土曜日の夜。いつもより少し早めに夕食を済ませて風呂に浸かりながら、今夜はゆっくりとテレビ  
を観ながら嫁とだらだら過ごそうか、なんて楽しい予定を組み立てる。  
 
『明日は奥さんと一日中ラブラブですか?』  
『何だか生活にハリがありそうでいいよな。そりゃ若々しい筈だよ、八神君は。幸せ者だよなぁ』  
 
 うん、幸せ者だ、俺は。  
 
『いいなぁ。だって奥さん、ついこの間までは――』  
 
 同僚や上司に何気にからかわれたせいなのか、昨日の夜は帰宅した時に飛び上がる程驚いた。  
というか腰を抜かしかけた。  
 
 ただいま、と声を掛けても返事がないので、寝室にしている和室の襖を開けると嫁がいた。  
『きゃっ!?お、おかえり!って、えっもうそんな時間?うわ、ごめんご飯』  
『いや、いいけど……その格好は』  
『えっ?』  
 
 しばしの沈黙の後、嫁の香子(かこ)は一旦青くなった顔を真っ赤に変えて、悲鳴に近い声を上げてしゃがみこんだ。  
『きゃああっ!!こ、これはその、押し入れを片付けてたら、そのっ……』  
 
 ――高校のブレザー姿だった(ハイソ付き)。  
 
 昼間にあんな会話したもんだからか、見慣れた筈だった姿に異様にドキドキしてしまったのは秘密だ。  
『意味は、意味はないんだよ?ただ何となく、何となくだからっ!!』  
 うん、まあ、母さんもよく衣替えの度に今必要無かろうと思うような服を  
『入るかしら?』  
なんていちいち袖を通してみては、いつか着るかもとまた仕舞い込んだりしていたもんだった。だから  
女の人というものはそういう質なんだろう、という変な刷り込みがあったためその場は一応納得しておいた。  
 で、足下に中学時代のセーラー服までが脱ぎ捨ててあったのも追及はしないでおいた。  
 腹も減ってたしね。  
 
「しかし、香子も大きくなったよなぁ……」  
 セーラー服を着ていた頃は、もう少し背も小さくてまだまだ幼かったのに。  
 それからすぐに母さんが死んで2人っきりになってしまって、俺が子供だと思い込んで――思い込もうとしていた  
香子は、いつの間にか俺なんかよりはるかにしっかりした女の子になった。  
 
 2つに結んだ髪はセーラー服を脱ぐと同時に肩に流れ、黒く揺れるそれは俺をときめかせるには充分だった。  
 
「イチ君」  
 ボケーッと昔の思い出に浸っていたら、いきなりドアが開いてびっくりした。  
 ちなみに俺の名は『伊知朗(いちろう)』だが、昔からの名残で29になってもそう呼ばれている。  
「うわっ!!……あ、ああ、何?」  
「そんな脅かしたつもりないんだけど。……まあいいや。あの、さ、えっとね?」  
「うん」  
 目を伏せてもじもじしながら、磨り硝子に指でのの字を書いている。な、なんか可愛くないか?  
「どうした?あ、一緒に入りたいのか、なんてな……ははっ」  
「うん」  
 ――はい?  
「あ、だから、い、今から私も入っていい?」  
 なんですと?  
「あ、えっと、やっぱりやめ……」  
「よし!待っとくから早く来なさい」  
 香子はしばらくぽかんと俺の顔を眺めていたが、すぐに真っ赤な顔して頷くと勢い良くドアを閉めた。  
 
 珍しい事もあるもんだ。この前喧嘩した後に仲直りのために一緒に入りはしたが、それ以降はなかなか  
誘いに乗ってはくれなかった。もちろんそんなだから香子から誘ってくるなんてまずある事ではないのだ。  
 こんなチャンス逃してたまるか。断るわけがないだろう。  
 
 香子の事情で先週から禁欲、昨夜は夕飯が遅めになったため後は風呂と寝るのみだった。だから  
はっきり言って大歓迎だ。  
 だが今か今かと待っている当の香子はなかなかやって来ず、ガラス戸越に見える影は先程からじっと  
動きを止めていた。  
 気が変わったのか?もしや俺が余りに餓えていた為に何かに化かされたのかなどとバカな事を空想しつつ、  
少しのぼせかけた体を冷まそうと立ち上がりドアを開けた。  
「……香子、どうした?」  
「うっわああぁ!?」  
 既に全裸になっていた彼女は、洗濯機の前で脱いだ物を抱き締めて眺め立ち尽くしていた。  
「何やってんのお前」  
「い、いや、別にっ。もう、行くから中で待っててよー!!スケベっ」  
「スケ……。まあいいや、早くおいで。あんまり待たせると……ここで襲うぞ?」  
「ばっ、ばかっ!!」  
 はいはいとドアを閉めて再び湯船で待つ。にしてもあいつ何がしたいんだ?服ならまだしも。  
 
「エプロン握り締めて何やってたんだ……?」  
 
 おじさんだからか?俺が。どうも若い女の子のやってる事は意味がわからない。  
 
 新しいシャンプーはいい匂いがする。  
「やだ。何じっと見てんの?もうっ!!」  
 バスタブの縁に顎をのっけてお尻のラインを眺めていたら、シャンプーを終えた香子にシャワーを  
向けられ、お湯を浴びてむせた。  
「ぶはっ!!だって背中しか見えてないぞ。つまんないから早くこっちおいで」  
「えっち」  
 髪をまとめて体を洗い始める。首筋、肩、腕と順にボディーソープの泡に包まれていく一連の動作を  
見ているうちに、むくむくと下心という名の潜んだ悪戯心が湧いてきてしまった。  
「香子ぉー。たまには背中流してやろうか?」  
 ま、多分  
『何言ってんの!?へんたいっ!!やっらしー』  
とかなんとか怒られて終わりなんだろうな。大体いつもそうだ。正直残念ではあるが、そんな風に真っ赤な  
顔で膨れる香子もまた可愛く思ったりするのだ。  
 そんなことが面白くてわざと意地悪してみたりする。子供の頃好きな女の子に構いたいが為にそんな  
事をする奴がいたもんだが、自分は違った。が、この歳になってそれをやるとは。な、だから  
「……うん」  
ってほら、こうなるってわか……。  
 
 
 えっ?  
 
「はい」  
 泡の付いたタオルを渡される。  
「……え、あ、うん。……いいのか?」  
「……じゃ、いいっ!!」  
 引っ込めかけた手から奪うように慌ててタオルをひったくり、泡が顔に飛んだ。  
「洗う!洗うって!!」  
 洗い場へ出て、とりあえず洗い残してある脚を香子の前にしゃがみ込んで洗う。  
 ふと顔を見れば、俯きながら俺の手元を見つめているものの首は全く動かさず、見ようによっては  
目を合わせまいと視線をそこから外さないように思えた。  
「香子?どうかした」  
「別に」  
 ほら、絶対顔は上げない。俺の顔は膝の上には無いんだけどな。  
 だからと言って嫌がってるわけでも無さそうだ。  
 普段の香子なら、絶対恥ずかしがってこんな事は断る。だから今だって相当頑張ってるはずだ。  
 
 でも、何のために?  
 
 よく見ればまだ温まってもいないのに、俯いたせいで尚ふっくら丸く感じる頬はほんのり朱く染まっている。  
「ここも……洗おう?」  
「えっ?……ひゃっ!?」  
 
 それが俺のちょっとした悪戯心に更に火を点ける事となったようだ。  
 
 しゃがんだまま左手で肩を包むように抱き、右手を両膝の間からそっと奥へ差し込んだ。  
「や……」  
「駄目だろ閉じちゃ。まだ綺麗にしてないんだから」  
 泡の付いた控え目な毛を撫でるとこれまた控え目なため息が聞こえた。  
「……ふっ……んん、あっ」  
 すぐ下にある筈の小さな突起を探し指で軽くつつくように擦ると、泡でするんと滑らかに転がされ、  
同時にくぐもった声が漏れ始める。  
「んん……あ、やだぁ……」  
「本当に嫌?」  
 おでこを当てて唇が触れるか触れないかの所で囁くと、困ったように眉を寄せた。  
「やっぱり嫌だよなー。ごめん調子に乗りすぎたかな?」  
 本当はもっともっと苛めて泣かせてみたい願望もあるけど、楽しみは後にとっておこう。  
 そう思い指を引き抜き、軽くキスをして唇を離そうとした。  
 
 が。  
「!」  
 
 離れた唇を追いかけるように香子の舌が突き出され、背中に腕を回してしがみついてくると、ぶつかる  
ように押し当てられた唇同士が強く吸い付き合い、拙い舌の動きを受け入れた俺の口内は香子のそれで  
一杯になる。  
 ぷはあっと息を吐いていきなり離れた顔は、今度は酸欠で赤くなっていた。  
「おい、大丈夫か!?」  
 いわゆる大人のキスはいつも俺からで、香子から仕掛けてきたのは初めてだった気がする。だからか  
うまく息継ぎ出来なかったらしい。鯉かお前は。  
「う、うん」  
 はあはあと息をついて俺の胸にもたれて来て、じっと動かなくなった。  
 ん?と顔をのぞき込もうとして……視線の先にあるモノに気がついた。  
「もう、おっきい……」  
「いや、あの、そりゃ仕方ないだろ?あんな声聞いて、触って、えっちなキスされて、その気にならない  
 わけないじゃん」  
「……そうなの?」  
「うん」  
「それって、私だから?それとも、男の人はみんな誰にでもそうなんの?」  
「お前だからに決まってんじゃん。何言ってんの!?香子が好きだからそうなるんだよ」  
 上目遣いに不安げな顔を向けてきたが、ふとまた俯く。どうしたんだと思っていると、バスタブの  
縁に腰掛けるように促された。  
 
「い、いくよ?」  
「う、うん」  
「じっとしててね……」  
 何する気?と聞こうとしてすぐにそれは頭のどっかに吹っ飛んでしまった。  
 泡の付いた手のひらですっかり堅くなったナニを握ると、いきなり先っぽに食い付いたのだ。  
 
「――っうあっ!?」  
 これはっ……反則だ。何の心の準備も予告も無しに(実のところかなり)嬉しい不意打ちをかまされてしまった。  
 時々、本当に時たまお願いしてして貰う事はある。嫌がりはしないがそれでもかなり恥ずかしがって  
いるので、ちょっとこっちも躊躇ってしまうのに。  
 きゅっと目を瞑って舌を這わせ、手のひらで撫でてしごかれると、いかにも『ご奉仕してます』という  
格好に妙に罪悪感と共にぞくんとする快感を覚えるのは何故だろう。  
 回数をさほど重ねていないせいか、最後まで行くのは少し長く掛かるかも、と一生懸命頑張ってるなと  
わかる顔を見て頭に手を乗せた。  
 濡れた艶のある髪を撫でながら、それでも少しずつ高ぶってくる興奮にそのまま終わりまでいかせて  
欲しいと片手で反り返りそうな体をバスタブの縁を掴んで支える。  
 それでもやはり疲れてきたのか、眉を寄せて時々肩で息を切らす素振りを見せ始めたのを見て、  
「……ありがと。もう、いいから……」  
と正直名残惜しく思いつつもそれを終えさせた。  
「は……はぁ、はぁっ。き、気持ち良く、なかった?……ごめんね、下手くそだから……」  
「いや、気持ち良いよ?でも、無理しないでいいから」  
 本当に気持ちは良かった。いわゆるテクニックはないが、今だって口の端からつっと垂れる涎をそっと  
手の甲で拭い去る、その仕草や頬を朱く染めた顔はまだ女というには幼いくせに、堪らない。  
 
 はっきり言って非常に、エロい。  
 人間、視覚も非常に大事だというのが本当にわかる。  
 
「後でもっともっと気持ち良くさせて貰うから……」  
 一週間ぶりに禁欲生活解除だ。そのつもりでとりあえず我慢しておいたのだが。  
「……じゃあ、他の方法で」  
「他?……って、おいっ!?か、香……」  
 
 膝を立ていきなり腰に手を回し抱きついて来たので、危うく背中から湯船にひっくり返る所だった。が、何とか耐えた。  
 
「危ねっ!!いきなり何だよおま」  
「黙って!!」  
 胸に付いた泡を俺のソレにも塗りつけると、  
「……じゃあ、いきます」  
と真顔で言われたので思わず  
「どうぞ」  
と言ってしまった。  
 
 っておい!  
 
 そこはかとなく柔らかい感触がお腹の辺りに感じる。温かい……。  
 ぬるぬるとした泡の滑る感じは結構気持ち良いし、鼻に届くシャンプーとソープの匂いは凄くいい。  
 思わずすうっと吸い込んでうっとりと流れに身を任せていたら、香子の動きが止まった。  
 
「で、出来ない……」  
 
「ん?どうした」  
 相変わらず押しつけられたままの体の温かさを感じつつ俯いてみると、思っても見なかった光景に  
目が丸く(多分)なった。  
 
 香子は自分の胸を両手で寄せるように包み、俺の下半身に体をぴったりと押し当てていた。  
 その間にあるのは、俺の、俺、の――目一杯主張する、アレが波打っているわけで。  
 要するにそれは「パイズリ」と呼ばれる行為ではないのか!?  
 まさか頼みもしないそれを進んでやって貰えるとは思わなかったので、頭の中は喜びに小躍りしていた。  
 だが当の香子は顔を真っ赤にして俯いたまま動かない。  
「香子?」  
「む、難しいっ……」  
 見れば密着した躰に挟まれてはいるが、お世辞にも『胸の谷間』に挟まれてはいるとは言い難い状態だった。  
「私無理だぁ……ごめん」  
 形は良くて色も綺麗だ。だが、香子は正直言って胸が大きいとは言い難い。  
 必死で寄せたところで何とか谷間らしきものは無理やり作れても、それ以上何かを求めるのはきつい  
かもしれない。例えばそこにナニかを挟む、とか。  
 
 つまり、無理なわけだ。  
 
 それでも当の本人は必死で体を泡だらけにして何とかソレを挟み込もうとして悪戦苦闘している。  
「ぶっ……」  
 その必死な顔がちょっと可笑しくて。  
「イチ君?」  
「ぶはっ……くっ」  
 
 なんだか物凄く可愛くて。  
 
「くっ……ぶはははっ!ごめ、もうだめっ!!ひ……ひーっ!!」  
「!?……酷い!イチ君のばかーっ!!」  
「ごめっ……だって、あははっ」  
 
 真っ赤な顔で涙を溜めて怒り出す香子を抱き締めゴメンと言いながら、それでも腹を押さえて笑うのを  
止める事が出来なかった。  
 
「香子さん」  
「……」  
「香子ちゃんてば」  
「……っ」  
「香子ぉー。ごめんってば」  
「ううっ……ぐすっ、……うるさっ、うぇっ、ばかっ!ひっく」  
 俺が失礼にも大笑いしてしまったがために、香子は相当傷ついたらしくずっと泣きじゃくっていた。  
 湯船に彼女を後ろから抱き抱えるようにして、体育座りの足の間に包み込んで一緒に浸かる。  
「こっち向いてくれよう。なあってば」  
 こんな時なのに、密着した体は堪らなく魅力的で、むーっと膨れた顔で振り向いた香子の顎を手で  
掬うと首を伸ばして唇を塞いだ。  
「……なんかお尻に当たってるよ」  
 そりゃこんな形でくっついてたら、健康な男の体なら素直にこうなるだろう。  
「思いっ切り笑ったくせに……」  
「だからごめんって!あんまり可愛いからさ。本当だぞ!?」  
 また顔を前にぷいっと向けられかけて、ちょっと強引に押さえて振り向かせ、またキスする。  
「嬉しかったよ?だって俺のために一生懸命やってくれたじゃん。香子のそういうとこ好きだよ」  
「そういうとこ?」  
「生真面目で、健気で、一生懸命なとこ。お前のそーいう所が堪らなく可愛くて好きなの、俺は。  
 だからごめん」  
 振り向いた香子の泣きすぎて鼻まで赤くなった顔を見てまた吹きそうになったが、我慢して髪を  
撫でながら頭を抱き寄せた。  
「今日はどうしたの?何か積極的」  
「……私出る。後から出て」  
 そう言うと香子は風呂から上がってしまった。  
 
 慌ててタオル1枚で後を追うと、リビングで向こうもタオルを体に巻いただけの格好でソファーに  
座っていた。  
「何なんだよー?」  
 ムスッと膨れ涙を浮かべている。が、返事が無いのでさすがに不機嫌な気持ちになりつい咎める様な  
口調になってしまったが、クッションの下から出され床に放り投げられた物を見て愕然とした。  
「何でこんな物があんの!?……やっぱり私じゃ物足りない?不満があるなら、い、言っ……」  
 
 ――1枚のDVDといわゆるエロい雑誌が1冊。  
 
「いや、あの、これは、違っ……」  
 
 今日積極的だったのはこれが原因か。  
 泣き出した香子を見ながら俺はへんな汗をかき、情けなくうなだれた。  
 
 
「後半につづく」  
 

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