これでいいんだと強がって微笑んで自分達と別れた彼女
仲間達やオレが何を言っても意思を変えてくれなかった彼女
これから先、来るべき予言成熟まで会えなくなるかもしれない彼女
例え自分が嫌がっても周りがそれを許さないから……だからいいんだと言った彼女
ふざけるな
「―――セイラ、予言としてお前を依り代として女神が降臨するというのなら」
何で彼女だけが犠牲になり滅ぶべき人間達が生き残らなければならない
「そうなればお前は女神に飲み込まれ、もう二度と元には戻らないというのなら」
人工的に作られたからなんだ、聖女のクローンだからなんだというんだ
セイラは道具なんかじゃない
彼女はたった一人しかいない『人間』なんだ
「その為だけに道具同然に育てられてきたというのなら」
それを
「その理由が世界の為だというのなら―――」
どうしても犠牲にしたいというのなら
「そんな世界は要らない、ああ要らないとも、お前を犠牲にしなければ助からない世界なんて滅んでしまえばいい―――!!!」
ああ、だったらやる事は一つしかない
彼女は望まないかもしれない
笑わないかもしれない
仲間達も必死で止めるだろう
それでもオレは―――彼女に生きていて欲しいんだ
「神よ、どうあっても彼女から笑顔を奪うというのなら」
ずっと自分の存在に疑問を抱いていた彼女が
彼女を本当に思う人達に自分が必要とされているとさえ気づいていなかった
その彼女がやっと手に入れた笑顔さえ奪うというのなら
「―――アンタは敵だ!!オレの敵だ!!!」
例え何を犠牲にしてでも彼女を助けてアンタを滅ぼしてやる
それは世界に届けられた『勇者』の終わりの叫びであり『魔王』の誕生の咆哮であった