「ずっと好きだったんだ…」  
「西宮君…私も…」  
「好きだマイ」  
高校の卒業式、夕暮れ時の海岸で幼なじみの彼から告白された。  
私も小さな頃からずっと彼が好きだったから、凄く嬉しかった。  
 
大学は別々になってしまったけど、私達なら大丈夫…。この桜貝がある限り…。  
 
 
ティララ〜ラ〜…  
 
 
「どうかな?このゲーム」  
EDの曲が流れ始めると篤守さんが口を開いた。何でも新しく携帯ゲームのコンテンツにも乗り出すらしく  
その試作品?を私にやらせてくれたのだけど、早く感想を聞きたくて仕方ないと言う様子だ。  
「そうですね…ベタな感じで良いかと思います」  
とりあえず、無難な感想を言いながらパソコン画面に流れているヒロインと攻略相手の絵を見た。  
「そうだろ?やっぱり幼なじみで数年離れ離れになった二人が再会して恋人同士になるっていいよね。  
まだ改善する所は沢山あるけど、割と評判も良いし売れそうかな?」  
篤守さんは、私の感想に嬉しそうにビールを飲みながら、語ってくる。  
しかし、親の都合で何年も離れ離れになった二人が再会して恋人同士になる  
と言う設定がそれ程良いものなのかと私はもう一度画面を見ながら首を傾げる。  
 
「篤守さんはこういうのが好きなんですか?」  
「この手のゲームではアンケートでの人気は良いらしいよ…僕も好きかな?」  
「へ〜意外です」  
「そう?離れ離れだった幼なじみの女の子が美人になってて、しかも自分を頼ってくれるのって男のロマンだと思うよ」  
私と篤守さんも何年も疎遠だったが、今こうしてメイドとして彼の側に居る身としてはイマイチ萌えなかった。  
「僕と都のようだね」  
は!?一瞬何を言われたのかわからなくてポカンとする。  
「メイドとして初めて家に来た時は、凄く綺麗になっていて都だと分からなかった」  
「私そんなに変わってましたか?」  
「ああ…まぁ中身は昔の頃と変わらないけどね」  
そう言いながらビールを飲み干す。あぁ、また酔ってる。『僕』と言い始める時は大体酔って饒舌になるのだ。  
ここ数ヶ月何故か期限が良くて週末になるとお酒を嗜む回数が増えてはいたのだけれど  
最近は酔って饒舌になる事が多かった。このゲームが前評判が良くて予想以上の利益が見込めるのだとかどうとか…。  
勿論詳しく教えてくれるわけじゃないけど、篤守さんが仕事の話を私にしてくれるのが嬉しくて聞き役になっていた。  
今日も話を聞いていると、いきなり篤守さんが後ろから私を抱きしめてきた。  
「あ…篤守さん!?」  
パソコンの前で椅子に座っていた私は身動きが取れなくて硬直してしまう。  
「都は好きじゃない…?この設定…」  
後ろから抱きしめながら耳元で篤守さんが囁いてくる。アルコールの匂いと耳に当たる息に背筋がゾクッとする。  
「ずっと好きだったんだ…」  
「あ…篤守さん!?」  
いきなりの台詞に私は顔を真っ赤にして振り向く。すると、篤守さんの顔が数センチ目の前にあった。頬を上気させ、凄く艶っぽい。  
「西宮君…て呼んで」  
「え?篤守さん?」  
「このキャラの名前…都はマイ…ちょっと実践してみよう」  
そう言うと篤守さんはマウスを掴むとササッと操作して二人の告白シーンの画面を起動させた。  
 
「君と離れてからやっと気づいた…俺はマイが好きだったんだ…」  
「西宮君…私もずっと好きでした…」  
画面に流れる台詞を二人で読み上げる。恥ずかしい…死ぬ程恥ずかしい…羞恥プレイというやつなのかしら。  
最後の台詞を言い終わって篤守さんの方に振り向くと、まだ至近距離に篤守さんの顔があり目が合う。  
「篤守さん?」  
「好きだよ都…」  
そう言うと篤守さんの顔が近づいてきて、私はキスをされていた。  
 
 
 

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