ところでさ、キミって好きな人いないの?
「何の話だよ」
いやさ、キミって何だかんだで顔いいし、何でも器用にこなすでしょ?
普段のやる気ない雰囲気とのギャップが、一部の女子から人気あるみたいだよ
「はぁ、それで?」
いや、人気あるけど浮いた話はとんと聞かないから、なんでかなー、と思って
「なんでも何も、与太話に過ぎないからだろ。誰がこんなダルい男を好きになるかよ」
……んー、少なくとも一人、心当たりはないこともないけど
「オレにはさっぱりわからないが」
……鈍感だよね、キミ
「あ、何か言ったか?」
別に何もないよ?
「……まぁいいけどな。で、そのよくわからない噂と、オレが誰かを好きってのが関係あるのか?」
……内緒だよ?
「?」
実はさ、キミを好きだっていう奇特な人がいてさ。キミの好みをさりげなく聞いて欲しいんだって
「全然さりげなくないな」
まあ、嘘だからね
「帰れ」
冗談だよ。僕は回りくどいのは苦手だから、今回は直接聞くことにしたの
「何を信じろってんだよ、全く」
まぁそう言わず、後学のために教えてよ。好きな娘がいないなら、好みの羅列でもいいから
「……たく、仕方ねえな。お前だから教えてやる」
よかった。持つべき者は親友だね
「ね、ねぇ」
ん、どうしたの委員長?
「ど、どうしたの、って……聞いてくれたんでしょ?」
……あー、その件か。確かに聞いたよ、さりげなく
「本当?で、で、アイツは何て?」
……言わないとダメ?
「あ、当たり前でしょ!?何のために聞いてもらったと思ってるのよ!」
『あ、アイツに絶対好きって言わせてみせるんだから!』だっけ?……自分で告白しなよ
「それはダメ!」
なんでさ
「う、だって……」
だっても何も、彼とは付き合い長いんでしょ?別に振られたりはしないと思うけどなぁ
「……わ、私だけ好きって、何か悔しいじゃない……」
…………
「な、何よ!だからこそ、恥を忍んで頼んだのに!」
はいはい、じゃあ教えてあげるよ、彼の好み
まず彼は、長い髪の娘が好きらしいよ。キミくらいの
「な、なるほど……ほ、他は?」
背は同じか少し低いほうがいいんだって
「よ、よし。問題はないわね」
スタイルはあまり気にしないみたいだけど、どちらかというと細身の娘がいいみたい
「ほ、細身……せ、セーフよね、私?」
さぁね。彼の基準なら大丈夫じゃない?
「だ、ダイエットしようかなぁ」
顔は可愛いほうがいいらしいけど、そんなに問わないって。ただし
「た、ただし?」
猫っぽいのはポイントが高い
「……ネコっぽい?」
んー、彼のニュアンスを伝えるのは難しいんだけど、
ま、ちょっとつり目な感じだろうかね。よくわかんない
まぁ委員長なんかたぶん猫っぽいんじゃないの?彼から言えば
「ふ、ふぅん……」
んー、容姿に関してはこんな感じかな
「ね、ねぇ!」
あれ、まだ何か?
「あ、あのさ……」
ん?
「…………む、胸って大きいほうが、いいの、かな?」
……彼の好みは、どちらかというと、板だね
「い、板?」
まぁ委員長レベルがベストなんじゃないの?もうそういう質問はなし。腹立つから
「な、何でよ!?」
で、性格とかのことだけどさ
「う、うん」
まず彼は、基本的に自分から動こうとしないから、引っ張ってくれる人がいいって
「な、なるほど」
例えば朝は起こしてくれたり、お弁当作ってくれたり、勉強教えてあげたり
「ふんふん……ん?」
あんまり彼氏彼女ってふうにガチガチせずに、気楽に相手をからかったりできると、なおいいって
「あ、あの……それって」
で、そこまで聞かされて、僕は思わず言っちゃったよ
『ずいぶんと身近にいる人に似てるね』って
「…………」
容姿とかも、何だかその人のことに全部当てはまってるし
「……あ、アイツは、何て?」
彼ね、顔をそらして一言、
『長い付き合いだからな、見慣れてるんだろう』
だってさ
「……あ、う」
……全くもうね、聞いてて呆れた
キミらさ、早く付き合いなよ。見てるこっちが恥ずかしくなるし
「……えと、うん」
あーあ、顔赤くしちゃって
僕も幼なじみ欲しいなー