いくつもの国や部族を手に入れてきた。
そのたびに繰り返される宝物や女の上納。
表向きは持参金つきの、出身地では最高級クラスの女との縁組だ。
後宮という名の牢獄には、いろいろな種族の女達。
我が身を嘆くものもいれば、
戦火を逃れたことに安堵するものもいる。
君主に目通りすらかなわぬ野心家もいる。
何年も前、森深くに住む人々が畏れている種族を討った。
その部族では王族の次に由緒あるという家より女が差し出されてきた。
ご丁寧にも養女を取ったとのことだ。
人間ごときに屈服したくはないが、滅亡は避けたかったらしい。
後宮に押し込められた少女は長い耳をしていた。
今腕の中にいる、どう贔屓目に見ても女らしい肉付きを得る事に失敗した少女。
初めて後宮につれてこられたのを見たとき、
呆れてしまうとともに、思わず微笑んでしまった。
持参金とは思えない、背丈ほどもある大きな熊のぬいぐるみを持って、
恐らくかなりの忍耐を持って教え込まれたのであろう、
お辞儀を披露してくれたのだから。
その頃は父の補佐として戦場に赴き、戦の布陣について実地で学んだり、
宮殿では貴族達のあしらいや内政などのさじ加減を習っていた。
父も男であったからあまたの女性が後宮にひしめき合っていた。
ただ、母がある女の手に掛かって落命してからは、
後宮から足が遠のいてしまった。
縁組という名の制圧を違和感なく続けるためもあり、
太子を自分に定めると、今度は息子のための後宮を作り始めた。
こちらを蛮族としてみなしつつも、女を差し出さなければならない奴等は、
新たな女の確保に奔走したのかもしれない。
そんなことを思いつつ、熊についてきたまだ乳歯の前歯を持つ少女を、
居室へと案内してやったのだった。
中庭を散策していると彼女がいた。
いつものように人間には聞こえない高い音域と可聴域の声を組み合わせて歌っているのだろうか。
彼女は熊のぬいぐるみと一緒に生まれ故郷から木を持ってきていた。
彼女がもっともっと幼いころに死に別れた母親が彼女とともに故郷に持ち帰った木なのだそうだ。
彼女の母親は人間に恋し、身分を捨てて男の元へと行き、彼女を生んだらしい。
彼女の父親はどうなったのかは知らない。
元々人間界のものなので杜では育ちが悪く、
彼女もまた母親が唯一残してくれたものとの思いから縁組の際に移植を望んだらしい。
人間界のものといってもこのあたりの木でないためか、気候になじまないらしくやはりとても弱弱しい。
それで彼女自身も、勉強などの合間に木の様子を見ているらしいことは知っていた。
緑の親指を持つとかいう庭師の男と話している。
草木のことについては神がかりだが、日常生活では全く役立たずと聞いていた。
彼女の木の枝を示して彼女に話し掛けている。
彼女の顔がぱっと耀いた。
まだ月のものが来たとは報告を受けてはいなかったが、その夜、彼女を女にした。
子供の頃からよく添い寝はしていたが、読み書きなどを手ほどきしたりするうちに、
兄のように慕っていたのが師弟のような関係になり自然途絶えがちになっていた。
徐々に甘えるようなこともなくなってきていたし、
こちらも教え諭すような口調で彼女を嗜めることが多くなっていた。
儀式めいたことだが、夜伽に召す女の通例の湯をとらせた。
希少な動物から取れる香料を惜しみなく染み込ませた衣料を身にまとわせて、
彼女がおずおずと寝台へと進んでくる。
まだまだ早いと思っていたが、香りにより条件反射的に性感が高められる。
寝台になかなか上がろうとしない彼女をいらつきながら眺めていた。
髪につけていた花をあしらった飾りを外し、こちらにそっと差し出してきた。
「これを…」
はにかむような笑顔はすぐに凍ってしまった。
差し出された手をつかみ、寝台に引っ張り上げた。
花は落ちたが構っていられなかった。
目でそれを追いつつ、つかえながら消え入るような声で何か彼女は言った。
衣服を剥ぎ取り、身体をじっくりと検分した。
やはりまだ早いのだ。焦ってしまった自分に腹が立ってきた。
彼女はそんな自分を潤んだ瞳で見ている。
「これをくわえろ。」
前をくつろげて自身を晒す。何をさせようとしているのだ。
「さっさとしろ。」
おびえる彼女の頭をつかむと股間へと押し付けた。
「歯を立てるなよ。」
ダメだ。こんなの普通のことじゃない。
「よくなじませとけよ。おまえのためなんだからな。」
何言ってるんだ。そんな訳ないじゃないか。
ぎこちないながらも彼女の奉仕が続いていた。
さほど大きいとは思われないが、彼女の口にとってはもてあますものらしい。
時折えづきながら、そのたびに浴びせられる怒声にすっかり恐縮してしまっている。
継続的に与えられる刺激に身体は徐々に快楽を得てきたし、視覚も愛する女の奉仕に満足していた。
何よりピチャピチャと彼女の立てる音がより淫らな気持ちにさせる。
ただ心情のほうはというと、無理強いさせていることに対する後ろ暗さも合った。
だが、彼女につたない口技をさせているのはただ自分だけなのだと思うと、どうしようもなく吐精感が高まる。
彼女の頭を両手でがっしりと押さえ込み、彼女の口の中に欲望を吐き出す。一度では収まらず、二度三度と続けて出る。
ようやくおさまって引き抜く。
彼女の方はというと、焦点の合わない目でこちらを見ている。だらしなく開いた口からは白濁液やよだれが垂れている。
そういえば口付けをしていなかった。幾ら自分のものとはいえ、今更口づけする気にはなれない。
暴走してしまった自分に嫌気もさすが、気がおさまらずまた彼女に当たるようなまねをする。
「…本来ならこれはお前のここに出して、子を得るものだ」
彼女の口の白濁液を拭い、指をそのまま慣らしてもいない秘所にねじ込む。
「…ごめんなさい。」
何がごめんなさいなんだろう。彼女は何かしたのか?
彼女の脇に腕を回し、胸元まで引き上げてから体を入れ替えるようにして押さえ込んだ。
足を大きく開かせ、何度か指を抜き差しした後、突っ込んだ。
どうせなじむのだ。
そう心の中で言い訳しながら、腰を進める。
挿入を始めた時、口を大きく開けて息を詰まらせていたが、そのうちうなり声のようなものが出てきた。
視線は空をさまよっており涙もあふれ出てきた。
萎える。
中がきつかろうと、いとしい女の中を楽しむ余裕なども吹っ飛んでしまった。
人間とは違う長い耳に彼女はどんな反応をするのだろうか。
この日を想像していた時にはそんなことを考えていたことをふと思い出す。
肉付きの薄い胸で主張している蕾に噛み付きながら、もう片方は指でつまんで捻じ曲げる。
新たに苦悶の表情を浮かべた彼女の顔を見ながら、ただただ抽送した。
既に何度か精を出しているせいか、なかなか達することができない。
幾度か抽送するうちにひきつれるような感じがし始め、だんだんと痛みに近い感覚となる。
動かすのをあきらめて、貫いたままでいようかと覆い被さって脇腹を撫で上げた途端、
急に中が締まリ、それが引き金となって欲望がはじけた。
しばらくそのままでいた。
片手を敷物との間に入れて背中や腰のあたりを撫で回し、一方は互いの体の間に差し入れて首筋から胸を軽くつねるようにして、肌触りを楽しんだ。
時折足を大きく動かして反応を示すところがある。
涙はあらかた乾いていたが、視線は天蓋の一点に向いたままだ。
名残惜しいが、一度引き抜き体を起こす。
無理に媾ったためか、まだ生え揃ってもいない淡い茂みにも血の固まりかけたものがこびりついている。
純潔の証というよりも傷を負って流血したようにも見え、指を差し込み己の吐き出した欲望を掻き出し混ぜるようにしながら、
人間の女で愛撫するあたりを親指で探ると同じように体をひくつかせる。
空いた手で尻を持ち上げつつ後ろをいろいろと押してみるが、しっぽがないためか、
付け根あたりと思われる場所にも獣人とは違い、尻穴以外は反応が薄い。
左手を脇に回して背を支えて抱き起こし、向かい合わせにして座らせる。右手で顔を撫でそのまま耳をつまんでみる。
耳には柔らかな毛が密に生えて、ビロードのようにさわり心地が良い。
互いの体液にまみれてしまったものを拭きたい衝動に駆られるがやめておく。
耳朶は上半分の縁だけが折れており、それも先端に行くに従い平らになっている。
他は耳たぶなどがなく厚みが一定している。ウサギや犬の垂れ耳のような背面との毛並みの差もなく、血液が流れているのかも怪しい。
感情やその他自分の意思では動かすことができないらしく、耳介を噛んでも舐めてみても振り払いはしない。
息を吹きかけてみると反射的に動くくらいだ。耳の穴らしき箇所は嫌うとみえて、舌を差し込もうとすると体をよじって逃げようとする。
さらに背中を撫でつつ、涙の跡を舐めてみる。
格別変わった味もする訳でなく、そのまま唇を動かし今度は意味もなく鼻を甘噛みしてみる。
息苦しくなったのか口を開けたので、指を差し入れてみる。こちらも特に変わったところはない。
こちらも彼女のまだまだぽっちゃりとした指を口に含んでみる。足を肩に担ぎ上げ、足の指にも吸い付いてみる。
他にも体を撫で回したりして、思う存分反応を楽しんだ。
そのうちにまた気持ちが高まってきたので、腰をつかんで持ち上げ、座り直させるようにして貫く。
体が反り返って後ろへと逃げていくので、そのまま倒れるままにして寝台に横たわらせる。
女にしたことと、手中に入れたという思いでようやくまた彼女の体に対する思いやりができるようになってきた。
はちみつ酒でも飲ませればよかった。
まだまだ子供だから、カッファにたっぷり砂糖を入れる方がまだいいかもしれない。勿論ミルクも入れないとだめだろうが。
以前に飲まされて、あの時は大変だったなどと思いながら、献上されたものはどこにあったかなどと考える。
彼女は随分と顔をしかめて飲むことだろう。それでも性感を高めることができたなら。彼女も楽しめるようになるのなら。
口付けをして互いに飲ませあうのも良いかもしれない。
いろいろと考えているとなんだか楽しくなってきた。
彼女の方は口をパクパクし始めた。気持ちが穏やかになりつつも、容赦なく腰を動かしていたため、今度はあっという間に果てた。
夜はまだ長い。
彼女の負担が少なくなるなら、今すぐにでも飲ませよう。
体を離し夜着をすばやく身につける。彼女の方は放心状態のようだ。初めての共寝だから疲れてしまっているのだろう。
軽く夜具をかぶせておく。
寝台から降りた時に何かを踏んだ。
薬師のところに赴くとここしばらく献上されていないため切らしているのだという。辛うじてあったカカワトルを全て出させる。
ついでに棒砂糖とそれを砕くための金槌も念のため持ってこさせた。
小さな盆にそれぞれを載せる。湯を用意させるのに意外に手間取ってしまった。
明日からは寝室に燭台か何かで湯を沸かせる用意をさせておこう。幾ら人払いをしているとはいえ、
私室からすぐに用事を言いつけられるところに人がいないのも考え物だ。
寝室に戻り、はやる気持ちを抑えてサイドテーブルに盆を置く。
なんとなく違和感のある寝台に近づく。
彼女が消えていた。彼女から引き剥がした衣服もない。
ただ、彼女と情交があったことを示す印は残っていた。敷物も持ち去ろうとしたのか大きくずれてはいたが。
足元に何かが触れた。先ほど何かを踏んだのを思い出した。
持ち上げて見ると花に折りたたんだ紙片が結び付けてあった。
幼さの残る手跡ではあったが、これまでにしてみれば間違いのない綴りで文法も遵守していた。
彼女がこれを書いた時の気持ちを花とともに踏みにじったことを知った。