近所、というか裏隣に住む結希(ゆうき)が家にきた。なんでも相談したいことがあるらしい。
いったい何の相談なんだろうか?
「お邪魔します……へー、部屋片付けたんだね」
結希は部屋に入るなり失礼なことを言ってきた
「前は課題が机に乗ってたから片付いてないように見えたんだろうが。あの量は異常だっつーの」
長期休暇に出されたプリント合計4kgだ。不評だったのは言うまでもない
「あははは……ごー君真面目にやればすぐ終わらせれるのにね」
まぁ真面目に勉強すればそれなりの成績を取れるが、面倒じゃん?
「買い被りすぎだ。……で、今日は何の相談だ?前みたいにゴキブリ対策ってどうしたらいい?とか微妙な内容だったら怒るぞ?」
そーゆー相談が昨年夏にあったのだ。
「えっとね……その……す、好きな人ができたの!」
「ほー、それはよk…………」
突然の宣告で俺はどんな顔をすればいいのか分からなくなってしまった。
だって、色恋とは無縁といわれる俺が好きな相手は目の前に居る結希なのだから
「ち、ちょっと待て?ひひひっひふーと深呼吸して落ち着こうか!?」
「それじゃあ息苦しくなってかえって落ち着けないよ。ていうか真面目な相談だよ?」
結希は若干しょぼくれてしまった。俺はなんとか気を取り直して色々聞くことにした
「で、誰を好きになったんだ?」
「んー……内緒。でもごー君に似てるかも?」
なんて微妙な奴をっ……でも我慢我慢。
「なんで好きになったんだ?」
「えっとねー……結構昔からの知り合いなんだけど、いつのまにか好きになってたんだー」
あれ、結希の知り合いでそんな野郎居たっけ?まぁいいか。
「で、なんで俺なんかに相談することにしたんだ?」
「だってほら、私気が弱いじゃない。」
あぁ、つまりその野郎に似てる俺は練習台なわけか……くそっ
「大丈夫?なんだか顔色よくないけど……」
「いきなりの事で顔面筋が硬直しただけだ」
……平常心平常心、落ち着くんだ轟(ごう)、多分これはまだジャブだ
「で、何が聞きたいんだ?」
「んとね……今から質問するからなるべく全部答えてね?じゃあ001問」
「待て、1はまだしもなんで0が二つ前置きなんだ?」
「傾向練るために200問程質問表作っちゃったから?」
結希が好きになった男、貴様は一回殺す。重いじゃないか!
「じゃあ、始めるねぇ……」
俺が質問攻めの業苦から解放されたのは、それから二時間後のことだった
私は部屋に戻るとベッドに倒れこんだ
「ごー君、いくらなんでも鈍すぎだよー。そりゃ私がいつまでも言わないのがわるいんだけどさぁ……」
裏隣に住む轟君とは家族がここに引っ越してきてからかれこれ10年以上の付き合いだ。
轟君は誰とでも仲良くなれる人だったから私ともすぐに仲良くなった。
彼を友人として、ではなく好きな人として見るようになってから5年は経つ。
その間私は遠回しではあるが好意を告げてきていたのだが、
周囲が全員それに気付いているのに轟君は今だに気付かない。恐ろしい程に鈍い。
まぁ、それにはいくつか理由があるから仕方ないんだけど。
まず色恋話に興味を持たない、次に顔があまりいいとは言えない。最後にいい人過ぎる。
鈍くて当然な条件下で育ってきたからまぁ仕方ないけど、まさかここまでてこずるとは……
「まぁ、今度こそ……」
今日は私が誰かを好きになった。そう宣言できた。後は猛アタックするだけだ。
まぁ勇気が無いからそんなにあからさまな真似はできないわけだが……
とりあえず練習と称して明日から轟君にお弁当を作ることにしよう……
私はそう決意し、先程書き記した質問表からお弁当の献立を組み立てることにしたのだった…………