俺今大学四回で夜中コンビニのバイトをしながら家族と暮らしてる。
今日はいつもだとバイトを入れてない日だったけど、まだ学校が休みなのと、夜中に入ってくる
ジャンプ読みたさにバイトを入れたんだよな。
時間は夜1時20分……。俺は外を爆走してるバイクの馬鹿でかい排気音で目を覚ました。
目覚めが目覚めなだけに不機嫌になりながらも少し微睡む。
バイトは2時から……。30分に風呂に入れば間に合うな。なんて思っていた瞬間だった。
向かいの部屋からコツ、コツと堅いものが触れ合う音がした。直後
「あっ……ああ、あん……」
なんて艶めかしい声まで聞こえて来やがった。
ええ、向かいの部屋は妹の部屋ですよ。ちなみに言っておくと、外壁同士に間隔が空いているし、
今まで15年過ごしてきて物音の一つも聞こえたこともないから隣の家から、って線は100%無い。
共働きの両親との距離が離れてきている妹は、念のため、と起こしてもらうのを頼んでいたお袋からも
俺が今日バイトなのを聞かされていなかったのだろう。
しかし、もう高校2年になっているとは言え、部屋でそれっぽい本を見かけたとは言え、ローターを
見かけたこともあるとは言え、実際声を聞くとショックだった。
とりあえず気持ちを落ち着かせようとして携帯をいじっていたら、画面に表示されている数字は
1と30に近付いてきた。行くしかないのか……。
引き戸をゆっくりと開け、妹の部屋の前を通過して戸の横にある階段から下へ降りる。
しかし、いざ下に降りてみても状況は変わらない。俺が風呂に入ればあいつは気付くのだ……。
ここで、俺にちょっとした妙案が思いついた。
ここで敢えて気付いていることを気付かせて、俺の言いなりにならせるのも良い。何せあいつは
思春期に俺のオナニーを見てから、何かとこき使うようになっていた。ここらで形勢逆転しようじゃないか。
それに、俺が風呂に入ったあと回ることになる洗濯機の中身を干す作業も、あいつにさせれば
お袋にも見直されたり、また会話もするようになるんじゃね? と……。
いやぁ俺って良い兄貴だな。
とりあえず風呂から出たらあいつにメールしとこう。
「声聞いた。バラされたくなけりゃ洗濯物干せ。
あと保守しとけ」って。