あれから、3ヶ月が過ぎた。  
ボクと、彼女が他人になって3ヶ月。  
 
よく、人間のカップルは4年がサイクルという、らしい。  
種付けをして、子供を産んで、子供が独りで生きられるサイクル、らしい。  
親父の世代に、三年目の浮気って歌があったらしいが、  
生き物的にはまちがって居なかったらしいな。  
 
ボクはキミにとって安心できる場所、安心できるところ、  
だからボクのことを好きだといってくれた。  
そういう場所でいたかった。安心できる、そういう場所。  
 
ボクも、キミと居る時間が好きだった。  
キミの家族ぐるみでずっとつきあっていた。  
本当の家族より、家族のようだった。  
 
むしろ、そう、あってほしいと、ボクも望んでいたくらいに。  
 
でも、ボクはキミを好きだといえなかった。  
キミが好きで、キミが欲しいと。  
 
ずっと一緒に居よう、だから、  
 
……だから、結婚しようって。  
 
そんなふうにボクは奥手だったし、  
自信を示すこともできなかった。  
 
だからこそ、彼女は選んだんだろう。  
もっと素敵な年上の男性を。  
 
その前の日  
 
通っていたスポーツクラブの人たちと出かけるの。  
彼女は言った。  
 
気分転換になるんじゃないかな、きっと楽しいよ。  
僕は言った。  
 
暫く、沈黙が落ちていたことにいまになって気がつける。  
 
そうだね、と、彼女は言った。  
そうだよ、と、僕が言った。  
じゃ、返ってきたら、話を聞かせてよ、って。  
 
でも、彼女は、予定の帰ってこなかった、らしい。  
 
その日の夜、僕のところには、彼女ではなく、彼女の母親から最初の連絡があった。  
ケイコがかえってこない。何か聞いてない?って。  
ボクは、あんまり心配してなくて、多分帰路が混んでるんだろうって。  
そうだよね、と、彼女の母は答え、電話を切った。  
 
彼女から連絡が来たのは、翌週の土曜日。  
そんなに連絡が来ないことってのは、稀だった。  
 
もっとも、その頃ボクも大学の課題で行き詰っていて、  
あんまり気にしている余裕も無かったのもいけなくて、  
それがおかしい、と、気づくこともできなかった。  
 
久々の彼女から、もっといえば、彼女の一家からの連絡は、  
大事な話があるから、来て欲しい、とのことだった。  
 
ちょっとした心配もあったんだ。  
 
そのとき、僕は彼女に何があったか、あまり気にしていなかった。  
いや、気にしていないようにしていた、のだろう。  
 
ケイコと、その父親といつもの彼女の一家の近くの駅前で落ち合い、  
いつもの週末のように彼女の家に泊まりに行った。  
 
いつものように親父さんと、  
いつもと違って車からちょっと下向きの表情で出てきた彼女。  
一見、いつもとかわらないのに、なにか変な感覚を覚えた。  
 
久しぶりだね、元気だったかな?  
夕飯まだだよな?うちにおいでよ。  
親父さんが言った。  
 
ええ、お言葉に甘えて、  
俺が答える。  
 
いつもと同じ会話だが、  
ただ、親父さんもどこか、よそよそしかった。  
 
彼女は、沈痛な面持ちで居た。  
 
その空気を感じたが、ボクは極力考えないようにした。  
 
家族会議、っていうのに、どうやら僕は同席させられたらしい。  
 
家族公認のボクという恋人がいたが、  
件のスポーツクラブの合宿で、  
みんなと別れて彼女が例の35男と行方をくらましたこと。  
かえってきて、実は山梨からの帰路のラブホに二人で行っていたこと。  
 
娘はもう、僕と、普通の恋人通しに戻れる自信が無いこと。  
だから、申し訳ない、という、親父さんの侘び。  
 
そう・・・  
・・・ですか  
 
僕はそれ以上答えることができなかった。  
 
遅くまで、申し訳なかった。  
ただ、娘の選択もある。  
いままでの家族的な付き合いも申し訳なかった。  
ただ、娘の選択も大事にして欲しい。  
 
 
何があったのか、すべてわかる。  
なのに、身体も、心も受け入れられない。  
 
耳鳴りがする。頭痛がする。心が砕けそうだ。  
 
それでも、  
 
きっと、いままで僕がダメだったところ、  
そういうのが、ほんとうは彼女が欲しかったところ。  
 
それをわかっていたのに、そのままにしていた自分をのろった。  
 
いつものように、客間に通され、もう、遅いから、と、  
泊まっていくように薦められた。  
 
物理的にも帰るのがちょっと難しいところなんで、  
お言葉に甘えた。  
 
また、彼女とも話したかった。  
 
何があったのか、知らなくてはならない。  
 
それは、僕と彼女が初めて抱き合う前に、  
彼女が昔、中学生の頃、見ず知らずの男に陵辱されたことがあること、  
それを初めての夜に聞かされた以上、ボクは知らねばならないと思っていた。  
 
 
いつもの客間、  
いつものように、彼女の父親の寝巻きを借りて、布団に入る。  
眠れない気持ちと、眠りたくない気持ちを表現するかのように、  
天井の照明はそのままだ。  
 
じじ・・・  
 
蛍光灯のおとが聞こえる。  
 
眠れない。  
 
わかってはいたんだ。  
ボクがこのままではいけないことも。  
天井を見つめながら、思考がぐるぐるまわる。  
僕は、ケイコと、家族とどうすればいいのかも。  
 
 
 
とん、とん、とん、  
 
階段を下りてくる足音。  
 
これがケイコのものだと確信していた。  
 
客間のふすまをあけ、ケイコが部屋に入ってきた。  
 
努めて、優しく、ふるまいたかった。  
 
どうした?と、僕は聞く。  
 
ココロの天秤は傾きそうなまま。  
 
ごめんね。  
 
ケイコは、涙を流しながら、僕の横に座った。  
 
「まさか、こんなことになるなんて…・・・  
 本当にごめん……  
 
 ……ごめんね。」  
 
涙にならない涙を、目尻に浮かべながら、お互いを見る、  
 
ケイコは僕と背中合わせに座った。  
 
そして、ボクに話した、  
 
初めてボクが振られた彼女を好きだと言ったこと、  
だから、彼女も僕を好きになったこと。  
 
ボクは気づかなかったけど、  
お互い、ちょっとしたことで好きになったこと。  
 
僕も、初めてケイコの同級生が最初好きだったんだけど、  
気がついたら、ケイコが一番好きになっていたこと。  
 
ケイコはケイコで、僕が一番にケイコのことを好きだと、  
思っていたこと。  
 
初めて僕らがあった日のこと、  
お互い初めて好きだと感じた日のこと、  
初めて抱き合った日のこと。  
 
3年間の歴史、3年間の思い。  
お互いに、忘れていたこと、思い出したこと。  
 
でも、僕が未来を見ることができなかったから、  
彼女は刹那な思いにすがってしまったこと。  
 
今日までの日々が思い出された。  
 
ボクは、キミが、大好きだ、という気持ち。  
 
ケイコも、ボクが好きではあったんだろう。  
 
でも、  
 
 
きっと僕が決断をもっと早くできていれば、きっと。  
きっと、彼女も、ボクと一緒の時間を選んでいたかもしれない。  
 
沈黙が、二人の間に落ちた。  
 
そして  
 
「「ごめん」」  
 
ケイコも僕も同時に、言った。  
 
ああ、そうだ、ああ、僕は、ケイコは、本当は、  
お互いを求めていたんだ。  
 
涙を流しそうになった俺の前に、  
僕を見ながら涙を流すケイコが、  
 
居た。  
 
ケイコ……  
 
俺は、ケイコの肩に手を伸ばす。  
 
そういえば、お互い、  
あんなことがあるまえとまったく変わらずに、  
客間の布団に、半分足をつっこんだままで、  
横に並んで座っていた。  
 
ケイコが言う  
 
ごめん。  
 
短い言葉が、なおさら僕の心をえぐる。  
 
ボクは、ケイコが好きだった。  
 
足りなかった気持ちとか、そういうものがすれ違いになっていた。  
 
ボクが彼女の希望に、きちんとこたえられるのなら。  
 
ケイコ・・・  
 
お互い、まっすぐ目を見る。  
 
兄妹のように、同じ布団に身体を半分つっこみながら、  
 
お互いのぬくもりを感じながら、  
 
お互いの気持ちを探る。  
 
だがケイコは、わびるだけだった。  
ごめんね。  
 
もしかしたら、もう一度穢れてしまった事と、  
ボクがそれでも受け入れる気持ちと、  
そういう独占欲の無さにいらだっていたのかもしれない。  
 
だけどボクは限界だった。  
 
いつものように、ケイコを貪りたい。  
 
水泳で鍛え上げた美しい身体を、  
 
笑顔の素敵なその大元の彼女の心を、  
 
なによりやわらかい、女性の全てを。  
 
僕が知った女性の全てを。  
 
済まなそうにボクを見る、ケイコ。  
 
ちくしょう、こいつは、どうしてそんなに素直なんだ。  
 
だったら・・  
 
いまでも、いまなら、いまも・・・  
 
「ごめん、ちゃんと明かりは消してよ・」  
 
 
「ダメだ。全部、ボクは全部見るんだ」  
 
ケイコはしゅんっと、しながらも頬を染め、  
 
これから起こる二人の交わりを予測しながらも、  
 
 
それがアブノーマルなものと感じていた。  
 
 
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ケイコ・・・  
 
ボクはケイコにキスをする。  
 
ケイコは拒まず、むしろ受け入れる。  
 
いや、僕が知らないくらい、エロティックなキスをする。  
 
ちくしょう!  
 
涙目になりながら、ケイコを貪る  
 
その肌を、乳首を、陰部を。  
 
だが、ケイコがあの男を  
想像しながら膣勃起までさせていることに気がついたとき、  
ボクは我慢がならなかった。  
 
首絞め、髪引っ張る、縛ったり引っぱたくのはおk  
グーパンチ、蹴るのは痛い  
 
抱きしめ、キス、前戯なしで「おまえは汚い」って言いながら犯すのがよい  
 
そこからはよく覚えていない。  
 
ケイコがすこし大人びたことや、  
 
僕が彼女を貪りつくしたこと。  
 
親父さんに侘びを入れられまくったこと。  
 
彼女を、もう責めることはできない。  
でも、俺は・・・  
 
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つづく  
 

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