とある、滅多に使われることのない茶道室。  
その室内には、黒いツインテールの幼い少女と、縄で縛られた上猿轡を噛まされて畳の上に転がされた  
茶髪のセーラー服の少女、そして一般的な学生服姿の若者が陣取っている。  
 
片方の少女が、吾輩にちらりと目を流す。  
「………………」  
無言のまま、視線で語りかけてくるこの黒髪の幼き少女は、我が妹。  
そして語られている若者、つまり吾輩のことだが、我は『死神』である。  
『死神』と名乗ってはいるが、我自身は常人、つまり一介の人間となんら変わりない。  
唯一違う点は、『魂』―――所謂、幽体に干渉できる能力を持つことだ。  
故に我は『死神』と名乗っている。  
 
さて、そろそろ始めるとしようか。  
「ふむ、本日は常例通り、この生娘の精を戴こうか。我が妹よ、儀式の備えを頼む」  
妹は我の命令に従い、セーラー服の少女―――言いにくいため、仮にA子と命名しよう。  
A子を引っ張り上げて立たせる。我の言動にA子は何らかの畏怖の念を抱いたか、  
暴れ抵抗しようとする。が、14になる妹はA子より3つほど幼いが、抵抗に動じない。  
説明しそこねたが、妹は『魔女』である。魔術により身体を強化することなど、造作も無いことなのだ。  
「ふむ、あまり暴れないでくれたまえ。その麗しい肌を介して、魂に傷が付いてしまうよ。  
 ああ、なんということだ、既に肌が擦れて血が出てしまっているではないか」  
そう、A子が暴れるあまり、縛っていた縄で肌を引っかき、出欠したのだった。  
身体が傷つけば、その痛みを精神が感じることで、そこが『傷ついている』と認識し、  
魂も同様に『傷ついてしまう』のだ。身体が傷つき血が出るように、魂が傷つけば『気』が流れ出てしまう。  
『死神』の力は、気を必要とするのだ。  
「ふむ、もう少し余興を楽しみたかったが、仕方無い。さっそく魂を見せてもらおうか」  
「――ッ、ッッ!!」  
猿轡をかまされているため聞き取れないが、A子は吾輩に何か語りかけようとしているようだ。  
ふむ、まあ大したことのない罵詈雑言であろう。  
吾輩はA子の額に軽く手を当てて、力を加える。『するり』と押し抜ける感触とともに、A子の身体から  
半透明のA子が、まるで脱皮でもしたかのように抜け出、その『殻』はゆらりと力無く地へ落ちる。  
その殻をしっかりと受け止める妹を傍目に、自らの透けている身体に驚くA子に吾輩は親切にも説明する。  
 
「我の力は『魂』に触れる力。まあ、君らから言えば幽霊に触れることが出来る、と言うところかな。  
 全ての人は不思議なことに、肉体という姿に憑依した幽霊のようなものでね、  
 吾輩が少し力を加えて押すだけで、その中身は簡単に抜け出てしまうのだ。  
 何故、人の魂はここまで軟弱なのだろうか。まったく、分からないことばかりだな、この世は」  
「そんなことはいいから早く私を元に戻して!  
 せ、先生か警察に訴えるわよ!」  
そう演説する我に、肉体から離れ舌が自由となったA子は愚かにも脅しかけているつもりのようだ。  
「この吾輩へ、凡人なる警察や一介の教師ごときに訴えどうにかなるとでも?  
 ふむ、誠にそう思っているのならば、大した愚者だな、そなたは。感心するぞ」  
「あ、あなたさっきから何を言ってるの!?  
 私をいきなり室内に連れ込んだかと思えば、こんな、こんな……」  
「状況を的確に言い表せないとは、なかなか語彙力が不足しているようだな。代弁してやろう。  
『こんな幽霊みたいな体にして』。そんなところかね?」  
「…………、ッ!」  
不可思議なる体験、我に嘲られたあまりの憤怒と、  
自らの言葉の先を告げられた恥辱で、A子はどうやら言葉がおぼつかないようだ。  
ならば、これ以上の会話は控えてやるのが適切であろう。  
「このままでは会話が続かないな。  
 ならば、語り合うのをやめて、儀式を続けるとしようか」  
先ほど説明したとおり、我は常人であるが、『魂』に対してはその枠に収まらない。  
様々な感情に揺さぶられ動揺するA子の胸に、我は手を当て、軽くさする。  
「何を……、ッ、イタッ……」  
当たり前のことだが、『魂』とは、裸より無防備なものだ。  
土竜が空の飛び方を知らないように、人間がどうして魂の守り方を知っていようか。  
そう、それ 故に『魂』に対して、我はアドバンテージを持つのだ。  
 
「い、ッ!」  
おっと、どうやら強く触れすぎたようだ。  
吾輩は一度手を離し、今度はゆっくりと、そっと乳首のあたりをくすぐる。  
「や、やめ……っ、へ、やへ……」  
ふむ、今度は丁度いい力加減のようだ。  
我は加減を調節しながら、くすぐりつづける。  
「ひあっ、あ、あ、あ……」  
さすったり、止めたり、手を離したり、触れたり。  
魂をむき出しにしているA子は、言わば、肌を直に触れられているのだ。  
「やめぇ、ぁぇ……あえぇ……!」  
いや、むしろ神経を触られていると言ったほうが正しいかな。  
とにかく、そこまで『感じる』ということなのだ。  
「ひぁ、ぃはらぁぁ、ひはぁ……ん……」  
しかし、胸を擦るだけでは、代わり映えが無くつまらんものだ。  
とは言っても、このA子はおそらく、自慰になどまったく興味ないであろう生娘なのだ。  
たとえ秘所の芯を弄っても、なんの快感を得ず、ただ痛みを得るだけであろう。  
それは不味い。何が不味いかって、痛め過ぎて傷を与えるとそれだけ『気』が流れてしまうからな。  
仕方が無い、そろそろ『戴く』とするか。  
吾輩は、A子の魂の額に手を当て、感じていた快感を『吸い取る』。  
A子の体を、痺れのような寒気のような、鳥肌の立つゾワゾワとした感覚が駆け上ってゆく。  
「ッ、ッ、ッ、ァァァァァァァッ!」  
「――――むぅ、至高ではないが、上々の味わいであった。」  
そして我が身体に、その快感―――別の言葉で言い換えればオーガニゼーション。  
性的快楽を、文字通り『A子から吸い取った』のだ。  
我の下着が湿ってしまったが、まあそれはそれで問題無い。履き替えればいいのだから。  
 
快感を吸われ、無言のまま恍惚とした表情のA子を、再び『殻』に入れ直す。  
「やはりただの生娘は、戴くには不向きだな」  
そう言い、室内を立ち去る―――吾輩に視線が突き刺さる。  
「おお済まぬな、我が妹よ。その少女は好きにするといい。  
 代わりに、始末は任せたぞ」  
そして、吾輩はこの茶道室を立ち去るのだった。  
だが、A子を犯す魔の手はまだ終わっていない。  
 

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