「ふむふむ、これが新しい家ね……ま、そこそこ過ごしやすそうじゃない」  
「……えー、と。一美ちゃん?」  
目の前の少女に話しかける。  
彼女はいつものように、きつめの視線をこちらに向けてきて。  
「なに、六郎。どうかした?」  
「いや、どうかした、って。何でここにいるのさ」  
「……バカねー、決まり切ってるじゃない」  
呆れたように首を振ったあと、ビシッとこちらに指を突き付ける。  
「あんたが新しい家に越すっていうから着いてきたんじゃない」  
「え、えぇっ!?」  
こちらが慌てるのもどこ吹く風、彼女は当然のように続ける。  
「あんたのことだから、自活なんてできないでしょうし。  
 どうせ大学は一緒なんだから、生活リズムも変わらないでしょ?」  
なんて、軽々ととんでもないことを言う。  
「六郎のことは任せたー、って、おばさまにも許可はもらってるんだから!」  
尚も続ける一美ちゃんに、一つ確認しないとダメ、だよね……?  
「で、でもさ、一美ちゃん、家は?」  
「は?ここに住むに決まってるじゃない……」  
「それって……ど、同棲じゃぁ」  
 
5秒。10秒。  
ポンッという音を立てて、彼女の顔が真っ赤に染まる。  
「ば、バカじゃないの!?あんたと私は単なる幼なじみ!そういう関係じゃ、絶対ないんだから!」……彼女には、もう少し「他人の目線」が必要かも……  
 
 

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