僕は今、彼女の部屋に来ていた、というのも、今日は彼女とデートの日なのだ。  
 
「美香。」  
 
「なにー」  
「今日はどっか出かけよう。」  
「なによいきなり」  
「いや、デートといいつつもいつも家にいるだけだし、たまにはいいかなーと思ったんだけれど・・・」  
「別に気使わなくてもいいわよ。お金ないんでしょ。」  
それは・・・・  
「いや、バイトして貯めたんで大丈夫です」  
「ふーん、。」「そんでどこ行くのよ。」  
「とりあえず買い物でも行こう。」  
 
「んー、」  
彼女は少し考えたが、  
「そうね。いきましょ。」  
僕は、今日の出費はかさみそうだ、と予感した。  
 
 
 
 
 
僕は彼女と別れる。今日。  
彼女が悪いわけじゃないし、僕にほかの好きな人ができたわけでもない。  
デートの度、彼女に貢ぐことも、決していやなことじゃない。彼女の幸せは僕の幸せなのだ。  
それでも、僕と彼女は今日別れる。  
 
 
 
 
 
僕が彼女に告白したのは桜が舞う季節だった  
 
その日は中学校の卒業式で、みんな支配からの卒業を喜んだり、全然理解できないが、泣いてたりする人もいた。  
かくいう僕も送られる側の人であり、本命の公立高校受験も終わっていたので、心に緩みができていたのかもしれない。  
 
卒業式が終わった後、僕は誰もいない教室で自分の荷物をまとめていた。  
最後の荷物をまとめ終わり教室を出て行こうとすると、  
「いつから?」  
彼女がいた。こちらをじっと見据えていた。  
「さっきから。たしか雄介に本貸していたと思ったんだけど。」  
僕は、ああ、といって彼女に本を荷物入れから探す。  
「どうだった?」  
「美香らしい本だった。」  
借りた本は江戸川乱歩賞をとったことのある本だそうで、なんというか、ハードボイルドを感じた。  
 
僕は「でもおもしろかったよ。ありがとう。」といって本を手渡す。  
 
僕らはそれぞれ別の高校へいく。  
 
 
美香とは長い付き合いで、生まれたときからずっとお隣さんの、いわゆる幼馴染をしている。  
昔から美香は美人だったが、中学に入り成長するにつれ、彼女はますます綺麗に、そして・・・なんというか、ハッキリした物言い(要は男勝り)になっていった。  
そのため、同学年に限らず、さらには異性に限らず、多くの人にモテた。  
 
中学一年の秋、その中の一人(女子だが・・・)に美香が僕を煙たくおもっているしあんたと美香はつりあわないから別れなさい、なんて言われた。  
別に付き合ってたわけではないのだが、どうやら付き合ってるように見えたらしい。うわさには、というか俗的なものには僕は無頓着だったので全然気づかなかった。  
確かに僕が美香の隣にいたら、美香に迷惑がかかるかもしれない。だけど美香は優しいから、言い出せないのだ。  
それからは、一緒に登下校するのもやめたし、小学生のころはよく行っていた彼女の部屋にも行かないようにした。  
それでも美香は僕の部屋に来ることはあったが、それも次第に減っていった。彼女のためだ、寂しいとは思わない。なのに、たまに胸がキリキリ痛んだ。  
 
 
 
「雄介」  
少し間をおいて  
「それじゃ、あたし帰るから。」  
 
長い沈黙を破った彼女の言葉だった。  
「あ、うん・・・」  
 
それが僕にはまるで今生の別れの言葉に聞こえた。  
だから僕は  
 
「・・・好きだ。」  
つい口を滑滑らせてしまった。  
 
「・・・え?」  
 
美香は一瞬ピクリとしたあと、ゆっくり振り返ってこちらをじっと見る。  
・・・・背中に冷や汗を感じる。  
彼女の瞳の奥からはどんな感情も読み取れなかった。  
 
「なんでもない。じゃあね。」  
 
ぼくは本当になんでもないように彼女に返す。  
そうすると彼女はどしどしと僕の近くまで寄ってきた。  
 
「なんでもなくないでしょ。なんていったのよ。」  
 
なんだ。ちゃんと聞こえていたんじゃないか。  
彼女にはちょっと、いやかなりサドっ気がある。  
ここでごまかせばさらに追求されるだろう・・・。ぼくは覚悟を決めた。  
 
「ずっと好きだった。」  
 
美香はSだが僕はMではない。と思う。たぶん。おそらく。  
結果がわかった告白なんてしたくなかったし、答えも聞きたくない。  
言ってすぐに僕はその場から逃げるように帰ろうとしたのだが・・・  
 
美香はふーん、と一言いい、  
「別にいいわよー。付き合ったげる。」  
逃げ出そうとした僕は完全にフリーズした。  
たしか彼女には彼氏がいたはずだ。  
というか彼氏がいなかったためしがない。いつもとっかえひっかえしていた。  
 
「・・・彼氏は?」  
「いまはいないわよ。」  
 
「あと、ひとつ言っておくけど、無理やり襲ってきたらただじゃおかないわよ。」  
 
結局、僕らは幼馴染から恋人へ、よくある展開を遂げたらしい。  
 
らしい、というのも、その後のことはよく思い出せないのだ。気づいたら家にたどり着いていた。  
 
どうやら今日、僕と美香は恋人になったようだ。だが、僕は所詮僕は美香の彼氏と彼氏の中継ぎに過ぎない。  
うぬぼれちゃいけない。それでいい。  
 
 
彼女の幸せは僕の幸せなのだ。  
 
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「あー、おいしかったー」  
彼女はすっかりご満悦のようで心なしかほほがつやつやしていた。  
「それは・・・よかったよ。」  
僕らは街で買い物をし、レストランで夕食を取った。  
といっても驚いたことに彼女はうさぎのキーホルダーふたつしか買わなかったのだが・・・。  
僕はもっと豪快な買い物になることを予想していたため、この日のために財布をふくらませておいたのだが杞憂だったらしい。  
 
 
僕らは夜の街を背にベンチで食休みをしていた。  
秋の寂しさを含んだようなかわいたかぜがほほをなでる。  
街の光が遠くに見える。心に安らぎと、そして孤独が広がっていくのを感じた。  
 
 
 
今日のデートは概ね成功だったようだ。  
あとは彼女と別れるだけ。  
 
 
美香は僕とはつりあわない。それは彼女もわかっているだろう。これは単なる美香のきまぐれ。  
だから僕は彼女にほかの好きな人ができたら分かれようと思っていた。  
この前、美香の部屋でデート(?)したとき、僕は偶然ゴミ箱に捨てられていたコンドームの箱を発見してしまったのだ。  
僕は彼女とはセックスどころかキスさえしていない。  
となると美香に他の彼氏がいるということになる。  
 
僕はそれを見て、潮時だと感じた  
美香にとっても他の彼氏がいるのだから僕の存在はうざったいだけだろう。  
でも彼女は優しいから、僕に別れを言い出せないのだ。  
だから僕から言い出さなければ。彼女のために・・・  
 
「美香・・・」  
「なに?」  
 
彼女のために・・・・。  
僕は胸に痛みを感じた。それは無視した。  
 
「別れよう」  
 
美香は顔をゆっくりこちらに向けてきた。  
彼女の大きな瞳は、僕が彼女に告白した時と同じだった。どんな感情も読み取ることができなかった。  
 
「・・・・別れよう?」  
 
「うん、別れよう」  
僕はこみ上げる悲しみを感じた。  
彼女の幸せは僕の幸せのはずなのに、たまらなく悲しくなって顔をふせた。  
数秒の間をおいてから、美香は突如立ち上がり  
「なにいってるのよ。あたしのことずっと好きだったんじゃなかったの。あんたから告白したくせに何で逃げるのよ!キスもする度胸もないのになんで告白なんかしたのよ!馬鹿みたいにお金ばっかりわたして!」  
叫んだ。  
 
「僕知ってるよ。美香は優しいから、僕の告白断れなかったんだろ?でももういいんだって・・・」  
彼女のつめたい両手が突如僕の両ほほを包むのを感じた。ひっぱらっれるのに釣られて僕は立ち上がる。  
僕は引っぱたかれるのを覚悟して目を瞑った。  
 
・・・?  
唇に暖かい感触を受ける。  
美香の仕業だった。  
美香が僕にキスしていた。  
 
「・・・!」  
唇が離れる。  
「これ、あたしのファーストキスだから。」  
というがはやいかもう一度口付けられる。  
こんどは舌を入れられ、もう僕の頭は沸騰寸前だった。  
 
「みっ、美香っ!」  
僕は彼女の体を強引に離す。  
 
彼女は泣いていた。  
 
「あたしね、怖かったの。ゆーくん中学校はいったら急によそよそしくなったから・・・。」  
「彼氏たくさんいるってのも全部嘘。ゆーくんの気を引きたかっただけ。ゆーくんがくれたお金も一円も使ってないよ。」  
 
そこまで言うと美香は顔を手で覆う。  
僕は美香を抱きしめたい衝動に駆られた。でもできない。  
僕はこんな悲しそうな彼女を今までみたことがなかった。  
 
「でもゆーくんはあたしのことどーでもいいんだよね」  
 
「そんなこと・・・」  
ない・・・という言おうとしていえなかった。僕は彼女の幸せというものを勝手に勘違いし、勝手に決め付けていたのかもしれない。  
結局僕は僕のことしか考えていなかった・・・。  
 
「でもね、あたしゆーくんがいないとだめ。ゆーくんじゃないとだめなんだよ」  
「きらいにならないで・・・おねがい・・・」  
美香は僕にしがみつき、服に顔をうずめている。時々嗚咽の声がきこえる。  
 
 
僕は・・・こんなしおらしい美香をしらない。  
どっちの美香が美香なのか。中学校に入って、僕と美香は離れすぎてしまった。  
もう僕には美香の本当の幸せを見極めることはできない。  
 
「ごめん・・・っ!」  
僕は美香をひきはがしてそのまま逃げた。  
悔しかった。美香を守れない自分がこの上なく情けなかった。  
 
僕は家に着くと布団にもぐり、そのまま泣いた。  
 
朝なんて来なければいい・・・・  
 

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