『古来より触手との戦いに於いて、酒は非常に有力な武器として扱われてきた。  
多くの文化圏に於いて、酒は聖なるものの象徴である。我々西洋文明に属する者にとってワインはイエスの血であるし、  
遠く離れた日本でも神に捧げられた酒は「Miki」と呼ばれ、身を清めるとされる。  
 だが、酒自身に魔を祓う力は無い。むしろ、酒の本質は狂気にあり触手との親和性は高い。  
どちらかと言えば、魔性に近い存在である。では、なぜ触手に対する有効な武器となるのか?  
それは、触手との親和性の高さにこそあるのだ。  
 触手の強力な武器の一つは粘液である。ありとあらゆる物理的化学的攻撃を跳ね除け、脆弱な魔力攻撃などものともしない。  
しかし、酒に魔力を通し触手に浴びせかければ、酒が粘液の防壁をすり抜ける役割を果たす。魔力を直接叩き込むことが可能なのだ。  
 
 ここから、少し触手と酒との関係について歴史的経緯を纏めようと思う。前章に於いてディオニューソスが触手の生みの親であると述べた。  
ディオニューソスは言わずと知れた葡萄と酒の神である。ヘーラーに命を狙われたディオニューソスは、  
小アジアを転々としながら葡萄の栽培法とワインの製造法を広め、熱狂的な女性信者を獲得した。  
彼女らは(*1)バッカイ(Bakchai)もしくはマイナデス(Mainades)と呼ばれる。  
ディオニューソスは彼女らを引き連れ、布教活動を続けるが、各地で迫害を受ける。  
そして彼女らは、当時、未開の地であったイタリア半島の中部に安住の地を見出した。  
女たちは神殿を建築し、毎夜毎夜、酒による陶酔と淫靡な狂乱を謳歌していた。  
 ある日、女たちは主に蛇と酒を捧げ、ディオニューソスは女たちの為に新しい生物を創造した。それが触手である。  
(他の伝承によれば、ディオニューソス自身が触手に変身したとも言われる。)  
表の歴史ではディオニューソスの聖獣の一つとして蛇が知られているが、研究者の間では触手であることが定説になっている。  
(召還術に詳しい読者ならば、ディオニューソスを召還する際に用いる触媒が触手とワインであることを思い出すであろう。)  
 触手たちは、昼は山道の入り口で門番を務め、山に迷い込む男たちを八つ裂きにし、夜になると女たちを慰めた。  
ディオニューソスは満足し、更なる信者を求めて旅立った。女たちの楽園では、子が生まれることは無かったが、  
彼が時折連れて戻る信者や、噂を聞きつけて男から逃げてきた女たちにより、山の人口は増え続けた。  
 そのため、イタリア半島では深刻な男女の偏りが生じたのである。現状を憂えた一部族の王であるロムルスは、一計を案じた。  
山の入り口に陣取る八本の巨大な首を持つ触手に酒を飲ませ、その隙に女たちを国へと拉致したのである。  
 ディオニューソスは激怒し、呪いを掛け、ロムルスらを皆殺しにしようとした。(*2)  
しかし、男たちが女を正式に妻として厚遇した上、ディオニューソスをバックス(Bacchus)として神々の一人として奉り、  
美しい神殿を築いた事を知るや、たちまち矛を収めたのだった。  
 残された触手たちのほとんどは地中海世界全域に拡散し、数々の伝説を残したが、  
一部の触手たちは代々、(*3)ウェスタ神官長 (Vestalis Maxima) に仕えることとなる。  
ロムルスの子孫たちは触手を最大限利用し、巨大な帝国を築き上げた。それが、かのローマ帝国である。  
 
・訳注  
*1:日本語では、それぞれ「バッカスの信女」「狂乱の女」と訳されることが多い。  
 
*2:これ以後、ローマ人たちはワインを水で薄めて飲むようになったと言われる。  
 
*3:ウェスタ神官 (Vestalis) は貴族階級の少女で占められ、神官たる間は処女が義務付けられた。  
   この規律を犯したものには触手溜めによる狂乱罪が課せられることとなる。  
   (俗な言い方をすれば“テヴェレ川に放り込まれる”のである。  
    これは、当時のテヴェレ川沿いに触手の巣が多かった為であり、  
    男性は絞め殺され、女性は慰み者とされた挙句苗床となった。事実上の死罪であると言えよう。)  
   ウェスタ神官長はローマにおいて最も権威を持った聖職者であり、触手の最高指揮権が与えられている。  
   しかし、これはあくまで形式上の権限であり、事実上の指揮権は最高神祇官(Pontifex Maximus)にある。』  
 
―――魔法学院図書館蔵書「触手概論(第四章:触手への対処法)」より  
 
 生ぬるい液体の感触がする。幾度も感じたことはあるが、決して慣れる事はない。いや、慣れるような事があってはならないのだ。  
これは生命そのものが流れ出す感触なのだから。同時に触覚は別の情報も伝えてくる。  
「さむい……おねえちゃん……なんだかさむいよぉ」  
 失血から来る震えだった。矢で傷口が塞がっている為、それほど出血は無いように見えるが、体内では血溜りが出来ていることだろう。  
小さな命は風前の灯だった―――どくん……少女の心臓が強く収縮する。  
 少女は激怒した。自分自身が許せなかった。矢の雨は完全に止んでいた。この忌まわしき一矢は最後の一波だったのだ。  
ほんの数秒、いや数瞬だけでも少女が持ちこたえていれば結果は変わっていたかもしれない。  
憤怒のアドレナリンで沸騰する脳を無理矢理抑えつけ、少女は道を探す。  
 残された魔力では、怪物どもを血祭りに上げることなど到底不可能だ。かといって、この子を抱えて逃げることも出来ない。  
連中に私の姿は見えていないのだ。程なく矢を補充し、めくら撃ちを再開するだろう。そうなっては、人質二人が危険だ。  
それに、この子の状態では長くは持たない。安全な場所へ避難する前に死んでしまうだろう。  
ならば―――少女の選んだ、たった一つの冴えたやり方は、あまりにも屈辱的なものだった。  
 なけなしの魔力を振り絞り、男の子に固定化の魔法を掛ける。これでしばらくは持つことだろう。  
少女はぐったりした男の子の体を静かに横たえると、最後の魔力が尽きたのか地に臥した。衝撃が全身を駆け巡る。  
そのまま、ぴくぴく痙攣し、イき続けた。  
「あぁっ!?んっふぅ♥……ふぁうぅ……」  
 姉として情けないにも程があるが、あとは妹に託すしかない。こんな私にできることは、この身を捧げて少しの時間を稼ぐくらいだ。  
 少女は絶頂の電流に痺れながらも、手足に鞭打ち、身を起こした。生まれたての仔馬のように四肢が震え、双房がたゆんと揺れる。  
四つん這いの姿勢で、敵をしかと睨みつけた。オークがよろめきつつ、近づいてくる。ゴブリンどもも整然と行進を始めた。  
 少女はそれを目撃して最後の勇、先刻、触手の海を泳いだように青々茂る草を掻きわけ、掻きわけ、  
「私だ、愚か者!殺されるのは、私だ。憎い仇だ。貴様らの頭を肉隗にした私は、ここにいる!」  
 と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついにオークの足元に跪き、また一歩踏み出さんと上げられてゆくオークの片足に、齧りついた。  
魔物どもは、どよめいた。人外の言語で、何だ?どうなっている?と口々にわめいた。少女の不可視の術式は、ほどかれたのである。  
驚いたオークは無造作に少女を蹴り飛ばした。  
「げはっ――――――!!あが……」  
 放物線を辿った少女が、無様に顔面から磔台の根元に突っ込む。大きな運動エネルギーが太い十字架すら揺さぶった。人質達が悲鳴を上げる。  
「うぉっ!?」「な、なにっ!?なんなのよっ!!」  
 少女は反応しない。脳がシェイクされ、軽い脳震盪を起こしているのだ。尻を上に突き出したまま、ぴくりとも動かない。  
少女が惰眠を貪る間にも怪物どもは距離を詰めてくる。怯える人質の女が、めちゃめちゃに暴れた。頭上で痴話喧嘩が始まった。  
「あ〜やべぇかも……」「いやっ!気持ち悪い!!こっちこないでよぉ……もう!だからいつも通りやろうって言ったじゃないの!!」  
「だ、だってよぉ……最近は県警間の連携も早ぇし……」「あんたが悪いのよ!!あんたが観光客に紛れて逃げれば安全だなんて言うから!!」  
「それによぉ……お前の運転怖ぇえんだよ……」「なんですって!?誰のおかげでこれまで生きてこれたと思ってんのよぉ!!」  
 幸か不幸か、はずみで脱げたヒールが少女の脳天を打ち据える。少女の瞼が薄く開かれた。覚醒して最初に感じたのは、口内の鉄の味だ。  
土と砕けた歯でじゃりじゃりする。少女は不快感に耐えかね、口の中の異物を吐き出した。白く輝くカルシウムの塊が地面に転がる。  
折れた前歯も、裂けた粘膜もとっくに再生されている。だが、不愉快な苦い味はなかなか消え去ってはくれない。  
涙を流し幾度か嘔吐いた。  
「う……うぇ……げほっ!げほっ!」  
 人質達の瞳が、八つ当たりの対象を捉えて輝いた。  
「とろくせぇ……へばってんじゃねぇよ!」「この役立たず!さっさとこいつらなんとかしなさいよっ!!」  
 少女が吐瀉物に塗れた顔を上げる。何本もの汚い足が視界に入った。取り囲まれている―――少女は覚悟を決めた。  
目の前の十字架に縋り付き、身を起こす。胸の先端がざらざらした木材と擦れて、蛭は乳首の咀嚼を開始した。  
「ぁ……くぁっ♥」  
   
 喘ぎ声を堪え、辺りを見渡した。怪物どもは勝利を確信し、下卑た笑みを張り付かせている。  
連中の熱い視線の先にあるものに思い当たり、少女は悔しげに口許を歪ませる。  
「へ〜え?面白い格好……そそるぜ!」「あんたっ!そんな化け物に媚売ってでも助かりたいの!?自分だけよければいいのね!!」  
 形の良い胸が体重を支え、むにゅりと潰れている。柔らかな乳肉を圧迫する極薄の生地には皺ひとつない。  
汗と涎の衣を纏って光を反射する黒い真珠が、僅かに覗く白い腋の台座に良く映えた。  
少女の視界に映るゴブリンたちの視線はここに集中している。  
 残りは、本来知覚出来ないはずの背後からのものだ。絶頂の連続で痙攣の治まらない筋肉を用いて立ち上がるには、  
足を大きく開くしかなかった。二本の純白の槍が掲げる臀部は、邪神に捧げられた生贄のように、ぶるぶる震えている。  
尻肉を保護するはずのレオタードは、生贄を拘束する細い縄と化し、菊門を覆い隠す役目すら放棄していた。  
 怪物どもは、美しい人間の雌に目が無い。捕らえた玩具を好きなだけ嬲って、飽きたら始末する。  
大抵、苛烈な陵辱の為に途中で死んでしまうが、少女の場合その心配は無い。使命を優先し、羞恥心を押し殺す。  
―――ふんっ!むしろ好都合だ。いくらでも時間を稼いでやる!!  
 手と足に力を込め、姿勢を整えようとする少女にさらなる受難が襲い掛かる。  
「ちょっとぉ〜あんた、ひとの話聞いてるのぉ!?」  
「ぐっ!!あうぅ……」  
 人質が醜悪な形相を歪ませ、少女を詰る。ヒールの爪先で、ぐりぐり少女の頭を踏み躙った。  
屈辱の涙で目を潤ませながら、かまうものかと大音声を轟かせる。  
「わ、私が相手になってやる!!だから……だから、この人達には指一本触れるな!!」  
 低級な怪物は人語を解さない。獲物の言葉など学ぶ意味が無いからだ。しかし、少女の意図は伝わったようで、  
リーダーが仲間数人と目配せした。二体のゴブリンがおっかなびっくり近づいてくる。  
棍棒の先で少女の胸と尻を突いた。  
「くっ!……くっ!」  
 少女が固く目を閉じるだけで、抵抗しないのを見て取り、毒見役のゴブリンたちはさらに接近する。  
少女は恥辱の予感に身を強張らせた。薄汚い四本の手が尻たぶを鷲掴みにする。  
「ぁくっ!……ぁ♥」  
 愛撫でも何でもない刺激に一々反応してしまう淫らな体が恨めしい。歯を食いしばって漏れそうになる嬌声を堪えた。  
興奮したゴブリンは尻肉を自分のモノだと言わんばかりに引っ張った。  
「あぁっ!!」  
 少女はバランスを崩し倒れ、哀れなゴブリンが下敷きとなる。文字通り顔を尻に敷かれた一体は気絶しているのか、ぴくりとも動かない。  
危うく難を逃れた一体がなにやら毒づきながら、少女の頭をサッカーボールであるかのように蹴り飛ばした。  
「がっ!!……ううぅ……」  
 普段であれば、指先ひとつで殺せる相手に嬲られ、反抗することすら許されない。怒りで目が眩む。  
下っ端の不用意な行為が、少女の強者としてのプライドを刺激し、反って闘争心に火を点けてしまった。  
―――くそっ!雑魚の分際でぇ……何でも貴様らの思い通りになると思うなよ!!  
 少女は情けない声を決して発すまいと口の端をきつく結ぶ。悲壮な決意で運命に抗う魔法少女を数の暴力が襲う。  
様子見のゴブリンたちが安全を確認し、わらわら寄ってきたのだ。忽ち少女の周りに黒山の人だかりができる。  
ひゅうひゅう荒い息が唱和し、大きなうねりとなって少女の鼓膜を震わせる。  
負けてなるものかと、少女は目に映る小鬼全てに殺意の視線をぶつけた。  
 だが、危険に曝され、生存本能を極度に高ぶらせているゴブリンたちは意に介さず、美味しい獲物に対して一斉に襲い掛かった。  
「んはっ!くぅ……んっ!……ひぅ……」  
 無数の手が少女の体を求めて殺到した。グローブに包まれた指をしゃぶり、  
汗に塗れた顔を舐め、腋を擽り、臍を舌先で犯し、ふとももの肉を揉みしだく。少女は声を殺し、全身のこそばゆい感触に耐える。  
「んん……くぁっ……んくっ……ふぁ……んむぅっ!?」  
 口が開いた一瞬の隙を衝かれ、何かがねじ込まれた。硬いそれからは、酷い腐臭がする。  
―――く、臭い……こいつ!調子に乗るなぁ!!  
 ぎんぎんに勃起したペニスを噛み千切ろうと、顎に力を入れたその時だった。視界全体が白く染まる。  
獲物の体にありつけなかった者たちが、竿をしごき、精をぶちまけたのだ。端正な顔も、美しい黒髪も白濁液に汚される。  
少女の体に触れる幸運を得た者達も、思い思いにペニスを擦りつけ、どぴゅどぴゅやっていた。  
 
 黒を基調としたコスチュームが黄ばんだ厭らしい白に染められる。  
視覚を奪われたに等しい少女は、全身の異常な感覚に意識を向けざるを得なかった。  
無意識の内にシャットアウトしていた快楽信号が流れ込み、少女は軽くイってしまう。  
「んんんんん♥」  
―――か、体が……熱い……な、なんなんだ?これは……ああっ!しまっ!!  
 どぴゅうぅぅうう!  
 ほんの数秒だけ反撃を遅らせてしまったのが致命的なミスだった。特等席を陣取っていた、ペニスが爆ぜる。  
少女は口内を満たす精液を、はずみで嚥下してしまう。  
「むぅううう!!げほっ!げほっ!ごぼっ!!」  
 粘性の強い液体が喉に絡みつき、咽る。生体反射で涙腺が緩み、白い異物を洗い流した。少女はミルクの涙を流す。  
顔面を覆う圧力はいつの間にか失われていた。顔を横に向け唾液交じりの精液を吐き出す。  
口の端から、たらりと白い糸が垂れ下がるのが艶かしい。唇はまるで白いルージュを引いたかのようだ。  
「うあぁ……うえぇ……」  
 酷い匂いで鼻が曲がりそうになり、少女はやむを得ず、ぜぇぜぇ口で呼吸する。酸素が十分に脳に回り、ようやく現状を認識できた。  
体を、顔を、正義の象徴たるコスチュームを情欲に穢されたのだ。全身が精処理の道具として扱われたのだ。  
「すっげぇ精液……あんた人気者でよかったなぁ!」「うわ〜ばっちぃ〜くさ〜い……」  
 憤怒のおかげで思考が鮮明になる。少女を弄ぶ無数の手の感触が消えていることに気付いた。  
かろうじて動かせる首だけを曲げて状況を確認する。圧し掛かっていたゴブリンたちの姿は見えず、惨めに白濁液に塗れた体が目に入った。  
こびり付いた匂いは、変身を解かない限り落ちることは無いだろう―――ん?妙だな……  
 少女が気になったのは、胸とあそこには精液が掛かっていない事だ。白に染まる肢体の中で、最も恥ずかしい部分だけが黒く強調される。  
その光景は少女自身が赤面してしまうほど卑猥だった。思い返してみれば、全身が犯される中、秘所と胸だけは触られることがなかった。  
怪訝に思い、わずかに身を起こした。少女は奇妙な絵を目撃する。  
 少女に集っていた小鬼たちは、ほんの少しだけ距離を取って跪いていた。正面に仁王立ちのオークが佇み、傍らには一体のゴブリンが居た。  
新しいリーダーは、ゆったりした足取りで少女の下へと近づいてくる―――なるほど、一番手は頭の特権という事か……これからが地獄だ。  
 少女は待ち受ける陵辱に対抗すべく、深呼吸する。よがり声を出さない決意など、何の価値も無い単なる意地にすぎない。  
それでも、少女は気を引き締め、殺意を込めてリーダーを睨みつけた。  
―――まるで、そうすることが男の子の命を救う道であると考えているように。贖罪の唯一の手段だとでも信じているかのように。  
「んああっ!!」  
 ゴブリンリーダーは片足で無様に転がる敗者の胸を踏み潰し、勝ち鬨を上げた。轟と怪物たちが雄たけびを上げる。  
リーダーは敗北を刻み付けるかのように、少女の顔を睥睨し、汚い足で胸を踏み躙った。乳首に愉悦が走る。  
「くぅっ!!んぁ……んっふぅ♥」  
 それでも少女の闘志は失われていなかった。屈服の証たる甘い喘ぎを噛み殺し、化け物の頭目に挑戦的な視線を送り続ける。  
ゴブリンはしばらくの間、足裏の柔らかな感触を愉しんだが、獲物の反応が薄いことを見て取るや、徐に足を退けた。  
少女の意図を読み取り、にたりと残忍な笑みを浮かべる。薄汚い足が、次なるターゲットとして選んだのは―――  
「ぁ……」  
 濡れそぼった秘所だった。少女には休む暇すら与えられず、新たな淫虐に備える覚悟が求められる。  
顔をしかめて、衝撃を待ち受けることしかできない少女に、小鬼は苛烈な攻撃を加えた。  
「んっ♥―――!!んんんっ♥――――――!!!」  
 踏み下ろしただけでは飽き足らず、そのまま、ぐりぐり足裏全体で圧力を掛ける。触手淫核が潰されつつも、力なく震え続ける。  
少女は首から上を振りたくって絶頂したが、驚異的な精神力で敗北の叫びを上げることだけは免れた。  
―――ま、負けるものか!貴様らのような下衆に屈してなるものかっ!!  
 だが、狡猾な陵辱者は崖っぷちの少女に対して、無慈悲にも二の矢を放った。  
「んっくぅううう!!!」  
 白く目立つ小山の頂が摘み上げられ、弱点三つ同時に極めさせられてしまう。上の口は未だ頑強に抵抗を続けているが、  
下の口は戦う前から白旗を掲げていた。小さな足の裏で泉が涌き、ぐちゅぐちゅ水音を響かせる。  
 
―――これ、きついぃぃいい!!で、でも耐えるんだ!私は勝つんだ……あの子の為にも!!  
 快楽の涙に溺れながらも、少女の瞳は光を失ってはいなかった。その事が反って陵辱者の嗜虐心を煽ってしまう。  
ゴブリンのペニスは小柄な体躯に不釣合いなほど大きく、成人男性の平均をやや上回る。  
牝を狂わせる凶器が完全に勃起し、反り返っていた。もどかしげにレオタードを掴み引き裂こうとする……が上手くいかない。  
 爪を立てようが、牙で噛み付こうが、極薄の生地が破れる様子はない。布をずらそうにも、ぴったり皮膚に張り付いて、僅かな隙間すらない。  
少女自身の魔力は尽きているが、コスチュームは妹の魔力で生成された物だ。主である少女自身ならともかく、  
魔力を持たない低級な魔物にどうこう出来る代物ではないのだ。ゴブリンは無理矢理引き剥がそうと踏ん張ったが、  
少女の愛液でぬかるんだ地面に足を取られ、転んでしまった。滑稽な姿に、少女の口から思わず笑みが零れる。  
「ふふ……ふふふ……」  
 少女は小さな勝利を美味そうに味わう。この隙にほんの少しでも態勢を整えようと、大きく深呼吸した。  
人心地つき余裕を取り戻した少女に、恐れる物は何も無い。どよめく群集に向かって侮蔑の言葉を投げかける。  
「ふふんっ!貴様らなぞ、所詮取るに足らぬ存在だ。抵抗せぬ女を、満足に犯すことすら出来ない脆弱者め!!」  
   
………………調子に乗りやすい性格が、少女の持つ数多い短所の最たる物だった。  
 
 言葉は通じないが、侮蔑の意思は伝わったようだ。恥をかかされたリーダーが目の色を変えて、いきり立つ。  
奇妙な唸り声を上げて、少女の上に圧し掛かった。  
―――芸の無い奴だ。いいだろう。そんなに私の体が好きなら、いくらでも触らせてやる。私はどんな辱めにだって耐えて……  
「かはっ!!くあぁ……」  
 束の間の優越感に浸っていた少女に対して、激昂したゴブリンは予想外の行動を取った。うっとおしいコスチュームごと挿入を開始したのだ。  
極薄の生地はゴブリンのモノの形状を余すことなく伝えてくる。反り返った竿、硬い亀頭、脈打つ血管、どれも触手相手では味わえない。  
正確にパズルのピースを組み合わせたかのように、ぴったりと女性器の中に納まっていた。  
―――そ、そんな……いきなりなんて、ひ、卑怯だ……  
ゴブリンは怒りと情欲に身を任せ、ピストンを開始した。  
「んっ!んんっ!はくぅん♥……だ、だめ……んひっ!」  
 甘い鼻声が漏れそうになり、必死に口を閉じる。吊り上り、意志の強さを表現していた目元が、しだいに垂れ下がっていく。  
 もし、ただ犯されるだけであったならば、少女がここまで追い詰められることは無かっただろう。コスチュームの防御力が災いした。  
極薄の生地が破れることなく、ペニスを包み込む。触手とは違う、ざらざらした裏生地の感触が膣内部で荒れ狂う。  
問題なのはそれだけではない。元々ひと回り小さかったレオタードが、挿入の度に引き絞られる。  
胸と肛門が擦られ、少女はそれぞれの場所でイき続けた。  
「ゃ……んんん!!ぁんっ♥くひっ!……ふむぅぅうう!!」  
 自分の身を守るはずのコスチュームに犯されて感じ入る背徳感に、少女はめろめろになってしまう。  
辛うじて悦びを叫びに変えて吐き出すことを耐えてはいるが、内心は陥落寸前だった。  
―――こんなの……こ、これ以上されたら、もうむり……だ、だめだ!諦めたらそこで……しあ……  
 獲物の甘美な味わいに夢中になっている小さな怪物が、少女の都合に合わせるはずもなく、  
欲望の赴くまま、存在感のある双房をめちゃめちゃに捏ね回した。  
「んん――――――♥!!」  
 生地が引っ張る方向と逆のベクトルが乳首に掛かり、少女は悶絶した。絶頂したまま、心が帰ってこない。  
もう気持ちよすぎて、体のどこでイっているのかすらわからない状態にもかかわらず、少女はぎりぎりの線で耐えていた。  
「ぁ……ふぁ……んひ……」  
 理性はとっくに吹き飛び、歓喜の叫びを抑制しているのは無意識の作用である。その枷は、ゴブリンへの反抗心から生まれたものではなく、  
男の子との拙い行為によって育まれたものだ。少女は天より齎された一本の糸に縋り付き、操を守らんとする。  
―――ま、負けちゃだめだ……声を出したらぁ……あの子に聞かれてしまう……そ、それだけは……  
「ん♥ふぅ……ぅぁ……」  
 
 単純に胸を揉みしだき、猿の一つ覚えのピストンを繰り返す。よくよく見れば、ゴブリンの行為は何の工夫もない欲望の発露に過ぎない。  
しかし、矮小な体躯のゴブリンに小さな手で体中の敏感な場所を弄られると、守るべき男の子に犯されているような気分になってしまう。  
先刻の甘い記憶がフラッシュバックする。  
「だ、だめ!だめぇ……」  
―――こ、こいつは憎い敵なんだ……あの子のことを考えちゃだめだ……お、思い出すと……感じすぎちゃうからぁ……  
 少女は危険な想像を頭から振り払うべく、陵辱者の醜い姿を目に焼き付けた。大きな波を奇跡的に乗り越える。  
少女が一筋の光明を見出した瞬間、想像もしない攻撃が襲ってきた。  
「ひゃうっ!!そ、そんなぁ……お尻なんてぇ♥……くっひぃぃいい!!!」  
 尻に敷いていたゴブリンが目を覚まし、突然、長い舌で敏感な排泄口をなぞり上げたのだ。強烈な電撃が背筋を走る。  
これまで気が狂わんばかりの拷問に耐えてきた少女であったが、崩壊は一瞬だった。もはや、恥知らずな嬌声を抑える術はない。  
「いや!いやぁ……お、お尻なんかでイっちゃうぅぅうう!!」  
 不意打ちの肛虐にあっさり極めさせられてしまう。それでも少女は尻に力を入れ、絶望的な反逆を試みた。  
だが、欲望に忠実に少女の体を貪るゴブリンリーダーには関係のない話だ。膣の中で、じゅぷじゅぷ暴れていた肉棒が、ひと回り膨らむ。  
―――ま、待ってくれ!!いま……いま出されたら、私は……  
 どっぴゅうぅぅううう!!  
「きゃっひぃぃいいい!!出てるぅ……出されてるぅ……わ、私……コスチュームに中出しされちゃってイ゛グぅぅうう!!!」  
 長い射精の後、少女を苦しめた槍が引き抜かれた。幸いなことに魔力のおかげで精液がレオタードを透過することはない。  
追い出された白濁液が局部に三角の染みを作り、敗者の烙印と化す。少女は黄ばんだ白のショーツを無理矢理履かされた。  
「はっはっは。化け物に犯されてイってやがる……エロいねぇ!」「そんなやつらにヤられてイクなんて頭おかしいんじゃないのぉ?」  
 少女の心が敗北感で押しつぶされる。すでに少女に反論する気力は残っておらず、ただただ泣きじゃくるのみ。  
人質達の蔑みの視線から逃れるために形振り構わず顔を手で覆った。  
「違う!違う!!私……犯されて悦ぶ変態なんかじゃ……いやぁ……見ないで……見ないでぇ……にゃうぅぅうう!?」  
 少女の言葉に触手バイブが反応した。触手が冷徹な指示に従い、少女の鼻面に無理矢理真実を突きつける。  
―――そん……な……それじゃ……わた……しは……犯されたくて、これまで闘って……  
「み、認めない!ふあぁぁあ!!そ、そんなこと……絶対認められないぃ……みゃあぁぁああ♥!」  
 腰を痙攣させて、イき続ける。何もしていないのに乱れ狂う少女を見て、人質だけでなく怪物たちまで嗤い出した。  
周りの者達にとって、すでに少女は壊れた玩具に過ぎない。ゴブリンリーダーは残酷な遊びを思いつき、顎をしゃくる。  
一際大きな影が少女の体を覆った。少女がそいつの一物を見て怯える。  
「ああぁ……や、やめ……や……いぎいぃぃいい!!」  
 オークはなんの躊躇もなく剛槍を少女の秘裂に捻じ込んだ。500kg以上ある体重が少女に圧し掛かり、骨が軋む。  
コスチュームの防御力のおかげで、体が潰されることはなかったが、尻の下のゴブリンが遭えなく圧死した。  
「苦し……苦しぃ……抜いてぇ……抜いてよぉ……んああああああ♥」  
―――わ、私……こんな酷いことされてるのに……感じているの……か?  
 少女のあそこは人の何倍もの太さの肉棒を飲み込んだ。それも、ただ受け入れただけではない。  
少女のアレは、あのサイクロプスの凶器すら一時的に耐えた名器だ。腹を圧迫されるほどの質量を受け入れて尚、快楽を感じる余裕があった。  
自分が快楽を貪るためだけの、乱暴なピストン運動が開始される。相手のことなど微塵も頭に無い行為だったが、  
少女は吐き気混じりの快感を覚えてしまう。苦しげな悶絶が甘い喘ぎに取って代わられる。  
「はふぅんっ♥!も、もうやめ……ひぃん!お、奥……そんな広げな……あっひぃぃいい!!」  
―――こんな……こんなの……激しすぎて私……イけな……!?だ、だめだ!!イく事なんか考えちゃいけな……イ、イけな……ぃ……  
 ぐっちゅぐっちゅぐっちゅぐっちゅ  
 心とは裏腹に、秘唇は粘り気のある潤滑液を分泌し始める。次第に苦痛と快楽の天秤が逆転していく。  
絶頂の予感に体を震わせる少女に、無慈悲な神は新たな試練を与えた。オークが獲物を刺し貫いたまま体勢を入れ替える。  
「な!?うあぁぁああ……」  
 
 淫乱な少女には手を使った補助など与えられなかった。局部の結合のみの力で少女は全体重を支えねばならない。  
反射的に膣がオークの陰茎を強く締め付ける。視界がぐるんと回って、少女は淫らな騎乗を強いられている自分を発見した。  
「あぐぅ……」  
 自重全てが結合部に掛かり、少女の肉穴に凶器がめり込まされる。オークのペニスは太さもさることながら、長さも相当なものだ。  
サイクロプスの一物も長かったが、太すぎたため入り口に近い場所までしか犯されることはなかった。  
これまで経験のなかった奥の奥まで、ゆっくりと拡張され、拷問まがいの快楽を味わわされてしまう。オークは動かない。  
まるで、少女自身をオナホールと見立てて、奉仕しろと言わんばかりだ。しかし、膣内部の圧迫感に狂う少女に出来ることといえば、  
額に脂汗を浮かべ、陸に打ち上げられた魚のように口をぱくぱくさせて酸素を貪ることくらい。  
「あ……あぁ……あぎ……」  
 見物客は串刺しの刑に処せられた哀れな少女の有様を愉しんだ。  
「あんなデカマラよく入るな……あんたその見世物で金取れるぜ!ところでそれはなんのコスプレなんだ?」  
「そんなぶっといの咥え込んで悦ぶなんて……本当に人間!?あはは!実は、そいつらの仲間だったりしてぇ〜?」  
―――ひど……い……私……おかしくなんて……な……え!?あ……あそこが……!?  
 くちゃっくちゃっくちゃっ  
 大きな質量を受け入れ、ぎりぎりの状態の筈の下の口が意思とは逆に咀嚼を始めた。オークは微動だにしていない。  
少女が突然発情した原因として考えられるのは……人質の心無い言葉だけだ。  
「だ、だめっ!だめ!だめ!だめぇ〜♥!イっちゃ……イっひぃぃいい!!」  
 少女の背骨が折れんばかりに反り返る。侮蔑に被虐心を煽られ、常人なら気絶してもおかしくない責めにも拘らず、絶頂してしまった。  
昇天したまま帰ってこれないのか、天を仰いだまま、半開きの口からだらしなく涎を垂れ流している。  
「あ……あはっ♪……あははっ♪ひ、酷いこと言われて……わ、私……イっちゃった……イっちゃったよぉ……♥」  
 壊れかけの笑みを浮かべて、少女は自身の体と心の淫蕩さに懊悩する。目から大粒の雫がぽろりと零れた。  
―――そう……か……わ、私……おかしいんだぁ……  
 自身の罪深さを見せ付けられ、ほとんど陥落しかかっている少女に追い討ちが掛けられる。  
淫らな穴の催促に応えるべく、オークの一物が、どくんと脈打った。待ちわびた反応に襞の一つ一つが戦慄く。  
「ら、らめぇ……らめ……なのぉ♥……わらひ……まら……イき終わってないからぁ……」  
 しぶとく生き残った矜持の欠片が、口だけの反抗を試みた。言葉とは裏腹に、腰がロデオのように暴れまくる。  
―――出して!出して!出して!出してぇ〜!!  
「お願い……だ……出さ……んんん!出さないれ……くれぇ……ああん♥い、今だけは……ら、らめなの……  
わ、わらひは……化け物に……中出しされへ……イっひゃう変態だから……射精れ……イき狂っひゃうからぁ♥」  
 自虐的な言葉が少女の傷ついた精神を引っ掻き、なんともいえない痛痒感に満たされる。  
自制心が麻痺し、少女の腰の動きが加速する。快楽を貪る、ただの雌豚の姿がそこにあった。  
豚には豚に相応しい餌が与えられる。オークが溜りに溜った精を吐き出した。  
 どぴゅどぴゅどっぴゅうぅぅうう  
「あ゛っひ゛ぃぃい゛い゛!!!イ、イクっ!イ゛クっ!イ゛グっ!!イ゛っグぅぅうう!!!」  
 それは、少女の腰が一瞬浮くほどの勢いだった。しかも、肉棒が脈打つごとに精液がしつこくぶちまけられる。  
少女は人間にして数十回分の精液を一度に味わわされた。オークの射精に負けじと、あそこも潮を吹く。  
少女の肉穴は、自分自身が潮を噴出す衝撃で絶頂を繰り返した。  
「いいのぉ……あそこ熱いのぉ……イクの止まらにゃいぃ♥わ、わらひ……せいえひ、ぶちまけられへ……イきまくっちゃのぉ♥  
あははははっ♪イきながらイってるのぉ♥イきっぱなしになってるのぉ♥もう、イクことしか考えられないよぉ……♥」  
―――そう……だ……そうなんだ……わ、私は……犯されたくて闘う変態なんだ……生まれつきの雌豚なんだ……  
『いや、違うな……』  
―――えっ……!?  
 触手の能力によって、精神の防壁が玉ねぎの皮を一枚、また一枚と剥くように取り払われ、秘すべき深層心理が露になる。  
普段、決して表層に浮かび上がることのない少女の心の闇が語りかけてきた。  
そいつは、少女自身が無意識の内に存在を否定してきた、おぞましい願望を少女の鼻面に突きつける。  
 
『お前は、犯されたくて闘っているのではないよ……もっと素直になればいい……』  
 それは、優しい口調だった。  
―――ふんっ!見え透いた甘言を!どうせ私を嬲るつもりだろう!?そうだとも……私は淫乱だ。だが、それの何がいけない!?  
こうやって、私は必死に戦っている。人を救おうとしている!感謝しろとは言わないが、非難される謂れはない!!  
『ほら……また嘘を吐いた。お前は人を救いたくて闘っているのでもないよ……』  
 意表を衝かれ、少女の思考が停止した。  
―――なっ!?  
『人々を救おうと戦って、負けて、陵辱される……それは確かにお前の醜い願望の一つだ。だが、それは代替手段に過ぎない……』  
 そいつは柔らかな口調のまま、畳み掛けた。  
―――な、なにを言って……いる……?  
『なぜ、巨人に襲われて逃げた時,あれ程までに死を恐怖した?なのになぜ、立ち向かって惨めに敗北しながらも、死を甘いと感じたんだ?』  
 少女は答える事ができなかった。  
―――それ……は……私が……  
『思い出せ!あの子が瀕死に陥った時、何を感じた?大蜘蛛に孕まされた先輩に殺せと言われて何を思った?あの哀れな後輩の時は?』  
 その瞬間、なぜか妹の苦痛に歪む横顔が脳裏に浮かんだ。  
―――や、やめろ!やめろ!やめろ!!やめろ!!!これ以上聞きたくない!!  
 自分自身の闇に心が壊される恐怖は筆舌に尽くし難い。追い詰められた少女に助け舟を出したのは、皮肉にも倒すべき敵だった。  
未だ天国から帰ってこない少女に止めを刺すべく、小さな影が背後から忍び寄る。手に持った何かを少女の尻に押し付けた。  
「ひっ!?」  
 冷たい感触に意識が現実へと引き戻される。少女が慌てて振り返ると、そこには酒瓶を持って、にたにた嗤うゴブリンの姿があった。  
ガラスの口が宛がわれているのは、完全に露出している菊門だ。当然、コスチュームの加護は受けられず、完全に無防備な状態にある。  
―――こ、これは……まずい!!酒は……酒だけは……  
「た、頼む……後生だ……後生だからそれだけは……い、いやぁ……そんなことされたら……わ、私は……ひぐぅぅうう!!!」  
 残忍なゴブリンリーダーは、わざと不幸な運命を認識させ、獲物を十分怯えさせてから肛門にぶち込んだ。  
 どくどくどくどく  
 度数が強いだけの粗悪な酒が腸内に注ぎ込まれる。冷たい液体が空っぽの腹の中を満たしていく。  
少女は肛門を襲う不気味な感触に耐え切れず、憎きオークの体に抱きついてしまった。  
「ひっ……ひっ……ひっ……ひっ……」  
 2リットルはあろうかという液体が、するする少女の腹へと吸い込まれる。容量一杯の水分が、たぷんと腹の中で揺れ、吐き気すら催す。  
忽ちお腹が、ぐるぐる鳴った。少女は逆流しそうになるのを必死に耐える。  
「お、お腹……きついぃぃいい!!」  
 ゴブリンは少女の様子など気にせず、空になった瓶を引き抜いた。  
 きゅぽんっ  
「きゃっひぃぃいい!!!」  
 瓶の口が少女の出口を捲り、あっさり法悦を迎えてしまう。ぶしゃっと腸液混じりの酒が噴き出した。  
そのまま流されそうになったその時、偶然に人質達の、にやける顔が目に入った。  
―――漏らすのだけは……こ、こいつらの前で、そんな醜態を晒すわけには……  
 無意識にオークの腹に回した腕の力が強まり、少女の菊門が固く閉じられる。なんとか決壊は免れたようだと、ほっとしたのも束の間、  
「ひぎいぃぃいい!!!」  
 駄目押しの二本目の酒瓶が押し込まれた。少女の腸が限界まで張詰め、欠食童子のように腹が、ぽこりと膨らむ。  
あまりにも滑稽な姿に、化け物も人間も仲良く嗤いの発作を起こした。  
「美味そうに飲むじゃねぇか!あんた、俺にも一口飲ませろよ!」「なぁに〜?あのお腹〜♪たぷたぷして妊婦さんみた〜い♪」  
 尻に空気を入れられた蛙状態の少女に反論する余裕はない。空気どころか、敏感な腸壁に直接アルコールを叩き込まれたのだから堪らない。  
直腸が爛れ、脳は耐え難い熱感を神経を通じて感じ取った。頭が、ぼうっとする。  
「あ……熱いよぅ……お尻が焼けちゃうよぅ……お、お腹も変なのぉ……あふううう……」  
 少女は完全に酔っ払っていた。正確に言えば、禁呪の効果がなければ、いつ急性アルコール中毒で死んでもおかしくない状態だ。  
腸内は粘膜なので、アルコールの吸収も速い。どこの国でも毎年一定数の間抜けが、粘膜からアルコールを摂取して病院に担ぎ込まれる。  
腸は危険な異物を排除すべく、蠕動運動を開始した。少女は慌てて括約筋に力を込める。  
「んんんんんんん!!!」  
 
―――だ、だめだ……漏らす姿を衆目に晒すなんて……人として許されない……  
 余計な意地など張らず、さっさと出してしまっていれば、最悪の結末は避けられたかも知れない。少女の選択は完全に間違っていた。  
いつまで経っても予想される行動を取らない獲物を怪訝に思い、ゴブリンは窄まりを爪で、つんつん突っついた。  
「ぁっ!あふんっっ!!んああっ――――――!!!」  
 少女は額に珠の汗を浮かべて懸命に耐える。少女の苦悶の表情に嗜虐心を煽られ、頭目はさらなる責めに打って出た。  
力いっぱい、液体の詰まったサンドバッグを殴り始める。  
 どこっ!どこっ!!どかっ!どかっ!!  
「うっ!うぁっ!!くっ!!あっひぃぃいい!!!」  
 少女は完全に白目を剥き、泡を吹いていた。辛うじて衝撃をやり過ごした哀れな妊婦に、大きな波が襲い掛かる。  
 ぎゅるぎゅるぐぎゅるぎゅる  
「んっふうぅぅううん!!!」  
 正常な整理反応を、精神力だけで捻じ曲げる。一意専心、“出したくない”という一念が奇跡を起こしたのだ。  
だが、崩壊の時は、すぐそこまで忍び寄っていた。絶頂の余韻から醒めたオークが、さらなる快楽を貪らんと自ら腰振りを開始する。  
―――そん……な……もう限界なのに……こ、こんなの……酷すぎるぅ……  
 少女の顔が恐怖で引き攣り、言葉の通じぬ相手に無意味な嘆願を始めてしまう。精神の歯車が、また一つ欠け落ちた。  
「お、お願い……だ……あひぃ……動かないでくれ……くぅん♥……い、いま……今だけは許してくれ……うあぁ……  
わ、私……中出しでもなんでもするから……きゃうっ!ど、どんなことでも言うこと聞くからぁ……んぁっ……今だけは許してぇぇええ!!」  
 少女の叫びと歩調を合わせるかのように、下からの突き上げが激しさを増す。一突きされる度に水っ腹が、たぷんと揺れる。  
「なんだありゃ?あいつの腹、別の生き物みてぇで面白れぇ〜」「あはは♪何でも命令聞くんだってさ。だったらさっさと助けろっつ〜の!」  
 少女の耳には何も届いてはいない。無様な敗北者に許されたのは、精液塗れの黒髪を振り乱してイき狂う事のみ。  
「ぁ♥あぁっ♥!ふぁ……♥」  
 絶頂して弛緩する筋肉に鞭打ち、少女は人としての尊厳だけを拠り所に耐える。だが、健気な抵抗にも終わりのときが近づいていた。  
オークの一物が射精に備え、びくんと大きく震える。  
―――で、出ちゃう……出される……中出しされちゃう……わ、私……も……?  
 前の穴に出されて、後ろの穴からぶちまける……そんな最低の光景が頭をよぎった。無駄だと理解していても、惨めな懇願が口を吐く。  
「許して!許して!許して!許してぇ〜!!た、頼むから……頼むから、中には出さないでくれぇ〜!!!」  
 どっぴゅうぅぅうう!!  
「あっひいぃぃいい〜!!イクっ!イクっ!イクっ!!イっクぅぅうう〜!!!」  
 先刻の射精に、なんら劣らない噴射が少女の淫穴に襲い掛かる。少女は一瞬の間に、数度極めさせられた。  
主が忘我している隙を見計らって、腸の蠕動が再開される。咄嗟に我に返ったが、時既に遅し、排泄口は半分開いていた。  
 ぶしゃ……  
「らめらめらめらめぇ〜!!出ちゃうぅ〜!あそこに出されて……わ、わらひも出しひゃうぅぅうう〜♥!!」  
 少女の悲壮感漂う物言いとは裏腹に、顔は恍惚の笑みを浮かべていた。人の目さえなければ……と、ずっと待ち望んだ瞬間がやってくる。  
甘美な開放感に酔いしれようと、全身の力を抜いたその時だった。絶妙なタイミングで残酷な救いの手が差し伸べられる。  
「ひっぎいぃぃいい〜!!?」  
 尻穴に何か硬い物が捻じ込まれているのを感じる。ゴブリンの肉棒が栓の役割を果たし、危ないところで痴態を演じる事は免れたのだ。  
だが、それは生きながら身を焼かれる地獄の開幕を意味していた。アルコールが脳だけでなく、全身を蝕み始める。  
―――く、来る……アレが来てしまう……  
 魔力は気脈である血流の流れに沿って、全身の血管網を循環し、増幅する。通常、触手は血液から物質的な栄養だけを取り出し、  
劇薬である他者(宿主)の魔力をシャットアウトしている。しかし、血液に異物が混入すると―――例えばアルコール―――どうなるか?  
触手のフィルターが正常に機能しなくなってしまう。アルコールに乗せて、魔力が触手の内側深く潜り込み、ダメージを与える。  
アルコール摂取は寄生型触手に取り憑かれた者に対する、非常に有効な対処法だが、少女のケースでは最悪の結果を招いてしまう。  
「ひぃやあぁぁあああ〜!!!こ、来ないれぇ……来ちゃらめぇ〜♥!!」  
 
 触手と禁呪の均衡が崩れた。無理矢理、感覚が鋭敏に研ぎ澄まされ、少女の体全体が性感帯へと造り替えられていく。  
あそこが感度を増し、少女を責め殺す凶器と化す。少女は体裁を保つ代償に、悪魔に秘所を売り渡したのだった。  
 堕落し、悪魔と契約した者には神罰が下される。ゴブリンリーダーとオークが同時にストロークを開始した。  
「うっぐあぁぁああ〜!?お、お腹……きついぃぃいい〜!!」  
 薄い肉の壁を隔てて、二本の槍が淫靡な演舞を行う。前からと後ろからの反動が互いに打ち消しあい、全ての衝撃が淫肉に叩きつけられた。  
腸の内部もただではすまない。ひと突きごとに、ぽっこり膨らんだ惨めな腹が波打ち、限界まで拡張された腸壁が悲鳴を上げる。  
一刻も早く液体を外に出さねば、命に関わると警報を鳴らした。少女の脳は、それを耐え難い排泄感として認識する。  
「だ、出させて……出させてぇ〜!!気持ち悪いの……ひぐぅっ!!気持ちいいけど……ひぁ!気持ち悪いのぉ〜!!」  
 尻とあそこから伝わる快楽信号と、腹の奥から伝わる危険信号が混線して、少女の脳内で混乱が起きる。  
自分がなにを言っているのかも分からない。どこで、どれだけイったかなど、どうでもいいことだ。体裁など、くそ喰らえ。  
 少女の内に残された明確な意思は唯一つ―――出せば……出せたら……出したい!!出すの!出させて!出さなきゃ!!  
 しかし、たったそれだけの哀しい望みすら神は叶えて下さらなかった。何度も何度も、どれだけ強く力んでも、腹の中の異物を追い出せない。  
ぎんぎんに勃起したゴブリンのペニスは、完全に排泄口を塞ぎ、一滴の水分すら通さなかった。  
その一方で前の穴は派手に潮を吹いているのだから堪らない。敏感になった肛門と秘所は、一回のストロークで数回イってしまう。  
その都度、ぷしゅぷしゅ液体を吐き出す。菊門がヒクつく様は、まるで自分勝手に開放感を貪る前の穴への抗議のようだった。  
「おねが……ぐふぅう〜!お願い……ぬ、抜いて……ぇぐっ!!も……う……出したい……の……あぎぃ……お腹苦しいのぉ……ひっ!  
は、早く出さない……とぉ……んんんんん!!あ、頭……おかしくなって……なぁっ!?」  
 異常な感覚が流れ込んでくる。腹が波打つ度に、腸の襞が酒に犯されている。腸内部の情報が手に取るようにしてわかる。  
衝撃によって腹の中が攪拌されて、アルコールの吸収が早まったのだ。禁呪の副作用に少女の全身が蚕食される。  
触手のダメージ蓄積は想像以上に大きい。禁呪の対象に触手は含まれない。故に、触手は自身のリソースだけで、損傷を治療せねばならない。  
同時に、アルコールによって運ばれる少女の魔力と、禁呪による排除行動、その両方に対処する必要がある。  
もちろん、禁呪の方にも肝細胞を活性化させ、アルコールの分解を急がせるという仕事があるが、あくまで片手間に出来ることだ。  
想定外の攻撃を受けた触手が、少女と共に追い詰められる。事実、馬鹿でかかったクリトリスは、さらに一回り大きく腫れ上がっていた。  
自身の消滅の危機にもかかわらず、触手は主の言いつけを健気に守り、振動を続けている。  
 おぞましい排泄感に少女の精神が押し潰されるのが先か?それとも、触手が死に絶え、禁呪の副作用で狂死するのが先か?  
 いずれにせよ、急いでこの忌々しい液体を体外へ追いやらねばならない―――し、死ぬ……早くしないと死んじゃう……  
皮肉なことに、少女をバイブで責め苛む触手と、触手を体内の魔力で切り刻む少女の願いは一致していた。  
そんな思惑など知る由もない、二匹の化け物はフィニッシュへ向けて腰の動きを加速させた。  
「あう♥あう♥あう♥あう♥……か……掻き混ぜない……で……ぇ……うあぁ……こ、これ以上……お腹の中……  
犯さないれ……きゅいぃぃい♥!く、狂っちゃう……ぐひぃ……お腹の中……お、おまんこみたいになっちゃってるよぉ♥」  
 腸内を液体に犯される異常な感覚に、恥知らずな言葉を無理矢理引き出されてしまう。少女は腸壁で感じてイってしまった。  
―――もし、こんな状態で、両穴に中出しされてしまったら、私は一体、どうなってしまうのか……  
 ぞっとする光景が目に浮かぶ。余計なことを考えたのがいけなかった。恐怖に反応し、肛門と膣が収縮する。  
淫肉に締め上げられた肉棒は、即座に射精した。衝撃が、何の覚悟もしていなかった少女を襲う。  
 どぴゅ!どぴゅ!どっぴゅっ!!どっぴゅうぅ〜!!どぴゅっ!どっぴゅっ!どっぴゅどぴゅ!!   
「♥っ――――――!!!ぅ……ぁ……ぃ……ゃ……ぃゃ……ぁ……」  
 何が起こったのか、一瞬わからなかった。巨大な愉悦が一拍遅れて全身を駆け巡る。喉の奥から、壊れた悲鳴が迸る。  
 
「んっひぃぃいいいいい〜!!!!?出てりゅうぅぅうう〜!!!出されてりゅぅぅううっ!!!!」  
 ぼこぉっ!!!  
 両穴に白濁液がこれでもかと叩き込まれ、限界かと思われた腹が、もう一回り膨らんだ。少女の腹は破裂寸前だ。  
それでも少女はイき続ける。それが苦痛を紛らわせる、唯一の手段であるとでも主張するように。  
「イ、イクっ♥!!イク♥イク♥イク♥イクっ♥!!!イき狂っちゃうぅぅうう〜♥!!!!」  
 禁呪の影響下にある人間は、意識を失うことが出来ない。少女は、嫌々全ての絶頂を最初から最後まで味わわされる。  
ぱんぱんに膨らんだ腹とは対照的に、少女の心は快楽に押し流され、虚ろだった。  
「ぁ……は……ぁひ……♥」  
 全身の筋肉が弛緩し、だらしなく開かれた口から赤い蛇のように、だらりと舌が垂れ下がった。少女が諦めかけた、その時だった。  
満足したのだろうか?リーダーの一物が、するする抜かれていくのを敏感な菊門は感じ取る。ようやく訪れる開放に、少女の瞳が輝いた。  
―――や、やっと……やっと楽になれる……救われる……  
 だが残忍なゴブリンが、そう易々と敗者に安寧を与えるわけがない。何度も陵辱を繰り返した怪物には獲物の心理を見通すことなど朝飯前だ。  
ゴブリンが槍を引き抜いた瞬間、オークの節くれ立った指が、無造作に突っ込まれた。  
「ひぐぅ!!そんなぁ……ず、ずるいぃ〜!……自分ばっかりぃ……わ、わらひも出したいのにぃ……」  
 太さはゴブリンのペニスと同等か、少しだけ大きい。開発され尽くした少女の肛門は、そんな不必要な情報まで伝えてくる。  
少女に繋がったまま、オークが立ち上がった。人質と仲間全員に無様な敗北者の痴態を見せつけようという事だろう。  
「は、早く……早くぅ♥……何でもいいから……玩具にしていいからぁ♥……出させてっ!!出させてぇ―――っ!!!」  
 少女は駄々を捏ねる子供のように、オークにしがみ付きながら、いやいやと首を振った―――その時、視界に何かが映り込む。  
そこに居たのは、横たわる男の子だ。固定化の魔法が解けかけているのか、気だるげに首が擡げられる。  
少女の首は完全に硬直し、動けない……男の子と目が合った。  
―――ああぁ……そん……な……ことって……で、出ちゃ……出ちゃらめぇ……  
「ぁ……い……いや……いや……いや!いや!いやぁ!!見ないでっ!!見ないでぇぇええ〜!!!」  
 少女の切実な願いを無視し、オークの指が勢い良く引き抜かれた。茶色く濁った液体が少女の尻穴から迸る。  
 ぶっぱぁぁああ〜!!ぶしゃっ!!ぶしゃっ!!ぶっしゃぁぁああ〜!!!  
「ふあぁぁあああ〜♥!!イ゛グ!!イ゛グっ!!イ゛グぅっ!!イ゛っグぅぅうう〜!!!」  
 見物客は面白い見物に手を叩いて喜んだ。  
「すげぇ!すげぇ!!噴水だなこりゃ……なぁ?こいつ売り飛ばしゃ、そこそこの金になるぜ?」  
「えぇ〜!?嫌よぉ〜♪あたしの車、臭くなっちゃうじゃないのよっ!それともあんた、掃除してくれるのぉ〜?」  
 4リットル近い噴出は、なかなか止まない。液体が排泄口を通り続ける限り、少女はイったまま戻ってくることが出来ないのだ。  
悦楽の煉獄に、少女はその身を焼かれた。  
「きゃふぅぅうう……まだ出てるよぉ♥……お、お尻、止まんないよぉ♥……イクのも止まんないよぉ♥あははっ♪」  
 あらかた噴出を終えた少女を、オークはゴミのように投げ捨てた。自身の作り出した池に、少女はうつ伏せのまま身を任せる。  
だらしなく開いた肛門は、未だに、ちょろちょろ液体を垂れ流し、時折、ぴくぴく全身が痙攣する。少女は動かない。  
一番見られたくない人物に、一番見られたくない姿を見られたのだ。合わせる顔がない。  
―――もうどうだっていい……眠りたい……、  
 そんな切なる願いすら神は聞き届けて下さらない。少女の肩に何かが触れた。忽ち、背骨に電流が走り絶頂を迎える。  
「きひぃぃいい!!?」  
 触手は辛うじて生き残ることが出来たが、それは少女の無事を意味しない。酒を抜くのが遅すぎたのだ。  
禁呪の毒が少女の全身に回りきっていた。もはや、少女の体に性感帯でない場所など存在しない。  
少女は何物かに無理矢理仰向けにされる。少女の目に映ったのは、何十体ものゴブリンの顔だった。  
少女の痴態に興奮しきった手下どもが、順番を争って殺到する。少女の体が無数の手に蹂躙された。  
「い……いや……いやぁぁあああ!!!」  
 胸をめちゃめちゃに揉みしだき、太ももをなぞり上げ、あそこに腕まで突っ込み、顔にペニスを押し付ける。  
 
美味しい場所から離れた者達は、指を舐め、首筋に喰らいつき、腹肉をむしゃぶる。驚くことに、髪の毛で肉棒を扱く者まで現れた。  
全身の至る所殆どを揉みくちゃにされ、その全てでイってしまう。  
「あひっ!?イ、イクっ!!ふぁっ……ま、まらイっクぅ♥……んっく!!イきまくってりゅのぉぉおお!!」  
 無理矢理立たされ、尻穴に肉棒をぶち込まれ、尻たぶを齧られ、背中にペニスを擦り付けられる。  
全身が再び白く染め上げられた。脳内も真っ白で、まともに言葉を発することが出来ない。  
「あ……あすいよぉ♥……も、もう……触らないれぇ♥……わ、わらひ……イっへりゅかりゃ……じゅっとイっへりゅかりゃ……  
いひぃぃいいい!!あはっ♪まら、イっひゃっらよぉ♥……イ、イふにょ……イふにょくしぇになりゅぅぅう〜♥!」  
 背筋が弓なりに反り返り、立ったまま痙攣を繰り返す。力なく開いた口からは、泡を吹いていた。少女は完全に玩具にされている。  
「イ……イひしゅぎへ……イひしゅぎへ……ひぃっ!!イっクぅ♥……イふにょ……ちゅらいにょ……イきっぱにゃしれ……  
ちゅりゃいにょ……イ、イクっ!!ほ、ほりゃ……まらイっひゃ……ひぃん!も、もぉ……イひたきゅにゃいよぉ……」  
―――イ、イクのがこんなに辛いなんて……ぇ……  
 凄まじいペースの絶頂に、分泌物の生成が間に合わない。愛液も、涙も、唾液も、腸液も枯れ果てた。  
少女に残された道は、永遠にイき狂う事のみ。イクこと以外の思考は、もはや存在しなかった。イクことそのものが少女だった。  
「も、もうゆりゅひへぇ……イっひぃ!イやぁ……イひたきゅにゃい……あっへぇ♥……イ、イや……イやぁ……くっひぃっ!!  
ら、らめ……らめぇ…な、なきゃにだしゃれひゃら……イきっぱにゃしににゃりゅきゃりゃ……イふにょ……ちゅらしゅぎりゅにょおぉ……」  
 
 そうですか♪イクのが嫌?我が侭だなぁ……そんなにイクのが嫌なら、そうしてあげますよ……姉さん♪  
 
―――えっ……?  
 どこからともなく妹の声が聞こえたような気がした。だが、ずっとイかされ続けている少女に言葉を解する余裕などない。  
これで何十回目だろうか?前と後ろの穴、両方同時に熱い精が大量にぶちまけられた。  
「あっひぃぃいい!!!あすいにょおぉ♥や、やへろ……やへろひひゃふよぉぉおお♥!!ま、まらイっ―――!?」  
 登りつめたと思った瞬間、急激に高揚感が薄れていく。怪訝に思う少女に構わず、ゴブリンたちは即座に第二波を発射する。  
「うああああああ……しょ、しょんにゃあぁ……しゅぎゅにゃんれぇ♥ひ、ひろいよぉ……イっ!イっ!イっ……!?」  
 再び絶頂の直前に冷や水を浴びせられ、気持ちが萎えた。イけなくなったおかげで、思考する余裕が生まれる。  
―――あ、あれ……?私……どうし……て……  
 
 ふふふ……可哀相な姉さん♪ほぉら……イきたくなっても、もうイけませんよ?あはっ♪あはははははは……♪  
 
―――そん……な……  
 触手が少女のこれまでのオルガスムに於けるセロトニン、ドーパミンの活性状況を解析し、境界線を割り出す。  
その一線を越える直前に、脳内物質を遮断してしまうというわけだ。これなら、アドレナリンの過剰分泌で、心臓が停止することもないだろう。  
理論上、もはや少女は絶対に絶頂することができない。問題はただ一つ……それは全身の異常性感が、そのまま手付かずだという事。  
 ゴブリンが乳首を蛭ごと抓り上げた。少女は髪を振り乱して、悶え狂う。  
「ひいぃぃいいんっ!!ひ、ひくび……ひくび、いひめりゃれへ……も、もうイ゛っ……イ゛っ……イ゛けにゃひい゛ぃぃい゛い゛!!!」  
 白い頂に全体重をかけて、下に引っ張る。蛭が乳頭を強く噛み締め、危険な魔悦が双房全体を覆う。  
「ひうぅぅううう!!とれひゃうぅ……ひくび、とれひゃうの……きもひよしゅぎへ……イっ……なんれぇぇええ!!」  
 長さは小児の陰茎と同じのまま、足の親指ほどに醜く腫れ上がった淫核を面白半分に握りつぶす。  
「イっひいぃぃいいい!!しゅ、しゅごいのぉぉおお〜♥!こ……こんろこしょイっ……イ、イやぁ……イやあぁぁああ!!」  
   
 幾度も出入りを繰り返した天国の門は、もう開かない。自由自在に飛翔していた精神が、翼を圧し折られ地の底へと堕ちていく。  
絶頂の連続は確かに苦しかった。死んだ方がましだとさえ考えた。だが脳内が白に染まる、その一瞬だけは尊かった。  
その一時だけ、少女は全ての事柄から自由でいられた。少女の助けを待っているであろう友の事も、魔法少女としての使命も、  
迫り来る死に抗う幼き魂も、最愛の肉親も、自身の醜態も、なにもかも忘れる事ができたのだ。  
思考の連続性という利益を得るために支払った代償は余りに大きかった。  
「イ……イかしぇへ……だれかぁ……わらひを、イかしぇへよぉ……こ、こんにゃに、きもひイイにょに……イけにゃいにゃんへぇ……」  
 絶頂というリセット機構が失われたせいで、快感が脳内を循環する。増幅するばかりで、いつまで経っても発散しない。  
心が“イきたい”という単語だけに支配された。思考能力の復活と共に息を吹き返した理性が、欲望を満たす為の答を探す。  
―――うああああ……もう限界だ……早く……早くイかないとおかしくなる……イ、イクにはどうすれば……そ、そうだ!  
 徐に目の前のモノを両手で掴んで倒れこむ。ゴブリンを押し倒し、ぜいぜいと荒い息をする少女の姿がそこにはあった。  
こいつは人の涙を啜り、絶望する心を食む悪鬼だ。憎むべき敵だ。だが、今は少女の淫らな願望を満たしてくれる救い神だった。  
少女は、そのまま腰を押し付けた。極薄のレオタードに包まれた秘唇が、ゴブリンの一物を美味そうに咥え込む。  
「あっはああああ♥……いいよぅ……きもひいいよぅ♥……れも……れもぉ……」  
 白の体液に彩られた淫乱騎士が、哀れな馬に奉仕を命じる。少女の腰振りが激しさを増した。ゴブリンは堪らず精液を根こそぎ搾り取られる。  
―――た、足りない……イきたいのに……イきまくりたいのにぃ……こ、こんなんじゃ足りないよぉ……  
 枯れ果てるまで少女に犯されたゴブリンは気を失っていた。へたれた肉棒を名残惜しそうに引き抜く。少女は淫蕩に潤んだ目で助けを求めた。  
「もっと!!もっとぉ〜♥!わらひを、おかひへぇ〜♥!あ、あしょこ……あしょこが、かわいひゃうの……  
かわくの、いやにゃの……せ、せいえひ……せいえひちょうらい……あ、おまんこ……ぬらひへ……おまんこ、イかしぇれぇぇええ!!」  
 膝を地面についたまま、見せ付けるかのごとく股間を前に突き出す。発情した牝豚は頬を上気させ、半開きの口から舌をだらりと垂れ下げた。  
両の手はずっと秘所を掻き回している。その淫靡な姿は、女というモノの本質を凝縮したかのようであり、ぞっとするほど美しかった。  
少女の色香に惑わされ、遠巻きに様子を窺っていた怪物たちが寄ってくる。少女は歓喜の笑顔で淫辱を受け入れた。  
「ふわあああ……きもひいぃ♥んむぅ、くちゅ……お、おくち……おまんこみひゃいに……ぁむ……くちゃ……にゃっへうぅ……」  
 肉棒を口で咥え、あそこで咥え、アナルで咥え―――それだけでは飽き足らず、手筒を作って扱いた。  
「しゅ、しゅごいにょぉぉおお!!おくひも……んんん!!お、おてても……くちゅ……おまんこに、にゃっへぅの……ぉ&heartsえへへへへ……」  
 一部の幸運な者達以外は、思い思いの場所にペニスを擦り付ける。柔らかい脂肪が詰まった乳が、内臓を保護する為の腹筋が、  
毎日の走り込みの成果である引き締まった太ももが、うっすら紅色に染まる尻たぶが、いずれ劣らぬ名器と化した。  
精液のシャワーで、少女が穢れていない場所を探す方が難しい。少女は悦びに咽び泣いた。  
「あ……ぁへ……あっへぇぇええ……あ、あすいよぉ……にへっ……にへへへへ……か、からだ……じぇんぶ……おまんこだよぉ♥」  
 全身で得られた快感を、誰にも渡して堪るものかと呑み込む。脳内は完全に、淫らなパルスで満たされた。  
あと一滴、あと一滴の快楽信号さえ得られれば、脳内麻薬があふれ出す。イくことができるのだ。  
「そんなにイきてぇなら、俺が相手してやんよ!!だから、さっさとこの縄解けってんだ、この淫売!!」  
「ふ、ふざけないで!!あんた何言ってんのよ!!あたしよりあんな変態の方が好いっての!?これまであたしがどんだけ……」  
「うっせぇ!どブス!!てめぇは黙ってろよ……あああ〜!!くそっ!!やりてぇなぁ……」  
「そんな……そんな言い方酷いわよぉ……あ、あんただ!あんたが悪いんだ!!薄汚い最低の牝豚のくせにっ!!!」  
 
 容赦のない罵倒が、少女に降り注ぐ。魔法少女の鎧を脱ぎ捨て、マゾ豚の本性を現した少女にとって、それは恵みの雨だった。  
心と体が犯し尽くされ、少女は“その時”を今か今かと待ち受けた。  
―――く、来る……来るぅ……今度……こそ……イって……イっ……ぇ?  
 巨大な津波の前触れのように、桃色の波が一斉に引いていく。しかし……待てど暮らせど、津波はやってこない。  
法悦の水位は、またもや堤防を越えるか超えないかの、ぎりぎりの線で保たれた。  
「ぁ、ああ……あぁ……しょん……にゃ……イ、イけにゃ……ひ……ろうひへ……ろうひへえぇぇええ!!!」  
 哀れな少女が、全身を内側から地獄の業火で炙られ、絶叫する―――まさにその時、  
 
 あ〜あ、姉さん?  
 
からかうような声が、風と共に聞えた。  
「だ、だ……れ?」  
 少女は新たな獲物を押し倒しながら尋ねた。  
 
 わたくしででございます♪貴方の最愛の妹でございます♪  
 
その耳障りな声が、少女の頭に纏わりついて離れない。  
 
 もう、駄目でございます♪むだでございます♪はしたない真似は、やめて下さいな♪もう、姉さんは誰も助けることは出来ません。  
 
 少女は不運な獲物を犯しながら叫んだ。  
 
「イ……イや……ま、まらら……まら、陽は沈まにゅ……」  
―――そ、そうだ……イ、イかせれば……下衆ども全員、絞りつくしてやるんだ……そうすれば……私も行け……イけ……  
 
 おやおや?ちょうど今、あの使い魔が死刑になるところですね。ああ、姉さんは遅かった。  
 あの子、『おうらみ申します。』って言ってますよ?た・ぶ・ん・ですけど♪あははっ……  
 ほんの少し、もうちょっとでも、姉さんが淫乱じゃなかったなら!  
 
「い、や……い、いやぁ……ま……まら……ひは……しじゅま……にゅ……」  
 少女は胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。イクより他は無い。  
少女は血走った狂気の眼差しで、組み伏せたゴブリンリーダーを見つめていた。  
 
 やめて下さい……みっともない!腰を振るのは、やめて下さい!姉さんはご自分のプライドが大事じゃないんですか?  
 私は……私はね、姉さん。心のどこかで姉さんを信じていました。  
 どんなに怪物に陵辱されても、気高い姉さんは平気でいるんじゃないかって思ってました。  
 人質が、さんざん姉さんをからかっても、あなた達は助けます、とだけ答え、強い信念を持ち続ける……  
 そんな格好いい姉さんが見られるんじゃないかって。  
 
 妹の声からは、いつの間にか軽薄な響きが消えていた。  
―――わ、私には……友を助けるという使命があるんだ……だから……だから、一刻も早くイかない……と……  
 少女は、萎えた肉棒を再び勃たせようと、淫肉で締め上げる。怪物の親玉は、情けない悲鳴を上げた。オークが真っ直ぐ駆け寄って来る。  
「しょ、しょれらかりゃ……おかしゅの……し、しんじられへう、かりゃ……おかしゅにょ……  
は、はやく……はやくイけば……まにあう……はやく、はやくぅ……イかにゃいとぉ……まにあわなくなりゅの……  
わ、わらひの、からだ……どうれも、いいの……わらひの……こ、ここりょも……どうなっへも、いいの……  
あははっ♪わらひ、なんらか、おかひいの……も、もっとぉ……おおきいものが、ほひぃよぉ……  
みんな……を、たしゅけりゅ、ために……たたかっへ……きたにょに……も、もぉ、イクころひか……かんがえりゃれにゃいぃぃいい!!  
おまんこ、ついれぇぇええ〜♥!しぇ、しぇいし……なかに、きれぇぇええ〜♥!わらひを……イかしぇれぇぇええ♥!!」  
 
 ああ、姉さん……気が……気が狂っちゃったんですね。それでは、うんと狂うがいいです……好きなだけ犯しなさい。  
 ひょっとしたら、イけぬものでもない。完全に狂いなさい。姉さん、さようなら……  
    
 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、少女は犯した。少女の頭は、からっぽだ。  
何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて犯した。  
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、少女の瞳に残酷な光景が映し出された。  
 主を救うべく突進してくるオークと少女を結ぶ直線上に男の子が横たわっている。  
少女の脳が疾風の如く演繹し、地獄絵図を描き出した。  
「ぇ、ぁ……?ああああああああああああああ!!!!!」  
 
――― 男の子の小さな体が宙を舞った―――  
 
 悪魔の悪戯か、少女の鼻先に、どさりと落ちてきた。否応無く現実を突きつけられる。  
一筋の赤い光が、物言わぬ肉隗を照らし出す。  
 
―――男の子の首がおかしな方向に捻じ曲がり、瞳孔が開いていた―――  
 
 次の瞬間、夕日が死に絶えた。辺りが宵闇に包まれ、少女の心と体が漆黒に染まる。  
 
―――間に合わなかった―――  
 
「いや……いやぁ……いやあああああああああああ!!!」  
 声も嗄れよとばかりに絶叫した。絶望の鎮魂歌が世界を震わせる。狂人のごとき形相で、肺の空気を全て押し出した。  
 
―――少女の頭の中でスパークが散った―――  
 
 その時、ありえぬ事が……あってはならぬ事が起きた。男の子の躯を見た瞬間だった。脳裏に死に顔が焼き付き、何かが弾け飛んだ。  
致死量を遥かに超える脳内麻薬が分泌される。もはや、触手の制御能力では追いつかない。少女の精神は天へと羽ばたいた。  
 
「イ、イクっ!イクっ!イクっ!イクっ!イクっ!イ゛っグうううううううううううう!!!!」  
 
 明滅する意識の中、少女は悟った。  
 
―――そう……か……そうだったんだ……  
 
 深淵に潜む忌むべき存在が、少女に語りかけてくる。  
『やっと思い出したのか?』  
 
―――ああ……私は……ずっと、ずっと昔から……アレを見るのが堪らなく好きだった……それは、許されない事だとわかっていたのに。  
 
 羽毛のように柔らかい声が、心を蕩かせる。  
『ああ、そうだ。アレは美しい。お前は、アレを見るとき、いつも嗤っていたな?アレを見る度、胸が高鳴った……』  
 少女の指が、口の端をなぞった……ああ、嗤っている……  
 
―――苦痛に歪む先輩の顔……綺麗だった。  
―――恐怖に泣き叫ぶ後輩の顔……可愛かった。  
―――何も知らぬまま事切れた男の子の顔……ああ、愛おしい。  
 
 少女の深淵と、表層の言葉が唱和する。  
 
―――気高い魂が、純粋な魂が、無垢な魂が、邪悪に穢され堕ちる様は、なんて綺麗なんだろう―――  
 少女自身が精神の防壁を、破壊した。心が血塗れになる。  
『戦いの渦中に身を置けば、神聖な存在が穢される場面に、いくらでも立ち会うことが出来る。素晴らしい考えだ!』  
 少女の魂が、本質が露になっていく。  
 
―――戦いで、辛く哀しいことがあった夜は興奮して眠れなかった。一晩中、その悲惨な情景を思い浮かべて自慰をした。イき狂った。  
 
 少女に語りかけるそいつは、既に少女そのものだった。  
『それに飽き足らず、私は自分の身をわざと危険に曝すようになった。何度も何度も犯されたが、決して、それ自体を望んだわけじゃない!』  
 少女がそいつの言葉を繋ぐ。  
 
―――そうだ。私は、“高潔な私”が惨めに穢されるという状況そのものに興奮していたんだ。  
 
故に、無様に逃げ惑う最中に殺される事を極端に恐れた。それでは興奮が得られない。そんな死はカスだ!カス以下だ!カス以下の以下だ!!  
 もっと、もっと、心の奥底へ……魂の色が見えるまで。  
『だが、それはあくまで代替手段に他ならなかった。当たり前だ。私の魂が、どす黒いことは、私自身が一番良く知っているのだからな……』  
 少女の本質が白日の下に曝される。  
 
―――やはり、美しい心の持ち主が穢し殺される様が一番だ。何度見ても飽きる事が無い。  
 
 それを聞いて、闇に潜む自分が、くすくす嗤う。  
 
『それもまた、本当の所、代替手段に過ぎない。私はこの期に及んで、まだ隠し事をしている。  
私が真実追い求めた、神聖なる魂の持ち主とは、この世でただ一人。  
私が神と崇め奉っているのは、いったい誰なのだろうな?』  
 
 少女が重い口を開く。  
 
「それ……は……それは……」  
   
―――パンドラの匣の奥底に隠されたそれは―――  
 
 少女は放心したままオークの、なすがままにされていた。苛烈な陵辱は、淫らな饗宴の始まりに過ぎなかった。  
歯止めを失った少女と魔者たちが、乱れ狂う。少女は快楽を得るための共犯者たる怪物たちを犯し抜き、犯され尽くす。  
人質たちすら言葉を忘れ、神秘的な光景に溜息をついた。それはワルプルギスの夜の再現だった。  
 
 夜明け間近、すでにその場に立っている者は存在しない。魔物たちは精が枯れるまで搾り取られ、白目を剥いている。  
見物に飽き、野次を飛ばすのも面倒くさくなった磔の男女は、堂に入ったもので、すやすや寝息を立てていた。  
何百回、犯されたのだろう?何千回絶頂を極めたのだろう?  
少女は白く濁った池に浸かり、沈み行く無慈悲な夜の女王を静かに見つめている。  
   
―――小さな何かが、かさりと身動きした―――  
 
 快楽に酔う少女は気付かない。男の子の躯が、ぎくしゃく起き上がったのを。  
「いたたたたた……あ〜あ、ビックリしたなぁ……」  
(一度、死ぬとは思わなかったなぁ。少々、驚きました……)  
 両手で頭を挟み、首の骨を元有った場所へと戻す。澄んだ空気の中、こきんと甲高い音が響いた。  
にっこり満面の笑みで辺りを睥睨する。  
「おかたづけ、たいへんだなぁ……」  
(片付けが、大変ですね……)  
 腕の皮膚が脈打ち、おぞましい肉の刃物へと変化する。男の子は鼻歌を唄いながら、死神よろしく動けぬ怪物どもの首を刎ねて回った。  
蒼い月光の下、赤黒い液体が踊り狂う。体内では離れ離れになっていた白と赤の兄弟が、外で邂逅を果たし、遊んだ。  
「つぎは……はぁ、めんどっちいなぁ、もう!!」  
(やれやれ、これで最後ですか……面倒ですね……)  
 うんざりした顔で磔台を眺める。健康そのもののピンクの唇が、不可思議な言葉を紡ぐ。十字架の足元に淡い光が生まれた。  
男女の顔が仄かに照らし出される。男の子は素っ頓狂な声を上げた。  
「ああ〜!おもいだした〜!!」  
(そうかぁ!や〜っと思い出せましたよ!喉に小骨が引っ掛かったみたいで、ずっと気持ち悪かったんですよね……)  
 この二人だけ残したのは、姉を壊すのに役立ちそうだったのと、どこかで見覚えがあったから。  
悪戯心が、むくむくと擡げてくる。彼らの転送先を、ほんの少しだけずらした。  
 ずっと、帰せ帰せと喚いていたが、元の世界の“どこへ”帰して欲しいとまでは聞いていない。  
十字架に張り付けられたまま、警察署の前に転送されても文句は言うまい。  
二人が有名な連続強盗カップルだからといって、身動き取れない状態では、万が一にも銃弾で蜂の巣にされるということはないだろう。  
命があっただけでも有難いと思ってもらわなければ―――男の子……いや、妹は、くっくっと嗤った。  
「おわったーつかれたー」  
(やっと全部終わりました。まさか、こんなに上手くいくなんて……ね……ふふふ♪)  
 妹は元来、臆病な性格だ。だから、変身魔法で乗客の姿を借りた上で、不可視魔法を重ね掛けした。  
だが、どうやら不完全だったようで魔力を持つ姉の目には見えてしまった。この姿を選んだのは単なる偶然だったが、予想外の幸運を齎した。  
あれだけ強固だった姉の精神が、どういうわけか崩れ始めたのだ。  
―――あの時は驚いたなぁ……  
 姉に見つかったと知るや、咄嗟に子供の振りをした。妙に艶っぽい姉の姿が面白くて、少し調子に乗りすぎてしまった。  
ちょっと触るだけで、はしたないよがり声を上げるので、こっちまで体が火照ってしまう。  
どんな酷いアヘ顔をしているのかと、気になって上を見上げたのは間違いだったのかもしれない。  
姉の瞳に映る男の子の顔を見て、なんだか、すぅーっと心が冷えていくのを感じた。またしても、姉は私の方を見てはいなかったのだ。  
 こんな見ず知らずの小さな男の子相手に情欲を撒き散らす、淫乱な姉が許せなかった。  
 あの時、姉と妹は同時に“絶望”していたが、意図するところは全く別だった。  
妹は、淫らな姉の血が自分にも流れている事に“絶望”したのだ。  
 だから、一緒に感じた“幸福”も、実は逆の意味だったのだ。妹は、快楽を貪るだけの獣と成り果てた姉を蔑んだ。  
故に、罪深い姉をもうすぐ壊せる事の喜びに、無上の“幸福”を覚えたのだ。  
 
―――始めは壊したら、さっさと殺そうと思っていたけれど……面白いからペットにでもしてやろう。  
 妹は、ひくひく痙攣している少女の下へと歩み寄る。にやけたまま薄汚い雌豚の瞳を覗き込んだ。  
まるで擦りガラスのようだ。妹は、ああ、腐っている……と感じた。  
「おねえちゃん。だいじょうぶ?」  
(姉さん♪ごきげんいかが?)  
 掛かったままの魔法が、声を姿に合わせて変換する。獲物の甘い声が少女の壊れた心を震わせる。  
自身の外見そのまま子供のように、はしゃぐ妹は、少女の反応に気付かない。  
「お洋服よごれちゃってる……おねえちゃん、かわいそう……」  
(いい格好ですね、姉さん♪まあ、淫乱だから仕方ないですよね……)  
 男の子の背後で朝日が昇る。少女の目には後光が差した様に見えた―――ああ……君はやはり天使だったのか。  
「そうだ!お着替えしようよ!おね……」  
(そんな変態みたいな格好じゃ、恥ずかしくて連れて歩けませんよ?姉さ……)  
「私……」  
 少女は、神の使いに懺悔を始めた。突然、口を開いた少女に驚き、妹が言葉に詰まる。  
「わ、私……知って……たんだ……」  
「なあに?おねえちゃん?」  
(いきなりなんなんですか?姉さん?)  
 いまだ、しゃべるだけの理性が残されている事に驚き、妹は思わず問い返してしまう―――それが、全てを崩壊させるスイッチだと知らずに。  
「私の、妹が……辛い目に、遭ってるのを……」  
「……えっ?」  
(……えっ?)  
 少女の告白は続く。  
「見たんだ……ぼろぼろの体で……廊下に蹲って、泣いてた……」  
 触手は取り憑く際、自身と“宿主”の記憶から、宿主が見たいと“望んだ”光景を夢として見せる。  
「あの横顔が……瞼に焼きついて、離れなかった……凄く……凄く綺麗だったなぁ……あはっ、あはは……」  
「なあ……に……?」  
(何を……言って……?)  
 道具も使わず、自分で自分の“横顔”を見ることなど出来はしない。  
「わ、私は……その記憶が薄れる前に……苦痛に歪む顔が消えてしまう前に……じ、自分を慰めようとして、あいつの部屋に入ったんだ……」  
「おねえ……ちゃ……?」  
(姉……さん……?)  
 懺悔は、次第におぞましさを増していった。  
「い、妹は……しばらく戻って来れないから……私は、あいつの……実の妹の下着を履いて……オナニーしたんだ……」  
「っ―――!!!」  
(っ―――!!!)  
 触手バイブは、停止していた。妹が絶句する。これ以上、聞いてはならない。悪魔の囁きに耳を傾けてはならない。  
 
―――わかっていた。そんなこと。  
「あはっ♪あいつの下着で、オナニーするの……癖になってるん……だ。あ、あいつのことなら、何でも知ってる。  
下着の色も、サイズも……あははっ♪あいつ、胸が先月より大きくなってた!あの衣装……気に入ってくれたかなぁ……  
月経の周期も、スケジュールも、怪我をした場所も、何をされたのかもわかるんだ。魔力の痕跡が残ってるから。あいつ魔法下手だから。  
何を使ってオナニーしてるのか、何時してるのか、どこでしてるのかも知ってる。だって、妹の部屋、あそこの匂いがするんだから。  
した後はいつも匂うんだ。わ、私、その匂いが大好きで、嗅ぐと気持ちよくなった。オナニーしちゃうんだ……あはははははは♪  
私は妹を愛しているんだ。大好きなんだ。食べてしまいたいんだ。できる事なら、この手で抱き締めて、離してやらない。泣き叫ぶまで……」  
「…………………………」  
(…………………………)  
 小さな体が、びくっと痙攣する。背筋に悪寒が走る。足の震えが止まらない。  
「だって……あいつは……妹は、私の……」  
「おねえちゃん……ひどい……」  
(姉さん……気持ち悪い……)  
 妹は耳を塞いだ。胃の腑から何かが込み上げてくる。  
 
―――神さまだから―――  
 
 妹は、嘔吐した。  
 
 

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