悪の組織の首領の青年と正義のヒロインの少女。
二人は幼馴染で以前は仲良かった。気弱な少年と男勝りの少女で相性が良かったのか馬が合ったのだ。
しかし最悪の形で再開を迎えてしまうことになろうとはその時二人は知らなかった。
そして敵同士として再会した二人。記憶を無くし別人のようになってしまった青年は、
少女が今まで戦ってきたラスボスの正体を知り愕然としている隙に少女を捕らえることに成功する。
どうしてと何でと胸に縋り付く、男勝りな部分は変わらずにそれすらも魅力になるほど美しくなった少女を見下ろしながら、
以前から度々胸から湧き上がっていた正体の分からない感情に任せて少女を犯していく。
ビリリリィ……
「やだやだやだぁ!!こんな形でなんて嫌ぁ!!裕太止めてぇ!!」
「―――煩い、耳障りだ」
露出度が高いその衣装を破りながら青年は愚痴る。
何で何でこの女の声がこんなに、こんなに……心に響く。
こんな喧しい女なんて知らないはずなのに。どうして。
【こら○○ぁ!ちゃんと宿題やって置いたんでしょうねぇ?】
【う、うん!やって置いたよ!でもこういうことは自分でやった方が……】
【むっ、○○の癖に一言多いわよ!いいのよ、面倒なんだから仕方ないでしょ!】
【……それって威張る事じゃないと思う】
【う、うるさいうるさいうるさーい!!そんな○○にはこうしてやるー!】
【ひぇ、痛い痛いよ!!僕が悪かったってばぁ!!】
「―――黙れ」
思わず零れた言葉は何に対してだったのか。
泣き喚く女の声を聞くたびに途切れ途切れに幼い少年少女の声が脳内で再生される。
何故それに酷く懐かしさを感じる。何で何で。
分からない分からない!
「ひっく……ぐす、あっ!くぅぅぅ…いや……やだよぉ、止めてよぉ……!!」
「―――本当に喧しい女だ、既に感じているくせに何を言っている」
たぷたぷと衣装から女の豊乳を弄びながら耳元で嘲る様に言う。
それにびくりと反応して瞳から零れ落ちた女の涙が頬を伝う。
何故かそれに反応しそうになった己を抑えるのに苦労した。
そして再びしゃくりあげながら泣き始めた。まるで何かを思い出して泣いているように。
【―――絶対また会おうね!!約束よ!】
【ふぇ…うん!うん!絶対だよ!!】
【ったく……そうだ、もう一つ約束しなさいよ!】
【ぐずっ……約束?】
【そう、約束よ。あたしが今度会うときはビックリして腰抜かすぐらいうんと女らしくなってやる!
だ、だからアンタも男らしくなりなさい!何時までも泣いてんじゃないわよ!!いいわね!?】
【は、はいぃぃ!!ごしごし……分かった、僕がんばるよ。一生懸命……やってみる!!】
【よし、それでいいわ。そ、そうなったら……う、ううん、やっぱり何でもない、次に会った時に言うから!】
【?よく分からないけど分かった、あ、じゃあ指切りしよ!】
【指切り?も、もう子供っぽいわねえ。本当に期待していいのかしら……まあいいわ、じゃあいくわよ。
ゆびきりげんまんはりせんぼんのーます!!】
【のーます!!】
「―――黙れ、黙れ!」
ノイズのようにジジジと混ざる声。
鬱陶しい筈なのに何でそれを拾いたがる。
何で何で何でそれで何かを思い浮かびそうになる。
どうしてどうしてどうして!!
耳に残る余韻を振り払うように女に強引に口付ける。
そうすれば黙らせられると信じて。
「や!……んんぅ!!ぴちゃ……くちゃ……ぢゅぱ…」
口付けられた途端再び零れた女の涙。
貪るように女の口内を嘗め回し、吸い、嬲っていく。
暫くすると女は諦めたように瞳を閉じて身を任せるようになった。
もうどうなってもいいというように。
諦めたのか?それとも受け入れたのか?
いや、そんな事はありえないはずだ。そうだ、ありえない。
知らない男の舌を受け入れるなんてそんな事―――
泣カナイデ―――泣カナイデ泣カナイデ、泣カナイデ―――!
「―――黙れ黙れ黙れぇぇぇぇ!!!」
何故こんな感情が湧き上がる。
何故何故この女を守りたいなどと思った。
何故何故何故!!!?
女の口を開放し、愛撫する手すらも止めて頭の何かに叫ぶ。
そうしないと何かが出てきそうで、自分が壊れそうで、怖い怖い怖い!!
今まで培ってきた組織のリーダーとしての自分、それを破って何かが出てきそうで!!!
その時だった、ふわっ……と柔らかい何かに包まれたのは。
余りにも暖かくて、優しくて、自然のように包んだ。
思わず泣いてしまいそうになった。この身を支配しかけた恐怖が次々と消えていく。
「本当にアンタは弱虫で……馬鹿で……男らしくないんだから……。
でもね、あたしは……そんなアンタが……この世界で一番大好きなんだからね、裕太……」
涙を残し服は破れていたがそれでも彼女は綺麗で強かった。
優しく、とても優しく彼女は微笑んでいた。
「―――俺は……俺は……」
「ごめんね、辛かったよね。気づいて上げられなくて本当にごめんね……」
「でも、あたしも会いたかった……本当に会いたかったんだからぁ……!」
全ての思いを込めて青年の頬をそっと両手で押さえて彼女は唇を重ねていく。
呆然と彼女を見つめながら受け入れていく青年。
優しく青年の頬を押さえたまま彼女は涙を一筋流す。
そして唇を重ねられた瞬間、彼の中で何かが壊れ、弾けた。
でもそれは怖くなくて、痛くなくて、苦しくなくてそれは檻から開放されていく。
―――ああ、そうだ。あの時に出会った「何か」
それによって身体が乗っ取られ、記憶が奪われていった中、
彼女の記憶だけはと歯を食いしばり、傷を付けながらも守った。
それのおかげでいつも彼女を攻撃するとき躊躇えた。
よく分からない感情が在った、けどそれは無くしてはいけない物だったんだ。
ゆっくりと握った拳。それはもう何かを壊すための物ではなかった。
瞳を閉じて開かれた瞳。それはもう破壊を映すための物ではなかった。
力強く少女を抱きしめた腕。それはもう少女を傷つけるための物ではなかった―――