「あれ?誰か倒れてる。外国の人かな?あの〜、大丈夫っぽくないですけど、大丈夫ですか?」
「おなか、へって…しにそう…なの。
お、ねがい、ちを……ち、ちを…ちょうだい…」
「ち、ち…?チチ?乳?え、えええ!おおおおオッパイですか?!」
「おねがいよぉ…このままじゃ、しんでるけど、しんじゃうわ…」
「ええええ?ど、どうしたらいいのー?確かにあたしはオッパイ大きいけどオッパイなんか出ないし!
でも絵里ちゃんに乳牛みたいに搾ってやろうかとか揉まれるし、もしかしてって事も…」
「おねが…い、なんでも、するからぁ…」
「おおおお客様!お客様の中でお乳の出る方はいませんかーってこんな夜道にゃあたししかいないわー!」
「ち、ち…を……」
「ああああ、どんどん台詞が少なくなってるぅ!なんかヤバそーだよー!
奇跡を信じるよりも捨て身の努力って誰かも言ってたし!頑張って揉めば出るかも!
ううう、恥ずかしいけど、これも人助け…だよね」
僅かな逡巡。
意を決したように、一息にセーラー服の裾が捲り上げられる。
露わになった純白のブラジャーのフロントホックに手がかかる。二つの小山が形作る谷間に下側から手が差し込まれ、狭間に埋もれているようなそれを僅かに一捻り。
瞬間、胸元が爆ぜた。
否、相手は多少天然ボケているとは言え、一介の女子高生に過ぎない。どこぞの巨大ロボットのように胸部から必殺技が出る筈がない。だが、そうとしか見えなかった。
巨大な双椀を備えた下着が、一瞬で中心部から左右に分かたれたのだ。
いまだに成長を続け、同級生の畏怖と羨望と嫉妬と下心を一身に集める、脅威の胸囲。サイズが合わない薄布一枚に押さえつけられ、解き放たれるのを今か今かと待ち望んでいた二つの白い峰は、主人の号令に従って無粋な拘束具を振り払う。
それはまさに開放と呼ぶに相応しかった。
夜気に晒された柔肉は開放の喜びに、ぷるん、とその身を一震えさせる。
文字通りの意味で手に余る乳房を下から掬い上げるようにして持ち、アスファルト上に倒れ伏す少女の口元へと、身体ごと近づける。
「はい、アーンしてくださぁい」
霞んだ視界の向こう。
思わず揉みしだきたくなる大きさ。たっぷりとした量感。健康的な色合い。柔らかそうな曲線に満ちながら、瑞々しく張りのある肌は形を崩させない。
一瞬で頭の中が沸騰し、そこから生まれた熱が思考と視界を覆っていた霞を吹き飛ばした。
視界一杯に映るのは、母性と豊穣の象徴。
どれだけ憧れても与えられる事は無く、どれほど努力しようとも届かない。人を超えた身であるのに、いまだ持ちえざる物。
それ故に忌々しい。
「だ…」
ぎり、と伸びた牙が噛み合わさり音を立てる。
「だ?」
腹ぺこで体力はすっからかん。それでも心底煮えくり返ったハラワタはなけなしの体力を振り絞り、足りない分は気力を奮い立たせて補わせる。
そして。
吼える。
「だ、れ、が……っ!乳をよこせって言ったのよ!血よ!私が欲しいのは、人の!処女の!あんたの血よ!
それになによ!その腹の立つ肉塊は!薄べったい私への嫌がらせかっ?!嫌がらせねっ!!
こうなったら、お望み通り、首からじゃなくてあんたの乳首から血ぃ吸ってやるわ!!」