俺には二歳から一緒の幼馴染みが居る。スポーツも、勉強も、家事だって出来て、溢れるカリスマ性は人望を集めて離さない。
そんな奴だから、高校一年にして生徒会長なった。
そんな奴だから、俺を無理矢理に生徒会へ入れた。
「受け取れ、9万1000私ポイントだ」
こんな奴だから、時には予想外の行動を取って俺を困らせる。
「なんだ、コレ?」
夕暮れの生徒会室。数時間前と比較にならない程に静まり返り、二人の呼吸音だけが唯一のBGM。
パイプ椅子に座り、長テーブルの上で纏めたプリントを鞄に詰め、帰り支度をしてたら、突然に紙切れを渡された。
「なーに、一ヶ月頑張ってくれたからな……役員報酬さ。これからは、毎月の頭に同額をくれてやろう」
渡されたのは十一枚。お札に似た形容で、『1マン私ポイント』とマジック書きされた紙が九枚。同様にセン私ポイントが一枚。
そして最後の一枚はルーズリーフ。そこにはポイントの使い道が、交換ラインナップが箇条書きされていた。
・頭を撫でてやろう※セン私ポイント
・扇いでやろう※ニセン私ポイント
・ギュッとしてやろう※サンゼン私ポイント
と、軽いモノから……
・手でヌキヌキしてやるぞ※イチマン私ポイント
・口できゅぽきゅぽしてやるぞ※ニマン私ポイント
・ゴクウが敵全員を相手にするぞ!※激震フリーザ
・さぁ、セックスだ!※サンマン私ポイント
と凄いモノまで細かく設定されている。
だけどそれよりも、俺の視線を捕えて放さないのは……下も下、一番下の項目。
・恋人同士になる※ゴジュウマン私ポイント
更にその下に小さく、上記の事なら何でも可と書いてある。実質のフリーパス券。
つまり毎月使わずに貯めれば、9×6の半年で届く計算だ。
恋人同士になるなら……
50万ポイント………!
確かに今は足らないが、とはいえ……
こいつに、すべてがかかっているっ………!
オレの未来の行く末がっ……!
堕落も、破滅も……そして、忍耐の先にきっとある……突破口もっ……!
「どうするのだ? さっそく使うか? 24時間365日、貴様の好きな場所で、シテやるぞっ?」
幼馴染みは会長椅子のキャスターを滑らせ、テーブルを挟んだ前まで来ると、俺の方へと向き直して妖しく微笑み、ゆっくりと腕捲りを始める。
誰が使うかっ……!
オレは貯めるっ……!
「ぐうっ……!」
しかし……
くそっ、ざわめきやがるっ……!
使えるっ、オレは使えるっ……!
キスも、手コキも、フェラ、パイズリ、セックス……
今の俺は持ってるんだからっ……!
その気になりさえすれば……くそっ……!
「それじゃあ、さぁ……」
本当は違う、半年計画でも使えなくもないっ……!
約4万ポイントは余分……余るってことだ……!
オレは今、半年で4万までは使えるんだ……!
だから、その気になれば……
バカっ……!
そういう考えが破滅を呼ぶんだ……
しかし……
「手だけ……手で、シテくれ」
「んっ? それはイチマン私ポイントを支払い、ヌキヌキして欲しいと言う事か?」
頭を縦に振る。
考えてみれば、生徒会に入れられて一ヶ月我慢した、今日は特別な日だ……!
「ふっ、嘘をついてはいかんな」
「え……?」
「下手だなあ貴様は……へたっぴだ」
深く吐かれる溜め息。
幼馴染みは俺からルーズリーフを奪い取ると、テーブルの上に置いてトントンと指差す。
「欲望の解放のさせ方が壊滅的に……なっ? 本当にしたいのはコッチ……ゴム無しでセックスして、孕むかどうかのギャンブルをしたい」
うっ……!
「だけど、それはあまりにもポイントを消費するから、コッチの……手コキで妥協しようとしてるのだ。
よいか? ダメなのだよ……そう言うのが実にダメなのだ。せっかくスカッとしようとする時に、その妥協は痛まし過ぎる。
そんな気持ちで射精してもスッキリしないぞ? 嘘じゃない、かえって精子が溜まるのだ。
できなかった膣内の感触がチラついて、心の毒は残ったままだ。自分への褒美の出し方としては最低だな。
贅沢は……小出しはダメなんだ。やる時はきっちりやった方が良い。それでこそ来月の励みになると言うものだ。なぁ、違うか?」
言われてみれば、確かにそうかも。
「来月もまた手に入るのだ……いつまでも届かない目標に向かって、いつまでも、いつまでも……いつまでも、他の女を見ず、私だけを見ていろ」
おしまい