満天の星空。細く欠けた月。どこまでも広がる岩と砂の荒野。吹く風は乾いて冷たい。  
 俺は自転車を漕いでいる。キャンプ用の大荷物と一人の・・・いや、一匹のと言うべきか?・・・少女を乗せて。  
 街までは、まだ大分あるらしい。のんびりと行きたい所だが、少女はそれを許す気はないらしく、速度が落ち  
るとハッパをかけてくる。  
 何でこんな事になったんだろう。十何回目かになるその問に思考を飛ばしつつ、無言で自転車を漕ぐことにした。  
 事の始まりはどこだったか。工学系の大学2年の夏休み、俺様こと狭間悟は唐突にアメリカ横断自転車一人旅  
などを思いついた。・・・ずいぶんと寂しい青春のようだが、まあ、あれだ。だれもかれも人付き合いが上手い訳じゃない。  
 行程も半ばを過ぎてアリゾナの砂漠を走っている時か。油断してたんだろうな。いや、つかれてたのか?まあいいや、  
大差はないし。  
 ともかくも、ひたすら惰性で自転車を漕いでいる時にいきなり道路に出てきた何かを避けようとして・・・・・・。  
なんだっけ、あれ。・・・・・・ああそうだ、あれはヘビだ。極彩色の、多分毒蛇。そのヘビを避けようとして、段差に乗り  
上げて、身体が宙に浮いて・・・・・・  
 
 
 ううう、身体が痛い。なんつーか全身痛いな。思いっきり宙を舞ったからなぁ。・・・あれ、いつの間にか夜になってる。俺  
そんなに気絶してたのか?・・・って、やばい!荷物!つか、自転車!アレがないと、マジで砂漠の真ん中で干からびて  
死ぬことになるぞ!  
 即座に跳ね起き、周囲捜索!月は細い23夜月だが、大体のものが分かる程度には見える。目的の物は・・・ああ、あっ  
たあった。壊れて・・・無いみたいだな。よかった、ひたすら頑丈なのを選んでおいて。フレームとか曲がってたら洒落にな  
らないからな。とりあえず、立て直しておくか。いや、よく車に轢かれなかったモンだ。道のど真ん中だってのに・・・・・・?  
 ・・・・・・あれ?道がありませんよ?いや、元から必要かどうかも怪しいほど荒れた道だが、俺が寝てる間に無くなる道理  
もないだろ?俺、跳びすぎ?もしかして、道路は地平線の果てまで行ってるとか?つか、俺が転んだとこって、こんな岩  
とかあったっけ?  
 もしかして、俺、迷った?やべ!こんな大平原のど真ん中で道に迷ったらマジ死ねる!?と、とりあえず地図を・・・・・・。  
「動くな」  
 背中になーんか嫌な感触。たとえて言えば、あれだ、刃物とか刃物とか刃物とかが突きつけられているような感じ?と  
りあえず、聞こえてきた言葉に従ってぴたりと止まる。  
「そのままゆっくりと手を挙げろ。そうだ、亀のようにゆっくりとだ」  
 従いながら、考える。聞こえてくる声はハスキーだが意外と若い声。もしかして、まだ少年か?だとすれば、不意を討っ  
て掴み合いに持ち込めば勝てるかも・・・・・・。・・・・・・ん?まて?ここはアメリカだぞ?何で日本語で脅されてんだ?  
「よし、そのまま動くな」  
 背中の感触が少しずつ動いている。どうやら回り込んでくる気のようだ。・・・服、切れてないよな。ともかくも、俺を脅して  
いる日本人の少年強盗(推定)が俺の目の前に姿を現す・・・!  
 
 ゴメンな、俺、嘘ついた。だれだよ、日本人の少年強盗なんて言ったのは。刃物を突きつけていたのは、少女だった。  
 アラビアの踊り子風の露出の多い、扇情的な服。細身の身体には少し大人すぎるような気もしたが、黒い肌には良く映  
える。きゅっ!っと引き締まった小さいおしりの上には、二つの曲刀を履いている。一本は抜刀してるけど。年の頃は16  
〜17ぐらいか?その相貌は、一瞬状況を忘れて見とれてしまったぐらいの怜悧な美しさだ。が、元の造形がそうなのか、  
それとも今の感情がそうなのか、最高の芸術品とも言えるその顔の描く表情は「ちっとでも気に障ることしてみな、テメー  
の首だけワールドカップに出してやるぜ。サッカーボールとしてな!」と雄弁に物語る。  
 そして短いメッティーカットの黒髪は・・・・・・髪?じゃない?薄暗いから一瞬見間違えたけど、これって鱗か?  
「聞いているのか!」  
「はいっ!?」  
「聞いているのかと言っているんだ!」  
「すんませんしたっ!聞いてませんでしたっ!」  
「なにぃ?良い度胸だな、貴様。首だけになってみれば話を聞く気にもなるか?」  
「かかか勘弁してつかあさいっ!」  
「ふむ、まあいいだろう。本来なら首を刎ねる所だが、『寛容なる鬼将軍』と呼ばれたこの私の慈悲に感謝するが良い」  
 二つ名の後半部分が気にはなったが、聞くのも怖いのであえて無視して礼だけ言っておく。とりあえずは命が保証され  
たようだ。  
「さて、では質問をもう一度最初からだ。お前の主人はどこだ?」  
「しゅ?主人?いえ、俺は一人旅ですけども・・・」  
「嘘をつくな。ヒトが一人旅など出来るわけも無かろう。すぐに奴隷商人に捕まって後宮送りだ」  
「奴隷商人っ!?アメリカは法治国家ですよ?いや、人によっては異論反論あると思いますが」  
 俺の返事を聞いて訝しげに形の良い眉をひそめる。  
「アメリカ?・・・・・・もしかして、貴様落ちたばかりか?」  
「はい?落ちたってどこから?」  
「いや、分からないのなら良い。もう貴様は用済みだ。どことなりと行くが良い」  
 
「はあ、まあそれではお言葉に甘えて・・・・・・」  
 納刀した彼女に背を向けて、何となく忍び足で自転車にまたがる。はやく逃げた方が良いな。こっそりとここから緊急離  
脱だ俺!  
「ちょっとまて」  
 用済みじゃないんですか、おぜうさん。待ちますからこの喉にぴたりと当てられた円月刀をのけて下さいませんか。  
「ななな何でしょう?」  
「もしかしてそれは乗り物か」  
「え?自転車を知らな・・・・・・」  
「いいから、はいかいいえで答えろ!」  
「はい!これは自転車という乗り物であります!さー!いえっさー!」  
「そうか、では・・・・・・」  
 そう言ってその少女は鮫のように微笑む。うう、嫌な予感。  
「王宮騎士団団長サラディン=アンフェスバエナ将軍の名をもって、この乗り物を徴発する。文句はないな?」  
「なっ!?自転車無しで放り出されたら街にたどり着く前にのたれ・・・・・・いえ、何も文句はございません。それどころか積  
極的に差し出したいなーとか思うぐらいの納得ぶりなんで、この抜く手も見せず顔に突きつけられた刀は必要ないと愚考  
するのですが、その当たり如何お考えでしょうか」  
「理解が早いというのは、美徳だな」  
 刃物の圧力に押しのけられた俺の代わりに少女がサドルに座る。うう、さよなら俺の轟天号(今名付けた)。  
「で、これはどうやって動かすのだ?」  
「それすら知らんと、あんた・・・・・・いえなんでもないです。そこの棒で舵を取って、足のとこのペダルを漕いで進むように  
なってます」  
「なるほど。それではさらばだ、ヒトよ!この恩は忘れまいぞ!」  
 悔しいからブレーキを教えなかったのは秘密だ。そして動き出す自転車を恨みがましくにらみつけ・・・なんか忘れてないか?  
 
 ふと、何か忘れているような気がして考え込もうとした矢先、うわわ!ガシャン!と言う音に思わず振り向く。そこには2m  
ほど進んだ所で自転車ごと横転しているさっきの少女がいた。  
 そういやそうだよな。さっきまで自転車の存在を知らなかった奴がいきなり乗れるわけ無いよな。  
 何とはなしに近づいて見下ろす。多分すごい冷ややかな視線をしているんだろうな〜と自分でも思いつつ。どうしようか、  
この状況。  
 彼女は何も言わずに自転車の下から這いだし、立上がって服のほこりを払う。どうしたもんかなーとぼやっとそれを眺  
めていたのが良くなかったのかもしれない。爬虫類の瞬発力で踏み込まれ、首を二つの刀で挟まれる。  
 一歩も動けない・・・どころか、反応すら出来ない。が、いい加減三回目なので慣れたのかもしれない。意外に冷静な心  
持ちで、彼女を見れた。俺をにらみつける彼女の顔は、元の黒い美貌がそれと分かるぐらい赤くなっている。流石に恥ず  
かしかったのか?  
「お前が漕げ」  
「・・・・・・そう来ましたか」  
「やかましい、漕げ」  
 言葉には激しさがなかったけど・・・涙目になってる。う、意外と可愛いかも。けど、下手につつくと暴発しそうだな。  
 ・・・・・・仕方ないか。ため息一つついて了承した。  
「わかりました。じゃあ後ろに乗って下さい」  
「うむ、ではわたしを運ぶ栄誉を与えてやろう」  
 俺が自転車を立て直してサドルに座ると、当然のような顔をして荷台の上に座り背中にしがみついてくる。・・・おっぱい  
見た目よりあるかも。  
「ついでだ、来たばかりで右も左も分からぬであろう。この私が道中いろいろと教えてやろう」  
「はあ、ありがとうございます。んで、どっちに進みます?」  
「とりあえず、向こうだ」  
 彼女の指の差す方向に、自転車は走り始めた。  
 
「とまあ、そう言うわけだ」  
「・・・・・・はぁ」  
 とてもじゃないが理解しがたい事だ。ここが異世界で?この世界の支配種族はこういった獣人で、それぞれが違う地域  
に住んでいると?ときおり地球の文物が(人間含めて)『落ちてくる』と?で、人間はどの種族よりも筋力が低いうえ珍しい  
ので、大抵奴隷になっていると。  
 神様、これは何ですか?人類が乗り越えるべき最終試練かなんかですか?どこの魔王を倒せば元の世界に戻れるん  
ですか?畜生!もう神なんか信じねーぞ!・・・いや一度も信じたことないけどな。  
「とゆうわけで、めでたくお前は私の奴隷になったわけだ」  
「はあ、そうです・・・・・・ちょっとまてっ!?いつの間にそんなことにっ!?」  
 上の空で納得させられかけた奴隷契約をすんでの所で止める。ついでに自転車も。  
「まあ落ち着け、脚が止まっているぞ」  
「これが落ち着けるかっ!?何が悲しゅうて奴隷なんぞ・・・・・・いえ、落ち着いてますよ。身分にも、何の不満もございませ  
ん。むしろイヌと及び下さい」  
「言葉に真のないやつだな、お前は」  
 人の首に刃物当てて言う台詞かそれが。  
「いいか、この世界ではお前はひたすら弱いわけだ。この世界で通じる通貨を持っているわけでもない。そして、お前を保  
護してくれるような国もない。ついでに言えば、希少価値だけは高い。つまり、いずれお前はどこかで誰かの奴隷になって  
売り飛ばされるわけだ」  
「・・・・・・そうですね」  
「が、お前を夜盗などから守れるぐらい強い主人がついていれば、奴隷狩りに酷い目に遭わされることもないわけだ。そし  
てそれが絶世の美女であれば、尚更問題ないわけだ」  
「うわ、照れもなしに自分で言ったよこのヘビ」  
「なんだ?反論でもあるのか」  
 ずい、と身を乗り出してくる。思わず唾を飲んだ。近づけられた彼女の顔は確かに絶世の美女とも言うべき美しさだ。  
が、氷で出来た刃物を思わせるその美しさはむしろ人を遠ざけている様に思えた。  
「いえ。・・・・・・ないです、反論も不満も問題も」  
 気がつくと、一度否定した奴隷契約書に自分からサインしていた。  
「名前はなんと言うんだ?」  
「サトルです。狭間悟」  
「そうか。ではサトルよ、今日からお前は私の物だ」  
 後ろからしがみついた腕に少しだけ力が込められた。  
 
「んで、今はどこに向かっているんですか?」  
「アディーナと呼ばれる街だ。そこでヘビと会うつもりでいる」  
「戦争でもあるんですか?」  
「・・・何故そう思う?」  
「御主人様ですよ?『親衛騎士団団長』って言ったのは。もしそれが本当なら、騎士団の団長が供も連れずにどこかの街  
で誰かと会うことになる。しかも、人から乗り物奪ってまで急ごうとする。余程機密性の高い軍事作戦でもないと有り得な  
いんじゃないかな、と」  
「ほう・・・・・・」  
 感心したって事は当たりか?  
「この状況で良く頭が回っているな。だが、はずれだ」  
 なんですと?何か余計にやな予感が・・・・・・。  
「私が彼女に会いに行くのは・・・・・・む?おい、スピードを上げろ!」  
「はい?何をいきな」  
 ひゅん!  
 急な指示から間をおかず、何かが顔をかすめて飛んでいき、地面に刺さる。それが何か確認できはしなかったが、本能  
に従って自主的にスピードを上げる。  
「おおおおっ!?な、なんだこりゃああああああああっ!?」  
「ちいっ!奴等もうこんなに早く追いついてきたか!」  
「あああああ何となく予想はしてたけどやっぱ追われてたんかあんたああああああああ!!」  
「主人に向かってあんたとは何だ。教育がなってなかったようだな」  
「んな悠長な事言ってる暇あんのかああああああ!!」  
「確かにないな。だから急げ」  
「これで限界だああああああ!!つか、馬相手に振り切れるかああああぁ!!」  
「相手は駱駝だ」  
「大差ねえええええええ!!つかなんか反撃とかしろよ!!めっさ強いんだろ!?」  
「10人がかりで弓を撃ってくるんだ。いくら私でも近づけるか」  
「ああああ希望的材料がないいいいいいいい!!」  
 ・・・・・・っとまてよ?  
 
 今なんて言った?近づけるか?  
「近づければ何とかなるんかっ!?」  
「間合いにさえ入れば10人が20人でも切り伏せる自信はある。だてに『殺戮剣の舞姫』と呼ばれたわけではないぞ」  
 なんか新しい二つ名が出てきてるんですが。うう、今ひとつ信用出来ないが仕方あるまい。つかこのペースで走ってた  
ら俺が死ぬ。さっきから何本か矢がかすめてるし。  
「なんとか彼奴等の目くらましてみるから、彼奴等が崩れたら飛び込め!」  
「ほう?良いだろう。うまくいったらその物言いを不問にしてやる」  
 うまくいかなくても、追求は来なくなると思うけどな。それはそれとして、左手でベストの胸ポケットを探る。たしかここに  
・・・・・・あった!良し後はここを押して数秒待てば・・・。  
 カキンッ!!  
「まだかっ!!」  
 真後ろから金属音。どうやら矢を刀で打ち払ったようだ。・・・・・・人間業じゃない目と腕前だなあ。・・・っと貯まったぁ!  
「よっしゃ!これでも喰らえッ!!」  
 そう叫んで俺はシャッターを切る。ストロボ付き使い捨てカメラの。  
 そして荒野に閃光が走った。  
 
 ぐあああっ!?ぎゃああああ!!  
 ぶるるるるるはーーん!!  
 どがしゃーん!!がらがらーーー!!  
 何かすごい音が後ろからしてくるんですけど。少しだけ罪悪感。しかし、ここで御主人様・・・サラディンとか言ってたっけ?  
・・・を突っ込ませれば勝てるっ!!ここで急反転して・・・して・・・・・・  
うおおおっ!?やべ、砂ですべるっ!!うわっ!!  
 がしゃーん!!  
 やばい、ここで転んだら作戦失敗してしまう。なんとか彼女を早く突っ込ませないと・・・・・・。  
 と思った時にはもう彼女はヘビ男と駱駝の群れの中に突入していた。まさか走ってる自転車から飛び降りたのか?なん  
てでたらめな運動神経だ。でも、問題はホントに彼女が10人相手に勝てるかどうかで・・・・・・。  
 思考を進めることが出来たのはそこまでだった。  
 
 くるくるくる、彼女が回る。両手に白刃、描くは銀月。呆然とする、異形の群れ。  
 狂る狂る狂る、彼女は廻る。銀の月光を、振りまいて。踊るように、舞うように。  
 
 そして、彼女はヘビ男の群れを抜けていき、最後にぴたりとポーズを取るかのように動きを止める。  
 一瞬の静寂の後。男達の喉から一斉に血が吹いた。  
 それを見届けてからやっと、いま自分に酸素が必要だと言うことを思いだした。  
 
 ぜひゅう、ぜひゅう、ぜひゅう、ぜひゅう。  
 あ〜、やっと呼吸が落ち着いてきた。何とか脳に酸素が行き始めた程度だけど。仰向けに倒れたまま彼女の動向をうか  
がうと、追っ手の荷物を漁っているようだった。・・・・・・手慣れてるなあ、実は将軍とかじゃなく名の知れた盗賊とか何じゃな  
いか?追われている説明もつくし。  
「いつまで、寝っ転がっているつもりだ?」  
 歩いてきた彼女に頭をこづかれる・・・・・・足先で。仕方ない起きるか。まだ息は完全には整ってないけども、剣で脅され  
るよりはマシだ。それに聞きたいこともあるし。  
「で、どういう事何すか?」  
「む」  
 一言つぶやいて眉を寄せる。が、すぐに荷物-食料と水袋らしい-をこっちに押しつけて言った。  
「とりあえず、ここを離れるぞ。事情は道々話そう」  
 ふざけるな。そうは思ったが反論を言う前に彼女が視線をできたての死体達にむける。・・・・・・確かに、離れるのが先か。  
 
 月明かりと自転車のライトを頼りに砂漠の夜を進む。移動し始めてから20分ほどたったかな?そろそろ何か言って欲し  
いんだけど・・・・・・。  
「ヘビはな、統一された国を持っていない。100年ほど前か、ザッハーク帝国が崩壊してから貴族達がそれぞれ王を名乗  
り、砂漠の覇権を争うようになった」  
「?」  
 えと・・・・・・?あ、状況の説明か?にしてはいくら何でもさかのぼりすぎの気が・・・・・・。  
「国と言っても、一つの大きな街とその周辺ぐらいだがな。ま、そんな見栄っ張り共が帝国の版図を手に入れようと100年  
も小競り合いを続けてたわけだ」  
「はあ」  
 つまり、戦国時代って事か。  
「その見栄っ張り共の中にアンフェスバエナという一族がいてな。まあまあ上手くやっていたんだが、自国の大臣が謀反  
を起し、止められずに王と王妃は殺されて、反乱のどさくさで一族郎党散り散りバラバラ。そして、第15王女にして第20位  
王位継承者『湯上がりは親でも惚れる』サラディン=アンフェスバエナ様は反乱軍の追っ手をかわし、なおも逃亡中と言  
うわけだ」  
 ・・・・・・どっかで聞いたことのある名前がでてきたな〜って。  
 
「お姫様っ!?嘘でしょっ!?」  
「なんだその反応は。まるで、私が『お姫様』だとおかしいような言い方だな」  
「おかしいでしょ!?てゆうか、俺の中の可憐で儚げな『お姫様』像がいま木っ端みじんに砕か」  
 ひゅん  
「ごめんなさい勘弁してくださいてゆーかちょっと刺さってます心の底から反省しますからやめておねがい」  
「お前も懲りない男だな」  
 うう、背中にしがみついた不自然な体勢で、どうやってあのでかい刀を抜いてるんだ?  
「つかですね、さっき親衛騎士団団長とか言ってませんでした?」  
「ああ、確かに言った。」  
「なんでお姫様が騎士団長やってるんすか?」  
「まあなんだ、戦国の世の小国特有のやんごとなき事情という奴があってだな。いや身も蓋もない言い方をすれば人手  
不足と裏切り防止なんだが」  
「いやぶっちゃけ過ぎでしょそれ」  
「迂遠な言い方は苦手でな。ま、そう言ったわけでとりあえず大臣の追っ手をかわして隣国まで逃げ込まん限り、安心で  
きないわけだ」  
「・・・・・・もし捕まった場合どうなるんでしょーか?」  
「うむ、この『神から賜った悪魔の芸術品』とまで言われた美女の首が胴体と泣き別れることになるな。そうなれば、大陸  
にとっての損失なので全力で走るように」  
「いや、そっちじゃなくて俺の処遇の方ですが」  
「『戦利品』」  
「あー、えーと、そのー。・・・・・・いや良いです、皆までいわんでも。でも、それだと今の状況と大して変わらないとゆーこと  
では?」  
「なにをいう。こんなに美しく、かつ優しい主人など砂漠中を踏破しても見つからんぞ?」  
 反論は頭の中に思い浮かぶんだ。問題は刃物の感触もありありと思いだせるだけで。  
 うう、自分の身体でパブロフのイヌの実験を理解するハメになるとは。心で泣いて「はい」と答えることにした。  
 
 夜明け前になってきたので、とりあえず岩陰に風よけのテントを張って休みを取ることになった。てゆーか、取らせても  
らった。俺、一晩休憩とか無しで自転車漕ぎっぱなしですよ?もう一人乗っけて、荷物を増やした状態で、非整備道路を。  
死ぬって、フツーそんなことしたら死ぬって。いや、一人旅だった頃に比べて負荷が増えただけではあるんだけど。  
 とりあえず、干し肉と乳酒と水で食事を取って横になった。うう、もー動きたくねえ。つか、動けねえ。思い出したように、  
身体もあちこち痛くなってきたし。つか、二回も派手にすっころんだからなあ。  
 まあいいや、とりあえず寝れば多少は楽になるだろう。・・・・・・ん?  
「よっと」  
「のわ!?」  
 眠ろうとした所をいきなりひっくり返される。強制的にうつぶせにさせられた。って、いきなり何をっ!?もしかして逆レイプ  
って奴ですかっ!!いや待てそれはちょっと!!疲労で動けない所に奇襲をかけられて美少女にHな事されるなんてっ!!  
個人的にはかなりOK!!って、それで良いのか俺!?『全然オッケー』(by心の声)。よしこい!めくるめく淫靡なワンダーランド!  
「どれ、傷を見せろ。我が王家に伝わる秘薬を塗ってやる」  
 そんなに言われては仕方ないですね〜。いそいそと・・・・・・。  
「はい?」  
「しこたま背中を打っていただろう。」  
「・・・・・・あ〜、そっちですか」  
「他に何がある」  
 すんません、他のこと考えてました。多分不敬罪確定な奴を。  
 心を読まれていたら首を飛ばされているであろう想像をしている俺の服をまくり上げて、彼女が背中の傷を診る。まあ、  
骨までいってるとは思わないけども。  
「む、大したことはないな。薬を塗ればすぐ良くなる」  
 彼女がそういうと、背中をひんやりとした手が撫回す。あ〜、これ気持ちいいかも〜。出来ればぱんぱんに張った太腿  
もやって欲しいかも〜。  
「奇妙なものだな、ヒトというのは」  
「そうですか〜?ああすいません、もう少し上の方お願いできます?」  
「む、この辺か?奇妙だろう。牝の肌に牡の身体だ。マダラもこんな感じなのかもしれんが」  
「ああ、そこです。俺の元いたとこでは、頭に鱗が生えてる方が変なんですけどね」  
 
「そうか・・・・・・お前はおかしいと思うか?この鱗」  
「俺は・・・・・・綺麗だと思いますよ。御主人様の鱗」  
 日の下で見た彼女の鱗は、綺麗な幾何学模様を描いていた。生き物には詳しくないからよく分からないけどニシキヘビ  
とかその辺じゃないのかな。彼女は少し間をおいて答えてきた。  
「・・・・・・綺麗なのは当然だろう。わたしは『天使の様な悪魔の笑顔』と言われるほどのだな」  
「やたら二つ名が出てくるのは何でですか?」  
「二つ名を増やすのが趣味でな」  
 それはかなりどうだろう。とはおもったが、とりあえず生返事だけ返しておく。そのうちマッサージが気持ちよくてだんだん  
と睡魔が・・・・・・。  
「にしても、・・・・・・こんなにも熱いものなのか、ヒトというものは」  
 なんか、ぼそぼそと独り言が・・・・・・まあいいや。  
「本当なのか?・・・・・・姉様の言っていたことは?・・・・・・でも、しかし」  
 ごくり。唾を飲む音が聞こえた気が。心なしか、背中を撫回す手のひらが温かくなってきたような。  
「万が一のこともあるし・・・・・・奪われるぐらいなら・・・・・・」  
 少し、気になったので睡魔を押しのけて聞いてみる。  
「あの?御主人様?」  
「なっ!なんだいきなり!」  
「いや、さっきから何をぶつぶつ言ってるんすか?気になるんですけども」  
「き、聞こえていたのか!?」  
「まあ、何とはなしに」  
 もしかして、思わずつぶやいていたって事か?まあ、そういう癖なのかもしれないけど。狼狽えすぎじゃないか?何かあ  
るんならちゃんと聞いておいた方が良いしな。とりあえず、身体を起こしてと。  
「で、何の話ですか?」  
「いや、その、あのだな。ええと、そのつまり」  
 何でこんなに慌ててるんだ?とりあえず、彼女が落ち着くまで待つことにする。彼女は俺の視線が気になるのか、たっ  
ぷり一分ほど狼狽えた後、深呼吸をしてから言ってきた。  
「お前に与える次の命のことを考えていた」  
「命令、ですか?」  
 彼女は頷くと、たっぷりためらった後唾を飲み込み意を決して口を開いた。  
 
「よ、夜伽をせい」  
 ・・・・・・えっと。夜伽って確かセックスの古い言い方ではなかったかな〜。それをしろって言ってるって事は、彼女にセック  
スしろって事のよーな気が。つまり、目の前の美少女があーんな事やこーんな事をえろえろして欲しいと言うことで、据え  
膳喰わなの焼き蛤というわけで。  
「ははっ!不肖狭間悟、全身全霊をもってこの大役を務めさせていただきます!」  
 そう言って、彼女の手を引いて抱き寄せる。しなやかに鍛えられた彼女の身体が俺の両腕の中に入ってくる。  
「ひゃっ!?なにを・・・んっ」  
 皆まで言わせず、彼女の唇を奪う。突然のキスに驚いたようで、反応がとぎれる。その隙に半開きの口の中に舌を入れた。  
唇で感じる彼女の唇はやっぱり変温動物だと言うことなのだろうか、少し冷たい。でも、こじいれた舌で感じる口の中は驚  
くほど温かい。彼女の反応がないことが少し不安だけども、舌先に触れる唾液の甘さに逆らえず、俺の舌は彼女の中を  
這い回った。  
 最初の内は大きく目を見開いて驚いていた様子だったけど、だんだんと慣れてきたようでおずおずと舌を出してきた。お  
迎えが来たと会っては行くしかあるまい。控えめに差し出された手を取って、俺と彼女の舌がゆっくりとダンスを始める。始  
めは、ゆっくりとそしてだんだんと激しく。  
 彼女の目がだんだんと酔ったようになってきた。・・・・・・うわ、少し崩れただけでこんな色っぽいなんて。可愛い、すごく可  
愛い。でも、もっと色っぽくなるよねえ?そう思いながら彼女の背中に回した手で、ゆっくりと背中を愛撫する。  
 彼女の鱗は頭から首を通って肩胛骨の間を背中の中程まで続いている。なので、背中をなぜるとすべすべの肌とざら  
ざらの鱗の二つの感触がする。ただ、時折ぴくんと撥ねる彼女の反応をみるとどうやら鱗のことの方が感じるみたいだ。  
弱点発見。俺は「弱点を見つけたら一気呵成に集中攻撃」という昔からの格言に従い、首筋に軽く指先で触れてそこから  
背筋に沿って尾てい骨のあたりまで滑らせてみた。  
「ふああんっ!?」  
 うわ!びっくりした。こんな高い声出せるのか。のけぞった拍子にはずれた唇が艶めかしくてかり、荒い呼吸をする彼女。  
ごくり、今度は俺が唾を飲み込む。  
「御主人様・・・・・・綺麗です」  
「え?あ、きゃあん!?」  
 
 ぽむ、と手のひらでおっぱいを包・・・おさまんないや。体つきは小柄でスレンダーなんだけど、おっぱいだけこんなおっき  
いとは・・・・・・なんてエッチな身体なんだ御主人様(誉め言葉)。少し固いけど、それが逆に堪らない弾力で揉むたびにぷ  
るぷると震える。彼女は胸を揉まれるたびに右手を振り上げ・・・・・・え?  
「なにをするっ!!」  
 ばちこーん!やたら派手な音を立てて頬をはり倒される。って、いきなり何!?何かやたら痛いけど、奥歯でも砕けたん  
じゃないか?  
 何か一言いってやらにゃあ、気が済まん!と、勢いづけて身体を起こしたはいいんだけど・・・・・・えと・・・・・・何故に、涙目  
でこっちをにらみますか?  
「き、貴様よくもこの私にこんな辱めを・・・・・・」  
 やばっ!?刀の鞘に手を伸ばし始めてる!?と、とりあえず、なんとか弁解しないと。  
「ちょちょっと待ってください!?御主人様ですよ?夜伽をしろと言ったのは?」  
「何を言うかっ!!キキキキスをしたり、そのなんだ、む、胸を触ったりするのが夜伽だとでも言うのかっ!」  
「普通そうでしょっ!!」  
 そう言ったとたん突如沈黙。・・・・・・いや待て、もしかして。  
「御主人様。・・・・・・実は知らないんですか」  
「な、何を根拠にこの『年長すばる組のいきものはかせサーラちゃん』のこの私に知らないことなど」  
「いや、生き物関係ないし幼少時の知識量語られても困るし姫様なのに幼稚園に通ってたのかよとか突っ込みたいのは  
我慢しておくけどてゆーかサーラちゃんってよばれてたんすか」  
「どうでもいいだろう!そんな子供の頃の話は!!」  
「いや確かにとことんどうでも良いんで横においときますけど。・・・・・・結局知らないんですね?」  
 質問と言うより、確認の念押しの為の問を突きつける。彼女にもそれは分かっているんだろうけど・・・・・・悩むの長いな。  
「ああそうだ!知らないが悪いか!無知は罪だとでも言うつもりか!」  
「いや、悪いとは言いませんけども・・・・・・でもだったら何でいきなり夜伽なんて」  
「い、いやな?姉様方と話している時に時折そういう風な話がな、いやなんだ興味があったわけではないんだ!ただな!  
どうしても耳に入ってしまうと言うか、聞く気はないんだ!いやほんと!」  
 
 いやそんな言い訳にもならんことを主張されてもなあ。  
「ほ、ほら、仮にも一軍を預かる身としてはその色事にうつつを抜かしている訳にはいかず、極力そう言うことには関わら  
ないようにまじめにしてきたわけだ。しかしまあ事は生命の本能に根ざすことであってだな」  
「いや、もーいいです。大体分かったんで」  
「い、いや。誤解があっては困る!ここはとことんだなあ」  
「それはいいから!!」  
 叫ぶと同時にテントのマットを叩く。驚いたのか、狼狽した彼女の声が一瞬止まる。  
「結局どうするんですか。最後まで続けるんですか?それとも止めます?」  
「えと、それは・・・・・・その」  
 どうするか決めかねている、というよりは決まっているけど踏ん切りがつかないと言った感じのサーラちゃん(俺の中で  
こう呼ぶことに決定)。・・・・・・助け船になるのかな?まあいいや。  
「続けるとなると、これ以上に恥ずかしい事をしちゃいます。御主人様は始めてなので、痛い事にもなります。こればっか  
りはどうしようもありません」  
「う・・・・・・」  
 少しおびえた目。そうだろうな、これから何されるかも分からないわけだし。だからこそ。  
「それでも続けるというのならば」  
「な、ならば?」  
 今度はこっちが唾を飲み込む。何だろうこの緊張感。なんかプロポーズしてるみたいだ。大した事言うはずじゃないん  
だけど。すごい、緊張する。・・・・・・ええい!言ってしまえ!  
「精一杯優しくします」  
 
 きょとん。と、大きく開いた目でサーラちゃんはこっちを見る。一瞬何を言われたのかわからなかったようだ。・・・・・・おれ、  
もしかしてすごく恥ずかしい台詞口にしたのか?そんな疑問を知ってか知らずか、サーラちゃんは数瞬の間をおいてうつ  
むいて目をそらす。いや、こちらの方をちらちら見てはいるけど、目を合わそうとしてくれない。  
「そ、そのだな、出会ってから一日も経ってないがお前の事は少しわかる」  
 なんだ?なんか、俺もドキドキする。っていうか、えと、いきなり恥ずかしいような何か、その。  
「サトルは、嘘つきだ。すぐ嘘をつくし、前言を翻す」  
「え・・・っと、その、ごめんなさい」  
「そして礼儀も知らない。主人に尽くすのは奴隷として当然で、優しくするなんて言うのは自分と同輩か目下に使うものだ」  
「すいません、物知らずで」  
「けど、信じたからな」  
「はいその、・・・・・・っえ?」  
 すっ、と俺の胸に身体を預けてくる。ひんやりとした肌が、何かやたらとほてっている身体に気持ちいい。え・・・と、いま  
なんて?信じた?呆然とする俺を、うつむいたサーラち・・・・・・サーラ様が顔を上げて、潤んだ瞳で捕まえた。  
「信じたから、優しくしろ。優しくしないと首を刎ねるぞ?」  
 命令と言うより、すねて甘えるような口調がもう、あの、その。殺人的です。  
 サーラ様の唇に軽く啄むようにキスをする。その感触があまりにも柔らかいんで、思わずフレンチキスを顔中に点々と  
降らせていく。吸い付くたびにサーラ様は軽く押し殺した鳴き声をあげる。なんか、すごく上質の未知の楽器を触ってる  
みたい・・・・・・。すごい敏感に俺に反応する。  
 キスのダンスを首筋に降ろしつつ服を剥いでいく。上着を脱がすと、おっぱいがあらわになる。驚いた事に、胸を覆うチュー  
ブブラみたいな(正式名称なんて言うんだろう、これ)のを取っても全然型くずれしない。細くしなやかに鍛えられた筋肉  
に閉め出された脂肪がぱんぱんにつまって突き出している、そんな感じ。先っぽもピンと立ってふるふるとプリンのように  
震えてる。  
「そ、そんなに・・・・・・」  
 サーラ様が口を開いた。力無くいやいやして頬を染める。  
「そんなに、見つめるな・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」  
 
「どうしてですか?サーラ様の胸、こんなに綺麗なのに」  
「だって、見られるの恥ずかしい」  
 そう言って、手で隠そうとする。でも、その前に俺が手首を掴んで止めちゃう。  
「恥ずかしいことするって言いましたよ?」  
「言ったけど・・・ぉ・・・・・・ん」  
 弱々しい抗弁を乳房への軽いキスで妨害する。乳首に触れないようにその周りをキスしながら一回りすると、腕から力  
を抜いて俺の愛撫に完全に身を任せてくれた。  
「んっ、ふ。ぁ・・・ゃ・・・」  
 声を出すのが恥ずかしいのか、必死に抑えようとするサーラ様。かぁいいなぁ。でも、もっとちゃんと聞きたいぞ。サーラ  
様の感じてる声。  
「きゃん!?い、今何・・・ああんっ!やあぁあ、あっあっあ」  
 唐突に唇で乳首をつままれて驚きもだえるサーラ様。右の乳首を吸いつつ、左の乳房を揉み込むと高い声を上げての  
けぞる。ゴム鞠みたいな弾力のおっぱいは、二人の汗でぬめってにゅるにゅると俺の手の中で形を変える。こりこりと手  
のひらで転がる小さな乳首の感触に興奮して、思わず強めにひねり上げてしまった。  
「や、はぁああぁあぁっぁああああぁっ!!」  
 それと同時にひときわ大きい声を上げて、サーラ様が脱力する。・・・もしかして、いっちゃった?  
 
 焦点の合わない目で荒い息をつくサーラ様。・・・・・・大丈夫かな?目の前でひらひらと手を振ると力無くその手が払われた。  
「あ・・・は、夜伽とは・・・こんな、ものか。た、大したことはない・・・な」  
 お、強がりですか。おっぱいだけでいっちゃったくせに。そーゆーふーなわるいこにわ、おしおきがひつようですなあ。  
「まだですよ、サーラ様」  
「え?・・・まだって。その、まさか」  
「はい、もっと恥ずかしくてもっと気持ちいい事が残ってますよ」  
 そう言って、俺は服を脱ぎつつ彼女の後ろに回り込む。まだ、虚脱しているサーラ様には抵抗できないみたいだ。それ  
でも、声だけは抵抗してくるけど。  
「ひゃ、や、その、今日はこのぐらいにしてだな、続きはまた後日に」  
「大したこと無いんでしょう?」  
「た、大したことはないけど、今そんなことされたら変になっちゃうかも」  
 意地っ張りめ。あくまでそう言い張るのならこっちも実力行使しちゃうぞ?とりあえず耳に・・・・・・耳無いのな。ヒトの耳の  
ある部分には鱗が生えてるし。まあ、耳に当たる器官は大体同じとこにあるんだろうけども。まあいいや。推定耳元に囁  
いてやれ。  
「変に、なりたくないですか?」  
 そう言って、サーラ様を後ろから抱きすくめる。興奮したのか俺の体温が移ったのか、彼女の肌はほんのりと温かくなっ  
ている。彼女が身じろぎするたびに鱗が胸板に擦れて少し痛いけど、それも愛おしい。  
「変になったら、・・・その、だめだろう。恥ずかしい事して欲しくなっちゃったら恥ずかしいし・・・・・・」  
「大丈夫、俺しか見てませんよ」  
「だからって、そん・・・ん?ああ、そ、そこわぁ」  
 実力行使開始〜♪すっごく敏感なおっぱいを乳首に触れないように軽く揉み込む。む、この攻撃は有効なようですぞ、  
閣下!(だれだ、閣下って)  
「恥ずかしい事、気持ちいいでしょう?」  
「やっあっ、気持ちいいけど、気持ちいいけどぉ」  
「気持ちいい事して欲しくないですか?」  
「して欲しいけど、・・・ん・・・怖いのぉ」  
 
「怖い?どうして?こんなに気持ちいいのに?」  
 肩から鎖骨のくぼみを通って顎の下の方にむかって舐め上げつつ聞いてみる。  
「だってだって、ん、きもちくなると、や、よすぎて、ああはあん!とけちゃいそうにっ、なるぅうん!」  
「・・・・・・大丈夫ですよ。捕まえてますから」  
「はうっ、は?だい・・・じょぶ?」  
「はい。溶けないようにちゃんとサーラ様のこと捕まえておきますから。気持ちよくなって下さい」  
 そういうと、サーラ様は首を回してこっちの顔をのぞき込んでくる。きょとんと、胸を揉まれてる事も忘れたみたいに、きょとんと。  
「・・・サトル」  
「はい、っん!?」  
 !?いきなり、唇がふさがれる。って、サーラ様の方からキスをしてきた?ん、舌が、口の中で暴れてる。技工も何もな  
い。ただ深く深く味わおうと繋がろうとしてる。・・・俺も応えないと。入ってきた舌を自分の舌で受け止めてからみつける。  
最初はびっくりしたみたいだけど、だんだんと俺のリードに任せてくれる。たっぷりそのまま一分ほどキスをして離れる。  
 もう既にとろけきった表情で、サーラ様が俺を見つめる。  
「・・・・・・離しちゃ、やぁだからね」  
「え?」  
「サーラの事、離しちゃやぁだからね」  
「・・・はい、離しません。絶対」  
 押し倒す。もうだめだ、止まらない。てゆうか、堪らない。  
「ひゃあん!」  
 押し倒したサーラ様の股間に手を入れる。布越しに触れたそこはしっとりと湿っていた。不規則に暴れる下半身を何とか  
抑えつけて、下着と一緒に薄絹のズボンを降ろす。  
「や、そこ、そんな、んん!やだやだ。はああぁん!」  
「サーラ様・・・・・・全部みたいです。汚いとこも恥ずかしいとこも全部」  
 力ずくの抵抗も、黒い肌を愛撫するとどんどん弱くなる。背中から、お尻を通って太腿。張りのある筋肉の上に薄く乗った  
脂、すべすべの肌の感触が指先から脳髄まで駆け上ってくる。  
 
「やぁぁ、みないでよぉ・・・・・・」  
 両手を顔で隠して涙声で哀願するけど、その声にはどこか甘えるような響きがある。その甘えに応えて、両脚を広げて  
そこに顔を寄せる。  
 サーラ様のおまんこは毛が生えて無くて、ほころんでもいない。ただ一筋の切れ込みが肉厚な黒い肌の土手に入って  
いるだけだった。その割れ目から一筋、中華あんかけのあんのような粘度の高い愛液がこぼれ出ていた。  
「ひゃ。い、いきが、あそこに・・・・・・」  
 俺の荒い息がかかるのを感じているらしい。サーラ様のおまんこを両手で開くと、初々しいピンク色の性器が閉じこめて  
いた愛液をあふれさせる。  
「あっ!?やっ、そ、そこ汚い・・・・・・んんんっ!?」  
 確かに恥垢の溜まったそこは「汚い」んだろうけど、でも、どうでもいいや。迷わず吸い付いてサーラ様のそこを掃除して  
あげる。  
「やああぁぁああはああはあああっ!?なになひこれぇっ!!」  
 あーあ、ひだひだの隙間に溜まってるよ。全部舐め取ってあげよ。ん、おいしい。  
「そこそんなしちゃらめえええぇぇえぇ!」  
 ん、やっぱりここはまだ皮被ってるんだね。いきなり剥くと痛いだろうから、あらかじめほぐしておかないと。ちゅ。  
「ひ!?やあっ!すっちゃだめ!!びりって、びりびりってくる。きちゃうきちゃうよぉぉおおおっ!!」  
 わわ、すご。クリトリスを皮の上から吸っただけでどんどんあふれてくる。すっごく感じやすい体質なんだねえ。なら大丈  
夫だね。皮を剥いて、吸い上げて舌で転がしてあげちゃお。  
「だめだめらめだめそこそんなされたら、へんになっちゃう!へんなのきちゃうぅぅぅぅうううう!!」  
 
 ぷしゃっ。  
 
 サーラ様の奥からひときわ勢いよく愛液が吐き出されて、四肢が弛緩する。二回目の絶頂に追い込まれて失神寸前み  
たいだ。・・・・・・今やっちゃって大丈夫かな。でも、もう俺の方がおさまんないし・・・・・・。とりあえず、指で様子見てみるか。  
「ん、ああ。も、もうらめぇらよぉ」  
 中指を差し込んでみてみるけど、サーラ様は痛くないみたいだ。第二関節まで差し込んだとこで膜だと思われる抵抗を  
感じる。けど、そこまで触っても痛くはなさそう。  
 ・・・・・・いいや、やっちゃえ。首刎ねられてもいいや。  
 サーラ様の小さな身体に覆い被さって、おまんこに俺のペニスをあてがう。未だ忘我の縁にある彼女は、抵抗しない。  
むしろすがるように俺の背中に手を回してきた。  
「ん・・・、サト・・・ル・・・」  
 聞かないでやっちゃうのは少し罪悪感があったけど、でも、止まらない。一息に腰を推し進める。  
「・・・ん?ひぎっ!?」  
 怖がらせないため・・・・・・ちがうな、もう俺が我慢出来ないからだ。一気に突っ込こんで処女膜を突き破り、出来る限り奥  
まで押し込む。初めての証である赤い血が愛液と一緒に吐き出されて、俺の陰毛を濡らす。  
「いっいたっ!・・・な、なにを・・・・・・くうっ?」  
 痛みに身じろぎする彼女の身体を抱きしめる。初めてのサーラ様の中はぎっちぎちにきつくて俺のを痛いぐらいに締め  
付けてくる。痛すぎてちっとも気持ちよくないんだけど、今この腕の中の少女の初めての男になったという事実が俺を高ぶ  
らせて萎えさせない。背中に爪が食い込む痛みが走る。けど、それも嬉しい。  
「う・・・あ、いたいよぉ。ぬい・・・てよぉ・・・。こんっ・・・なの、ひどいよぉ・・・」  
 涙をぽろぽろこぼしながら哀願してくる彼女を抱きすくめて耳のあたりに囁く。  
「大っ・・・丈夫ですか。サーラ様、ち、力を抜いてく・・・ださい。抜けば、楽になります・・・うっ!」  
「だって、だって、いたくて・・・むりだもん・・・いっ!」  
 どうやら、サーラ様は痛みで動けなくなってるみたいだ。なら・・・・・・。  
「いぎっ!や、うごかない・・・ひゃう!?」  
 なるべく腰を動かさないようにして、サーラ様の胸に手を伸ばす。ゆっくりと出来るだけ優しく揉んであげる。手のひらの  
中で、再び乳首が固くなっていくのを感じる。  
「ひゃ・・・あ、そこ。んん、は、ふぅ」  
 
 いくらかでも痛みが紛れてくれただろうか。いや、そうしなきゃ。固くつぶったまぶたの上からキスをして、涙を唇で拭う。  
左腕を背中に回してゆっくりと撫でさする。  
「いっ、ん。・・・・・・あぐ、ん。はあぁ」  
 愛撫というより、慰撫するような心持ちでサーラ様を抱く。それが通じたのかそれとも単に慣れたのか、そのうちにだん  
だんと身体から固さがとれていく。・・・・・・噂に聞く膣けいれんかな?とも疑っていたけど、『そこ』の力みも抜けていってる。  
 力任せの締め付けが終わっても、元から狭い初めてのそこはきゅうきゅうと俺を締め続けてる。けど、奥の方から愛液  
が滲んできて少しずつ余裕が出来る。う、奥の方、動いてる?ぴくぴくと俺の先にサーラ様が動いてるのが・・・わかる。  
「うっあ・・・あ、さ、サーラ様。大丈・・・夫ですかっ、あうっ」  
「あああぁぁあん!なんかっすごいの、へんなの。いたいとこきもちくてあついの、は、はいってるぅ!」  
「はぐっ、し、締ま・・・る。動・・・いて良いで・・・すか?」  
「は、ああ、う、うごく、の?なかのこれ、うごいちゃうの?」  
「だってっ!サーラ様のなかが、気持ちっ・・・よくて。我慢できそうに・・・な、あ!」  
 うわあっ!?いきなり、か、絡みついてぇ・・・くるっ!?締め付けるだけじゃなくて、カリのとこでひだひだが動いてっ!!  
だめだっ!腰が勝手に動き出すぅ!!  
「あぁっ!サトル、き、きもちいいの?サーラがきもちいいの!?」  
「いいっ!いいですっ!サーラ様!サーラ様!」  
 もう、締め付けて絡みついてずりずり擦れて何がなんだかわからない。本能だけで身体が勝手にピストン運動を始める。  
「うはあぁああ。うごいてるよぉ!すごい、ずんずんって、へんなの、へんなの、また来ちゃうぅううぅぅうう!!」  
「うあっ!そ、そんな締めたら、出ますっ!出ちゃいますっ!」  
「やあああああぁぁぁぅああん!!」  
 サーラ様が一声高く啼いて、俺を締め付ける。身体の中のなにもかも吐き出すような射精感。脳幹が真っ白になる。そして・・・・・・  
 
 
 う・・・ん、ねむ。えと、寝てたんだっけ?確か昨日は・・・どうしたんだっけ?・・・どうでもいいや。とにかく二度寝を・・・ん?  
何か重い?胸の上に何か乗ってるような・・・・・・。  
「目を覚ましたようだな」  
 はいっ!?胸の上には黒い肌の少女・・・って、サーラ様!っと、やっと頭がはっきりしたぞ!そう!二人は昨日情熱的  
に愛し合ってその後・・・・・・どうなればマウントポジションで首に刃物を当てる事になるのでせうか?ああっ!しかも、サー  
ラ様から殺気がっ!?  
「貴様、よくもこの私をああまで辱めてくれたなぁ?」  
「ヒイィッ!?」  
 何ですかその目だけが真顔の『マジコロス笑み』は!?  
「しかも主人に血を流させるなど。奴隷が主人に粗相をした以上、どうなるかわかっているのだろうなぁ?」  
「ちょ、ちょっと、まて!?」  
「む、その上、主人に対して命令か。恐怖を与えてから首を刎ねようと思って起きるまで待っていたが、失敗だったか。仕  
方ない、この教訓は次回に活かそう」  
「すいませんごめんなさい勘弁してくださいっ!!何でもしますから命だけはお助けをぉぉ!!」  
 と、とりあえず、あやまらないと死ぬ!?半分以上生存本能で口から言葉が出てくる。それを聞いたサーラ様が鮫のよ  
うな笑みを浮かべた。  
「何でもするだと?貴様の失態に見合うだけの働きをするとでもいうのか?」  
「はいっ!誠心誠意勤め上げさせていただきますっ!!」  
「ほう、では・・・・・・夕餉の支度をしてもらおうか」  
 ・・・・・・はい?  
 呆然とする俺の胸から降りて、背中を向けて座る。そのままこっちを見ずに声をかけてくる。  
「どうした、私が見てない間にとっとと身繕いして支度をしろ」  
「は、はい!」  
 急かされてとりあえず身体をタオルで適当に拭って身支度をすませる。急いで外に出て、とりあえず飯の用意をする。  
そして、もうすぐできあがるという所で唐突に気付いた。  
 
 からかわれたと。  
 
「ん、良い匂いをさせているな」  
 ダッチオーブンのなかからトマトの匂いが漂い始めた。嗅ぎつけて上機嫌でテントから出てきたサーラ様に恨めしげな  
視線を送っておく。底意地の悪い笑顔を見る限り効いてはいないみたいだが。  
「む?なんだその目は?何でもすると言ったのはお前だぞ?」  
「そりゃまあ、そうですけどね」  
 それにこういう仕事はもとより召使いの仕事だろうしやって当然だが、ああいう形でやらされれば不満は残る。・・・・・・本気  
で怒るほどの事でもないけど。  
「ところで、何を作っているんだ?」  
「トマト缶があったんで、豆と肉を入れて煮てみました。あと、パンケーキもどき」  
「もどき?」  
「パンケーキのようなもの、でもいいですが」  
「よくはないだろ」  
 そんなアホなやりとりをしながらも、食事は出来た。  
 料理のデキはそこそこ。異世界の味付けで大丈夫かなと思ったが、サーラ様は特に文句もなく平らげた。食後のコー  
ヒーを淹れて一息つく。・・・・・・あー、昨日の事とか聞いて良いのかな。  
「む、何か言いたい事でもあるのか?」  
 あちゃ、気取られたか。いやまあ隠したつもりもないけど。・・・・・・いいか、聞いちゃえ。  
「昨日の事なんですけど」  
「む」  
 サーラ様が顔を赤らめて身構える。ヤブヘビだったか?でも、ここで止めるのもなあ。  
「どうして俺を信じてくれたんです?出会ったばっかりの俺を」  
 聞かれて返答に詰まったようだ。たっぷり一分ほど考えて、コーヒーを一口すすってから答えてくれた。  
「真剣だったからだ」  
「真剣・・・ですか?」  
 
 サーラ様は一つうなずくと答えを続けた。  
「脅されても、追われても、お前はどこか冷めていた。必死になっていても、なりきれないようなそんなところがある。少な  
くともそう感じた」  
 う、それは前の彼女に別れる時に言われた・・・・・・。出会って、一日しか経っていないヒト・・・じゃなくてヘビか・・・にもそう  
いわれるとは。  
「そのお前が・・・『優しくする』と言った時だけ真剣に見えた。・・・・・・それだけだ」  
 恥ずかしそうにそっぽを向いてサーラ様はそう言った。何となくこっちも気恥ずかしくなって、空を見上げる。ええと、その、  
こんなときなんていえばいいんだろ。あの、その、なんか、微妙な緊張感が。なぜか、ドキドキする。  
「さて!納得した所で話は終わりだ!」  
 そんな静寂を破って、突如大声でサーラ様が立上がった。  
「早く出発するぞ!奴等に後続隊がいないとも限らん!」  
「そ、そうですね!早く撤収準備をしましょう!」  
 急いで荷物を片づけて自転車にくくりつける。自転車にまたがり、サーラ様がしがみついてきたのを確認して漕ぎ出した。  
サーラ様の指さす方向に。  
   
 満天の星空。細く欠けた月。どこまでも広がる岩と砂の荒野。吹く風は乾いて冷たい。  
 俺は自転車を漕いでいる。キャンプ用の大荷物と一人の・・・いや、一匹のと言うべきか?・・・少女を乗せて。  
 街までは、まだ大分あるらしい。のんびりと行きたい所だが、少女はそれを許す気はないらしく、速度が落ちるとハッパ  
をかけてくる。  
 何でこんな事になったんだろう。十何回目かになるその問に思考を飛ばしつつ、無言で自転車を漕ぐことにした。  
 
 走る走る、自転車が走る。回る回る、銀色の車輪が回る。続く続く、果てなき荒野は続く。  
 何もかも始まったばかりの二人を乗せて。  
 

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