「♪こおーやにー、おーなじめをーしたー」  
 食料と水に余裕があるので、今日の晩飯は少し手をかける事にした。塩漬け肉は調味料代わりに  
スープの出汁に。具は乾燥した丸芋と野草(サーラ様が取って来た)。捏ねた小麦粉をいれて水団にする。  
「♪やさーしいー、おぉいかぜをーぁあつめてー」  
 中蓋の上には薄切りにしてバターとシナモンを軽くかけたリンゴ。砂糖は手に入らなかったが、甘みのある  
デザートがあると心の余裕が出てくる。  
 この世界にもコーヒーがあったのは良かった。酸味がきついのは個人的にアレだが、まあ深く煎れば余り  
気にならないし。  
「♪ゆこおーここからー、たびだーつみーらいへー」  
 サビが終わる頃にダッチオーブンの中も良い感じになってくる。中蓋をはずしてテーブル(石の上に板を渡  
しただけだが)の上に置き、水団を取り分ける。  
 ふと気付くと、テーブルの向こうに座るサーラ様がやけにまじめな顔をしてこっちを見ていた。・・・・・・無言な  
のは怖いんですが。  
 目を合わせたまま微妙な沈黙。・・・・・・おれ何か変なことしたか?思い返している内に、サーラ様が口を開いた。  
「今日初めて気がついたんだが」  
「はあ」  
「おまえ、歌下手だな」  
「うすらやかましいですね」  
 
 その日はとっくに気がついていたはずの「反射的発言には刃物」を再確認するハメになったわけで・・・・・・。  
 

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