盲目の幼馴染、名緒。  
 彼女に会いに、僕は家まで来た。  
『恵太くん。今日は私たち、どうしても家を空けないといけないから、名緒の面倒を見てあげてくれないかしら』  
 おばさんは実の両親のように、僕に良くしてくれている。  
 それに彼女と一緒にいられる、というだけでも、断る理由が無い。  
 
 僕は合鍵を使って家に入ると、すぐ手前にある襖を開けて、部屋に入る。  
 物音に反応し、畳に座っていた彼女がこちらに顔を向けた。  
「恵太くん?」  
 入り方で家族との区別が付くらしい。  
「当たり。今日は一日、僕が一緒にいるよ」  
 
「え? でも、せっかくのお休みなのに…悪いよ」  
 彼女は白いブラウスに、紺のスカート姿。  
 セミロングの黒髪はきれいに整えてあり、どこぞのお嬢様にも引けを取らない。  
 その上顔も良いとくれば、美少女との形容が何ら不思議でない。僕は見るだけでどきどきする。  
「名緒とデート出来るなら、休みの一つや二つ、全然惜しくないから」  
 
 彼女の顔がぽっと染まり、恥らうように背ける。  
 昔から大人しかったけど、まさかこんな風になるなんて――思わず顔がにやけてしまう。  
「デートって……もう」  
 そう言うと再び向き直り、ゆっくりと腰を上げる。  
 以前は補助がないとふらついて倒れることもしばしばだったけど、今は一人で立ち座りも出来る。  
 
 立ち上がった彼女は、僕の方に足を踏み出した。  
 一歩一歩はとても短く、手は目の前に突き出してバランスを取るように、慎重に。  
 やがて、彼女の掌が僕の腹部に当たる。  
「あ、いた」  
 彼女の顔が安心したように綻ぶ。  
 
 僕の高さを把握している彼女は、ここまで来ると感覚で大概を掴む。  
 少しだけ手探りをした後、掌は僕の頬を包んだ。  
 柔らかい感触。そして、ほんのりと温かい。  
「良かった…恵太くんだ」  
 手がゆっくりと僕の目や鼻や口に触れていく。  
 
 僕も両手で彼女の頬を包む。  
 その顔は小さくて、僕の手がとても大きく思えてしまう。  
 彼女の頬もまた、ほんのりと温かい。  
「恵太くんの手、ひんやりして気持ち良い」  
 その感触に神経を集中させるかのように、見えない目をつむる。  
 
 キスが、したい。  
 今すぐ抱き締めたい。  
 会ったばかりなのに、もうこんなに愛しさが込み上げてくる。  
「……どうしたの? 今日は、何もしないの?」  
 そんなはずない。僕は抑制を捨て、彼女と唇を重ねる。  
 
「ん――」  
 一瞬反応はしたが、すぐに順応してくる彼女の体。  
 僕の舌を優しく受け入れ、控えめながらも乱される。  
 手は顔を滑るように下り、僕の鎖骨で止まる。  
 僕も頬から手を落とし、首・肩・背を通して腰に回す。  
 
 家に二人だけの時の、秘密の時間。  
 そう、デートだ。何に縛られることもなく、ただ愛し合える――。  
 おじさんやおばさんの目を盗んで、バードキスなら何度もしたけど、これはそういつでも出来るものじゃない。  
 だから、余計に激しく求め合ってしまう。  
 そのまましばらく、僕らのフレンチキスは続いた。  
 
「ぷはっ――」  
 ようやく終わるキス。唇をゆっくりと、引き離す。  
 すると彼女は目を開き、切なそうに僕を見つめる。  
 見えていないはずなのに、視線はしっかりと合っている。心と体はまだ、シンクロ状態。  
「……しようか」  
 
 部屋の隅にまだ引かれたままの布団。  
 彼女の体をゆっくりと抱きかかえ、その上にそっと下ろす。  
 落ち着かない様子で、僕の方に顔を向けたままの彼女。  
 寄りかかるようにして、僕は肩に手を置く。  
「うっ…」  
 
 怖いのか、彼女は体を仰け反らせた。  
 そう言えば抱いたのはまだ二回だけ。どちらも夜で、まともな時間にやるのは初めてか。  
「心配しないで、ね」  
 僕はそう言うと、再び唇を唇で塞いだ。  
 嫌がる素振ながらも、体の力が抜けていく彼女。  
 
「……はぁ…い、いきなりすぎるってば…もっとゆっくり――」  
 でも、我慢出来ない。僕は彼女の体を抱き締める。  
「名緒…好きだよ」  
「ひ、卑怯だよそんなの…私だって――あっ!」  
 首を噛むと、びくんと反応する彼女。感度は既に強く研ぎ澄まされている。  
 
 僕は背後から彼女の体を抱えるように座る。  
 そして両手を回し、二つの膨らみをそっと掴む。  
「んうぅっ」  
 大きすぎない程度で形も弾力もちょうど良い。以前と比べると大人になった。  
 彼女は僕と会い、キスをして、交じ合うたびにどんどん魅力的になっていく。  
 
 揉むだけでも高揚するけど、その内布越しでは満足出来なくなる。  
 僕はブラウスのボタンを外し、中に手を差し込む。  
「んふっ…!」  
 段々と漏れる声が大きくなっていく。  
 視覚がない分、彼女は他の感覚が鋭い。だから、こうした愛撫にも多分人一倍弱い。  
 
 硬い感触のブラと、柔らかな胸。強く揉めば、その都度彼女は切ない声を出す。  
 体が熱い。そしてどんどん下に血が行き、波打ち出す。  
 ブラの隙間から更に手を入れ、突起から撫で回す。  
「んんっ…ううっ…」  
 快感に抗うように、体を捩る彼女。  
 
 右手が胸を弄っている中、余った左の使い道。  
 彼女の曲げた膝に触れると、徐々に付け根の方へと這わせて行く。  
「あっ…いやっ…」  
 スカートの中、太腿に触れ、何度か焦らしを入れる。  
 そして膨らみへと、指をかける。  
 
「あんっ…!」  
 じっとりと濡れた布は、触れる僕にも興奮を誘う。  
 二度三度、線をなぞるように這わせ、また存分に焦らせる。  
 彼女が僕の腕を思わず掴んでくる。止めてほしいのか、それとも早くその先に行ってほしいのか。  
 構わず布の中に手を入れ、熱く湿った女の部分を擦る。  
 
「ふ…ああっ…い…や……!」  
 更には穴に手を入れ、掻き回す。  
「――や、いくぅっ!!」  
 いきなりドバっと僕の指にかかる液。それは布を通って滴り落ちるほど、たくさん出てくる。  
 そして力が抜けたのか、彼女は背中から僕にもたれかかってきた。  
 
「けい…たくん…」  
 涙目で天を仰ぐ彼女が、どうしようもなく可愛い。  
 僕はまたキスをする。  
 何度繰り返しても、飽きない。気持ち良い。  
「……はぁっ…恵太くん…背中にずっと、当たってる」  
 
「今度は、私が――」  
 彼女は向き直り、僕のジーンズのボタンを外し、チャックを下ろした。  
 怒張したそれは既に下着で抑えきれないほどで、染みすら作っている。  
 手でそれをしっかりと包んだ彼女は、優しく撫で始めた。  
 痛い。そして形容し難い快感。  
 
 下着まで脱がし、彼女は直に僕のそれに触る。  
 そして、顔を近付けてくる。こつん、と鼻にぶつける。  
 何をするかと思えば、舌を出して先端を舐めてきた。  
「うっ!」  
 だめだ、これは効きすぎ――!  
 
 精が溢れ出て、彼女の舌と顔にべったりとかかった。  
「ああっ…!?」  
 僕は慌てて近くのティッシュに手を伸ばし、彼女の顔を拭く。  
「ごめんっ、まさか――」  
「……苦い」  
 
 彼女の積極性には驚いた。まだどきどきが収まらない。  
「服、脱ぐね」  
 そう言うと、彼女は改めてブラウスのボタンを外し、袖から腕を抜く。  
 細く白い両腕に、鎖骨、括れた腰周り、へそと僕の目を釘付けにする。  
 続いて半分取れかかっているブラを、背中に手を回して外す。  
 
 ぱたっ、と覆うものが落ち、視覚に飛び込んでくるきれいな双丘。  
 恥らう素振が余計に僕の心と下を刺激する。  
 今抜けたばかりなのにも関わらず、もう張り詰めてきた。  
 そして彼女は立ち上がると、今度は下を脱ぎ始めた。  
 スカートがすとん、と下に落ち、僕はそこから徐々に視線を上げていく。  
 
 やがて一番大事な部分に目が止まる。そこにはぐしょぐしょに濡れた下着が一枚のみ。  
 彼女はそれに手をかけ、下に引き下ろす。  
 つーっと糸が引き、露になる彼女の隠された部分。  
 脱ぎかけてよろける。僕は立ち上がって、その体を抱き止める。  
 僕が最も好きな女性の裸体が、体に密着している。  
 
「恵太くんも脱いで――」  
 自分だけこんな格好じゃ恥ずかしい、とでも言いたげに。  
 僕も手っ取り早く服を脱ぎ捨てた。一糸纏わぬ姿になって、改めて彼女を抱く。  
 ――今度は一緒に、行こう。  
 そう心に決めてキスをし、僕らは布団に倒れ込む。  
 
 潤んだ瞳で僕を見る彼女。  
「恵太くんの顔…きっと凄くエッチな顔だ」  
 普段はあんなに大人しくて、慎ましいのに――。  
 なのに今は恍惚とした表情にすら見えて、僕の心に最後の火を付ける。  
「挿れるよ」  
 
 三回目だしずいぶん濡らしたので、彼女が痛がる様子はない。  
 ただ静かに目をつむり、受け入れる。そして重なる。  
 彼女はこの体勢を望む。しっかりと顔を合わせて、キスをしたいからだと言う。  
 愛しい。無茶苦茶にしてしまいたいほど。  
 僕が腰を動かし、彼女は抱きつくようにして、喘ぐ。  
 
 唇をまた重ねる。これまで以上に濃厚に、激しく舌で犯しあう。  
 大きな胸が、僕の胸板で上下に動き、擦れる。  
 手もお互いにしっかりと絡めたまま、離さない。  
 きつく強く、下を受け入れてくれる器が、何にも増して気持ち良く、そして僕の理性を奪う。  
 時間さえも、分からなくなる。  
 
 歯止めが利かなくなり、突き上げてくる勢い。  
「……はぁ…もう――無理っ!」  
「う…んっ――!」  
 下が、体のどこよりも熱く、濃いものを噴き出す。  
 彼女は言葉すら出せず、悶えるように震えながら、それを体で受け止めた。  
 
「……」  
「……」  
 僕らはベッドに横になったまま、しばらく休んでいた。  
 まだよく考えたら朝だ。これからどうしよう?  
 そんなことを今更考えていると、突然彼女が起き上がった。  
 
「……もっと順序を踏んでしたかったのに」  
 僕も起き上がると、彼女をまた抱き締める。  
「ごめん。でも名緒に触れられたら、気持ちが収まらなくなっちゃって」  
 と、彼女が手で僕の頬を見つけて、ぐいっと伸ばした。  
「せっかく恵太くんが来るかなって思って、お洒落していたのに――あ〜あ」  
 
 僕らはシャワーを浴びた。  
 如何わしいことは一切なし。後でするかもしれないけど……。  
 多分、もっとゆっくりあの格好を見てほしかったんだろうし、褒めてほしかったのかな。  
 彼女は僕の補助こそ拒否しなかったが、やや不機嫌な感じに見えた。  
 シャワーが済んだので、浴室を出てバスタオルで体を拭く。  
 
「代わりのに着替えるから、外に出てて」  
 足元には既に次の着替えが準備してあった。こうなることを予測? まさかね……。  
 大丈夫かな、と思いつつ僕は外で彼女を待った。  
「お待たせ」  
 出て来たのはスモックにホットパンツというラフなスタイルの彼女。これはこれでまたそそる。  
 
「とても似合うよ」  
「本当に? さっきとどっちが?」  
「どっちも似合う」  
「適当に言ってるでしょ。ふん、だ」  
「あー名緒、ごめんってば」  
 
「――そうやってキスするか抱き締めれば、良いと思ってるんだ」  
「機嫌直してよ、名緒。どっちも名緒が可愛くて、選びきれないんだってば」  
「……もう。怒る気もなくなっちゃった。ねぇ、だったらもう一度ちゃんと、好きって言って」  
「好きだよ、名緒。名緒の全てが好き」  
「…私も、大好き」  
 

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