次に捕まったら、殺される──。  
合計九つの星型の穴を穿たれた耳を引き摺るように寝かせ、  
あたしは、走るわけでもなく、歩くとも言えない足取りで、ふらふらと進んでる。  
痛い、痛いよ……。  
手足の感覚は鈍くなっていくのに、ズキズキする耳の痛みはどんどん激しくなった。  
目が霞む。足が、もつれる──。  
 
あたしの足は、小高い丘の方へ向かっていた。  
懐かしい校舎を最後にひと目、見たいと思ったのかな……。  
自分でも、どうしてそっちへ向かったのか、分からない。  
視線の先に、ぼんやりと見える灰色の影があった。  
オオヤマネコが先回りしてるんだろうか。  
もう二分、経ったのかな……。  
 
死を悟った獲物が、ハンターの胸に飛び込んでいくことがあるという。  
誰でもいい、守って欲しいと思うんだろうか。  
ほとんどの場合、そのまま殺されてしまうんだけど、  
稀に、ハンターの中には獲物を守ろうという気持ちになってしまう者がいるらしい。  
そんな話を思い出した。  
ちょっと事情が違うけど、あたしの身にもそれに近いことが起きようとしていたからだ。  
 
「こいつは、俺が連れて来たんだ。勝手な真似をするな──」  
頭上で、力強い声が響いた。  
 
あたしの前に立ちはだかった灰色の影。  
それはハンターじゃなかった。  
狼だ。  
似合わない体操着の短パン姿で、足元に歩み寄るあたしを抱き上げた。  
助かった──。  
それは、命を奪われずに済んだ、というだけでしかないのだけど。  
「今日はどうも昂ぶって仕方ねぇ」  
狼は短パンをずらして、大きなおちんちんを見せ、向かい合った姿勢で、  
あたしをその上にゆっくり下ろした。  
「二回目だ」  
猫たちの精液とおしっこまみれの体を、狼はしっかりと抱いてくれた。  
汚れるよ……。  
匂いで分かってるだろうに、彼はあたしの頭と背中を支え、おちんちんを深く突き入れた。  
猫たちよりずっと大きい彼のもの。徹底的に犯され続けたあたしのあそこは、  
今にも血が吹き出そうなほど痛めつけられていて、狼を受け入れるのはいつにも増して辛い。  
それでも、殺されることを思えば、我慢できる。  
二人が繋がってしまうと、もう猫たちは手を出せない。  
ブツブツと文句を吐きながら、  
狼がフェンスの扉からあたしを連れ出すのを見送るしかなかった──。  
 
お昼のチャイムが鳴る頃、狼は校庭の隅、木陰になっている斜面に座って、  
あたしを抱いていた。  
周囲には一面、シロツメクサが茂っている。  
「ありがとう。助かったよ……」  
狼に通じないことは分かってても、言いたかった。  
体が消耗しきってて、寒気がする。  
全身がガタガタと震えて止まらない。  
今のあたしは、狼のおちんちんの脈動で、命を揺り起こされているような状態だった。  
このおちんちんが抜かれたら、あたしは静かに息を引き取ってしまう──そんな気もした。  
だから、狼にお礼を言っておきたかった。  
通じないのが、悔しいよ……。  
意識が遠くなる──。  
死ぬんだな、と思った。  
 
狼は、そんなあたしの顔を掴んで、ぐいっと引き上げる。  
また、唾液を流し込もうとしてるんだ。  
 
あたしがどんな状態であっても、自分の欲望を満たしたいんだね……。  
仕方ない、と開いたあたしの口の中に、いい香りが広がった。  
えっ──?  
 
シロツメクサの香りだった。柔らかくすり潰された草の葉が、  
あたしの喉の奥に流し込まれる。少し混じった、肉食獣の口の濃い匂い。  
狼が、噛んで柔らかくした草を、口移しであたしに食べさせてくれてるんだ。  
あたしは、必死でそれを飲み込んだ。  
体がほうっと温かくなってくる。  
震えも止まってる。  
「もう自分で食えるか?」  
狼があたしの目の前に差し出したのは、珍しい、四つの葉が付いたシロツメクサ、  
幸運の印の四つ葉のクローバーだった。  
「ありがとう……」  
あたしはポロポロとうれし涙を流しながら、その葉を食べた。  
狼は首を傾げてる。  
あたしがなんで泣いてるのか、なんで嬉しいのか、分からないんだろう。  
クローバーの意味だって、きっと、知らないんだろう。  
コヨーテと同じで、あたしの体を楽しむために獲物に餌をあげただけ、なんだろう。  
狼は、ウサギが生気を取り戻したのを確認して、  
腰をゆさゆさと動かし始めた。  
あそこが、また、くちゅくちゅっと音を立てる。  
あたしはまた、感じてる。  
狼はあたしの体をぐるっと半回転させ、地面に伏せた。  
上から覆いかぶさるようにして、腰の動きを荒げながら、狼は背中を丸め、  
あたしの穴だらけになった耳を優しく撫でるように舐めていた。  
気持ちいい……。  
少し傷口がチリチリするけれど、犬科の唾液には鎮痛効果があるみたいで、  
あたしは次第にうっとりした気分になる。  
傷が癒えたら、そこが新しい性感帯になってしまいそうなほど、気持ちいい。  
そこはハウンドの精液と猫たちのおしっこにまみれてて、狼には悪いなぁ、と思う。  
ごめんね、汚れたところを舐めさせて……。  
匂いだって、酷いよね……?  
 
匂い、と言えば、あのハウンドのおちんちんの匂いを思い出す。  
そう、あたしは狼のおちんちんの匂いは、嫌いじゃない。  
こんなに長く入れられてたら、狼の匂いが体に移るような気がする。  
でも、嫌じゃない。  
お腹の底をぐっちゃぐちゃに掻き回されてるのに、なんだかホッとする。  
狼の吐き出す熱い、大量の精液が、  
猫たちの注ぎ込んだ憂鬱な液体を洗い流してくれる気がした。  
 
あたしは多分、この狼のことが好きなんだ。  
だから一番最初に、彼に体を許して……、  
それから──、  
どうしてこんなことになっちゃったんだろう──?  
食事をとらせてもらったことで体力がちょっとずつ戻ってきて、  
全身がじんわりと温かくなってきて、あたしはその心地良さに考えを巡らせるのをやめた。  
気持ちいい。  
あなたが与えてくれる、この幸せな時間。  
ほんと、好きだよ……。  
あたしは振り向いて、狼の顔を見上げた。あたしにも、あなたを抱かせて。  
狼はあたしの気持ちを感じ取ったのだろうか、  
ただ、いつものように楽しんでるだけなのか、分からないけど、  
あたしの体をぐるっと回して、お腹に押し付けた。  
ふかふかの白っぽい薄い灰色のお腹の毛に顔をうずめながら、  
あたしはまだあまり力の入らない両手で狼を思いっきり抱き締めた。  
腰が自然と上下する。  
お腹に頬を寄せてるから見えないけど、狼はきっと小さな黒い瞳を真ん丸にしてるだろう。  
いつもは一方的にされるばかりのウサギが、自分からおねだりしてるんだから。  
 
あそこが、くちゅくちゅと、いやらしいけど嬉しい音を立てる。  
狼の熱い液体とあたしの嬉しい気持ちから溢れる液体が交ざり合い、  
お昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえるそのときまで、ずっと、長く、音色を奏でてた。  
 
午後の授業が始まる五分前のチャイム。  
ざわざわとしながら教室に戻り始める生徒たちに合わせて、  
狼もあたしを片腕で抱えて校舎に入った。  
廊下で、コヨーテが待っている。  
「きちんと見ておけよ」  
あたしから顔は見えないけど、狼の声は、いつもの仲がいいコヨーテに対するものではなく、  
少し、怒りの混ざったような調子だった。  
大事な獲物が猫たちに殺されそうになった責任を追求してるのかな、と思う。  
コヨーテは顔を反らして、「ああ」とぶっきらぼうに答えた。  
「まあ、いい」と、いつもの口調に戻って狼は言う。  
「あとは任せたぞ」  
「あいよ、兄貴」  
あたしの体はコヨーテに預けられる。  
狼はひとり、廊下を歩き出す。  
また、どこかでサボるつもりなんだ。  
 
コヨーテはあたしの胸のあたりを、人形を抱くようにして腕で抱え、  
しばらく黙っていた。  
後頭部に視線を感じる。穴だらけになったあたしの耳を見てるんだろうか。  
コヨーテはいつもしているように、耳を掴んだりはしなかった。  
あたしのことを気遣ってるのか、なんだか普段より手付きが優しい。  
彼にそんなデリカシーがあるなんて、思えないんだけど。  
コヨーテがあたしを抱いて歩き始めたのは、クラスの教室の方向じゃなかった。  
そういえば、今日の最後の授業も別教室で行われる。「家庭科」の時間だ。  
 
家庭科教室では、窓側が女子、廊下側が男子のグループに分かれていた。  
家庭科の授業を行うのは、クラスの担任である、ヤギの先生。  
「先週、伝えた通り、今日は自由課題の調理実習をするよ。  
 食材は、先生が用意したものを使ってもいいし──」  
 
横長の目で教室を見渡しながら喋るヤギ先生に構わず、  
コヨーテは一番前にある調理台の流しにあたしの体を下ろし、  
蛇口をひねってお湯を出した。  
肌の温度に調節したお湯を使って、あたしの精液まみれになってる女の子の部分をまた、  
洗い始めた。  
「痛そうだな……」  
コヨーテが呟く。  
彼がただ、優しくしてくれてるだけじゃないことははっきりしてる。  
ほら、あたしのあそこに指を入れて溜まったものを掻き出しながら、  
彼の鼻息は、フーッ、フーッと次第に荒くなっていく。  
「セックスしてると、傷の治りも早いとか言うし……」  
これからまた楽しもうっていうんだろう。  
でも、少しホッとする。  
この時間からは、彼が無茶をしないことをあたしは何となく、知っている。  
そう、皆に裸になったあたしのことが見えなくなるのと同じように、  
あたし自身もこの姿でいるときの記憶が朧げになる。  
悪い夢を忘れてしまうように……。  
これで最後。コヨーテ一人にゆっくりと抱かれて……、終わったら放課後だ。  
いつもは……、あれ?  
あたしはいつも、最後はどうやって解放されてたんだろう?  
そこだけは、思い出せなかった。  
 
教室では、女子と男子それぞれ分かれてワイワイと騒いでいた。  
「五教科で家庭科が一番得意なんだ」  
「家庭科は五教科じゃないぞ」  
「前は体育って言ってなかったか」  
 
「まぁいいから、今日の実習は任せろって」  
 
いきなり、耳が掴まれ、引っ張られる。  
「食材はこれだ!」  
「なんだ? よせよ……」  
耳を引き千切らんばかりにしてあたしの体をコヨーテの手から奪おうとしていたのは、  
あのチーターだった。  
コヨーテがあたしのお腹をしっかり捕まえてくれたけど、  
そのせいで体は伸び切って、穴を開けられた耳が裂けるように痛んだ。  
 
「俺たちが作るのは、ウサギの丸焼きだ!」  
丸……焼き!?  
そう叫んだチーターの目は、興奮で血走っていた。  
わっと、コヨーテ以外の男の子たちの歓声があがる。  
猫たち、そしてハウンドたち。皆、狂気に包まれている。  
「手ぇ、離せよ」  
チーターがコヨーテに向かって凄む。  
いつもは狼を意識して控えめな態度しか取らないはずの彼が、  
あたしの発情の匂いによって興奮させられたうえに、欲求を満たされなかった憤りで、  
我を失っているみたいだった。  
「お前だって食べたいだろ、ウサギ」  
「そ、それは……」  
「空気読めよな」  
いつもは味方のはずのハウンドたちにもなじられ、コヨーテの手から力が抜ける。  
やめて、手を離さないで……。  
 
コヨーテの腕の力が緩み、あたしは宙吊りにされていた。  
手足をバタつかせようとしたけど、相手はチーターだ。  
またあそこに指が突っ込まれ、膀胱の裏側をコリコリと掻かれて、  
あたしは身動きできなくなった。  
いや、いずれにせよ、もう抵抗する力なんか、残ってなかった。  
 
発情した体で学校に来ちゃったときから、こういう運命だったんだ……。  
今度は本当に助からない。  
あたしは、男の子たちに食べられるんだ──。  
 
チーターは、本日の特撰素材だ、と言って、あたしの裸身を順番に男の子たちの目に晒す。  
いつもより強くビーカーで吸われていたらしく、  
これまで午後には腫れの引いていたおっぱいは、惨めに飛び出したまま。  
性器は何度もおちんちんで擦られて腫れあがり、今もまたチーターの指で刺激され、  
恥ずかしい音を立てながら、ネチャネチャと糸を引くような液体を垂れ流してる。  
見られる恥ずかしさで、クリトリスが硬く尖ってくる。乳首だって……。  
男の子たちは、その飛び出た部分をニヤニヤしながら弄ったり、  
舐めたりして、あたしを喘がせた。  
 
「まず、食材を洗うんだ。  
 きれいに、お腹の中までな」  
あたしは、調理台の流しに放り込まれる。  
恐怖に震える体に、男の子たちの無数の手が伸び、冷たい水が勢いよく掛けられた。  
全身の毛皮を揉まれるように洗われる。  
背中からお腹にかけて黄色く染めていたおしっこが洗い落とされると、  
次に、誰かの指があたしの口の奥に突っ込まれた。  
指が引き抜かれると同時に、あたしはドロドロになった胃の中身を吐き出していた。  
ああ、やめて……。  
狼が食べさせてくれた、あの幸運の四つ葉のクローバーも、  
他の草に混ざって吐き出されてしまうだろう。  
無理やり水を飲まされ、また指が押し込まれて、のどの奥を掻き回す。  
口の中が胃液でザラザラになるまで、それは何度も繰り返された。  
もう、吐き出しても、透明な液体しか出てこない。  
流しの中で逆立ちをさせられ、穴だらけの耳が引っ張られる。  
 
「誰だよ? 耳に射精したの」  
「ちゃんと洗っとけよ。焼くと臭うからさ」  
本気で、あたしを焼くんだ……。  
冷たい水で流され、耳の傷がズキズキと痛む。  
濡れ布巾で耳の奥まできれいにされたのだけは嬉しかったけど……。  
 
体と、胃と、耳とが洗われた次は、恥ずかしい体の奥の部分が狙われた。  
といっても、女の子の大事なところは後回しにされる。  
男の子たちが今、注目しているのは……、  
あたしのお尻の穴だ。  
「こっちも中まで洗う?」  
「ウサギは草ばかり食べてるから、そんなに汚くないけど、  
 焼けば味が肉に移るだろ。  
 水できれいにな」  
誰だか分からないけど、二人くらいの手が、  
あたしのお尻の穴に指を引っ掛けて広げてる。  
きつく締まってたそこが小さな口を開いて、生暖かいものが漏れ出す感触がある。  
「あはは、こんなとこまで射精されてら」  
すっかり忘れてた、二時間以上も閉じ込められてたハウンドの精液だ。  
いくらかは腸の壁から体に染み込んじゃったんだろうと、おぞましく思う。  
流しの中でしゃがみ込まされたあたしは、お尻の穴を開かれたまま、  
お腹をぐいぐいと押され、排泄を強要される。  
(嫌っ、嫌っ、見ないで……)  
女の子が排泄を見られるなんて、死ぬほど恥ずかしい。  
それにあたしは丸裸で、男の子たちの手で両手を万歳のポーズにされて、  
柔らかい女の子の部分も、おっぱいも、みんな隠せない。  
怖いのは、裸の女の子を前にして誰も、もう一度犯そう、と言い出さないことだ。  
彼らの目の前に居るウサギは、完全に、食材──なんだ。  
 
無理やり押し出され、コロコロと転がり出た、精液まみれの排泄物は、  
すぐに水で流された。  
「もうちょっと、穴、広げろよ」  
次に何をされるのか、分かっていた。  
目の前で、水道の蛇口に短いゴムホースが付けられている。  
あれをあたしのお腹に突っ込むんだ。  
男の子たちの指よりずっと太いホースは、そのままでは入りそうにない。  
お尻の穴に指が突き立てられ、ぐりぐりと回される。  
あたしのそこは指を締め付けるばかりで緩まない。  
「見ろよ、ネバネバしたものが出てるぞ」  
(!?)  
お尻を掻き回されて、苦しいのに、あたしのあそこはまた、  
恥ずかしいお汁を滲ませていた。  
顔がかっと熱くなる。  
嫌だ、あたしの体──、どうなってるの?  
男の子たちが、クックッと笑う。  
「さっきより、ずっと粘っこくなってるな」  
そう言って、誰かが性器に指を這わせると、ニチャッと音がした。  
指を中に導き入れようと、柔らかい粘膜がヒクつく。  
あたしのそこは、激しくおちんちんを求めてた。  
必死に、子孫を残すために。  
その、いじらしいほどのウサギの体の反応を、彼らは嘲笑う。  
ぬるぬるした液体が指で掬われ、お尻の穴に塗り込められる。  
「ちょうどいい潤滑剤だ」  
すぐにあたしは、ひんやりしたゴムホースの先を、体の中に感じてた。  
水道の栓が回され、突き刺すような冷たい水が流れ込んでくる。  
苦しい──、助けて……。  
じわじわとお腹が膨らみ、顔が仰け反っていく。  
万歳をさせられてた手が、自分で触ってみろと言わんばかりに、  
お腹にあてがわされる。  
そこは、信じられないほどぽっこりと膨らんでいて、  
 
張り詰めた薄い筋肉の層の裏で、ゴロゴロと不気味な音がした。  
 
四肢の自由を奪われた状態で、食材を扱う無数の手があたしに絡み付く。  
喘いでも、泣き叫んでも、許してもらえない。  
自分の体に行われていることが、現実とは思えなかった。  
お腹をさすられ、おっぱいも無造作に掴まれて、排泄を促される。  
 
「あれ? 出てこないぞ」  
ホースを抜かれても、排泄は始まらなかった。  
お腹がパンパンになってる分、お尻の穴は圧力に逆らおうとして中身を漏らさない。  
 
「仕方ないな。これをやってみよう」  
チーターの指示で、あたしはまた万歳をさせられる。  
あたしを脱力させる悪魔の指先が、女の子の部分に侵入する。  
(嫌……っ)  
それを皆に教えないで……。  
膣の中から膀胱の裏を掻かれ、あたしは今までに感じたことのないような、  
妖しい快感に包まれる。  
体力の限界を超えて強制的にイかされる。  
手足なんかもう動かせないのに、体の内側だけがビクビクと痙攣した。  
あたしはお腹の中に溜まった水と排泄物の混ざったものを、  
恥ずかしい音を立てて少しずつ漏らしながら、その間中、ずっとイキっぱなしにされた。  
酷い……、酷いよ。  
こんな風にイかされるなんて、普通ではあり得ないことだった。  
こんな惨めな姿を見られるくらいなら、いっそのこと、今すぐ死なせて──。  
男の子たちは面白がって、いったんへこんだあたしのお腹を、  
ホースの水でまた大きく膨らませると、  
交代であそこに指を突っ込み、グリグリと掻き回す。  
あたしは合計八回、絶頂と排泄を強制された。  
「すごいなぁ、お汁がダラダラだ」  
男の子たちの言う通り、信じられないほどお汁が出てた。  
あそこにおちんちんを入れられてない状態でイかされるのは初めてで、  
この体の反応に自分でもびっくりする。  
イかされてるときに流れ出る液体は、オスを求めてるときのようにねっとりとはしてなくて、  
おしっこのようなサラサラした液体が、感情の極まりに合わせるように、  
勢いよく吐き出される。潮吹きっていうのかな。  
みっともなくて、恥ずかしい。  
「これだけ出てるとこっちは洗う必要ないかな」  
「信じられないくらい出てるよなぁ」  
「もう精液の匂いはしないな。  
 最後にちょっと水を流せばいいだろ」  
もう、お尻の穴の方からは、透明な水しか出なかった。  
頭から一通り、体中を水で流されて、あたしは調理台の大きなまな板の上に乗せられ、  
紙タオルで軽く拭きあげられた。  
 
チーターが、もう動けないあたしの体をまな板に押し付けながら言う。  
「美味しい丸焼きは中に野菜を詰めて焼くんだ。  
 ニンジンが置いてあったろ? 一番、太い奴持ってこい」  
面取りしたニンジンが用意される。  
「ほーら、ウサギさん、ニンジンだよ」  
ふざけて口元に押し付けられたニンジンの大きさは、  
狼のおちんちんより少し長く、そして、太い。  
ニンジンをあそこに突っ込まれても、あたしは抵抗できなかった。  
太い方から挿し込まれたニンジンは、半分ほど埋め込まれ、  
後はあたしのそこが締まる力で自然に奥へ入っていき、すっぽり中に収まってしまった。  
「ははは、自分で飲み込んだよ、こいつ」  
「ウサギはニンジンが好きだからなぁ」  
勝手なこと、言わないで……。  
包丁が別のニンジンの皮をゾリゾリと剥く音がする。  
信じられないことに、お尻の穴にまで、ニンジンが挿れられた。  
 
「オーブンの準備ができたぞ」  
 
染み付いた油が焦げる匂いと、頬のヒゲに感じる熱気。  
夢や幻なんかじゃない、教室の隅の大きなオーブンが熱せられている。  
「手足、縛っておかなきゃ」  
「もうこいつ、動けないんじゃね?」  
「そう思ってても、火にかけると暴れるからな」  
「縛るのはいいけど、燃えるものじゃダメだぞ」  
男の子たちは、バーベキュー用の大きな金串を出してくる。  
そんなもので、どうするというの?  
体がガクガクと震えて止まらない。もちろん、水で冷やされた体のせいじゃない。  
誰かが後ろから抱え起こし、あたしに無理やり、  
両の手のひらを合わせて祈るようなポーズを取らせる。  
金串で両手を縫い止めるためだ。  
そうやって手を引っ張り上げられでもしないと、とても立ってなど居られなかった。  
「許して、お願い……」  
思わず、その格好に似合った言葉が口を突いて出るけれど、  
やはり、誰も耳を貸そうとはしなかった。  
「ここ、柔らかくて美味しそう」  
この期に及んでまだ、乳房が弄ばれた。押し潰されて、あたしは悲鳴を上げる。  
「ちょっと、小さいけど」  
「二つしかないから、じゃんけんな」  
「俺、性器んとこでいい」  
男の子たちが舌なめずりをする。彼らを楽しませていたあたしのあそこは、  
今では食材の部位のひとつでしかない。  
「まぁまぁ、焼きあがってからにしようぜ」  
 
猫たちとハウンドが入り乱れて、あたしを囲んでる。  
普段はこんなに仲良くなんかしないくせに。  
「よーしよし、ウサギちゃん、ちょっとチクッとするからね」  
「チクッていうか、グサッて感じだろ」  
「じゃあ、痛み止めだ」  
誰の手か判らないけれど、クリトリスがゆるゆると捏ね回される。  
おっぱいもここぞとばかりに優しく揉まれる。  
ああ──、こんな風にされながら、あたし、また感じてる──。  
 
「お願い、お願い──」  
言葉が続かなかった。  
食べないで、殺さないでと叫びたいのに、それを口に出さなければ助かるんじゃないかという、  
儚い思いが声を麻痺させた。  
もう自分ではどう足掻いたって助かりっこないのに──。  
 
ギラギラと光る尖った金串が、視界の端を、スローモーションのように通り過ぎていく。  
太股が生暖かくなる。  
恐怖で膀胱が緩みきっていて、おしっこがじわじわと染み出てるんだ。  
次の瞬間、両手に激痛が走って──。  
 
金串があたしの手を貫いたのだと思ったけれど、そうじゃなかった。  
誰かが、あたしの手を掴んで、思いっきり引き上げたんだ。  
そして、いったん宙に浮いた体が、すとんと床に降ろされる。  
「ダメだっ」  
少し甲高い声が頭の上で響いた。  
その声の主は、覆いかぶさるようにして、あたしをしっかりと抱いて、  
皆から遠ざけようとしていた。  
 
コヨーテだ。  
 
「ダメだ。こいつは……、兄貴のお気に入りなんだ。  
 だから、殺しちゃダメなんだ──」  
 
無数の手があたしをコヨーテから引き剥がそうと迫ってくるけれど、  
彼は何が何でも離すもんかと言わんばかりに、あたしを抱き締める。  
全身をありったけ、膨らませるようにしてあたしを体の下に隠す。  
安堵より先に驚きが湧き起こる。  
いくらいつもつるんでるからって、  
彼にそこまで、狼に対する忠義があるとは思えなかった。  
そして、あたしは、本当のことに気付いたんだ──。  
 
「ごめんな、ごめんな……」  
コヨーテは、あたしの穴の開いた耳を、優しく撫でていた。  
「俺がついてたら、こんなことさせなかったのに……」  
ポタポタと落ちてくる、熱いものは、彼の、涙──?  
「お前がいつもとあんまり違うから……、  
 どうなっちゃうか分からなかったから……、  
 怖くて見てられなかったんだ」  
 
すべてが繋がって、思い出されてくる。  
いつも、ハウンドや猫たちが無茶をしないように咎めてくれるのが、彼。  
こまめに体を清めてくれるのも、彼。  
陵辱の後に精液を洗い流して、体を拭いてくれるのも、彼、コヨーテだったんだ。  
あたしはどちらかというと狼のことが好きで、  
だから、努めてコヨーテのことを嫌いだと思うことにして……。  
そして彼も、あたしに意地悪をするように振舞って……。  
本当はいつも、感謝してたのに──。  
なんとなく、分かってくる。  
きっと、あたしのことを、裸になってもあたしだと気付いてくれているのは、  
あたしを、好きなひと、なんだ。  
あたしはドキッとする。  
コヨーテが今日、シロツメクサを食べさせてくれたのも、あたしが好きだったから。  
そして、狼……も?  
それなのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。  
あたしが淫乱なウサギの血統だから?  
ううん、だったら好きなひととだけしていたい。  
男の子の面子っていうの?  
仲間に顔を立てて、敵には塩を送って……、  
そうしてあたしは、みんなで共有されるようになっちゃったんだ。  
ああ、もうすぐあたしは死んじゃうのに、コヨーテと狼、二人だけに愛されたい。  
思いっきり、お腹の中を突かれたい。あの熱い精液をいっぱい注がれたい。  
そして、好きだって言って欲しい──。  
 
想いに耽っては居られなかった。コヨーテが、苦痛の声をあげていた。  
男の子なのに、我慢強いはずなのに、殴られ、蹴られ、そのたびに彼が漏らす呻き声が、  
切迫した状況を物語っている。  
このままじゃ、あたしより先にあなたが死んでしまう。  
さよなら。もういいよ。あたしのためにあなたが傷付くことなんてない。  
ありがとう。そして、ごめんね……。  
 
あたしが欲望に飢えた獣たちの手に渡るのは時間の問題だった。  
怖いよ……。  
あたし、もうすぐ、死ぬんだ。  
コヨーテは、そんなあたしを最後まで守ろうとしてくれていた。  
背中から回した大きな手で、震えるあたしの頭を抱いてくれる。  
もう片方の手は、股間を優しく包み、温かい肉球の付いた指先が、  
クリトリスをゆっくり刺激する。  
いつもの意地悪さがまったく感じられない、優しい手つき。  
気持ちを落ち着かせようとしてくれてるんだ。  
それは、あたしに与えられる、最後の嬉しい感覚だった。  
気持ちいいよ……。  
 
あたしは自分から、コヨーテの体に触れたかった。  
 
今まで一度もそうしたことはなかったんだ。  
体が重く、痺れてる。  
お願い、動いて、あたしの手……。  
あのフカフカした頬の毛に、そっと手を伸ばそうとしたけれど、  
叶わなかった──。  
コヨーテの体が、吹き飛ぶようにあたしから離れてく。  
脇の下から回された大きな手が、あたしの体を一瞬で宙に抱え上げていた。  
何かが首に巻き付けられ、ギュッと絞られる。  
怒りに満ちた獣たちが、あたしに制裁を加えているのだと思った。  
それでいい。じわじわと焼かれて死ぬよりは、  
こうしてひと思いに死なせてもらった方がいい──。  
 
「あれっ?」  
周囲で、素っ頓狂な声があがる。  
恐怖で瞑っていた目をそっと開くと、  
呆気にとられたような顔つきの獣たちが、あたしを囲んでた。  
あたしは、狼に抱えられ、  
ブラウスのネックの部分を首に嵌められようとしていた。  
金属繊維の織り込まれた特別な皮製の首輪が、パチンと音を立てて完結した。  
あたしの体が床に下ろされると、  
男の子たちはこれまでのことをすっかり忘れてしまったように、  
「なんで女子がこんなとこに来てんだ?」  
と、不思議がる。  
「それより、なんで俺、殴られてんだよ!」  
コヨーテが、叫んでいた──。  
 
呆気ないけれど、これが、悪夢の終わり──。  
 
休んでいたはずのクラスメイトがいきなり、皆の前に現れた。  
下着も着けず、固いブラウスの生地が、まだ腫れている胸を覆うだけ、  
スカートも何も穿いてないあたしだけど、そのことは誰も気にしない。  
いつも会ってるウサギの女の子がそこに居る──、ただ、それだけだ。  
教室全体が日常を取り戻す。  
さっきまでの状況とのあまりの落差に、頭がくらくらした。  
 
「戻れよ」  
狼が、あたしの肩を押す。  
あたしは力の入らない両足で立ちあがり、なんとか、  
女の子たちが囲んでいる調理台の方へ歩き始める。  
疲れがお腹の下の方に溜まってるみたいに、体が重い。  
うまく閉じられない足を不恰好に開いて、右に、左に、ヨタヨタしながら歩く。  
まだお汁がすこし、滲み出てるんだろうか、お股がスースーした。  
きっとこのまま、下半身丸出しで家に帰ることになるんだろうな……。  
家に戻っても、替えのスカート、なかったんじゃないだろうか。  
ショーツだって毎日のように脱がされ、捨てられて、確かもう残りがない。  
明日、どうやって学校に来よう──?  
 
あたしは、恐ろしい体験のことを忘れて、  
明日のことを考えてる自分が可笑しくなる。  
調理台のそばで、オリックス族のあの子が、あたしの姿を認めてにっこり笑った。  
「午後から来たの?  
 ちょっと、心配してたんだ──」  
彼女の優しい声、お姉さんみたいで、やっぱり素敵だな。  
「また男子はサボってて、お料理完成しなかったのね」  
彼女にも、見えていたに違いない、あたしが調理されようとしている姿。  
けれど、今となっては、男の子たちが何の料理を作ろうとしていたのか、  
誰も知らないんだ。  
今も、あたしの両耳にいっぱい星型の穴が開いていて、下半身が裸のままなこと、  
誰も口にしなかった。  
ハウンドたちにめちゃくちゃにされたこと──、  
 
ハンティングの標的になって、ボロボロにされたこと──、本当に、怖かった。  
そのあたしの中だけにある記憶も、次第に薄れてく。  
 
「実習で、クッキー焼いたのよ。  
 あなたの分も、あるから」  
彼女は紙袋に入った、まだ温かいクッキーを渡してくれる。  
「明日はきちんと朝から学校にくるのよ」  
「うん」と頷く。  
(でも、きっとあなたにはあたしが見えないと思うけど……)  
発情はまだ何日も続きそうだった。  
少し憂鬱になる。  
 
女の子たちが、小さくざわめく。  
調理台の近くに、乱暴者の狼が来ていたからだ。  
「何よ?」とオリックスの彼女が牽制するのも構わず、狼はあたしに近付いた。  
そして、大きな手をポンとあたしの頭に乗せる。  
「……しばらく、下着を穿いて来いよ」  
彼はそう言って、耳と耳の間をくしゃくしゃと撫でた。  
あたしは彼にも、  
「うん」と答え、嬉しくなる。  
言葉が、通じてる。  
彼が、あたしに気を遣ってる。  
それは、やっぱり、裸にされていたときのあたしを意識していた、証拠……?  
 
(ねえ、今度は、あたしが服を着たままで、しようよ……)  
そう言い掛けて、言葉を飲み込む。狼にだけ、誘いをかけるのはフェアじゃない。  
あたしは思わず、ふふっと笑ってしまう。狼が、あなたがいつも姿を消してたのは、  
あたしとコヨーテがしてる姿を見たくなかったからでしょう?  
コヨーテの気持ちだって、大切にしたい。  
あたしがあたしのまま、彼らと愛し合うのは、三人の関係に整理が付いたときになる。  
いつか、いつか遠くない日に、きっと告げようと思う。  
その相手は……、狼? それとも、コヨーテ?  
 
あたしたち三人の間では、まだしばらくこんな状態が続くんだろう。  
服を脱がされて、普段のあたしじゃなくなって……。  
捕らえられた牝のウサギとして、めちゃくちゃに愛される。  
それも、悪くない。  
もっと素直になろう。もっと積極的になろう。  
そうやって、言葉でなく、気持ちを伝えるんだ。  
『狼とコヨーテ、あたしをあなたたち二人だけのものにして──』  
 
コヨーテの、荒々しさが刺激的で気持ちいいおちんちん、  
狼の、熱い精液をお腹いっぱいに注いでくれるおちんちん、どちらも、素敵だよ。  
ああ、二人のそこだけが魅力的なわけじゃないのに、こんな風に考えてしまう。  
やっぱり、ウサギの体って、エッチなことが好きなんだね。  
 
それはともかく、今日は本当に、つらかった。  
体が冷えきっていて、何か食べ物を口にしたくてたまらない。  
あたしは、もらった紙包みを開いてクッキーを口に運び、そっと齧る。  
口の中に広がる、ホッとするような小麦の香り。  
そして──、  
胸を包み込む、嬉しい気持ち。  
 
皆が作っていたクッキーは、ほんのりと甘い、  
あたしの大好きな──、  
 
『ニンジン味』のクッキーだったんだ。  
 
 
(おしまい)  
 

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