そう、全くその通り!  
本当にね、幼なじみを持つ男って、大概は幼なじみをキープしてる感じだよ。失礼とは思わないのかな。  
「……なぜ、オレを横目で見ながら言うんだ」  
自覚もないの?  
せっかく僕があれだけお膳立てしたのに、しかも互いの思いはバレバレなくせに、結局ムキになって告白しなかったじゃない?  
キミが密かにモテていることと併せれば、彼女をキープ扱いしてるんじゃないか、って気にもなるよ。  
「バカ抜かせ。誰がオレみたいな男」  
……じゃあさ、今ポケットにしまってあるそれは、何?  
「……!な、何の話だよ?」  
ふぅん、しらばっくれるんだ。でも手は正直だね。左ポケットにしまってるんだ?手で押さえてるよ。  
「ぐっ!……だ、ダメだ、これは見せられない!」  
ん、おーい委員長、彼が面白いもの隠してるよ。  
「なっ?!な、ないぞ、何にも隠してなんか……」  
なんて嘘だよ。隙あり〜。  
「あっ、てめえ!」  
ふむ、なになに………………あぁ、やっぱり。  
「……な、なんだよ。つーか勝手に読むなよ」  
いや、どこからどう見てもラブレターだな、と。封筒に入ってないのは怪しいけど。  
「後半は無視か」  
うーん、これはなかなか、かわいらしい字だね……僕らの後輩と見た。  
「い、いいから返せ!」  
あっ、と……まぁいいけど。で、告白は受けるの?  
「ま、まぁ、とりあえず会ってみないことにはわからん。すっぽかすのも失礼だろうし」  
彼女というものがありながら?  
「べ、別にオレとアイツは付き合っては……!」  
はいはい、だから別に関係なし、ね。一生やって……あ。  
「な、何だよ、次は騙され……あ?」  
「なーにを言い争ってるのよ、カンペでも見つけ、た……?」  
……あーあ、知らないっと。  
「お、おいっ!いや、な、何だ、これは違っ……」  
「『あなたが好きです。あなたに直接、私の思いを伝えたいと考え、手紙を書きました。放課後、屋上に来て下さい』  
……ふ、ふーん?立派にラブレターなんかもらったの?」  
「あ、いや、だからこれは」  
「いいじゃない、別に。「あんたを好きだ」なんて奇特な人間、これから一生現れないわよ?」  
「な、何か怖いぞ……っと」  
「あ、あんたは、その奇特な人間を幸せにしてあげなさいよ……わ、私は別に気にしないんだから!ふんっ!」  
「お、おい!……くそ、何なんだよ……」  
 
親友が気に掛かり、屋上の給水塔に隠れて様子を伺う。こういうのを、野次馬根性っていいます。覚えておこうね?  
いや、実は全然。隠れた場所がまずかった。まぁこっち来てよ。  
「何だよ、全く……で、お前以外には誰もいないんだろうな?またアイツがいたら嫌だぞ」  
僕は見かけてないなぁ。さすがに告白現場覗くのは気まずいんじゃない?  
で、返事は?  
「…………断ったよ」  
うわ、もったいないな!あんなかわいい娘だったのに。  
「……お前な、知っててからかうのやめろ……オレが、アイツ以外は好きになれないことをな」  
付き合わないくせにね。ま、それはいいよ。別れ際、笑顔だったね?  
「い、いや……『先輩の好きな人ってどんな人か』って聞かれたから、アイツの話をしたら、笑われた」  
ん、なんで?  
「『先輩、よっぽどその人が好きなんですね』だと……んなバカな」  
はぁ、本当……うらやましい。僕も幼なじみが欲しいなぁ。  
さて、惚気話で気分がドロドロする前に帰りますか。委員長に報告するんだよ、ちゃんと。  
「するか!」  
 
「…………バカ、丸聞こえよ」  
 
 

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