とある休日、いい歳をした兄と妹がコーヒーなんぞ飲みながら話をしていた  
 
 「ねえ、いつまで この家にいるつもり?」  
 「ずっといるよ。 特にアテもないし。 通勤に便利だし。  
  お前こそどうなんだ? そろそろ親父やお袋に孫の顔でも見せてやれよ」  
 
穏やかな空気が微妙な感じに変る。 妹の右の眉が上がった。  
 
 「それはお互い様でしょ。 あたし達二人とも子供じゃないんだし」  
 「居心地がいいんだよ、この家は。 家族の記憶が染み付いているし、お前の顔も見れるしな」  
 
とたんに妹の眉がハの字になり頬が赤くなった。  
 
 「なに馬鹿なこと言ってんのよ。 兄さんが片付かないうちに妹が先に嫁ぐわけにいかないでしょ。  
  あたしを片付けたいのなら、先に彼女でもつくりなさいねっ」  
 「ああ、お前よりコーヒーを淹れるのが上手い女って、なかなかいないんだよなぁ……」  
 「当たり前でしょ。 何年 兄さんと一緒に暮らしたと思ってるの?」  
 
言いながら空になったカップにコーヒーを注いでやる。  
そんな日常が続く。  
 
 
翌週の休日、妹が真一文字の眉で兄を見据えて言い放った。  
 
 「ねえ、兄さんの生命保険の受取人なんだけど……」  
 「んあ? 保険がどうした?」  
 「あたしに変えておいたから」  
 「なぜ?」  
 「家から出るつもりないんでしょ? あたしも無いの。 ということは、父さんと母さんが亡くなった後も  
  兄妹で二人暮しになるわけだし」  
 「だからといって、それはないでしょう」  
 「いいじゃない、家族なんだから。 なんなら、兄さんの子供を産んであげてもいいのよ……」  
 
妹をあいてにドキドキする休日。  
 

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