かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
ぱたん ぺら
かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
「静寂」と言う名の音がある。それは概ね忙しかったり、仕事が溜まってたり、仕事の終わる見通しが立たないものが背中から出す轟音で、それを聞けば大概のものは離れていくし話しかけることもしない。手を止めて視線でも向けられようものなら、普通なら席を外す。気が弱いものは「邪魔するんじゃないか」との懸念にかられ動くことすら出来なくなる。
アディーナのティアマトー王宮、その写本室。そこでその「轟音」が鳴っていた。
鳴らしているのは二人、いや、一人と一体。
一人の方はヒトの青年。特にこれといって特徴のない顔だが(ヒトであるだけで十分特異と言えるが)それ故に左目の下から耳にかけてまで真横に走る大きな刀傷が目立つ。
一体の方は鉄錆色の肌と金属光沢の銀髪を持つ幼い少女。踊り子のような露出の多い服を着て、その幼く妖しい肢体を晒している。そのつま先は細長く半透明の紐になり、青年の背中に伸びていた。
この一人と一体・・・・・・つまるところ、ヒト奴隷のサトルとその精霊クシャスラ・・・・・・が放つ「轟音」に、シャンティ=ラドンは一人怯えながら自分の仕事をしていた。
* * *
事の起こりは、ちょっとしたことだった。
アディーナの王宮には図書室がある。と言うよりも、ここにしか本がない。宮廷魔術師達の研究所を除けば、おおよそ知識を保管している所はここしかない。(事務用の書類とかはまた別の管轄らしい)そして、ここにやってきた頃からここには良く出入りしていた。何故かと言われれば、俺が帝国語の読み書きが出来ないからだった。
一年間の放浪、というか盗賊団との戦争?の間にもアディーナに帰って補給なり休養なりをとることはたびたびあり、その時間を利用してここでサーラ様に読み書きを習った。
まあ、それ以外にも地図なんかを見るのにここに来ることがちょくちょくあった。
サーラ様が地図を写している間はヒマで、(クシャスラを呼ぶと「気が散る」と怒られる)仕方がないのでその辺の本棚から落ち物らしい原文のアガサクリスティを手にとって何とはなしに読んでいた。
それが問題だったらしい、それを見たシャンティさん・・・・・・ここの司書さんで、王家所有のヘビ奴隷だそうな・・・・・・がばさばさばさっと手に持っているものを落した。
「サ、サトルさん・・・・・・」
「は?」
な、なにごと?と思いつつ、突発事態にそれしか返せない。呆然とする俺にいきなりシャンティさんが肉薄する。彼女の細い手足と常時麻痺した運動神経で転ばなかったのが不思議なぐらいの勢いで。言い換えると、普通に歩くぐらいの勢いで。
「そ、それ・・・・・・読めるんですかっ!?」
「え?いやまあ、そりゃそれなりに」
「でもでもニホンジンなんですよね!?」
「いや、これでも一応国立大の奨学生だったんだけど・・・・・・」
戸惑う俺に横合いからサーラ様が口を挟んできた。
「ショウガクセイって向こうの世界でいう半ズボンで10〜12歳の美少年の事じゃないのか?」
「それとは別の奨学生です。・・・・・・ってゆうかその認識もあらかた間違ってますが」
「なに?と言うことはやはり姉様方は私に嘘を・・・・・・」
「そりゃ騙される方に問題が」
「そんなことはどうでも良いんです!!」
ぺちん、と机を叩いていつもはびくびくおどおどしているシャンティさんがいつになく興奮している。
・・・・・・たぶん本人は『ばしん』と叩いたつもりなんだろうなあ。背は低くないし顔も20代前半ぐらいに見えるのに、サーラ様より年下に見えるのはやっぱりこの小動物ッぷりが原因なのか。それともこの分厚い黒縁眼鏡(耳がないので後頭部に紐で止めてる)が原因なのか。
「この国の賢者の誰もが読めなかった文字なのに・・・・・・サトルさんが読めるなんて・・・・・・」
「そんな意外ですか?落ち物の本を落ち物のヒトが読めてもおかしかないと思うんですが。ってゆうか、英語は向こうの世界で最も使用されてる言語の一つですよ?」
むしろ日本語がまんま通じて何故英語が通じないのかが不思議だ。
「ああ、それなんだがな」
飽きたのか、気を引かれたのか、サーラ様がついに手を止めた。人差し指を立てて蘊蓄を語り出す。
「『落ち物』なんだが、何故か知らないが向こうの世界の『ニホン』という国から落ちてくることが多い」
「そうなんですか?」
「他の国から『落ちる』事もあるにはあるらしいが、私が知っている限りでは『ニホンジン』以外のヒト奴隷を持っていた奴はいないな。奴隷商人に聞けばもっと詳しい話が聞けるのだろうが」
「すると、アメリカから『落ちた』俺はレアケースなんですか?」
「いや、でもニホンジンなのだろう?」
「希少性が高いような、そうでもないような・・・・・・。って違う!そんなことじゃなくて!ええと・・・・・・へ、陛下にお知らせしなきゃ〜〜!!」
唐突に踵を返して図書室を駆け出・・・・・・歩き出す。いや、本人走ってるつもりなんだろうけども、あれは客観的には歩いているとしか言えない。
あ、こけた。・・・・・・鼻打ったみたいだ。泣くの我慢してるな。・・・・・・おお、立上がったぞ!・・・・・・当然か、大人だし。
たっぷり一分ほど使ってシャンティさんが廊下の向こう側に消えていくのを、何とはなしにサーラ様と眺めてた。
「・・・・・・何だったんでしょうね」
「・・・・・・知らん。それより」
「はい?」
「ヒマならそれを片づけておいてやれ」
サーラ様が床に散らばった書類を指さした。
やっぱり俺の仕事ですか?
「これが第二の試練じゃ」
その日の夕方近くサーラ様が謁見室に呼び出され、呼び出した張本人(詰まる所エラーヘフ陛下)が開口一番そう言いはなった。
「・・・・・・は?」
サーラ様と俺の前に出されていたのは一抱えほどの木箱の中に詰められた落ち物らしき本。保存状態が良かったのか綺麗な装丁を保っている。
とはいえ、脈絡のない突然の言葉に意図不明の本達。いったいどうゆうこと?そんな風に混乱した俺たちに陛下が切り込んできた。
「王たるもの、教養も重要じゃ」
「はあ」
「読み書きそろばんは言うに及ばず、魔法、史学、星読み、医術、詩吟。そして、この世界においてある意味最も重要な、落ち物。それらに関する事をまるで知らぬものに王としての資格があると言えようか?」
「それは、確かに納得できる話ではありますが」
「そこで、サーラ殿。この落ち物の文書を解読してたもれ」
「な、なんですと?」
思わず驚きの声を上げるサーラ様。そりゃそうだ。この量の翻訳って、そりゃ後10年かかったって無理・・・・・・。
「何、全てとはいわぬ。出来る所まででかまわぬ。他の九つの試練を全て終えた時の成果で評価しようほどに。なあ?」
そういって、陛下が・・・・・・俺の方を向いたっ!?その視線に釣られたのか謁見室の視線が俺に集まってくる感触が・・・・・・。いやあの皆さんちょっと待って、この箱結構大きくて本も一冊や二冊じゃきかないんですけども。なんすかサーラ様『ああ、こいつに押しつけりゃいいや』的なその目はっ!
「なるほど、エラーヘフ殿のおっしゃること、いちいちもっとも。ならばその試練見事にはたして見せましょうぞ」
サーラ様、その素敵にさわやかな笑顔の意味とか聞いても良いですか。
「うむ、サラディン殿ならばそう言うと信じておったぞ。文書は従妹殿も既にご存じであろうシャンティ=ラドンに管理さておるゆえ、仕事に取りかかる時は図書室に行くように」
ンな事があった後、俺のアディーナに於ける日課に「英文書の翻訳」が加わった。
あの箱の4割ほどは英語以外の言葉だったので、「読めません、無理です」と泣き入れて勘弁してもらったんだけども。それでも残りは大小合わせて50冊。そのほとんどは小説とか雑誌とかビジネス書とかでまだ何とかなるんだけど、・・・・・・だれだあっ!!心理学とかインド哲学とか分子生物学とかの専門書落した大馬鹿野郎はっ!?よりにもよってここに落すな、解説書も辞書なしにこんなもん訳せるかーっ!!
いや、それだけならまだいい。問題は、俺の翻訳が正確でもそれが「読めない」ということ。
つまり、向こうの世界に当たり前にあるものでもこちらにないと言うことは往々にしてあるわけで、それが出てくる文章は当然読めなくなる。すると、それの注釈が必要になってくる訳なんだけど・・・・・・。SFの宇宙戦争物なんてどうせいっちゅーんじゃ。てゆうか、誰が読むんだこんなもん。
ともかくも、何処に注釈が必要かというのは俺には判らないわけだから(てゆうかそこまで気を配りたくない)訳文をチェックして編集し直す者が必要になる。その役目が、やはり図書室のヌシ、というか座敷童であるシャンティさんだった。
俺と、俺の知識を共有できるクシャスラが訳した文章をシャンティさんに渡して、シャンティさんはそれを清書する。その際に判らない所があったら俺に問いただす。そんな仕事のスタイルが第一の試練が終わる頃には完成していた。
そんな訳で、シャンティさんと話す機会は多い。というより、王宮内では俺が一番話しているんじゃないだろうか。ともかくも、それなりに彼女に関して詳しくなる。
本名シャンティ=ラドン。現在王家の所持する奴隷で司書兼錬金薬師。元は医者の娘だったけど、親が死んで莫大な借金があることが判明。借金の形に奴隷となった所でエラーヘフ陛下が身請けしたらしい。
子供の頃から本ばっかり読んでいたらしく、近眼、儚い体力、壊滅した運動神経。日にあまり当たらないせいか、肌は褐色と言うよりもやや浅黒いぐらい。うなじまでの鱗は白地に薄い黄色の線が斜めの格子状にはいっている。前に腕相撲したことがあるけど、片手でも両手を使った彼女に楽々勝てた。
いくら何でも種族的なものとしてどうなんだそれ、と聞いたら。彼女は「ケモノはヒトに比べて筋肉が尽きやすく衰えにくいだけで、筋肉の仕組みに決定的な違いがある訳じゃないんですよお。同じもの食べて同じように肉と骨で出来てるんですから、違うのは密度と魔力だけです」と言い訳してた。
その体力の代わりなのか、彼女の知識・記憶力・理解力はとても高い。俺の拙い説明を一回聞いただけでほぼ完璧な解釈を導き出すし、何より聞いたことは忘れない。一通りの医術と医薬品限定とはいえ錬金術師としての技術を持っていて。俺自身、彼女の作った治癒の霊薬に、たびたびお世話になっている。・・・・・・同じだけ副作用に酷い目に遭わされてもいるが。個人的感想だが、あの霊薬のレシピ考えた奴は絶対服用者に対して悪意があると思う。
話がそれた。
結構な美人なんだけど、男の噂を聞かない。とゆうより、図書室と医局以外にいることがほとんど無いので(私室もあるにはあるのだが、ほとんど図書室で寝泊まりしている。ここから本の持ち出しが禁止されているせいで愛書家の彼女としては離れがたいらしい)出会う機会が余り無く、また、酷い恥ずかしがり屋で男のヘビと話す勇気が出ないのだとか。実のところを言えば、俺も普通に話せるようになるまで2ヶ月ぐらいかかった。
そういえば、彼女は俺のことを「サトルさん」と呼ぶ。同じ奴隷同士とはいえヘビである彼女の方が身分的には上なはずなんだけども。微妙に腰が低く、また押しも弱い。もしかすると親の莫大な借金とかも詐欺何じゃなかろうか。
ともかくも、そんな小動物系の彼女と仕事することが最近の日常になっている。
* * *
かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
ぱたん ぺら
かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
ぴた
・・・・・・あ、切れた。ラーメン分が切れた。
だめだな、このままでは集中できん。
「どうしたんですか?サトルさん」
俺の手が止まったことを察してシャンティさんが声をかけてきた。彼女は清書校正と同時に、俺が勝手に抜け出て遊びに行かないように監視する仕事もしている。詰まる所はこの第一の関門を乗り越えない限りラーメンを食いに行けないと言うことだ。当然俺が逃げたりするとシャンティさんもそれなりに怒られるわけだが・・・・・・。
シャンティさん、貴方に恨みはないが。くくく、きみの仕事がいけないのだよ。
「悪いんだけどコーヒー頼めない?エスプレッソ」
「ミルクとお砂糖はどうします?」
「二匙ずつで」
「はい」
シャンティさんも集中力が切れていたのか、心なしか嬉しそうにコーヒーセットを取り出す。シャンティさんはコーヒー入れるのが上手い。やっぱり錬金術とかと通じる所があるんだろうか?その作業を見ながら腰に付けられた逃亡防止用の鈴にこっそりと魔法で砂鉄を詰めていく。
机の近くにある窓に目を向ける。時折シャンティさんの目を盗んで調べておいた其処には、鳴子が仕掛けてあることが分かっている。だから、ワイアの先に鉄のクリップをつけておいた。
本棚においたフェルト布良し、写本室前の衛兵の人数確認良し、計画を実行する!
「あ、サーラ様」
「え?」
嘘に騙され一瞬入り口を向いたシャンティさんの死角に滑り込む。
「いないじゃないですか・・・・・・あれ?」
振り返る動きに合わせて背中側をとおり、本棚に近づく。足音を消す為のフェルト布に脚をかけ、本棚の上まで一気に登る。
「あ〜〜っ!サトルさんがまた消えました!」
写本室は本の保存や失火防止の為に基本的に机の周りしか照明を置かない。当然そこから離れた本棚の上は光が届かない上に心理的な死角になる。
俺の不在に気付いたシャンティさんが衛兵を呼びに行くのを其処で静かに待つ。ほどなく、二人の衛兵が来た所で、窓の鳴子に仕掛けた鉄のクリップをクシャスラの魔法で動かす。
「鳴子?」
「窓の方だ!」
三人で窓の方に近寄ったのを確認し、フェルト布を床に投げその上に飛び降りる。こちらの方を向く前に手早く入り口から脱出できた。
今の連絡が行けば王宮の裏庭に衛兵が集まるだろう。とすると、ポイントFの手鈎とサイフを回収して正門近くを登るルートが安全か。もたもたしているヒマはない。ビールとラーメンが俺を待っているのだ。
* * *
「ええい、くそっ!なんでいつもいつも、こうもあっさり逃げられるんだ、お前はっ!」
「ふ、ふえっ」
そ、そんなあ。確かに私が一番近くにいましたけどそれは本来私の仕事じゃないのに・・・・・・。
「馬鹿お前、ど天然女に当たってる暇があったら早く他の奴等に連絡しねえと」
「ちっ!とりあえず俺は裏庭の連中に声をかける!」
「おい、それって俺が隊長に報告するって事かよ!」
「先に行くぞ!」
「ああおい、ちょっとまてってば!」
どたどたと、衛兵さん達がこの部屋を出て行きます。こうなった後、サトルさんが捕まったことなんて一度しかないのに(その一度もたまたまマフムード将軍と鉢合わせたからなんですけど)。
はうう、どうして逃げるんでしょうかサトルさん。そのたびに私も怒られるのに。
大概はこのあと一刻(約二時間)もすれば、なにやら美味しそうな匂いを漂わせたサトルさんが衛兵さん達に縛られて戻ってきます。たぶん大通りの屋台街に夜食を食べに行っているんでしょうけども、それだけだったら言ってくれれば匿ってあげるのに・・・・・・。
・・・・・・たまには誘ってくれてもいいのに・・・・・・。
ふ、二人でこっそり抜け出して、秘密の夜の散歩とか、食事とかっ、おしゃべりしたりとかっ!デ、デデ、デートみたいなことなんかしちゃったりしたりしてっ!!
あうう、違う違います。そうじゃなくて、そんな陛下の従妹の女王様のお気に入りのヒト奴隷に手を出したりとかそんなことは思ってませんよ、ええ。ただ、好きとか惚れたとかそーゆーんじゃなくてもうちょっとそのあの、私の方みてほしいなあ、なんて。
いやでもそれは恋愛対象としてみてほしいって訳じゃなくて、ただその仕事とか関係なく向こうの世界の話とかしてほしいなあとか旅とか趣味の話とかしてほしいなあとかハーモニカ聞かせてほしいなあとか、サトルさんが好きそうだからコーヒーの淹れ方勉強したんだからもっとゆっくりコーヒーを飲んでまったりしたいなあとか、そういうことであって決して、その、え・・・えっちなこととかは関係ないわけで・・・・・・。
えっと、気付くといつものようにサトルさんの机の近くに来てます。こ、これは何かやましい目的があるわけではなく、純粋に、そう純粋にサトルさんが何処に逃げたのかを推理する為に証拠を探そうとして来たわけです!
だ、だから散らかった机の上を身を乗り出して調べないといけません。私は目が悪いから身を乗り出す必要があるんです、ええ!
ぶつからないようにゆっくりゆっくり・・・・・・身を乗り出し・・・・・・つ、机の角が・・・・・・ぶつかり、そうに、なる・・・・・・。
「んうっ!」
あ。わ、わたしの、その、右足と左足の間のところに・・・・・・つ、机の角があたっちゃいました。ふ、不可抗力です。仕方ないんです。偶然です。き、気持ちよくないです。だから、ぶつかっても平気です、はい。
も、もっと机の奥の方まで調べなきゃいけません。どんな手がかりがあるのか分かりませんから。だ、だから、ぶつかっても離れたりしないことが重要です。
「ふあ・・・・・・」
角が、あの、当たってます。丸くなっている所がわたしのをくにゅってします。い、いたくないです。平気です。調べる為に、身を乗り出します。角のところが私の、その、割れ目にそって、下の方まで・・・・・・。
あ、サトルさんのコーヒーカップ・・・・・・。飲み干した後で既に乾いています。・・・・・・コレは手がかりかもしれません。いえ、きっとそうです。ですから、ええと、匂いを嗅いでみます。イヌほど鼻が利くわけではないですけど、錬金薬師の鼻は普通とは違います。
取っ手の部分とか嗅いでみますけど、特に変な匂いはしないです。・・・・・・落すとイケナイので、両手で持ちます。バ、バランスが崩れ気味になって机に寄りかかるような感じになってる気がしますが不可抗力です。あの、寄りかかってる部分の圧力が増えてるのも不可抗力です。
匂いだけでは、分からないみたいなので、あの、ちょっと舐めてみようかと思います。ええと、これはサトルさんの分泌物からその体調を分析し類推する為の作業で他意はありません。ないんです。
「はむ」
え、ええっと、サトルさんが口を付けた所に私も口を付けます。少し残ったコーヒーの味。よく分からないのでもっとじっくり味わうです。
「ちゅ、れろ」
け、結果的には、かかか間接キッスになってる気がしますが、コレは捜査の都合上こうなっただけで仕方ないです。それに、あの、サトルさんのなら汚くないと思いますし。
「は、ふぅ・・・・・・あ」
体力不足みたいです。あの、足が少し震えるみたいです。だから、その、足の上のあたりも仕方なく震えちゃいます。・・・・・・っ!あう。あれ、ちょっとおかしいです。あの、机が当たってる所が気持ちいいような気がします。でも、気のせいですし、痛くないから、その、問題ないです。
「ひ、あ・・・・・・」
服の下、胸のところが、変な感じです。なんでって・・・・・・そう!今夜は少し肌寒いんです。だから、あの、胸の先っぽが鳥肌みたいになるのも仕方ないです。そ、それがローブと擦れて・・・・・・っ!変な感じだと思う、です。
「あ、ああ・・・・・・くぅっ、ん!」
手で胸を触ってみると、その、もっと変な感じになってしまいます。こ、これは病気かもしれないので、きちんと触診しなければ分かりません。サトルさんの世界の病気の乳ガンだったりしたら大変です。もっと、ちゃんと触らなきゃいけません。
「あん、んっんっ、ふぅ〜〜・・・・・・」
む、むねを触ると、自動的に腰のあたりが動いちゃいます。これ、は、私も知らない、病気かも
「あ、やぁぁぁんっ!」
知れないです。いつの間にか、胸から来る感じの数倍の感覚が、机が当たってる、その
「ふあっ。ふああぁぁぁ〜〜〜」
股間の、あの、性器からも、来るんです!上の方についてる、突起に、当たると、ぞわぞわって
「いいよ、いいようっ!はぁん」
きちゃうんです!声も出ちゃいます。一度聞いたことがある、あの、サーラ様の睦言の声みたいな声が
「さ、サトルさん〜〜〜」
出ちゃいます!そして、乳首を思いっきりつまむと、真っ白くなって・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* * *
「いっくし!」
風が出てきたせいか、小さいくしゃみが出る。慌てて周りを見回すが、誰もいない。庭園をまっすぐ突っ切るのは危険なので、今は屋根の上を移動している。何しろかけっことかそういう単純な比べあいになったらヘビに対して勝ち目はない。競わないこと、それがヒトがケモノに勝つ為のたった一つの手段。
というわけで、人目を忍んで屋根を移動、もうちょっとで予定の逃亡ポイントである正門近くの壁まで・・・・・・。
「夜の散歩かな?サトル殿」
後ろから声がかけられる。知った声。ってゆうか、出会ってはならない声。
「ええ、マフムード将軍も?」
振り向くと、直径5cmほどのぶっとい鉄柱をもった蛇頭の偉丈夫が目に入る。うう、やっぱり閣下ですか。
「うむ、月の綺麗な夜だからなあ」
あの、『それ』を構えないで下さい。てゆうか、それはいくらなんでも。一歩間合いを開けながら手鈎をつけ、あの鉄柱の機能を反芻する。
蛇毒杖。見た目は直径5cm長さ120cmほどの鉄柱。その内部は中空になっていて、その長さの1/4程の長さだけ水銀が詰めてある。手元の操作により自在に重心を変えることが可能であり、その習得には熟練を要するが極めれば軽快な打ち払いと重厚な打ち込みを可能とする危険な武器。
ムーサー家の秘伝武術であり、マフムード将軍はそれの正統伝承者なんだとか・・・・・・。ちなみに正統伝承者たるムーサー将軍の本気の打ち込みを手首に受ければ肘から先が消えてなくなる威力だ。
『喩えが妙に具体的だネ、ボブ?』『HAHAHA、ジョージ。それは僕が実際に見たからサ』
対する俺の武器は、登攀用の手鈎×2、鉄板仕込みのブーツ×2、後は勇気だけ。
・・・・・・勝てねえええええええええっ!!
「そうですか、それではワタクシは向こうの方に行きますので・・・・・・」
「そうか。ところで今日の仕事は終わったのかな?」
「はっはっは、完璧に決まってるじゃないですか」
「嘘つけ」
轟。
凄い勢いで突っ込まれた杖の先を飛び退いてかわす。あの突きをまともに喰うと、一撃目の一瞬後に水銀が移動することによる二撃目が来る。俺が喰らうと・・・・・・良くて内臓の二つ三つは覚悟しなければならない。
とはいえ、俺がよけられる速度ってことは大分手加減してくれているんだろう。将軍が本気で戦えばサーラ様に肩を並べる。なにしろサーラ様本人がそう言っていたし、それを否定する根拠も意味もない。
となれば、選択肢は概ね三つ。
1.謝って仕事に戻る
2.戦う
3.隙をついて逃げ出す
・・・・・・なんか、絶望的なことに挑戦している気になってきた。
しかし、ここを乗り越えなければラーメンにありつけない。覚悟の、決め所だ。
「まあなんだ、息抜きは私も必要だと思うが」
将軍が杖を構え直す。左手を前に、右手は杖の端を持って腰のあたりに、典型的な突きの構え。動作事態に撃ち込める隙はない。が、少しだけ移動する時間は稼げた。屋根の端へじりじりと移動する。
「警備の連中に頭下げて頼まれてはな」
言うが早いか右手が跳ね上げられる。短く踏み込み、持ち手を替えながらの正面打ち。横に飛び退いて紙一重でかわす。残した足先の1cm先の瓦屋根を鉄杖が『えぐる』。直径5cm、鋭さなどと無縁の円柱がその重さと勢いで屋根に刺さる。斬撃と言っても差し支えないその一撃ですら、将軍にとっては十分に余裕を持たせたものに違いない。
それは次の一撃で証明された。横に飛び退いた俺が体勢を立て直すよりも速く、屋根にめり込んだ尖端が瓦の残骸を弾き飛ばしながら吹き上げるように頭のあたりをなぎ払いに来る。頭の中に浮かぶ潰れたトマトの映像を振り払いながら重力に任せてかがんでかわす。
そこに、振り上げの一撃が来た。杖の回転方向を技術と豪腕でねじ伏せて放つ、すくい上げの一撃。二度の打ち込みで体勢を崩し、俺が避けられず、なおかつ俺を殺さない手加減がされた一撃。計算され尽くされた一撃。
俺が狙っていた一撃。
みぞおちを狙ってくることは分かっていた。避けられないことも分かっていた。だから、のけぞりながら右足を振り上げる。
右足の靴底と杖の尖端がぶつかる。死の間際、時間が引き延ばされる感覚。足裏から杖の圧力を受けながら、マフムード将軍の驚愕する顔が見えた気がした。
間欠泉のように吹き上がってくる鉄杖の圧力。それを足がかりにして思い切り後ろに跳上がる。浮遊感。身体を捻り、進行方向に強引に顔を向ける。
屋根の上からその外に飛び出す。その先には城壁。本来なら届かない遠い場所にある城壁。だが、いまなら、跳んでも届かない距離にある城壁も、マフムード将軍の力を借りて跳んだ今なら届く!
高速で近づく壁面。もちろんそのままぶつかれば顔面が真っ平らになる。全力で身体をひねる。上体をひねる反動でなんとか左足を壁に向ける。覚悟する間もなく激突の衝撃。
「・・・・・・っ!!」
悲鳴にならない悲鳴を上げる。慣性に無理矢理折りたたまれていく左足の痛みをとりあえず無視して右手を、正確に言えば、右手の手鈎を壁面に引っかける。
それぞれの衝撃に痺れた両脚を投げ出す。その重さに身体が落ちそうになるが、左手も壁面に引っかけて何とかしがみつく。
・・・・・・一秒、二秒、三秒。
よっしゃ!壁面取り付き完了!くくく、さすがのマフムード将軍でも何の装備もなしに壁を登っては来られまい。
「あばよ、とっつぁ〜ん!!」
勝利を確信した俺は衛兵が投網を持ってこないうちに壁を登りはじめた。
* * *
いや、やられた。
よもや、自分の技を逆用して壁まで跳ぶとはなあ。無理で無茶な手段だが、次に何が来るか分かっていないと思いつくことすら出来ない手だ。正統な武術を習ってないサトルに読まれるとは、いまだ自分も未熟と言うことか。捕縛用の手をいくつか考えておく必要があるな。いや、勉強になった。
自戒しながら懐から一つの鞠を取り出す。巻いた糸と革で出来たこれは落ち物で、なんでも向こうの世界でいう所の『やけう』という遊戯で使うとか。下を見ると、網を構えた衛兵が集まってきている。まあ、あれだけいれば誰か受け止めるだろう。
『やけうぼうる』を軽く放り上げる。緩い放物線を描いて落ちてきたそれを、杖で真横に薙ぐ。
かっきーん
小気味よい音を立てて飛んでいった『やけうぼうる』が狙い通りサトルの後頭部に命中する。
一瞬遅れてぐらりと、その身体が壁面から剥がれた。
・・・・・・ふむ、これがいわゆるところの『葬らん』というやつか。
* * *
気が付くと、床にへたり込んでいました。
目の高さに来ている机の角が濡れています。ローブ越しにこんなに濡れちゃってます・・・・・・。
・・・・・・わかってます。わかってるんです。これは、えっちなことです。それも、他ヘビの奴隷であるサトルさんの使った食器なんかに欲情する、とても浅ましくて卑しいことなんです。
本では知っていました。女性の身体がどうなって子供を作るかって。そのとき、何をどうするかも、どうなっちゃうのかも。でも、でも、私には一生縁がないことだって思ってたんです。
だけど、あの噂に聞くヒト奴隷とずっといっしょにお仕事してきて、あんなこととかをする専門家が自分の近くにいるんだって最初は凄く怖くって、でも、そのうちお話とかするようになって、いろんな向こうの世界のお話が面白くて、それだけじゃなくて、何気ないこととかを話すのも楽しくて、いつからか、お仕事の時間が楽しみになって。・・・・・・旅に出てる時が、寂しくなって、心配になって、帰ってきた時胸がいっぱいになって。
いつの間にか、好きになってました。
気が付くと、彼のことを考えてたり、お茶に誘おうと工房や練兵場の近くまで行ってたり。
そして、ある時、サラディン様の部屋の前に行って・・・・・・聞いてしまった声。
あの、凛として格好いいサラディン様のあげる『女』の声。泣くような叫ぶような、でも苦しみではない、歓喜の声。
聞こえてきた声が脳裏で大きくなり、中での光景を夢想してしまい、そして、声の主がいつの間にか私になって・・・・・・。
そのときは思わず図書室まで駆け戻って、長椅子でシーツを被ってもとても眠れず、生まれて初めての・・・・・・オナニーを。それが、気持ちよすぎて・・・・・・その夜は朝までずっと。
それから毎晩のように、サトルさんの去ったあとの部屋で残り香を貪るみたいに。
仕方ないんです。今でもこんなに、あんなにしたのに、疼いてるんです。
「は・・・・・・ぅ、んんっ」
床にへたり込んだままサトルさんの椅子に縋り付きます。お尻を乗せる所に顔を埋めて体臭をかぎ取ります。胸一杯に空気を吸い込むと、もうそれだけでダメになっちゃいます。
両手がローブの裾から、私の大事な場所に入っていきます。一度達して敏感になった其処は、周りを触るだけでもぞくぞくしちゃいます。ゆっくり、ゆっくり、下着越しに其処をいぢくります。指先に濡れた熱い感触がします。
ちゅく じゅぷ
静かな写本室だから、濡れた音が良く聞こえます。下着越しに指が這い回るとじんじんして目眩がするほど気持ちいいです。でも、そのうち下着越しの愛撫じゃ我慢できなくなってしまいます。自分でむしり取るように下着を脱ぎます。
『そんなに急いで・・・・・・そんなに“したい”んですか?』
サトルさんの声で、私の心のえっちなところが囁きます。
「は、はい。したいです。サトルさんと、したいです」
ためらうことなく、その声に答えます。もう、我慢なんか出来ません。でも、その声は意地悪なんです。
『ふふ。なら、サーラ様に聞こえないようにこっそりやらないと』
「そ、そんな、どうすればいいんです?」
いつも通りの問いかけ、だから返ってくるのもいつも通りのはずです。椅子のクッションに噛みついて声を殺せって言ってくるんです。
『その脱いだ下着を口に突っ込めばいいじゃないですか』
「!!」
こ、こんなの初めてです。そ、そんな、わたしがぐっしょり濡らした下着を・・・・・・。
『出来ないんですか?困りましたね・・・・・・。このままじゃ続きが出来ない』
そんなの・・・・・・困ります。続けてもらわないと、私もう、おかしくなりそうなのに。
あ、う。凄い濡れてます。顔の近くまで持ってくると、凄い匂いです。私のあそこ、こんなにいやらしい匂い出してます。
あ・・・・・・。手でぎゅっと握ると、垂れてきました。わたしのいやらし汁、たれてきました。もったいないです。
「はむ。ちゅ、ちゅちゅ。じゅ・・・・・・」
『うわ・・・・・・。凄いいやらしいですね、シャンティさん自分のおまんこ汁でべたべたの下着をそんなに美味しそうにしゃぶるなんて・・・・・・変態ですね』
「んっ!んんんうっ!!」
はあああああっん!サトルさんに、変態って。変態って言われて、わたし、凄く感じちゃってます。私のあそこも凄い濡れてて、指が2本も入っちゃいます。凄いです。キュンキュン指が締め付けられて、気持ちいいです。
あの、自分の味も変な感じです。美味しくないのに、口から出したくないです。
『ふふ、ここも良い感じですよ。こんなに俺のを締め付けてきて。シャンティさんは本当におまんこされるのが好きなんですね』
はいっ、はいぃっ!!すき、すきすきですっ!サトルさんにたくさんしてもらうの好きです、大好きですっ!もっと、もっとしてください、わたしをサトルさんの奴隷にして下さいっ!!
『―――っ!そうかいそうかい!なら、なっちまえよ!奴隷の奴隷になっちまえ!』
はひぃ、なる、なります、サトルさんの、さとりゅさんの奴隷になりましゅううううぅぅぅぅう!!
イク、イク、いっちゃうううううううぅぅぅぅぅううううううっ!!
はうう。あのままいっちゃうなんて・・・・・・。し、しかもサトルさんの、ど、奴隷になりたいなんて。私、どうしようもない変態なんでしょうか。だって、ヒト相手にあんな感情を持つなんて。それも、よりにもよって王家の賓客の所有するヒトなのに・・・・・・。
どうしようもなく、虚しくて、切なくて、思わず名前を呼んでしまいます。答えてくれるはずないのに・・・・・・。
「サトルさん・・・・・・」
「何スか」
「みにゃああああああああああああっ!?」
* * *
部屋に入るなり名前を呼ばれるのは、まあ分かる。でも、それに答えた瞬間悲鳴ってのはどーゆーことだ。
「さっ?さささささ、さとるさんっ!?いつの間にお早いお帰りでいえ私わナニもしてないですよ!?」
なぜ、動揺する。ってゆーか、何してた。よく見えないからわかんないけども。
「・・・・・・って、サトルさん!どうしたんですか、その顔っ!?」
「いや、城壁から落下して捕まった所を日頃の恨みとばかりに衛兵達にフクロにされて」
もー、顔なんかぼこぼこに殴られて当社比1.5倍ぐらいに腫れ上がって、おかげでほとんど視界がふさがってますよコンチクショー。おのれ、一体俺に何の恨みがあってここまでするのか。心当たりはあるが、あえて不当だと訴えたい。
「す、すぐに治療を!そうだ、あの、治癒の霊薬がありますからコレで!」
「げ!ちょ、ちょっとこの程度の傷にそれは大げさだから!」
「『げ』じゃないですよ!そのままにしてたら傷口からばい菌が入って化膿しちゃいます!」
「消毒すりゃいいでしょ。って、人が見えてないのいいことに飲まそうとすんなっ!」
勢い込んでシャンティさんがむしゃぶりついてくる。
くっ!腕力では圧倒的に勝ってるからふりほどくのは簡単なんだが、迂闊にふりほどくとシャンティさんのことだから本棚の角とかで致命傷を受けかねん!かといって押さえ込もうにも、目がよく見えないし。が、胸の打撲に肘がっ!?
「んがっ!?」
痛みに耐えきれず思わず開けた口に薬瓶が突っ込まれる。
苦甘い、何とも言い難い味。あえていうなら『薬味』のそれが喉を伝って胃袋に降りていく感触が分かる。何度も味わった、絶望を含んだこの感触。激痛はきっかり2病後に来た。
* * *
「っぎゃあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!?」
魂消るような悲鳴を上げてサトルさんが床を転がります。
ラドン家に代々伝わるこの治癒の妙薬。生きている限り、また、肉体が残っている限り、あらゆる傷を十分程度で治しきってしまうと言う素晴らしいものです。
ただ少しだけ問題がありまして。治りきるまでの間、傷がつけられた時の10倍ぐらい痛むんです。これは傷口の神経を活発化させて霊薬を傷口に誘導する為のもので、麻酔をかけると霊薬そのものの効果が減ってしまうんです。
この副作用のせいで、使う方々には・・・・・・最近は主にサトルさんですけど・・・・・・とっても不評です。
とはいえ、今この場。つまり、サトルさんの目が開くまでに濡れた机の角とか床とかを掃除しなければいけないこの場ではとても有効な副作用といわざるを得ません。
・・・・・・・・・・・・ゴメンナサイ、サトルさん。
それはそれとして、早くかたづけないと。ええと、濡れちゃったのは机と、椅子と、床と・・・・・・あ。
* * *
かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
ぱたん ぺら
かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり
「静寂」と言う名の音がある。それは概ね忙しかったり、仕事が溜まってたり、仕事の終わる見通しが立たないものが背中から出す轟音で、それを聞けば大概のものは離れていくし話しかけることもしない。手を止めて視線でも向けられようものなら、普通なら席を外す。気が弱いものは「邪魔するんじゃないか」との懸念にかられ動くことすら出来なくなる。
アディーナのティアマトー王宮、その写本室。そこでその「轟音」が鳴っていた。
鳴らしているのは二人、いや、一人と一体。
一人の方はヒトの青年。特にこれといって特徴のない顔だが(ヒトであるだけで十分特異と言えるが)それ故に左目の下から耳にかけてまで真横に走る大きな刀傷が目立つ。
一体の方は鉄錆色の肌と金属光沢の銀髪を持つ幼い少女。踊り子のような露出の多い服を着て、その幼く妖しい肢体を晒している。そのつま先は細長く半透明の紐になり、青年の背中に伸びていた。
この一人と一体・・・・・・つまるところ、ヒト奴隷のサトルとその精霊クシャスラ・・・・・・が放つ「轟音」を背にシャンティ=ラドンは、濡れて穿けなくなった為ノーパンになってしまったことがばれないように、顔を真っ赤にしながら声に出さず必死に祈った。
『・・・・・・でも、ちょっと気持ちいいかも』