はじめて見たときから、どこか危険な匂いがした。  
 絶対この人いじめっこだ、と思った。  
 それも悪ぶってるとかじゃなくて、根っからのガキ大将にちがいないと確信してしまうほどの……  
 わたしの手には負えない人だと思ったから、なるべく遠巻きにしていたのに、近づいてきたのは  
なぜか彼のほうからだった。  
 天然だ天然だと小さい頃から言われてきたけど、それはどちらかというと小馬鹿にされているか、  
その場のネタにされて笑いものにされるか、そんな嬉しくもない扱いだったのに、彼だけは真正面から  
わたしの言動を受けとめて、ひとり大爆笑していた。  
 涙をにじませ腹をかかえて笑い転げる彼を見て、こういう笑われ方嫌いじゃない、と思った。  
 ……初めてそう思った。  
 
 飲み仲間だったわたし達だけど、わたしはその仲間うちの別の男の人と付き合い始めた。  
 半年たったころに、どういう流れか彼氏も交えず、彼とふたりだけで飲むことになっていて、このときの  
わたしはうまくいかない恋愛のことをつい彼にこぼしてしまっていた。  
 このシチュエーション、あぶないかなぁ……と思いながら、意外と真摯に話を聞いてくれる彼に少し  
油断していたのかもしれない。  
 この人にも当時、やはり同じ飲み仲間内に彼女さんがいたから、完全に安全圏内の、近寄りがたいけど  
面白い男の人という認識でしかなかった。  
 話の途中で彼が珍しく少しだけうつむいたときに、すぐ気づくべきだった。  
 避ける間もないほど素早くキスをされた。  
 おびえるように触れただけですぐ離された彼の唇に、負の感情を抱かなかったとき、はじめて……ううん、  
あらためて彼のことを男として感じ、そして、もしかしたら彼のこと好きなのかもしれないと思った。  
 彼が激しい後悔をあらかさまに顔にだして、おれを殴れ、と言ったとき、わたしは罠をかけてしまった。  
 わたしの手をとってまで自分の頬をたたかせようとする彼にかたくなに抵抗して、たたかなかった。  
 責める言葉も、許す言葉すらもかけずに、ただ黙っていた。  
 彼の良心が彼自身を責めていくのが手に取るようにわかったけど、ただ見ていた。  
 わたしがもし思いっきり平手打ちでもしていれば、彼はごめんと謝って、ただの気の迷い、酔いの上での  
過ちにしてしまって、そしてそれで終わっていたかもしれない。  
 そんなのはいやだった。  
 わたしはこの人を自分に本気にさせたくなっていた。  
 自己嫌悪に陥り、苦悩顔を見せる彼の人の良さ、善良さがまぶしかった。  
 そうして沈黙が続いて、彼はわたしを選んだ。  
 やっと顔をあげてわたしの目を見た彼の瞳は、もう迷いなどどこにもない、強い光をはなっていた。  
 「おれと付き合えよ」  
 決然とした彼の声に、わたしはとても満足していた。  
 今の彼氏と別れてこの人とつきあう、それは、とてもすがすがしい想いでわたしを満たしていった。  
 「おれ、あいつと別れる。お前も……やつと別れて、おれとつきあえ」  
 心の内はもうすでに決まっていたのに、わたしは最後のダメ押しを口にする。  
 「……急に言われても……考えさせて……」  
 からめとって、深淵までひきずりこんで、骨の髄までわたしに惚れさせたかった。  
 あまりにも無防備な彼の心に爪を立てて傷をつけて、血を流させたかった。  
 いつか別れがきたとしても、決してわたしを忘れることができないように。  
 自分の愛が歪んでいることをわたしに思い知らせた彼への罰だと思うと、からだがふるえるほどに  
わたしは悦んでいた。  
 もう戻れない。  
 キスひとつでわたしに自分の正体をつきつけてきた彼を、この時もうわたしは、わたしなりにとても  
愛していた。だから焦らした。  
 だけど店を出てからの彼の行動はすさまじいものだった。  
 なんの躊躇もなくわたしの腰に手を回して歩き出し、家まで送り、玄関にでてきた不機嫌な親に、  
夜遅くなった旨の謝罪をし、そして丁重に恋人としての挨拶までしてしまった。  
 
 それよりも驚いたのは、その間ずっと、手をまわした腰以外にはどこにも手をふれず、キスさえもして  
こなかったことだ。  
 彼の本気をわたしは甘くみていた。  
 そうしてわたしは、こちらが罠にはめたつもりだったのに、彼が軽く片手をあげて帰っていく頃には、  
あっさりと彼に陥落してしまっていた。  
 それが十代の終わりの重大事件……ああ、わたしまでおやじギャグうつっちゃった。  
 
 彼がクリフェチだっていうのは、なかなかわからなかった。  
 いつもいつもフルコースのえっちしかしてこなかったから。  
 それが結婚してからやっとわかった。  
 仕事が忙しくてなかなか帰ってこなくなってからというもの、彼のえっちは変わった。  
 限り有る少ないふたりだけの時間をクリ責めに使いだしてから、わたしはそのことにやっと気づいた。  
 そして今日も……  
 
 
 わたしだけ裸にされて、顔の横にビデオカメラ(彼はハンディカムって言ってた)が置かれている。  
 一週間前の彼に激しく責められていた様子が、その小さな液晶のモニターの中で再生されていた。  
 「こっからだな。よく見とけよ」  
 彼のひどく嬉しそうな声と、ビデオから流れ出るわたしの喘ぎ声と、やらしくて卑猥な濡れた音が、  
まじりあって部屋の中に響く。  
 モニターの中のわたしの秘部に彼の舌が這い、クリトリスを愛おしげにねぶりあげ、中に入れた指で  
裏からもクリトリスをなぞり押し上げ愛撫する。  
 わたしの高まる喘ぎとともに腰が大きく震えだし、小さな弧を描いて何か透明なものを少しだけ  
噴き出した。それを見た瞬間、わたしは羞恥でぎゅっと目をつぶっていた。  
 「あー、目つぶんなって言ったのに。しょーがねーな。はいもう一回」  
 また巻き戻されて再生される。  
 わたしが顔をそむけたり目線をそらしたりする度に、巻き戻しされてしまって、もう泣きたくなってくる。  
 冷たいまでに執拗で残酷で、それなのに彼の中には愛しかない。  
 こんな男わたしの手になんか負えないのに……初めて会ったときからそれはわかっていたのに……  
 あのとき罠にかけたのは本当はわたしじゃなくて彼だったんじゃないかとか、もうよくわからない。  
 彼の言葉にわたしのクリトリスが勝手にぴくんぴくん、て反応している。  
 いじめられているのに喜んでるなんて、恥ずかしい女……どうか彼に気づかれていませんように……  
 「指で広げてみろよ」  
 え? なに……?  
 いやに長いこと巻き戻ししていた彼が、ビデオを再生させてから、わたしの閉じていた両脚を広げてくる。  
 責めの冒頭から流れ始めた卑猥な光景に耐えられず、助けを求めて彼のほうに顔を向けると、すぐに  
手をそえられて元に戻されてしまった。  
 「こっち向いていい、なんて言ってないぜ。ほら、自分のやらしい潮噴きちゃんと見とけ」  
 なんだろう、どうしたらいいんだろう?  
 彼の言葉はいつもわたしの理解の範疇からはなれたところから降ってくる。  
 いじわるが増す前に素直にモニターに目を向けるけど、目の前で蠢く、彼の舌の動きがいやらしくて  
からだがすぐに熱くなってしまった。  
 
 「どこ広げたらいいの……?」  
 「ここだよ、ここ……」  
 言いながら彼の長い指がつつっとわたしの敏感なところをなぞる。  
 「見たいんだよ、見せろよ。ほら……」  
 じれた手つきで彼はわたしの両手をつかみ、秘裂にあてさせる。  
 でもそれ以上には動かしてはこなかった。  
 あくまでわたしにさせたいんだ。  
 「やだ……そんなことできないよぉ……」  
 「……あとで触ってやらないぞ」  
 ひどくいじわるな輝きが彼の瞳にきらめく。  
 いじめっこがいる……見せつけないといじってもらえないの?  
 彼はどうしてわたしをこんなにまで壊そうとしてくるのかな……  
 心が焼かれていくのがわかるけど、さわってもらえないなんて耐えられない。  
 顔の横でえんえん流れる彼の責めからも目が離せない。  
 手がふるえる……  
 わたしはとうとう自分の手で短い毛をさぐりよけて、どくどく疼くクリトリスを、彼の目にさらした。  
 これだけでもう限界だっていうのに、彼は満足してくれなかった。  
 「もっと広げて。お前のクリは小さすぎてよく見えねーんだよ」  
 「もうむりなのっ……もうゆるして……」  
 羞恥心が激しすぎて目に涙がうかんでくる。  
 それでもゆるしてくれない彼はどこまで冷酷なんだろうか。  
 わたしの手にやわらかく手を重ね、ゆっくりと秘裂を広げていく。  
 その優しい動きがよけいに心をねじりあげていって、たまらない。  
 ビデオからあっけなくイってしまったわたしの喘ぎ声が響き、耳を犯してくる。  
 見ると、わたしのクリトリスに彼の唇が押しあてられて、じわじわと強くおさえつけられていた。  
 こんなことされてたんだ……イったあともずっと気持ちいいままだったのは、彼のしわざだったんだ……  
 「自分のクリみて感じてるのか……」   
 モニターに見入っていたわたしは、彼の言葉に思わずびくっと驚いてしまった。  
 どうしてそんなことがわかるのかと焦っていると、わたしから手を離しながら、ちらりと一瞬だけこっちを  
見て、なんでもないことのように口を開く。  
 「お前のクリなぁ、ぴくぴく動いてんだよ。触ってもないのに。  
 さっきビデオのイキ声聞いたときはすごかったぜ。今も震えて、ひくひくいって、おれ何もしてねーのにな?」  
 彼の言葉に顔が痛くなるぐらい熱くなってしまう。  
 見てわかるほどにクリトリスって動くものなの……?  
 そんな疑問も口に出来ないほど、いつのまにかわたしの呼吸は荒くなっていた。  
 やだ、気づかれちゃう……興奮してるって彼にバレちゃう……  
 「もう見ないでぇ……おねがい……おねがいだからっ……」  
 この懇願が違うことを願う言葉に変わるのに、そう時間はかからなかった。  
 
 彼の息と体温が近くに感じる……  
 クリトリスがぴくぴくしてるのが自分でもわかって恥ずかしいのに、それをじっと見られてるなんて……  
 恥ずかしすぎて胸が苦しくって、もう指がふるえてきたよ……  
 ああ、もうさわって……いじってください……おねがい……  
 でも言えないそんなの、ぜったいまたからかわれるからヤダ……  
 モニターに映る彼の舌がすごく好き。いつもあんなふうに動いてるんだ……  
 強気で硬派にしか見えない彼がわたしの脚をおさえて、指でいっぱいにクリトリスをひっぱって、  
やさしく、ゆっくりとなめあげて、かくれてた芯みたいに突きでたところを、ちょんってつついて……  
 すごい……見てるだけなのに気持ちいい……彼の舌の先がその芯をくりゅくりゅってもてあそんで……  
 なんだか息がくるしい……どきどきする……あふれるようにわたしから垂れてるのを舌ですくって、  
ぬるってこすりつけたままぷるぷる舌が小刻みに動いて……ああ、どんどんあふれてきちゃう……  
 ……小さいって言われるとそうかなぁ、小さいのかな……  
 
 さわりたいよぉ……  
 ゆびでちょっとだけ、ふれるだけでも……ううんだめだめ、彼が見てるのにできないよ……  
 ビデオ見てるだけでこんなになっちゃったら、ほんとにさわられたらどんなにすごいのかな……  
 やらしい、こんなこと考えるなんて……彼にバレたらひかれちゃうかな、やだな……  
 ごめんなさい、わたし、こんな……彼はきっと清楚な感じが好きなのに、わたしほんとはやらしいの……  
 いっぱいしてって思ってるの。  
 いま見せてくれてることもう一回ぜんぶしてほしいの。  
 やだって、だめって言っても、そんなのウソだって見抜いてほしいの。  
 あなたの指でおかしくなるまでいじってほしいの。  
 やさしい舌でめちゃくちゃになるくらい舐めてほしいの。  
 両方一緒にされると気持ちよすぎてこわくなるからあんまりしないで。  
 泣いたらとめてね。  
 ……こういうこと素直に言えたら、楽になれるのかな。  
 でも言えない、彼に可愛いやつって思われていたいからぜったいムリ。  
 ああ……もっと恥ずかしがっていたいのにな……  
 からだが言うこときかない、腰が勝手に動いて彼の唇に近づいていっちゃう……  
 
 ふいにクリトリスに息が吹きかかって、ぶわっと全身に鳥肌がたっていく。  
 忍びもれる彼の嬉しげな笑みが、見えないのにはっきりと伝わってくる。いじわるなひと。  
 でも心のどこかで、そんな彼をわたし、よろこんでる……否定できない、けど知られたくない。  
 察しがいい彼にはわかってることなのかもしれないけど……隠しておきたい……  
 
 またあの潮噴きのシーンになった。  
 『いやあああああああっ』  
 ビデオからわたしの絶叫が響く。  
 見てるだけで、まるで同じことを実際にされているかのような錯覚におちいってしまって、からだがおかしい。  
 わたしはしらず腰をうかしてのけぞってしまっていた。さわられてなんかいないのに……  
 彼のもはや隠そうともしない喜びようがどうしようもなく伝わってくる。  
 わたしは息もうまくできなくて、恥ずかしさで頭までおかしくなりそうだった。  
 「なぁ……」  
 彼が静かにつぶやく。  
 どんな顔をしているのか見てしまうのがこわくて彼のほうを向けない。  
 「最後まで見たご褒美に、ひとつだけ言うこときいてやる。なんでもいいぜ……言ってみろよ」  
 もうやめてほしい、なんて、わたしの壊れた頭には浮かんではいなかった。  
 そんなことわかってるはずなのに、彼がまたいじめてくる。  
 「その顔は、もう終わりにして、かな?」  
 
 横目でわたしを眺めながら、片づけを始めるように彼はビデオカメラに手をのばす。  
 「してぇ……」  
 はりさけんばかりに悶えながら言ったのに、彼の反応はサディストそのものだった。  
 「ん? おわりに『して』? そうかそうか、じゃ、また今度な」  
 これは彼の望みなのか、それともわたしの望みなのか。  
 口に出してしまえばそんなこと考えたって、なんの意味ももたないのに。  
 「……して……ほしいの……」  
 彼の顔がおそろしいほど優しげに微笑むのを見たとたん、目の前が見えなくなるくらいに眩暈がした。  
 もうこれ以上はゆるしてほしいのに。  
 「どこを?」  
 そんなわたしの願いなんて聞き届けられずにいつも、どこまでも翻弄されてしまう。  
 「……さわって…………舌で……なめて……」  
 もう目を閉じても、彼の舌がわたしを責めていた映像が頭から消えてくれない。  
 「だから、どこを?」  
 彼の声はどこまでも冷静だった。  
 「ここ……」  
 わたしは精一杯、そこを指で広げて見せた。  
 彼のするどいまなざしは、確実にそこを見ているのに、彼はわたしに追い討ちをかける。  
 「……言えよ」  
 わたしはわずかに残っていた理性を手放した。  
 こんなにもすごい男がわたしに夢中になっているのなら、もうそれでいい……  
 とぎれながらも恥ずかしい単語を口にだして呟くと、彼はとても真面目な顔で深く絡まるキスをして、  
そうしてやっとわたしにさわってくれた。  
 
 クリトリスをちゅっと吸われただけなのに、快感がしびれるように背をかけぬけ、そのまま果ててしまった。  
 「……すごい……」  
 ふるえる唇から勝手に声がもれていく。  
 想像よりも遥か上の快楽を簡単にあたえられて、背筋の震えがとまらない。  
 彼はそんなわたしを楽しむようにじっと唇をクリトリスにあてがったまま動かないでいた。  
 「……おねがい…………もっとしてぇもっと……すごいの……すごい気持ちいいの……」  
 彼が小さく笑ったような気がした。  
 そうしてぬめりを絡ませた舌でクリトリスのまわりだけを、ゆっくりとなぞっていく。  
 ゆっくりと、ゆっくりと……けっして芯にはふれないように、じわじわと追い詰めてくる。  
 腰が勝手にうきあがって、彼のいやらしい舌におしつけようと悶えていく。  
 彼の両手がわたしの手をお尻のしたで掴まえて、身動きとれないように抑えつけてくる。  
 いつもなら広げられて剥きあげられて、クリトリスの小さな芯をむきだしにしてなめあげられるのに、  
まるごと彼の口の中に誘われて、とてもやわらかく、容赦なくねぶられ、奥のほうから得体の知れない  
快楽を乱暴にひきずりだしてくる。  
 「んはああっ……ひっいっちゃうっ……!」  
 からだが弓なりにそりかえり、頭の中で何かが弾ける。  
 彼の舌がとまらない。  
 
 「いっちゃったのっ……もういっちゃったのぉ……とめて……とめてぇ……」  
 いつも本気でお願いするのに、泣いて叫んでも、まったく聞いてもらえない。  
 びくびくとからだが震えて、つま先まで力がこもり、涙が頬を伝っていく。  
 またもや湧いてきた快楽の波にもまれて、意識が飛びそうなくらいの絶頂がからだを貫いていって、  
中がぎゅっと縮まったかと思うと、とめようもない何かがわたしの中から噴出すのがわかった。  
 やだやだおもらし? なんだっけちがう? さっき見せられた潮ってこれ……?  
 ここまでじらされたことなどなかったから、今までよくわからなかったけど確かにわたし何か噴いた……  
 お尻のしたで抑えつけられていた自分の手に、その熱いものが落ちてくる。  
 その滴りは完膚なきまでにわたしの理性を焼き尽くしていった。  
 「いやあっ! やめてやめて───っ」  
 喘ぎのかわりに叫びがでてくる。  
 でもわたしのからだはそんなこと思ってもいないように、彼の舌の動きに従順な態度をみせて、  
よがり悶えて激しくふるえ、何度も何度もイってしまう。  
 いつ手を離したのか、彼の指が秘裂を広げてクリトリスをむきあげ、おびえる芯をさらけだす。  
 舌先をごくわずかにふれさせてぬめりを絡ませるだけで甘い痺れが身も心も蹂躙していく。  
 唇ぜんぶでまわりを覆って、芯をからめとったまま容赦なく舌でねぶられしごかれて、自分がもう  
何を叫んでいるのかもわからないくらい自分を見失ってしまった。  
 最高だと思った。この男もクリトリスも最高だ、と。  
 ぬめる舌が卑猥な音をさせて上下にゆさぶってきて、腰がそれに応えるように激しく身悶えすると、彼の  
指がぐっと中にねじこまれた。  
 深く突き抜けるような快感が背をはしる。  
 舌と、指が、執拗にクリトリスだけを求めてくる。  
 中からこすり上げるようにして逃げ場をなくして、唇で芯をつつみこんで、舌先でいじめぬく。  
 彼の激しすぎる責めにクリトリスぜんぶがふるえて悦んで、幾度となく中が彼の指をしめあげた。  
 そんなこともおかまいなしに指は動き舌は絡まる。  
 「いいっいいっきもちいいっ……」  
 わたしがそうこぼしてしまった瞬間に彼がびくびくしているクリトリスをきつくきゅぅーっと吸いあげ、指で  
中から裏側をこねまわして嬉しそうにわたしをめちゃくちゃにしていく。  
 いきなり流れ出たのは潮なんかじゃなく、今度こそ間違いなくおもらしだったんじゃないかと思う。  
 「きもちいいきもちいいっっやだああああああああっ…………」  
 いまだ残っていたらしい意識が絶叫を最後に完全に途切れた。  
 
 
 いとおしげに髪をなでる感触に、白かった意識がすこしずつ色を取り戻していった。  
 自分の激しい鼓動をひとごとのように感じながら、目尻の涙を彼がそっとぬぐったあとにゆっくりと  
目を開けた。  
 「……いじわる」  
 わたしの言葉に彼はにやりと男前な笑みを見せて、なぜかまたビデオを見せてくる。  
 小さな液晶に映るひどく淫らな…………  
 「?! これさっきの……!!」  
 片付けてたと思ってたら録画に切り替えてたの?!  
 「なにこれなんで?! 消して消して!」  
 からだがしびれて思うように動けなくて、そのやらしいビデオに手さえ届かなかった。  
 「シーツびっしょりだったから換えといた。汗ひいてから服着ろよ、風邪ひくぞ。  
 悪いけどこれからまた出張なんだ。ビデオ置いてくから、さびしくなったら見てていいからな」  
 彼の言葉に、さっきまでの自分をすみずみまで思い出して顔が一瞬で真っ赤になる。  
 「ぜったい見ない!!」  
 彼は自分だけ身支度を整えながら、さも嬉しそうに小さく笑うと、わたしをいじめるいつもの瞳を向けて、  
 「消したりしたらお仕置だから」  
 とだけ言い、熱い唇でキスをしてから時計を見、「じゃ、行ってくる」と満足気に出掛けていった。  
 扉が閉まり、彼が鍵を掛ける音がいつも、宝箱に鍵をかけているように聞こえるのはどうしてなんだろう。  
 そんなことをぼんやり思いながら、まだ再生してくるビデオカメラにばふっと枕をおさえつけ、果てるとも  
しらない快楽が渦巻くからだをもてあましつつ、目をとじて、とろんとした眠気に意識をまかせていく。  
 
 悪魔みたいにタチが悪い、愛しい男を想いながら───  
 
 
    end.  
 
 

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