……ふぅ。
さて、こっちはあらかた終わったけど。そっちはどう?
「ちょっと前に、全部終わったわ」
それは何より。ごめんね、委員長ばかり頑張らせちゃって
「副委員長のあなたも十分な働きをしてるでしょ。気にしないで」
いやいや、委員長の仕事ぶりには負けるよ
それにしても、先生も人使いが荒いよね。僕らに仕事を押し付けてさ
「私は別に。……それより、ちょっと話があるんだけど」
また彼の話?早く告白しちゃえばいいのに
「う、うるさいわね!絶対アイツに好きって言わせてやるんだから!」
はいはい、それはよーく存じております
でも最近、何か変だよね。キミたちが一緒にいるところをあんまり見ないし
「……話ってのは、そのことなのよ」
避けられてる?
「そうなの。アイツ、何か最近よそよそしくて」
へぇ、例えば?
「まず、自分で早起きしてる。今まで私が起こしてたのに」
はぁ、なるほど
「それどころか、私が家に行くより早く学校に行ってるし」
それは相当早いね。学校まだ開いてないんじゃないの?
「どこかに寄り道してるみたい。 学校に来るのは遅刻間際だし」
ふぅん……他には?
「休憩時間とか、私が話しかけようとしたら、すぐに出ていっちゃうし」
あー、そう言えば教室にいないね
「お、お弁当渡そうとしても、何かお昼持参してるし」
……ふぅん
「帰りだって、今までなら待ってくれてたのに、最近は先に帰ってるし」
…………
「夜にやってた勉強会も、一人でできるから来るなって……なに、その顔」
いや、別に。大変だなぁと
「大変を通り越して異常よ。今までのアイツとの付き合いで、こんなことなかったもの!」
どちらかというと今までが異常じゃ……
「な、何か言った!?」
……いや、別に
「……どうして、こんなことになったのかな」
さてね。心当たりはないの?
「別に。いつも通りのはずよ」
本当に?何か些細なことでもいいからさ
「うーん……やっぱり思い当たることは何も」
全くないの?
「……あ、あなたに相談し始めてから、多少のアプローチはかけるようにした、けど」
……えーと、僕に相談し始めてから?
「そ、そうかも。あなたにアイツの好みとか聞いて、私なりに色々考えてやってみてるの」
あー、やっぱりねぇ
「わ、私、あなたのアドバイスにしたがって、
ちょっとアイツの好きそうな服を着てみたりとか、
お弁当にアイツの好きなもの増やしたりとか、
帰り道で微妙にアイツの傍に寄ったりとか、
ちょっとだけ、ちょっとだけど、頑張ってる、のに……」
……委員長
「やっぱり。私じゃ、ダメなのかな……」
…………
……帰ろうか。日もだいぶ傾いてきたし
「……うん。アイツは……やっぱりいない、か」
僕が家まで送るよ。さ、行こ
もしかして、恋人とかができたのかもね
「え、えぇっ!?」
冗談だよ。彼に限ってそれはない
「ほ、本当?」
まぁ僕の知る限りではだけど。密かにもてるからね、彼に
「……や、やっぱりそうなんだ」
あくまでもマイナーな人気ではありますが。早くしないと誰かに取られるよ?
「そ、そんなことないわよ!それに、」
はいはい、彼から告白させるんだよね
「そ、そうよ!絶対、私に惚れさせてみせるんだから!」
その意気だよ、委員長。キミは元気じゃないとね
「……ありがと、あなたにはお世話になりっぱなしね」
いやいや、乙女の恋の悩みには、やっぱり手を貸さないとね
「最近はずっと相談に乗ってもらってるし、アイツにも色々聞いてくれてるでしょ?」
……ちょっと一緒にいすぎかもね
「え?」
ううん、こっちの話
それより早く仲直りしてよ?夫婦喧嘩は犬も食わないっていうし
「わ、わかってるわよ!だ、だいたい、まだ……」
ん?まだ、何?
「ま、まだ、夫婦じゃないから!」
………………
「……あ」
……今のは聞き流してあげよう
「………うぅ」
さ、着いたよ。僕はこれで
「うん、ありがと。それじゃまた明日ね」
あぁ、またね
で、話って何?
「いや、ちょっと、な」
ま、だいたい予想はつくけどね
いやー、しかし驚いたね
珍しくキミから話しかけてきたと思ったら、「昼休みに屋上に来てくれ」だなんて
まさに青春だよねー
「……話していいか?」
あ、ごめん。どうぞどうぞ
「あー……、話ってのは、アイツのことなんだが」
委員長のことでしょ?最近、彼女のこと避けてるらしいじゃないか
「べ、別に避けてるわけじゃ」
いや、クラスの皆がそう思ってるよ。『最近二人が揃ってないな』って
「そ、そうなのか?」
委員長だって寂しそうだしさー、かわいそうに
「……あのさ。最近、お前よくアイツと一緒にいるよな」
まぁ、先生がクラスの仕事とかを押し付けてくるし。それがどうかした?
「あ、いや、大したことじゃないんだ。ただ……」
ただ?
「……いや、何でもない」
何でもない、ねぇ
「ちょっと気になってるだけなんだけどな
ほら、アイツって性格きついし、相手するのも大変だろ?」
そう?僕に対しては親切だよ
「そ、そうか。あー、でもほら、色々と小うるさかったりとか」
いや、彼女の忠告は正しいね
「……し、しかしお節介な部分は」
行き過ぎな気配りってのはないなぁ
「…………えーと」
僕さ。回りくどいの、嫌いなんだ
正直に言いなよ。『お前はアイツが好きなのか』って
「……っ!」
はい、図星ね
「お、オレは別に……」
全く、自分の好きな娘の近く男がいるからって、わざわざ避けたりしてさ
子供かって思うよ、普通
「そ、そんなこと」
大有りでしたけど、何か?
「……で、結局どうなんだよ」
何がさ?
「何が、って……お前がアイツを好きかってこと」
んー……、実はもう告白してたりして
「なっ!?」
冗談だよ、冗談
「……くそ」
あのさー、誰かに取られたくないんだったら、早く告白したらいいじゃん
「……わ、わかってるよ。でも……」
でも?
「……オレだけ好きなのは、なんか悔しいじゃねーか」
………………はぁ
「な、何だよ」
いや、別に。似た者同士、仲良くしてくれとしか
「は?」
はぁ、僕もそんな幼なじみが欲しいよ、本当……