教室にて
「普通の猫が欲しいな」
「無理な相談だわ。ウチにそれに該当しないのが一匹いるし」
(失礼な奴だ)
「この前だって可愛い仔拾ったと思ったら、盗聴器付けられていたし」
「当たり外れが多いからなあ、特に犬猫の類は」
(白々しい言い方はやめろ)
「世の中何かおかしいよね?」
「本当にそう思うよ」
(よく言うよ)
「砺波くん、人の話真面目に聞いてないよね?」
「――え?」
「目が泳いでるし」
「マジで?」
「何か時々思うんだけど、砺波くんって人から猫っぽいって言われない?」
「いいや」
「何も無いところを普段から凝視していたり、突拍子も無く喋ったり動いたり」
「・・・・・・気の、せいかと」
(ハハハハハ、こりゃ傑作だ)
「笑うな」
「?」
「!」
「やっぱり・・・・・・」
「・・・・・・」
「植月さん?」
「え? あ、砺波さん」
「兄貴がどうかした?」
「いや――ごめんなさい。私もう行くね」
「あらあ・・・・・・兄貴も隅に置けないじゃない?」
「何が」
(猫が欲しい娘が、お前を猫っぽいと言っている――後は分かるだろ朴念仁)
「――つまり全ての元凶はお前にあるということか」
(若いとは実に羨ましいものだ)
「守護霊の癖に、覚えてろよ化け猫」
(ハハハ)
「全く――」
(ご主人様、紺様が心配ですか?)
「単純な意味でね」
(そうですか)
「そう。例えお前の勘がどんなに鋭いとしても、ね」
(はあ)
「犬と何話してんの?」
「兄貴の悪口」
「何て奴らだ。もういい、不貞寝だ」