学校の裏には、使われてるところは見たことがないけれど、
大きなハンティング場がある。
二十メートルほどの高さの厚いフェンスに囲まれた広大な敷地。
「じゃあ猫たちは、次の時間、ハンティングでいいな」
サラブレッドの先生は、ホッとした表情を浮かべる。
四限目の内容が、肉食の彼らだけですることに決まったからだ。
あれだけ立派な体をしていて、怖いものなんてないだろうに、と思う。
あたしにも、もっと強い体があれば……。
「猫たち、って括るなよな……」
彼らは似てるようで種族が違う。
狼たちに対抗して集まってるけれど、仲はあまりよくないみたい。
誰もが初めて受ける、ハンティングの授業。
ああ、でも、あたしは生徒としてではなくて、教材、なんだ。
校舎寄りのフェンスに付けられた、小さな鉄のくぐり戸。
それを越えると、もう戻れないかもしれない、
そんな予感がした。
逃げ出さなきゃ──。
脚を振り上げようとしたのを察して、チーターは、
耳を掴んで吊るしているあたしの体を、左右に振って邪魔をする。
相手が悪かった。彼はあたしの弱点を知ってるんだ。
もっとも、本人は、ウサギは皆そうすれば大人しくなると思ってるんだろうけど。
チーターの指が、股間のお肉の隙間に押し込まれる。
くちゅくちゅと音を立てて潜り込んできた指が、くいっと曲げられ、
膀胱のちょうど裏側あたりを刺激する。
ああ、ダメ……。
そこをコリコリと掻かれると、全身に電流が走るような快感が湧き起こり、
あたしは身動きが取れなくなるんだ。
不気味な音を立てて開く、鉄の扉。
敷地の向こう側のフェンスが見えないほどのハンティング場が、
チーターの手に吊るされたあたしの目の前に、広がっていた。
先生はフェンスの外に残って、ルールを説明する。
「昼休みまであと四十五分だから、ハンティングタイムは十回までだな。
まずは獲物をフィールドに放す。
獲物の種類がウサギだから……、二分待ってから狩りのスタートだ。
競争するもよし、協力するもよし、だ」
先生の説明は、嫌でもあたしの耳に入った。
フィールドは自然の山を利用して作られている。
ネザータウンで古くから行われてるスポーツ。
森林、藪、倒木、小川、障害物だらけの狩場で、ハンターたちは、
生身に近い、専用の衣装で狩りを行う。
ここでは、学校の授業なので、もちろん体操着なんだけど。
道具を使わず、自分の手と足、そして爪と牙をもって獲物を捕らえる競技だった。
ルールはただ、規定の回数、獲物を捕まえるというシンプルなもの。
細かな優劣は、競技者同士で話し合って決めるんだ。
「一見、荒々しいが、自制心を養うスポーツでもある。
最初の九回は、なるべく獲物を傷付けずに捕まえなさい」
十回目は──?
あたしは耳を塞ぎたくなる。けれどそれは叶わぬ願いだった。
「殺しちゃっていいんですか?」
「そうだ。獲物に感謝をして──、
苦しませずに、引導を渡してあげなさい」
都市伝説なんかじゃなかった。
きっと、過去にもこうやって、裸にされたウサギや他の草食獣たちが、
狩られ、弄ばれ、引き裂かれて食われたりしてるんだ。
どうしてあのとき、狼の机からブラウスを取り返さなかったんだろう。
悔やんでも手遅れだった。
犯されたい、という自分の浅ましさが招いた結果なんだ。
でも、だからって、だからって……。
殺さないで──。
「ちょうどお昼ご飯の時間だしな」
「よかった。購買の缶詰、不味いんだよな」
猫たちの言葉に、獲物に対する感謝の気持ちなどない。
それに、猫の仲間は獲物をいたぶるように、おもちゃにしながら狩る種族なんだ。
「そうだ、大事な道具を忘れていた。体育倉庫まで、一人、ついてきなさい」
「えっ、俺?」
チーターが指名され、「俺の発案なのに」と不平を漏らしながらフェンスの外に出る。
あたしは、猫たちに耳を掴まれて、
ガチャンと音を立てて鉄のくぐり戸が閉まり、
逃げ道が無くなるのを見ているしかなかった。
「始めておきなさい──」
先生の言葉が合図になった。
「ほら、逃げろよ」
裸の体を、雑草の茂みに投げ出されたあたしは、しばらく恐怖にかられて動き出せなかった。
でも、こんな形で死ぬのなんて、嫌だ。
自分の力で生き延びるしかない。
あのオリックスの彼女が褒めてくれた、自慢の脚で──。
さっき、コヨーテが草を食べさせてくれたのが救いになった。
今日のハウンドたちの暴行も、苦しいばかりで下手にイかされなかった分、
体力が残っているようだった。
脚に力が入る。
逃げられる──。
あたしは、大きく宙に跳ね、体がふわりと地面に降り着くと同時に駆け出していた。
この競技には、獲物にとっての勝利がある。
四十五分間、逃げ切ることだ。
九回までなら、捕まったとしても──。
いや、一回だって、捕まりたくなかった。
それなのに……。
起伏に富んだ地形は、あたしを簡単には逃がしてはくれなかった。
草原を走るのに適したあたしの脚は、浮石や倒木に阻まれ、
ハンターたちに付け入る隙を与えてしまう。
彼らだって、条件は同じ。だったらまだ、ウサギの脚の方が能力が上──
そう思ったのは、早計だった。
必死に駆けていたあたしは、腰に強い痛みを感じて、
気付くと真横に弾き飛ばされていた。
視界の端に映ったのは、オオヤマネコの笑い顔だった。
猫の仲間は、尖った爪のついた大きな手で獲物を殴りつけるようにして仕留めるんだ。
あたしは地面に転がされる。
ごろごろと回転したあと、仰向けになって……、灰色の手がお腹を強く押さえていた。
反動で大きく開いた両足の間で、
発情しているからか、それとも何度も犯されたからか、もう覚えてない、
真っ赤になった女の子の部分が飛び出てる。
いまさら、という気がしないでもないけれど、それでも恥ずかしい。
「マヌケな獲物だなぁ、真っ直ぐ逃げるしか能がないのか」
彼は、あたしが障害物に足を取られているうちに、走りやすいところを迂回してきたんだ。
反省したって、もう遅い。じゅるりと音を立てて舌なめずりをする、猛獣の口。
あたしはハッとして、彼の言葉の中に大事なヒントがあることに気付く。
獲物──、そう、今のあたしは彼らのクラスメイトじゃない、ただの獲物なんだから、
押さえ付けられたからって、捕まったと諦めることはない。
脚を振り上げて、ハンターの顔を蹴り飛ばせば……。
でも、駄目。
相手だって、獲物であるあたしがルールに従うなんて思ってなかったらしい。
飛び出した爪があたしのお腹に食い込み、痛みで動きを止められた。
「おっと、おとなしくしてくれよ、ウサギちゃん」
オオヤマネコは、あたしを押さえるのと逆の手で、
近くに生えていた野ブドウの太くて硬いツルを、あたしの首に巻き付けた。
まだ殺されないことは分かってる。でも、息が詰まるほどきつく締められ、
あたしの頭は空気を求めて仰け反った。
抵抗する気力を奪われたあたしの手足までもが、あられもなく開かれ、
野ブドウの緑の葉で飾られた。
そうしているうちに、三人の猫たちが集まってくる。
「ちぇっ、先を越されたか」
「捕まえたら、犯すんだよな」
「当然」
想像はしていたけれど、それが、彼らが決めたこの狩りのルール。
「じゃあ、遠慮なく……」
オオヤマネコの指先が、これから楽しむ部分がどうなっているのかを確かめる。
こんな目に遭いながら、あたしのそこはぬるぬるになっていた。
殺されようとしているのに、オスのおちんちんを求めてる──。
子孫を残そうとするウサギの本能なのかもしれないけれど、惨めだった。
そんなあたしの気持ちはお構いなしに、
オオヤマネコはその大きく膨らんだおちんちんをずぷりとあたしの中に挿し込んだ。
犬科の男の子たちよりは短いけれど、太くて、熱い──。
「犯るのは狩ったやつだけ?」
「そうだろ?」
「俺たちにも楽しませろよな」
誰だかわからないけど、二人の猫の舌が、あたしのおっぱいを左右から責める。
無理やり膨らまされたおっぱいの痛みはもう治まっていて、
今は感覚だけが鋭くなったままで、意識するとムズムズと痒くなってくる。
そこを猫のザラッとした舌で舐められ、吸われるとたまらなく気持ちいい。
「いいぞ、よく締まる」
挿入しているオオヤマネコは、腰をゆっくり押し付けるように動かしていた。
いつもは気持ち悪いと思っていた、そのおちんちんの感触、
発情した今の体には、悲しいほどに気持ちいい。
ねちっこく吸われるおっぱいも、気持ちいい──。
ダメ……、やめて……。
イかされるわけにはいかない。体力が奪われたら、授業が終わるまで、逃げ切れない。
オオヤマネコが精液をお腹の中にビュッビュッと吐き出す。
そこまでは耐えられた。
猫のおちんちんには、根元に向かって生えたトゲがある。
猫科の女の子は、それがあそこを引っ掻く痛みが刺激になって子供を授かるんだって。
いつものあたしには辛いばかりの痛みなのに、
発情したあたしの体はやはり、おかしくなっていた。
おちんちんを引き抜かれる瞬間、頭の中が真っ白になった。
「で、やっぱり犯るのは捕まえたやつだけなのか?」
「役得だろ」
「でも、一人あたり、二回しかできないぜ」
「下手したら、ゼロだ」
猫たちは、ハンティングの細かなルールを決めようとしていた。
いかに狩りのモチベーションを高め、いかに獲物を犯す回数を増やすのか。
「五回から先は、捕まえたやつのとこに辿り着くのが一番遅かったやつ、
そいつ以外の四人で姦るってのは?」
「いいね、それ」
「いいけど、回数覚えてらんねぇな」
結局、おちんちんを抜かれるときに一度、イかされてしまったあたしは、
せめて体力を温存しようと、彼らの恐ろしい会話を聞き流す。
そう、言葉なら、聞かなければいい。
耳を塞いでも避けようのない恐怖を、一人遅れたチーターが運んできた。
「回数を数えるには、これを使うんだ」
それって、先生の言ってた道具のこと?
「ほら、まずここに止血剤を塗って──」
止血剤……!?
恐ろしい響きの言葉を耳にして、あたしは驚いて顔を起こそうとしたけれど、
出来なかった。
首に巻き付いている野ブドウのツルを左右に引かれて、あたしの頭は固定されていた。
左の耳先が掴まれ、耳が真っ直ぐに伸ばされる。
先端に近いところに、冷たい金属のようなものが押し当てられる感触があった。
何をされるの……?
ガンッと殴られたような衝撃が耳に走った。激痛が、その後を追う。
チーターがニヤニヤして、あたしの耳を折り曲げ、自分で見ろとばかりに、
その先端に刻まれた、取り返しの付かない刻印を晒した。
どうして、耳の向こうに彼の顔が見えるの──?
二センチほどの、星型の穴が開けられていた。
あたしの耳に……。
あたしの……、耳が……。
涙が止まらなかった。
でも、まだ狩りは始まったばかり。
これで終わりじゃない。
耳に当てられた星型のパンチ。十個の穴が開いたとき……、
あたしは、そのまま獲物として食べられてしまう──。
嘆く猶予すら与えられない。
体を固定していたツルの拘束が解かれ、あたしは、涙と、よだれと、
そしてあそこからオオヤマネコの流し込んだ精液を垂らしながら、
また逃げ出すしかなかった。
まだ、走れる……。大丈夫……。
今度は時間をめいっぱい使って、猫たちが走り辛そうな灌木の間を縫うコースを逃げる。
でも、どうして?
ハンターたちがスタートして数分もしないうちにあたしは捕まってしまう。
また、オオヤマネコだ。
彼の鋭い爪が、あたしのお尻に食い込んでいた。
野ブドウの葉がまた、首と手足を飾る。
「よーし、ラッキーだな、俺は」
追い付いた猫たちの会話を聞くと、彼らはスタートのときに別々の方向に向かうよう、
取り決めているみたいだった。
途中で顔を合わせたりしたら、互いに牽制したりするんだろう。
彼らはそもそもあまり仲が良くないんだ。
それはある意味、あたしには救いになっていて、
もし犬たちがハンティングに参加していたら……、
あたしは彼らの連携プレイであっという間に十回狩られ、引き裂かれていたに違いない。
「今度は、おっぱいも俺のもんだ」
オオヤマネコは、おちんちんを挿入して腰をゆっくり振りながら、
あたしのおっぱいをキュッキュッと絞り上げた。
ああ、また爪を……立てないで……。
今度は二回、イかされた。発情した体は、どんどん刺激に弱くなっていくみたい。
「そろそろ出そうだ……、おい」
あたしの首のツルを左右に引き絞りながら、オオヤマネコが、チーターに声を掛ける。
彼が射精するタイミングに合わせて、あたしの左耳に、二つ目の星が刻まれた。
「おら、時間がないぞ」
すぐに解放され、精液まみれになったあそこをポンと軽く蹴られたあたしは、
また走り出す。
痛くて、痛くて、もう左の耳は立てることができなかった。
次にあたしを捕まえたのは、カラカルの男の子だった。
走り疲れて、草むらの中でひと息ついていたところを襲われ、あたしはようやく、
彼らが簡単にあたしを見付け出せる理由に気付いた。
お腹にたっぷり注がれた──精液の匂いを辿ってるんだ。
肉食の彼らの鼻はあたしなんかよりずっと敏感なんだ。
カラカルは体が華奢な分、優しくされているように錯覚して、また数回、イかされる。
体を包み込む快感と裏腹な、手足を突っ張って絶頂を迎えた後の疲労感、
逃げ切るチャンスがどんどん削られていく。
それでも、諦めるわけにはいかなかった。
猫たちから離れてすぐに、あたしは隠れてヨモギの葉を摘み、石ですり潰す。
つんと鼻を突く植物の香り。それを股間にたっぷり塗った。
走っているうちに、精液がどんどん漏れ出してくる。
それでも、これでかなり匂いを誤魔化せるはず──、だったのに……。
もうどうしたらいいのか、分からない。
あたしは、また数分、逃げ回ったところで、
今度はサーバルにお腹を押さえられていた。
彼があたしの耳に鼻を寄せて匂いを嗅ぐ素振りを見せたことで、恐ろしい事実を知らされる。
あのハウンドたちのしたことがあたしを窮地に追い込んでいた。
入り口のあたりで止まっていたとはいえ、耳の穴に流し込まれたハウンドの精液が、
消すことのできないサインとなって居場所を猫たちに教えていたんだ。
匂いを隠せないあたしは、もう力の限り走り続けるしかない。
サーバルの射精は一瞬で終わった。
もっと楽しんでくれてもいいのに……。
そう思うのは、生き延びたいからか、それとも、浅ましい牝の欲望なのか。
一人だけで犯す権利を得られるのは、あと一回。
チーターとピューマがまだ、あたしを捕まえてなかった。
二人の猫は、苛立ちと興奮で口数が少なくなっていく。
男の子たちの意地の張り合い、なんだろうか。
一人だけ落ちこぼれるのが悔しいんだろう。
彼らの決めたルールは、あたしにとっては悪い方向にしか働かない。
獲物を傷付けないように、と言われていたはずなのに、
猫たちがあたしを扱う手つきや腰の動きは、どんどん、乱暴になっていく。
あたしは必死だった。まるで本物の獲物になったみたいに、
本能が告げるまま、風下に逃げた。
命がかかっているあたしの感覚はとても鋭くなっていて、
地面を伝うように流れてくる猫たちの匂いが感じられる。
匂いのしない方向へ逃げれば……。
でも、猫たちの方が一枚うわてだった。
「やっと狙いが当たったな」
樹上で待ち伏せしていたピューマの一撃が、
あたしの後脚を折らんばかりに叩きつけられる。
彼はあたしをうつ伏せにして、後ろから犯した。
猫たちの中で一番大きな体の彼、おちんちんも大きくて……。
背中に感じる強い圧迫感。
ツルで縛られなくても、あたしは身動きできなかった。
「次からは先着四人で輪姦、だよな?
俺にもあれ、やってくれよ。
イくときに穴開けるやつ」
「ちぇっ、俺はパンチ係かよ……」
「また、最後だな、お前」
「うるせぇよ」
ピューマに促され、チーターがあたしの左耳を掴んだ。
五つ目の穴──。
バチンという音と同時に、お腹の中で震えるおちんちんが、
熱い液体を体の奥に叩きつける。
ああ、ダメ……。
痛いのに、苦しいのに。
こんな酷い目に遭わされて、あたし、感じてる──。
「草の匂いでカモフラージュしやがって、生意気だな」
おちんちんを引き抜きながら、ピューマが言った。
あたしの作戦はバレていた。
「悪いウサギには、お仕置きだ」
彼は、耳を踏みつけられ、うつ伏せになって動けないあたしの背中に……、
あろうことか、おしっこを掛け始めた。
「時間もそんなにないし、効率よくやんないとな」
ジョボジョボと音を立てて温かい液体が、白いあたしの毛皮を汚していく。
耳に溜まった精液の匂いだって、おしっこの強い匂いに比べれば、
まだマシだったのに。
もう、ダメなんだ……。
流れたピューマのおしっこは、お腹の方まで広がって黄色い染みを作った。
絶望に包まれながら、あたしはそれでも、少しでも遠くへと走った。
努力も空しく、二分の猶予が過ぎてすぐに、あたしは猫たちに捕まる。
輪姦の始まりだった。
オオヤマネコ、ピューマ、カラカル、サーバル──、
三度捕まって、三度ともこの順番だった。
涙で目は霞み、意識も朦朧とする中、それでも誰に犯されているのか判ってしまうのは、
おちんちんの形が、種族によって少しずつ違うからだ。
あたしのあそこはどんどん敏感になっていて、
これまで気付かなかったことを感じていた。
自分の体が、性器とおっぱいだけになっていくような気がした。
四人が次々とあたしの中に精を放ち、そしてその戦果を示す印が、
星型の穴が、ひとつ、またひとつと開けられていく。
「匂いが薄くなってきたなぁ」
もう八つ、開いてしまったその穴に、また誰かのおしっこが掛けられた。
傷口を引き裂くような痛みが走る。
現実とは思えなかった。
悪夢なら、早く終わって──。
「ちょっと待てよ、ふざけんな」
叫んだのは、チーターだった。
彼は発案者であるのに、一度もあたしの体を楽しめてないんだ。
長い自慢の脚が災いして、彼はこのフィールドでは上手く走れない。
「ルール変えろよ」
「ダメだ」
「お前が遅いから悪いんだ」
結局、チーターの意見は受け入れられず、あたしはまた、
投げ捨てられるように解放された。
あと二回、あと二回捕まれば、殺される……。
逃げながら、必死で記憶を辿る。
彼らはどうやってあたしを追い掛けてきたか。
そして、ひとつの賭けを思い付いた。もう、これしかない。
猫たちは、スタート地点から放射状に分かれているはず、だった。
捕まったあたしのところに、真っ直ぐ後ろから追い付く者はいなかった。
だったら……。
あたしは目に入った小岩の上に駆け上がり、下腹部をギュッと押した。
精液を絞り出し、さらに背中に掛けられたおしっこの跡も擦り付ける。
そうしておいて、元来た道を引き返す。
来るときは気付かず飛び越えた、歩幅ほどの小川を見付けて飛び込み、
少しでも匂いを落とす。そして、すぐにまた駆け出す。
大丈夫、誰も追ってきていない。
走る、走る……、
走る――。
見覚えのある場所に出た。
さっき犯されていたところ。
これでしばらく時間が稼げる……、そう思った瞬間だった。
目の前の地面が突如、盛り上がったように見えて、
でもそれは黄色と黒のまだら模様をしていて――。
あたしは、気付くと足を止めて、泣きじゃくりながら、
チーターの前に首を差し出していた。
何度も仲間たちの後塵を拝し、ふてくされた彼は、あたしを追い掛けていなかったんだ。
もう、抵抗する気力はなかった。
「この、クソ牝ウサギめ、いらつかせやがって」
観念したあたしを、彼は許さなかった。
燻った狩猟本能を満足させるかのように、あたしを何度も叩き飛ばした。
やめて……。
あたしの体力は限界まで削られていく。
激痛の走る耳を掴まれ、顔とおっぱいをそれぞれ十数回、
平手打ちされて、あたしはぐったりする。
チーターの腰の高さに合わせるように、あたしは切り株の上に転がされ、
背中がきしむほど反らされて縛られる。
手と足は限界まで開かれて……。
そうされて、動けないあたしのおっぱいがまた、強く打たれた。
ごめんなさい、ごめんなさい……。
あたしの掻き消えそうな声は、チーターの耳に届いてはいるのだろう。
けれど、言葉は相変わらず、通じないんだ。
叩かれて真っ赤に腫れたおっぱいにギリギリと爪を立てながら、
チーターはあたしの股間をずるりと舐めた。
そこは相変わらず、ぬるぬるした恥ずかしい液体で濡れていた。
「どうした? これが欲しいか、牝ウサギ」
おちんちんをぐっと押し込んで、何度かあたしの中を抉るようにした彼は、
すぐにそれを引き抜いた。
おちんちんのトゲが敏感な粘膜を引っ掻き、あたしは悲鳴をあげる。
それと同時に、股間から頭の先へ、ジンジンと妖しい快感が突き上げた。
陸上競技ではトップの成績を誇る彼、このハンティングでまったく成果を上げられず、
プライドがズタズタにされたんだろう。
その恨みの篭った責めは執拗だった。
トゲの生えたおちんちんを突き立て、ぐちゅぐちゅっと掻き回しては、引き抜く。
それを何度も繰り返す。
「どうだ、痛いか? いや、気持ちいいんだろ、この淫乱ウサギめ」
そう、あたしは泣き叫んでいながら、あそこは、
それを中に引きとめようとするみたいに、チーターのおちんちんに絡み付いた。
「ははっ、たまんねぇっ!」
そう叫んだ彼の表情が、次の瞬間、凍りつく。
温かいものが、あたしのお腹やおっぱいにぴゅっぴゅっと降り掛かった。
彼は、おちんちんを抜いた状態で、射精をしてしまったんだ。
「くそっ、てめ……」
チーターは恐ろしい形相を浮かべ、また、あたしの顔とおっぱいを殴りつける。
「許さねぇぞ。ここに印を刻んでやる!」
彼の手が、あたしの恥丘を強く押さえつける。
その手に隠れて、もう一方の手で彼が何かをしようとしていた。
ちらりと見える、パンチの器具。
まさか──、やめて……。
股間におぞましい感触があった。
発情して敏感になっている、飛び出たクリトリス。
そこに、冷たい金属のパンチの先が当てられていた。
鉄の牙が、女の子の一番感じ易く、一番恥ずかしい突起をじわじわと押し潰していく。
あたしは縛られた手足を必死に動かそうとした。
力を使い果たしてでも、この災厄から逃げ出そうともがいた。
神経の集中したその部分が引き千切られたら、きっと気がおかしくなってしまう。
チーターはあたしの恐怖を煽るように、パンチにゆっくり力を込めていく。
やめて、やめて、やめて──。
もうダメだと思ったとき、
ようやくあたしを探し当てた他の猫たちが走り寄って、チーターを止めた。
「おい、やめとけよ。出血がひどいと弱っちまう」
彼がわざと時間をかけてあたしをいたぶるようにしていたおかげで、
逆に救われた。
でも、ホッとしたのは束の間だった。
「それじゃあ、順番どおりだ」
チーターに掻き回されて血が出そうなほどに腫れた性器に、
オオヤマネコが挿入していた。
「あいつを止めなかったら、俺たちのお腹、血まみれになってたな」
「感じさせてやった方が、中がくちゅくちゅ動いて気持ちいいしな」
猫たちは決して、同情でチーターを制止したわけじゃなかったんだ。
ルールの通り、残り三人があたしを楽しむつもりでいた。
オオヤマネコが射精する。チーターの引っ掻いた跡に、精液がチリチリと滲みる。
ピューマも、きっちりと精液を注ぎ込み、
最後に、サーバルがあたしと繋がったまま立ち上がり、
あたしに万歳のポーズを取らせた。
「あと一回だなぁ、死ぬ前にしっかりイっておけよ」
自分の体重でおちんちんを深く受け入れさせられ、
耳にパンチが当てられ、何の遠慮もなく穴が開けられる。
その衝撃と同時に、あたしは、サーバルの言葉通り惨めに絶頂を迎えてしまった。
左耳に五つ、右耳に四つ、二度と塞がることのない九つの穴──。
サーバルのおちんちんが引き抜かれ、
あたしは地面に崩れ落ちるように倒れ、泣いた。
これで最後。猫たちの待ち望んだときが近付いているというのに、
あたしはすぐには放されなかった。
「ところで、あいつはまだ?」
「どこ行ったんだ?」
猫たちの一人が、獲物に辿り着いていなかった。
「おーい、俺はここだ」
噂をされたカラカルが、ひょっこりと姿を現す。
「フェンスの近くを通ってて、先生に呼び止められたんだ。
お昼まで、あと、十分ちょっとだって」
十分──。
それは、あたしにとっては絶望的に長い時間だった。
これまで何度も走って、その半分ほどの時間しか逃げられなかったのに。
体力なんて、もうほとんど残ってないのに……。
あたしは、ふらふらと歩き始めた。
もう、助からない……。
逃げたって、意味がないのに。
クリトリスにパンチ器の冷たい感触が残っていて、恐怖に足がもつれた。
もう最後だから、どんなに獲物を傷付けたって構わないんだ。
振り返ると、猫たちのニヤニヤした顔が目に入る。
そんな風に見ないで──。
クラスメイトだったときのあたしのこと、少しでもいいから思い出して──。
あたしを食べるときはせめて、小川で洗って、きれいな体にしてから食べて──。
そんな願いが聞き入れられないことは分かっていた。