「こんばんわ」  
 
何故か判らないが家の前に人が立っていた。  
それにかなりの美人が。  
今の時間は丁度午前零時。  
一瞬、見とれてしまったが俺は平静を装い素っ気なく言った。  
   
「・・・誰?」  
 
 
 
俺は神崎月(かんざきつき)高校一年生である。  
今年の春、入学と同時に一人暮らしを始めた。  
理由は、両親に迷惑をかけたくなかった。それだけだ。  
 
俺は捨て子だった。  
 
ちょうど16年まえのこの日に河原のそばで泣いていたのを発見された。  
その夫婦・・・俺の両親は大変心が優しい人でそんな俺を見たらすぐに引き取ってくれたらしい。  
 
両親にはかなり良くしてもらっていた。  
姉と妹に挟まれて育った俺は多少無口なことを除けば普通に育っていった。  
 
そんな俺には少し不思議がある。  
毎年俺の拾われた日―――  
8月3日に俺宛に誰かから荷物が届く。  
それも不思議だがもっと不思議なのは  
 
それが全て俺の欲しい物だからだ。  
 
一昨年はゲーム。去年は家具。全部俺がその時欲しかった物だ。  
だが、それらは俺にとって恐怖でしかなかった。  
だからおれは高校入学と同時に家を出ることにした。  
そして今年、めでたく高校に行くことになった。、  
家からでて新たにアパートを借りることにした。  
6畳一間。それで俺には十分だった。  
両親は反対したが俺の説得により、ようやく家を出ることになった。  
それでも少しは生活金を援助してもらってる。  
心苦しいかぎりだ。  
なので最低限は自分で稼ごうとバイトに励でいる。  
 
そして今日。夏休みの真っ最中。バイトを終えて帰ってきた所だった。  
そして話は現在に戻る。  
 
 
「こんばんわ」  
「・・・誰?」  
 
その相手はかなりの美女だった。  
 
白い肌。艶やかな長い黒髪。顔は女神のようで、垂れ目がちな瞳の色は漆黒。170前後の身長。長い足。引き締まった太もも。  
小振りなヒップ。くびれた腰。そして、メロンの様な、いやメロン以上の胸。歳は20代前半だろうか?  
今まで生きてきた中で見てきたどの女よりも綺麗だった。  
 
「私の名はニュクスと申します。どうぞよろしくお願いします」  
 
ニュクスと名乗った美女はとても綺麗なお辞儀してきた。  
 
「・・・こっ、こちらこそどうも」  
 
その綺麗なお辞儀にまた見とれてしまい、あわててこちらもお辞儀をする。  
 
「少しあがってもよろしいでしょうか?」  
 
彼女がそう聞いてくる。  
 
「・・・どうぞ」  
 
少し躊躇したが強盗だったとしても捕らえられる自身があったので彼女を部屋に招いた。  
 
「お邪魔します」  
「・・・」  
 
もう一度丁寧にお辞儀を彼女はした。だが、おれはそれをスルーして彼女を卓袱台まで導いた。  
 
 
「こんな夜中に何の御用でしょうか?」  
 
茶をすすりながら俺はそう言った。少し棘のある言葉だったがまぁいいだろう。  
 
「少し質問をさせていただきます。」  
 
「質問?」  
「ハイ。質問です」  
「それだけ?」  
「ハイ」  
 
俺は少し疑問に思ったが会話を続けた。  
 
「あなたの名前は神崎月さんですね?」  
「はい」  
「血液型はB型ですね?」  
「はい」  
 
全部そんな質問だった。  
そういうのか。と、おれは安心した。  
なにか仕事などのアンケートとかで来たのなら、  
他の所を廻ってたら日が暮れて遅くなる日もあるかもしれない。  
 
 
だが最後の2問に俺は驚いた。  
 
 
「毎年あなたが拾われた日には誰かわからない人から欲しいと思ったモノが送られてきますよね?」  
「ッ!!」  
 
そうだ。最初にも言ったが誰かから送られてくる。  
それが誰かは判らない。  
ただおれの欲する物が送られてくる。  
それともう一つ驚くべき事が会話の中に含まれていた。  
「拾われた日」と彼女は言った。  
なぜそれを赤の他人がしっているのだろうか。  
 
 
「どうしてアンタがそれを「最後の質問です」」  
 
 
間髪入れずに彼女は喋ってきた。  
そして次の質問に俺は驚愕した。  
 
 
「あなたの母親の詳細を知りたくはありませんか?」  
 
「なっ!?!?」  
 
俺は驚いた。  
それはもう凄く。  
俺は彼女を問い詰めようとした。  
 
「オイ!!アンタいったい「知りたくはありませんか?」」  
「・・・」  
 
またもや口を挟まれた。  
だが俺は彼女に少し恐怖心を抱いて口をつぐんでしまった。  
 
 
「知りたくはありませんか?」  
 
 
彼女はもう一度言う。  
おれは怖くなった。  
 
それは彼女が。  
 
それは彼女の気迫が。  
 
震えるほど怖かった。  
 
だが、俺は知りたかった。  
 
毎年送られてくる物の秘密。それと母親。  
 
どちらも知りたかった。  
 
まだ脚が少し震えていた。  
 
それでも頑張って聞く。  
 
知りたいから。  
 
「・・・聞きたいです。」  
 
「・・・。」  
「・・・。」  
 
その場に沈黙がながれる。  
その沈黙に耐えかねて俺は質問しようとした。  
 
「あの「ハイ!!合格で〜す!!」  
 
言おうとしたその時だった。  
彼女はどこから取り出したのかわからないマラカスなどをイッキにならした。  
 
「おいっ、ちょっ・・・。」  
「合格〜!合格〜!」  
「近所迷惑ですよ!」  
「合格〜!合格〜!」  
「・・・。」  
 
彼女はいっこうに止める気配がなかった。  
そして俺のメーターがプチッと振り切れた。  
 
「おい・・・」  
「合格〜!合格〜!」  
「おい・・・」  
「合格〜!ごうか・・・ヒィッ!!」  
 
後ろで自分の肩を叩いている俺に気付いた彼女はすぐに正座した。  
俺から怒りのオーラみたいのが出ていたのかも知れない。  
それから俺の説教が始まった。  
 
――――数分後――――  
 
「・・・騒いでしゅみませんでした・・・。えぐっぐすっ・・・。」  
 
ここまで言わせることに俺は成功した。  
俺って凄いな。と自分で感心しつつ、俺は聞いた。  
 
「それで俺の母親の話しとは?」  
「はい・・・えぇとですね・・・。」  
「驚かないでくださいね?」  
「はい・・・?」  
 
その瞬間だった。  
彼女の腰の辺りの服がふくらんでゆき、そして・・・  
 
服を突き破って大きな黒い翼が生えたのだ。  
 
大きすぎる翼。黒すぎる翼。それはまるで夜を体現しているような翼だった。  
その黒い翼を1度バサァッとやり彼女は翼をたたんだ。  
 
「あなたは合格です。なぜならきちんと前に進むことが出来たから。」  
「・・・。」  
 
おれは驚きで声が出なかった。  
そりゃぁ誰だってそうだろう。  
目の前で腰から大きな翼が生えたのだ。  
しかし俺は現実を認めた。  
時間はかかったが何とか抑えることができた。  
 
「・・・それで?」  
「・・・アレッ?予想より立ち直りが早いですねぇ」  
 
「・・・あなたが人ではないのはわかりました。で、それを踏まえた上での母の話とは?」  
 
俺は彼女になんとかそう聞くことができた。  
実際まだ驚いていない訳ではない。  
だがそれを信じざるを得ないのだ。  
 
「はい。まずあなたの母親も人ではありません」  
「人ではない・・・。するとなんかの妖怪とかですか?」  
「いやいや私達はそんなモノではありませんよ」  
「じゃあ何なんですか?」  
「あなたたちで言うところの「神様」って言う奴です」  
「これはまた・・・」  
 
これもまたスケールが大きい話だった。  
それでもおれは何故かこらえることが出来た。  
 
「アレッ?意外と驚いてないですねぇ」  
「いや、これでもかなり驚いてますよ」  
 
自分でも実際驚いていた。  
 
しかしなぜか平静を保てた。  
なぜかはわからないが彼女を見ているとそんな気がしてくる。  
それが原因だと思う。  
 
「じゃあ話を続けますね。あなたの母親の名前はエレボス。簡単に言えば「闇」を司る神で、私の姉です」  
「姉・・・ですか」  
「そうです。私は「夜」を司っています」  
「「闇」と「夜」ねぇ・・・」  
 
これもまたスケールが大きい話だった。  
 
「そして、あなたの母親は母親ではありません」  
「は?」  
 
意味がわからなかった。  
母親であって母親ではないどういう意味だ?と俺は思った。  
 
「あなたの元みたいなモノです」  
「と、いいますと?」  
「あなたには父親はいません。あなたはお姉様の力の一部から作られた人工・・・いや、神工生命体です」  
 
「・・・ハイ?」  
 
俺は耳を疑った。  
だって面とむかって「あなたは人ではありません。」と言われたのだから。  
 
「本当の話です」  
「マジ?」  
「ハイ」  
 
これにはさすがに驚いた。  
が、俺はそれを噛み殺し質問をした。  
 
「じゃあ俺の母親は何故俺を創ったんですか?」  
「『久しぶりに人間を調査するため。』と言っていました」  
「じゃあ俺が河原に捨てられていた理由は?」  
「あなたが河原に捨てられていたのはあなたをその近辺の優しい人にわざと見つけさせるためです」  
「ほう・・・」  
 
これにもまた俺は驚いた。  
 
というかあの人たちは神も認めるいい人だったのだな。なんだか少し誇りに思えた。  
ニュクスは話を続ける。  
 
「あなたに毎年プレゼントを送ったのはお姉様です」  
「へぇ・・・」  
神様ならそれ位のこともできるのかもしれない。  
その話が本当なら俺の母親は意外と良い奴なのかもしれない。  
だがおれは疑問に思った。  
 
「今日は俺の誕生日のはずなのにプレゼントが送られないで、何であなたが来たんですか?」  
「それは・・・」  
「それは?」  
 
 
「お姉様が『今年は何故かあの子が何もいらないらしいから、ニュクスあの子にもらわれてきて。』と言われまして・・・」  
 
 
「OK。母の所に案内して下さい。一発殴る。」  
「い、いやダメですよ!?」  
 
なんかむかついた。無償にむかついた。殴りたかった。  
母親とはいえなんか殴りたかった。  
だが、おれはあと一歩の所でニュクスさんの説得により踏みとどまった。  
 
「ニュクスさんがそこまでゆうならいいですけど・・・。」  
「ぜぇぜぇ・・・そうしてください・・・。」  
 
ニュクスさんは肩で息をしていた。  
よほど疲れたのだろうか。  
 
「で、わたしがここにきた訳です。」  
「で、ニュクスさんはどうするんですか?」  
 
俺は結構気になっていたことを質問した。  
そして話は一区切りついたなと思い茶を飲んだ。  
しかし俺は次の言葉にかつてないほど驚いた。  
 
 
「そうですね・・・まず同棲します。」  
 
「ぶふぉ!!!」  
「キャッ!」  
 
おれは茶を吹き出した。  
ものすごい勢いで。  
 
「いやいやいや!いくらなんでもそれはダメでしょう!!」  
「おねがいしますぅ・・・やらないとお姉様に殴られるんですぅ・・・千回ほど」  
「拷問かよ!!」  
「だからぁ〜お願いしますぅ〜なんでもするからぁ〜・・・ダメ、ですかぁ?」  
「うっ・・・」  
 
俺は彼女の上目遣いにまけた。  
それはそうだろう。  
彼女はものすごく美しかったから。  
 
「・・・わかりました。」  
「ホントですか!?やったああああぁああぁ!!!」  
「うるせぇ!」  
 
「・・・しゅみません・・・」  
「わかったならいい。しかし!条件がある」  
「なんですか?」  
 
受け入れてもらったことが嬉しいのか、  
ニュクスは目をキラキラさせながら俺をみてきた。  
 
「ひとつめに家事を手伝うこと。二つめに食い扶持は自分で稼ぐこと。三つめに騒がない。それだけだ。」  
 
「わかりました!」  
「これから宜しく。ニュクスさん。」  
「よろしくお願いします。月さん。」  
 
十六歳の誕生日に母から送られてきたモノ。  
それはかなりの美女だった。  
出会いは唐突。  
だが俺は彼女を受け入れた。  
明日からの生活に思いを馳せつつ、これからは賑やかになりそうだな。と、  
俺は思った。  
 
 
END  
 
 
 
おまけ  
 
「月さ〜ん洗濯機が泡だらけに〜!」  
 
「あぁっ食器がぁぁ!」  
   
「服がっ服がぁぁぁぁぁ!」  
 
「月さぁ〜ん!!」  
 
ニュクスさんは神様達が住んでいるところでは家事を一回もしていなかったらしい。  
今度から家事は絶対にさせない。  
 

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