女に囁きかける。  
「え?」  
だって、今はこんなにも幸せじゃないか―――ぴちょん、と洞窟の中で水音が響く。  
少女の指先は愛液で濡れていた。  
「あ……ああああああぁ!!」  
指が……無意識のうちに穴を掻き回し、皮の上からクリトリスを扱いていた。  
はっと気づき、死に物狂いで自制心を働かせる。指は、次第に緩慢な動きになっていく。  
しかし、止まらない。止められない。ゆっくりと着実に少女は絶頂へと追い詰められて行く。  
「んんんんんっ……と、止まれ……止まれぇ!」  
慈しむ様な、ゆったりとした動きは、愛撫と呼べるかどうか疑わしい。そんな程度の刺激にすら、感じ入り、登り詰めてしまう。  
「んくっ……あひぃぃいい!」  
長い時間を掛けてのアクメは、少女の体の淫蕩さを証明していた。足元に広がる水溜りが、少女にその事実を突きつける。  
「あはっ?……あはははははは……」  
少女は、壊れた笑みを浮かべる。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺いた。  
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。  
ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。  
理性が隅へと追いやられる。少女は、自虐の快感に酔いしれていた。  
―――その時、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。  
 
「ソッチニ 居ルナァアアアア!!女ァアアアア!!」  
 少女が我に返る。  
誰かが私の代わりに追われている。私のせいで襲われている!なんとかしなければ。  
「た、助けないと……」  
だが、どうすれば?私に何が出来るというのか。絶頂を味わったばかりで、腰が抜けている。  
私は化け物から隠れて、オナニーする様な、変態なのだ。こんな私に誰が救えよう?  
ここに隠れて、ひぃひぃ喘いでいるのがお似合いだ。  
「あ、あいつは目が見えないんだ。上手く逃げられたのかも……」  
あんな馬鹿でかい図体で、暴れまわっているんだ。目立たないわけがない。きっと、発見した時には、十分な距離があったはずだ。  
とっくに逃げているだろう。そうだ、そうに違いない。  
私が出て行く必要なんて無いんだ―――少女の心は折れかけていた。  
 ふと耳に、ぽたり、と水滴が落ちた。  
少女は、ひゃんっ!と短い悲鳴をあげる。そっと頭をもたげ、息を呑んで上を見上げた。  
すぐ頭上に、スプリンクラーがついているらしい。よろよろ起き上って、魔法で指先に小さな火を灯す。  
すると、スプリンクラーから、じゃあじゃあ、シャワーのように水が湧き出てきた。  
その水を吸い込まんばかりに、少女は上を見やって、口を開けた。血と、土で汚れた口を濯いで、ひとくち飲んだ。  
 ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。  
歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。  
義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。  
ロッドのルビーは赤い光を少女の身に投じ、双眸が燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。  
私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。  
もし、私が我が身可愛さに、人を見捨てたと知ったら、妹は、わが友は、どう思うだろう。  
私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。上手く逃げられたかもしれない、などと気のいい事は言って居られぬ。  
私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。戦え! 魔法少女。  
 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。  
五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。少女よ、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。  
再び立って歩けるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。  
少女は、数回深呼吸して、力の限り叫んだ。  
「おおい!!私はここだぁぁ!!このウスノロめぇ!!」  
巨人の足音が止まる。よし!かかった。  
「おい!めくらの化け物ぉ!!耳まで悪くなったのかぁ?こっちだと言っているのが聞こえないのかぁ!!」  
巨人が ずしんずしん と音を立てて近づいてくる。この隙に、逃げてくれるだろう。義務は果たした。  
次は私の番だ。一刻も早く、この穴蔵から抜け出して、少しでも遠くへ離れなければ。そして、友のもとへ向かわねば。  
少女はコンクリートの壁を支えに立ち上がる。はぁはぁ、と荒い息を吐きながらも、なんとか少女は歩き出した。  
 
体の火照りがある程度治まったとはいえ、入り口をよじ登るだけの体力は無い。少女は、出口の触手プールの方へと向かう。  
急がねばならない。もし……もし捕まってしまったら、あの逞しいアレで……  
―――少女の奥から、こんこんと泉が湧き出る。  
「ふ……あ……よ、余計なことを考えるな!」  
少女は自らを叱咤し、歩を進めた。だが、一度燃え始めた情欲の炎は、そう簡単に鎮火できるものではない。  
もし、捕まってしまったら、巨人は即座に私を貫くだろう。  
前戯も何も無く、奥まで挿れられて……  
―――少女のクリトリスが肥大化しコスチュームを押し上げる。  
「あぁん?くぁ……」  
玩具みたいに扱われるんだ。自分が気持ちよくなるための道具として、私の体が使われるんだ。  
そして、巨人はすぐに我慢できなくなって……  
―――水に濡れたコスチュームが、次第に尻に食い込んでくる。  
「お尻……きつ……いぃ……」  
中出しされるんだ。私が泣いて、危険日だから止めてって頼んでも、そうか、それは妊娠が楽しみだとか言って、何度も中出しするんだ。  
そんな、ひどいことをされてるのに私は……ぁ……  
―――ぴったり張り付いた布地が、乳首を勃たせた双房全体を擦り上げる。  
「んぁ……くふぅ……」  
感じちゃって、よがり声を上げるんだ。乱暴にされて、なのに何度も何度もイっちゃって、恥ずかしい声を聞かれるんだ。  
巨人は、お前はそんなに精液が好きなのかと嗤ってぇ……  
―――クリトリスの包皮が剥けて、直接コスチュームと擦れ合う。  
「くあぁぁああ!こ……こんなことでぇぇ!!」  
私の口の中に射精するんだ。溢れた精液が、体中に降り注いで、全身真っ白にさせられちゃうんだ。  
毎日毎日、犯されて、中出しされて、妊娠してもぉ……  
―――Tバック状に食い込んだ生地がアナルを刺激し、露になった尻がぷるぷる震える。  
「も、もう少し……だ……ふ、ふあぁ……」  
我が子の通り道を広くしてやろうって言って、私のこといじめるんだ。ああ、そんなに広げちゃったら、元に戻らなくなっちゃうよぉ……  
出産するまでの間、ずっとずっと調教されてぇ……  
―――足がもつれそうになり、踏ん張って耐える。余計な力が、三つの弱点に同時に加わる。  
「だ……だめぇっ!イ……イクぅ……」  
出産したらぁ、赤ちゃんがおっぱい吸うのぉ。私はぁ、あそこ貫かれてながら、おっぱい吸われて、  
赤ちゃんの前でイっちゃうのぉ……  
―――体を支えようとロッドに縋り付き、股間が柄に密着する。体重が豆に掛かり、くにゅ、と潰れた。  
「イクっ……イっグゥゥ!!」  
少女は、立ったまま忘我した。意識に桃色の霧がかかる。一時的に持ち直した精神力が、尽きようとしていた。  
―――その時、光がさした。  
出口だ!少女の頭の中の霧が薄れていく。完全に快楽に溺れる前に、気を取り直すことができた。  
少女は、コスチュームごと筋に食い込ませたロッドを離し、尻の食い込みを直す。  
こんな所で棍棒の一撃を食らって、生き埋めにされるなど、ごめんだ。幸い、先程から巨人の足音は聞こえてこない。  
また、私の居場所を見失ったのだろう。少女は勇気付けられて、光の方へ足を踏み出す。  
あと……あと一歩で光の下へ。少女は青空を見上げた。きれいだな、空。  
―――次の瞬間、巨大な影が、空を覆いつくした。  
逆さになった一つ目が、少女を見つめていた。傷一つ無い巨人の瞳に、少女の顔が映り込む。  
「ぅ……ぁ……わ、私……笑って……る……」  
巨人の瞳の中の少女は、目から歓喜の涙を溢れさせ、淫靡な笑みを浮かべていた。  
少女は、『ああ、きれいだな』と思った。  
 
『この術式は、複雑かつ精密な詠唱技術を要求するものの、特別な触媒や、精緻な魔方陣などは必要としない。  
多くの禁呪が、発動に際して多大な犠牲を術者に強いるのに対し、代償無く絶大な効果が得られるのである。。  
全身の細胞を活性化させ、自動的に損傷を修復する。その速度は、細胞の分裂速度に比例する。  
即ち、皮膚細胞や、粘膜、筋繊維などの再生は速く、神経、脳細胞などの再生は比較的遅い。  
他にも、細菌やウィルスなどの異物を排除し、身体を正常に整える機能も付随している。  
怪我や疾病に対して、完全な抵抗を備えることが出来る。ほぼ不死と言って差支えない。  
 では、なぜこの術が禁呪に指定されているのか?それは、激烈な副作用にある。  
微細な傷や、異物に対しても大量のIgE抗体を作り出し、正常な細胞をも傷つけてしまうのだ。  
過剰なまでの防衛行動が、一種のアレルギー反応を引き起こし、ショックで心臓が停止する。  
しかし、即座に術が作動し、蘇生させられ、死ぬことは出来ない。  
 過去この術を試みた者は、例外なく狂死している。  
事実、この術の発明者たる宮廷魔導師は、副作用に耐え切れず、毒をあおり、銃弾を複数撃ち込んでも死に切れなかった。  
そこで弟子に命じ、自分を殴らせ気絶したところで、氷の張った川に穴を開けて投げ込ませ、ようやく死ぬことが出来たのである。  
 この事例では、低体温症に陥り、細胞の活性が抑制された為、生命活動が停止したが、通常は首でも切断しない限り死ぬことはない。  
 また、理性を末期まで保てた発明者には、特別な耐性があったと見られている。  
実際、術を試みた殆どの者は、その場で発狂しており、解呪も非常に困難である。』  
 
―――魔法学院図書館蔵書「禁呪全集第五巻」より。  
 
 ぼたぼたと、巨人の口から涎が溢れ、少女の体を穢す。少女は完全に硬直し、ただ、巨人の中の自分の姿に見惚れていた。  
「ガァァアア!!!メス ダァァアア!!!」  
巨人の常軌を逸した叫び声に、少女は正気を取り戻す。間一髪、振り下ろされた巨人の手を、転がるようにして避けた。  
地響きがして、少女が居た地面に手形が残る。少女の背筋が凍りつく。なぜだ?私を犯すのではなかったのか。  
巨人の目は狂気を湛えていた。狂っている。いや、そんなことより!  
「お、お前……なんで、目が……」  
少女の突きは、完全に網膜まで達していたはずだ。こんな短期間で、回復することなどありえない。少女の頭の中で、疑問符が踊る。  
戦いでは、一瞬の迷いが致命傷となる。気づいた時には、少女は巨人の拳によって、宙を舞っていた。  
「が……は……」  
プールの壁に強かに叩きつけられ、少女は磔になる。ぶ厚いコンクリートが、めこっ、と凹んでいた。  
少女はそのまま、ずるずると崩れ落ち、足を伸ばしたまま動けない。ぱらぱら、とコンクリートの小さな欠片が、少女の体に降ってきた。  
あ、あれ?おかしいな。どうしちゃったのかな?わ、私は犯されるはずなのに……めちゃめちゃにされて、孕まされるはずなのに。  
「い、痛い。痛いよぅ……」  
少女は、自身の喪失感の正体に気付き、愕然とする―――そんな……私は、犯される事を望んでいた?  
突如、少女は吐き気を催す。空の胃から、すっぱい液体が逆流してきた。  
「ごほっ……げほっ!げほっ!!」  
吐しゃ物に、黒い血が混じる。呼吸をする度に、胸の奥に鋭い痛みが走る。とっさにロッドでガードしたが、あばらが数本逝っていた。  
内臓が傷ついたのかもしれない。このままでは……確実に殺される。  
殺らなければ殺られる―――少女は、ロッドの力を解放することを決意した。  
だがそれは、彼女の使い魔を見捨てることを意味する。少女の目に慙愧の涙が溢れる。  
 小さき友よ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。  
いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。  
ありがとう、忠実なる従者よ。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。  
主と使い魔の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。小さき友よ、私は戦ったのだ。  
君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。触手の海を突破した。  
妹に取り憑いた触手の姦計からも、するりと抜けて必死に足を引き摺って来たのだ。私だから、出来たのだよ。  
ああ、この上、私に望み給うな。  
 少女はロッドを持つ利き腕を掲げ―――腕が上がらない。からん、と音を立てて、愛液に塗れたロッドが転がった。  
少女は自らの利き腕に目をやって愕然とする。肩が脱臼していた。認識した途端に痛みが伝わってくる。  
「がっ!……あああああああああ!!」  
少女は残った手で肩を抱いて、絶叫した。痛みで何も考えられない。そうしている間にも、巨人は一歩、また一歩と近づいてくる。  
ついに、少女の上に巨人の影が落ちた。間に合わなかった……がたがた、と全身が震える。  
少女は残った精神力を総動員して、顔を挙げ、巨人を、きっと睨みつける―――少女は驚愕し、目が限界まで見開かれた。  
巨人の姿は異様であった。ぎらぎらとした目は充血し、少女を凝視している。口は半開きで、だらだら、と涎を垂れ流している。  
そして―――そそり立つペニスは、何もしていないのに、白濁液を撒き散らしていた。少女の体に、白い雨が降り注ぐ。  
少女は、あまりの非現実的な光景に眩暈すら覚える。巨人は明らかに発狂していた。  
 少女は、悪と戦い勝利することよりも、敗北と陵辱を期待したのだ。  
許されない望みを抱いてしまった罪深い少女に、神が罰を賜る。  
―――それは、剥き出しの暴力だった。  
 
巨人は足を上げ、  
「ワシ ノォ メス ダァァアア!!」  
少女の伸ばした足の上に、振り下ろした。ごきゅ、という鈍い音が辺りに響く。  
「あ……あ……」  
少女の目は、一瞬、現実を認識できなかった。弱弱しい声を上げる。痛みは、一拍置いてからやってきた。  
「あっぎいゃぁあああああああああ!!!」  
少女は頭を振りたくって、苦痛に悶える。痛みが激しすぎて、気絶することすら出来ない。巨人の足がゆっくりと上げられる。  
そこには、少女の足だったモノがあった。  
ぼろぼろのニーソックスに覆われた両足の膝は、完全に砕け、おかしな方向に捻じ曲がっている。  
壊れたブーツの中で、足の指は全て潰れて、赤黒い肉塊と化していた。どんな名医をもってしても、切断するしかないだろう。  
魔法をもってしても、歩けるようになるかどうか。少女の目が、ぐるんと白目を剥く。  
「おぉぉおおおおぉぉ……」  
絶叫が、獣染みた唸り声へと変わる。少女の脳は、痛みの信号に麻痺し、肉体の統制を失った。そして―――  
ぷっしゃあぁぁああ―――少女のへたり込む地面に水溜りが広がる。  
むり……むりむりむり―――少女の尻の布地が窮屈そうに、もこもこ、と膨れた。  
周囲にアンモニアの匂いが、立ちこめる。少女は、前後の穴から垂れ流す。少女は、体が壊れていくのを感じていた。  
巨人は、少女の、ぶらん、と垂れ下がった利き腕を掴み持ち上げる。少女の全体重が、脱臼した肩に掛かった。  
「いぎぃぃいいいいい!!!」  
気狂いのような叫びをあげ、めちゃくちゃに、自由になる腕を振り回した。少女を無視し、巨人はコスチュームに手を掛ける。  
魔力をほとんど失い、ただのレオタードと化した魔法少女のコスチュームは、容易く引き裂かれた。  
重しを抱えたコスチュームは、重力に従って地面に落ち、べちゃあ、と音を立てた。  
少女の全てが大気に晒される。少女の抵抗が、次第に弱々しいものへと変わっていった。  
「い、いや……いやぁ……」  
巨人は、ぜいぜい、と荒い息を吐きながら、少女の胴体を両手でしっかりと握る。  
少女の虚ろな視線の先には、淫乱な売女を裁く槍が待ち構えていた。それは、以前より二周り以上大きく膨らみ、そそり立っていた。  
既に、真っ青になっている少女の顔から、さっと血が引き、蒼白となった。あんなの、挿れられたら―――  
「や、やめろ……そ、そんなの入らな……い……」  
秘所に槍の先端があてがわれる。巨人はそのまま、ぎゅうぎゅう、と押し込み始めた。  
「オンナ!!オンナァァアア!!」  
秘裂が、めりめり、と音を立てて広がっていく。鍛えようの無い場所の痛みに、少女は悶絶した。  
「あぎぃ……むっ無理だ!い、痛!痛いぃ!!」  
その間、ずっと巨人のペニスは、どぴゅどぴゅ、と小刻みな射精を繰り返す。  
少女の恥ずべき液体と、巨人の精がローションの役割を果たし、下の口は裂ける事無く、なんとか亀頭を受け入れた。  
 百舌の早贄が完成した。  
「ひぎっ!ひぎぃぃいいい!!ひぎぃぃぃ……」  
少女の人語に無い叫びが、辺りに木霊する。お腹の圧迫感で、気が変になりそうだった。  
とっくに気が触れている巨人は、少女の事情など、知ったことではない。  
「ガハ ガハハハハハハ!! 入ッタ! 入ッタゾォオオオ!!」  
間髪入れず、激しいストロークが始まった。ピストンの度に、少女のお腹が、ぼこっと膨れる。  
痛みしか感じない。股関節が、みしみし、と悲鳴を上げていた。  
「あぎゃぁあ!!あぎっ!ぐぁあ!!」  
少女の声が掠れる。幾度も幾度も悲鳴を発した喉は、潰れかけていた。  
一欠けらの理性が、少女に、このままでは死ぬと警告する。だが、少女の心は既に、へし折られた後だったのだ。  
 放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。  
触手どもは私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。  
私は触手どもの卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は触手の言うままになっている。  
私は、もうすぐ逝くだろう。触手どもは、そろって合点して私を笑い、そうして事も無く我が友を処刑するだろう。  
そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。  
小さき友よ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか?  
 少女の懺悔は、無情にも中断される―――少女を貫く杭が、膣内で、また一回り大きくなったのだ。  
ごきっ、と鈍い音がして股関節が砕けた。  
 
「がっ!!おあああ!!!うぁ……あぁ……」  
はちきれそうな肉壁が、どくどく、と杭が脈打つ感覚を脳に伝える。一際、大きな波が来ようとしていた。  
限界まで広がった入り口が、軋みを上げる。  
「あ……や……さ、裂け……なっ中……だ……め……」  
どびゅう、と少女の膣内で、爆弾が破裂した。しっかりと栓をした穴の中で、精液が荒れ狂う。  
子宮は完全に、巨人の白濁液で満たされ、少女の腹が、ぼこぉっ、と膨らんだ。  
凄まじい衝撃に、ついに秘裂が―――裂けた。  
「っ!っ!!」  
声が出せない。少女は、餌を待つ雛鳥のように口を、ぱくぱく、と開閉させていた。少女の意識が闇に閉ざされる。  
 ぴくぴく、と痙攣するだけになったソレを、巨人は引き抜く。ソレの股間から、だぼだぼ、と白い液体が零れた。  
そのまま、巨人はごみの様にソレを投げ捨てる。ソレは、汚れたコンクリートの上を、ごろごろ転がり、壁にぶつかって止まった。  
巨人の意識も限界であった。巨大な一つ目が白目を剥く。  
「ゥ……ボ……ァ……」  
巨人はその場に崩れ落ち、動くのをやめる―――壊れた二体の人形がそこにあった。  
 少女の全身が光に包まれる。体の汚れが、光の奔流によって洗い流される。  
髪の色が変わり、襤褸切れと成り果てたコスチュームの残骸が消滅する。  
光球は一際大きく輝いた後、弾け、そこには、学生服を纏った、ただの女学生が残された。  
 少女が覚醒する。  
「わ……たし……生き……てる……の?」  
自由になる腕で、壁に寄りかかり、身を起こす。少女の視線の先には、倒れた巨人が有った。  
なぜ?という疑問より先に、生きているという喜びが彼女の心を満たす。  
少女は、脱臼した肩を壁にぶつけた。  
「ぐっ!!うぅ……」  
ごきん、という音がして、肩が嵌る。生への実感がわく。激痛すら、今の少女にとっては、恩寵である。  
 勇気を振り絞って、これまで目を背けてきた、足の方へと視線を送る―――ひどい、ありさまだ。  
痛みが伝わってこない。完全に麻痺している。もう、二度と戦えないだろう。それどころか、一生車椅子かもしれない。  
ここは、学院の施設だ。これだけのことがあったのだ、程なく学院のスタッフがやってくるだろう。  
私は、速やかに保護され、治療を受けることになる。友を見捨てて、私だけが、おめおめと生き残るんだ。私は、それを喜んだのだ。  
 ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。学院には私の居場所が在る。妹も居る。  
学院上層部は、まさか戦えなくなった私を学院から追い出すような事はしないだろう。  
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。  
それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。  
どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉。―――四肢を投げ出して、うとうと、まどろむ直前、フレアスカートに大きな滲みを見つけた。  
「そうだ……私はあいつに……」  
 少女は悔しさに、涙を滲ませた。光は、少女の体の中までは、清めてくれなかったのだ。  
私は惨めに敗北し、中出しされた。それに、今日は危険日だ。少女の内に、絶望感が広がる。  
もし、妊娠してしまったら、堕胎は許されないだろう。利用価値の無くなった魔法少女は、学院の研究者の玩具だ。  
貴重な試料だと、目を輝かせて、体の隅々まで調べられる。私は、怪物の仔を産まされることだろう。  
「か、掻き出さない……と……」  
少女はスカートを捲る。下着のアニメヒロインのプリントが、白く穢されていた。股間の傷に触れないように、そっと下着をずらす。  
どろり、と巨人の精液が垂れた。恐る恐る指を挿れる。  
 
「は……ん……くぅ……」  
触れただけで、擦られ過ぎた襞が、ぴりぴりする。指だけで掻き出そうとするが、上手くいかない。  
両手を使って、秘唇を押し広げた。自分の罪の象徴を、神に見せ付けるかのように、秘所の内側を外気に晒す。  
「ん……ふ……あぁ……」  
苦しげな息遣いが、徐々に甘いものへと変化する。掻き出す指に反応して、豊かな泉が湧き出る。  
少女は明らかに快楽を貪っていた。  
「お、奥……も……せ、精液……出さない……と……」  
指が穴の奥まで突き挿れられ、壁を擽る。巨人の精液を洗い流すかの様に、大量の愛液が溢れた。  
潤滑剤は本来の役割を果たし、指の動きをいっそう滑らかにする。マゾヒスティックな、痛み混じりの快感が心地よい。  
「あんっ?あぁん?んひぃぃいい!だっだめぇっ!」  
少女は登り詰めそうになるのを、必死に抑えた。私は、やりたくてこんなことをしてるんじゃない。仕方なくやってるんだ。  
体が勝手に反応してるだけなんだ。私は、おかしくなんてなってない。淫乱なんかじゃない。  
妊娠なんかしたら、もう、戦えないではないか。もっとしっかりと、きれいにしなくては。  
そうだ。襞と襞の隙間に、精液が残っているかもしれない―――少女は、肉壁に爪を立てた。  
「んはぁぁああ!あっひぃぃいい!!こ、これ……しゅごいぃぃいい!!」  
少女は、両手の爪で、めちゃめちゃに中を引っ掻き回した。粘性のある透明な液体に、血が混じりこむ。  
傷が増える度に、指の動きが激しくなっていく。あそこが少女自身の手によって壊されるのも時間の問題だろう。  
「こ、これっ!これっ……いいのっ!あはっ?あはっ?あははっ?」  
少女の心もまた、壊れ始めていた―――その時、ずん、という音と共に、地面が揺れた。  
 いつの間にか、意識を取り戻していた巨人が、立ち上がったのだ。巨人は少女に目を向けると、ふらふらと足を踏み出した。  
どすん、どすん、という足音は、少女の旅立ちへのカウントダウンだ。巨人を認識した少女は、歓喜に震えた。  
少女の指が、さらに加速する。末期の悦楽を貪る少女は、声の限りに叫んだ。  
「殺せ!!殺せぇぇええ!!」  
ああ、死ぬんだ。私は殺されるんだ。よかった。これで、友との約束を破らなくて済む。嬉しい。  
ほら、はやくこの淫売を殺してくれ。約束の刻限より先に、涅槃へ送ってくれ。この穢れた体を清めてくれ。  
逝かせて。はやく逝かせて。イキたい。はやくイキたい。イって、逝きたい。イキながら、逝きたい。  
ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、太陽よ。私は生れた時から正直な女であった。正直な女のままにして死なせて下さい。  
「わ、私を……わらひを……逝か……イかせてぇぇええ!!」  
 しかし、少女の望みが叶えられる事はなかった。少女が絶頂する寸前、巨人の首に、すうっと水平に線が走る。  
その細い線から、ぷつぷつ、と赤い泡が吹き出し、首が滑り胴体から離れていく。巨人の首から上が、ごろり、と地面に転がった。  
残された胴体は切断面から、ぶしゃああ、と間欠泉のように血を噴出し、辺りを真っ赤に染めた。  
ずぅん、と制御を失った胴体が倒れる。少女には何が起こったのか理解できなかった。  
 歓喜の涙でぼやけた視界が、しだいにはっきりとしてくる。  
少女の目が、倒れた巨人の向こう側で焦点を結び、有り得ないものを映し出す。  
「な……んで……お前……」  
少女の顔が、幽鬼を見たかのように強張る。全身を血に染めた黒い人影が、やさしく少女に声をかけて来た。  
「こんなところで、何をしてるんですか?姉さん。」  
彼女は血塗れのまま、天使のような笑顔を少女に向けた。  
 

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