マティーニ大陸暦952年から953年、
ひし餅のような形をしたこの大陸に戦火が吹き荒れた。
事を起こしたのは大陸の東半分を支配する、
エルドゥラ王国、マイヤーズ王国、カンパリ皇国の三国。
三国は主に内政的な理由から魔族の国ヘルメス王国への侵攻を決定する秘密条約を締結。
翌年春、侵攻を開始した。
三王国は己の勝利を確信し、戦後の領土分配に考えをめぐらせていた。
だが開戦から一ヶ月、前線が膠着。
さらに一ヵ月後、魔族軍の大規模な反抗作戦が開始。
北部カンパリ軍右翼の壊滅を切っ掛けに三王国軍は一気に崩壊。
戦争開始から七ヶ月、カンパリ皇国首都、カンパリが陥落。
10ヶ月後マイヤーズ王国首都、マイセン陥落、時をほぼ同じくしてカンパリ皇国全土が
が魔族により制圧され、逃亡していた第一皇女が捕らえられる。
開戦から一年、エルドゥラ王国は領土の大幅割譲を条件にヘルメスと停戦協定を締結、
三王国で唯一、滅亡を免れた。
蛇足ではあるが、休戦から二ヵ月後、王位継承権第一位を持つ第一王女と
王位継承権第二位を持つ第二皇女のヘルメスへの留学が発表された。
対外的には交流のためと発表されたが、誰もがこれが事実上の人質であり、
隠された停戦条件の一つであろうと噂した。
マイヤーズ王国、カンパリ王国は滅亡、エルドゥラ王国は領土の大部分を
失うという結果を経て、マティーニ大陸全土を巻き込んだ戦争は終結した。
「ひゃっ、あっ、はっ、だ、だめ、こわれ、ちゃう」
夜中、蝋燭の火のみが照らす書斎のに水音が響く。