あーあ、どこかに可愛い幼なじみが落ちてないかなー。  
「……お前、いきなり何言ってんだ?」  
え?いや、可愛い幼なじみが欲しいなって。  
「は?」  
僕はね、常々思ってたんだ。  
妹は両親が頑張れば作れる。姉は、まぁ義理ならできないこともない。  
だけど、幼なじみってのはどーしても運に頼るしかないってね。  
「……」  
だからこそ幼なじみっていうのは貴重な関係で、  
こんなにも人を惹き付けるん……ちょっと、聞いてる?  
「誰がお前の与太話なんて聞くか」  
……全く、持つものは持たざるものの気持ちをわかろうともしないんだね。  
自分がどれだけ恵まれているか、その自覚がない。  
「あのなぁ……、例えばだ、仮に幼なじみがいても、そいつが可愛いとは限らないだろ」  
まぁそれはそうかもね。でもキミの幼なじみは可愛いじゃないか。  
「アイツが?お前、目が腐ってるんじゃねーか?」  
……ひどい言い様だね。そんなにダメ?  
「一万歩譲ったとしても、アイツが可愛いのは顔だけだな」  
んー、そんなに性格悪いとも思わないけどなぁ。  
「は、それはアイツを知らないから言えるんだ。アイツの中身はまさしく悪鬼の如しだぞ」  
……ふーん。例えば?  
 
「まずアイツは、人の安眠を妨害する」  
夜に騒いだりするの?  
「ちげーよ、人がせっかくぐっすり寝てるのに、わざわざ叩き起こしやがるのさ」  
だから、夜に?  
「いや、朝だけど」  
……それって、わざわざ起こしてくれてるんじゃないか。  
「ぐ……、人の至福の時間を邪魔しやがるんだぞ?」  
そのおかげで遅刻しないで済んでるならいいことさ。  
「……ついでにウチ朝飯も食っていくし」  
お、親公認の関係なんだ……うらやましい。  
「わけあるか。母さんなんか何かあるたびにオレとアイツを比べるんだ。うっとうしい」  
うわー、テンプレ。  
「何だよそりゃ。いいか、これだけじゃないぞ」  
はぁ、何となく聞くのが嫌になってきたよ。  
 
「だいたい、アイツは四六時中オレについてきやがる」  
うん、確かにいつも一緒にいるね。  
「そうだよ。朝から人を叩き起こして、学校に行くときもずっと一緒だし」  
仲いいよね、本当。  
「いちいち『宿題はやったか』とか『成績悪いんだからしっかりやれ』とか言われるんだぞ?」  
すごく心配されてるんじゃん。  
「お節介ってのはやりすぎるとうざいんだよ。学校でもうるさいし」  
まぁ彼女は委員長だし、キミって態度あんまり良くないしね。  
「だからっていきなり蹴り入れるヤツがあるかよ」  
いきなりじゃなくて、自分がからかってることをお忘れなく。  
「う……。い、いやアイツすぐマジになるからおもしろくて」  
見てるこっちは別の意味で面白いけどね。  
「ほ、ほっとけ!」  
まぁそれはさておき。  
「おくなよ!……ったく、他にもあるんだぞ?」  
まだあるの?  
「あぁ、あるな。よく聞け、これはアイツの性格の悪さを表す最たるモノだ」  
へー、何なのさ?  
「これはひどいぞ……アイツはな、オレの嫌いなモノばかり弁当に入れる」  
…………は?  
「いや、だからだな。アイツが作る弁当には、必ずピーマンとかニンジンとかそういうオレの嫌いなモノが」  
ちょ、ちょっと待って。  
「何だよ、人の話は最後まで」  
えーと、あのさ。一つ確認するけど。  
「なに」  
……お弁当、作ってもらってるの?  
「あぁ、そうだけど。それがどーした?」  
………………。  
「……な、何だよ、その恨みがましい目は」  
……ごめん、ちょっと彼女にこの話するわ。キミが彼女をどう思ってるか、包み隠さず。  
「ちょっ、おま、バカ止めろっ……!あ、雪菜、いや、これには深いわけがぐはぁ!  
 が、だからがはっ!、色々と誤解がぐふっ!あるってうぼぁっ?!」  
 
……あー、幼なじみが欲しいなぁ。  
 

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