俺は今、訳あって勤めるホテルのスイートルームのクローゼットに身を潜めている。  
 
扉の向こうには、五人の人間が食事をしている。  
そのうち二人はなんと、誰もが知る国民的司会者、かのう邦夫。  
そしてもう一人は、サンシャインガールの富田ゆゆだった。  
 
かのうの冠番組の特番のロケを、ここ伊豆で行っていて、このホテルを利用している。  
ゲームやキャンプ、早朝ドッキリなど、それぞれ行い、二日に及ぶロケは終了した。  
最後に盛大な打ち上げをし、出演者、スタッフ、それぞれ解散となったらしい。  
そこで、急遽もう一泊するというかのう。  
 
俺はベッドメイクでこのスイートに来た。  
すべて終えると、同僚と部屋を後にしたんだが、魔がさした。  
用具を忘れたと部屋に戻り、大物の部屋を堪能する。  
そこにこの五人がやってきた。そんな俺は咄嗟にクローゼットに隠れてしまった。  
 
軽い食事と酒が運ばれてきた。  
 
「ではあらためて、おつかれさん」  
「お疲れ様でした」  
 
かのうの横には、二人の男性。一人は同じくらいの年齢の男。  
テレビで見たことがある。恐らくマネージャー。  
もう一人は分からない。年は十近く下か。  
そして向かいには、富田ゆゆ…。横も多分マネージャー、三十代くらいの女だった。  
 
「いやあ、急にゴルフがしたくなっちゃってね」  
「明日はオフでしたね」  
「だからね、ほら、したくなっちゃったのよ。あはははは」  
「クラブは?」  
「今、事務所の人間がこっちに向かってるんだよ」  
 
クラブを握る手つきをして、ゴルフ焼けしたかのうはご機嫌だ。  
 
女マネージャーがテーブルの下で、ゆゆを小突いた。  
 
「かのうさん、ゆゆ新しいDVD出したんですよぉ。だからこれどぅぞ」  
「お、DVD?いいね〜。それじゃ頂こうかな」  
「内山プロデューサーもどーぞぉ」  
「うん、ありがとう」  
 
アイドルグループ、サンシャインガール。  
俺がまだ高校の頃、とても流行ったアイドルだった。  
キャッチーな曲で人気が出、アイドル冬の時代に一躍脚光を浴びた。  
大所帯のサンシャインガールで、正統派、清純、天然というポジションで、俺の一押しだった。  
やがて人気が低迷してくると、本業の音楽番組でも見なくなり、  
代わりにメンバー個人の活動が増え、バラエティ担当のような売り出しだったゆゆは、  
かのうの番組で珍回答をすると、それがウケて、準レギュラーのようになった。  
 
皆、酒が入り宴はにぎやかになってきた。  
確か、ゆゆはまだ飲める年齢じゃなかったような。  
良く見れば、口を付ける程度にしか飲んでいない。大御所を前に、断れないんだろう。  
かのうがタバコに火をつけ、場がまったりとしてきた。  
かのうのマネージャーがお開きの挨拶をし、皆が部屋を後にする雰囲気になってきた。  
 
やっと出られるかもしれないのと同時に、ゆゆを見納めるのが惜しかった。  
 
「木戸さん、次の収録の確認をしたいんだけど、あ、スケジュール帳、僕ん部屋だ」  
「じゃあ、そちらで話しましょうか」  
「申し訳ないっす」  
「あのぉ…私もよろしいですか。収録に関してちょっと伺いたい事がありまして…」  
「構わないすよ」  
「助かります。…ゆゆ、少しこちらで待たせて頂きなさい」  
「えっ」  
「いいじゃないか、ゆゆ君。私が若い娘の悩みでも聞こうじゃないか、ははは」  
「かのうさん有難う御座います…。…では失礼します」  
 
プロデューサーと両マネージャーは退室し、部屋にはかのうとゆゆ二人になった。  
 
実は三人。  
 
「ゆゆ君、もう一杯どうかね」  
「い、いえ、結構です」  
「そうかい?バラエティはどう?」  
「まだまだ勉強中で、もっと頑張りたいです」  
「困ったことがあったら私に言いなさい。力になるから」  
「ありがとうございます」  
 
ゆゆのキャラとは違う少し大人びた対応。つまりキャラはキャラ、これが素なんだろう。  
 
「確か生まれは関西?」  
「あ、岡山です」  
「営業で何度も言ったよ。食べ物がうまいんだよねぇ」  
「そうですね」  
「富田は岡山に多い姓なの?」  
「どうなんでしょう。でもこれ芸名ですから」  
「あれ?そうなの?!なんていうの?」  
「あ、一応プロフィール上秘密になってるんで」  
 
知らなかった…  
 
「私が回りに言う事はないから」  
「でも…」  
「そもそも、言って私が得する理由がないからな」  
「わかりました…。佐伯、佐伯芳子です」  
「あら、よしちゃんと同姓同名」  
「それでです…」  
 
佐伯芳子…。日本を代表する大物女優じゃないか。  
 
「ちなみに俺は、茂ってんだよ。有名だから知ってるか。それより本当に飲まない?」  
「はい。お気持ちだけ…」  
「そうかい。それではさっそくDVDでも観ようじゃないか」  
「え、恥ずかしいです」  
「芸能人てのは、見られてナンボよ」  
 
ビニールのパッケージを乱暴に破り、ディスクをセットした。  
DVDが再生されると、テレビを前に、ソファにどかっと座った。  
そこはゆゆの座っていたソファだった。遠慮がちに席を空けるゆゆを止める。  
二人の間は、微妙な距離感になっていた。  
 
「最近の娘はスタイルがいいねぇ」  
「あ、ありがとうございます」  
 
チューブトップビキニにホットパンツ、肘、膝にサポーターを付け、  
外国の海辺を掛けるローラーブレードのゆゆ。  
長いストレートヘアが風になびき、すらっとした脚が美しい。  
 
これから発売されるDVDらしい。  
 
「ゆゆ君はいくつだっけ?」  
「十九です」  
「若いねぇ〜。いいねぇ」  
 
グラスを片手に、かのうの手がゆゆのふとももを擦った。  
 
「えっ…、なんですか…」  
 
この野郎…  
 
「冗談冗談。じゃあ三十近く離れてるのか。まいっちゃうね」  
 
スケベオヤジめ。  
 
かのうは画面を観ながら、酒をあおっている。  
 
「遅いですね…」  
「そうだな」  
「…わ、私、明日あるんで、帰り支度をしなければならないので、そろそろ戻ります」  
 
そそくさと席を立つゆゆ。  
 
「待ちなさい」  
 
俺の丁度横辺りでゆゆが立ち止まった。  
 
「いいから座りなさい」  
「い、いえ、これで失礼します…」  
 
再び歩き出そうとしたところ、  
 
「座りなさい!」  
 
ゆゆがビクっとなった。  
 
「うぃ〜くりぃのあの失言、まだキミから謝罪をもらってないんだがね」  
 
なんだ?  
うぃ〜くりぃは、かのうの番組、笑っちゃってうぃ〜くりぃの事だが、  
ゆゆがなにかやらかしたのか?  
 
「え、しました…、けど…」  
「なんだ、その言い方は。生番組で視聴者に謝罪したのは私なんだよ!」  
「社長が、私が何とかする、君はいいからって…」  
「言い訳かい?」  
「そ、そんなつもりは…」  
 
おそらくなにか禁止用語か、スポンサーに関係することか。  
とにかく、番組やかのうに不利益な発言だったんだろう。  
 
「まったくいい迷惑だよ。思い出したら腹が立ってきた。ここへ座りなさい」  
 
しぶしぶソファに戻るゆゆ。  
 
「とりあえず酌でもしてもらおうか」  
「あの、あらためて…、いえ、謝らせて下さい」  
 
酌をすると立ち上がり、そう言った。  
 
「番組での私の発言で、大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした」  
「その、まあ、キミがそこまで謝るんであれば許さないでもないが」  
「ありがとうございます」  
 
ゆゆは深々と一礼した。  
 
「う、うむ。もういいから頭を上げなさい」  
「これからもよろしくお願いします」  
「まあ、座って。一杯付き合いなさい」  
「うー、ん…、わ、わかりました…」  
「それでいいんだよ」  
 
「うっ、けほっ、けほっ」  
「ウイスキーだよ」  
「やっぱり飲めません」  
「ははは、強いかい?」  
「喉が痛いです」  
「こうすると、すっと飲めるぞ」  
 
そう言った瞬間、ウイスキーをかっくらい、ゆゆを押し倒した。  
 
「えっ?」  
 
最大限抵抗するが、両手首を取られ、身動きが取れない。  
顔を近づけるかのうを、顔を左右に振って抵抗するゆゆ。  
強引に唇を奪うと、ゆゆの口元から飴色の液体が白い頬を伝った。  
 
「いやっ」  
 
咳き込み、更に暴れる彼女にしびれを切らしたかのうが、頬を一つはたいた。  
 
「きゃっ」  
「落ち着きなさい。悪いようにはしないから。直ぐに酔いが回ってわからなくなる」  
 
鋭い目つきでかのうを睨む。  
 
「キミはそう見えて、グループで一番この世界に執着しているんだってね」  
「…」  
「グループが落ち目になって、相談されたんだ」  
 
答えないが、誰に?という表情のゆゆ。  
 
「キミんとこの社長は俺の後輩だからね。面倒見て番組に呼んでやろうかと。  
 君らのプロフィールを見て一目でピンときたよ。キミが一番伸びるってね」  
「それとこれとなんの関係が、痛っ、離してっ」  
「暴れるな。アシスタントの真紀ちゃんには今クールいっぱいで降りてもらうんだ」  
「えっ」  
 
真紀と言えば、  
このロケの通常番組、スタジオでのかのうの横のポジションを務めている。  
一言で言えば、とてもオイシイ位置だ。  
 
「婚約しただろ。それでだ」  
「だから何なんですか」  
「キミも鈍感だね、そのポストが空くって言ってるんだ」  
「…」  
「まあ腹いせだがね…、真紀のヤツ…」  
「えっ?!」  
「キミは面白回答がウケてるいると思ってるだろうが、  
 実際はお情けで使ってやってるんだ。チャンスだと思わないかい?」  
「ひどい…」  
「落ち目になると後は消えていくだけの使い捨て。アイドルなんてそんなもん。  
 それなのに毎年目を輝かせた年端も行かない少女達がデビューしてくる。  
 大抵は筋書き道理なのにね。キミは選ばれた側なんだよ」  
「くっ…、マネージャー!」  
 
パシッ  
 
もう一度頬が鳴る。  
 
「来ないよ。この為にハケてもらったんだからな」  
「えっ?!」  
「もっとも、何も知らないPが勝手に皆を連れて出て行ったがね」  
「なに…?」  
「小細工しなくて済んだよ。どちらにしてもオマエのマネージャーは心が痛んだだろうがね」  
「やだ…」  
「オマエんとこの社長と話がついてんだ。あいつはだらしねぇからな。  
 借金こさえて、俺に泣きついてきた。せめてお礼なんて言うから、  
 俺はいいって言ったんだけど、あいつがねぇ」  
「いやあああ、たすけっ、」  
 
すかさず、口を塞ぐ。  
 
「騒ぐのはいいが恥ずかしい思いをするのはキミだという事を忘れるな」  
「っぐ…うぅ…」  
「とにかく、アシスタントの件、悪い話じゃないだろ。  
 それにT&SミュージックのPとも話をしてね。  
 キミをボーカルにユニットデビューの話もあるんだ」  
 
遠目にも、抵抗を諦めた、いやこれからの事を受け入れた事がわかった。  
 
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テレビ画面では、  
ゆゆが料理を作って、画面に向けてスプーンを差し出し、アーンとやっている。  
 
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あのゆゆが…  
 
十代半ばで地方から出てきて、歌が下手で、ダンスがぎこちなくて。  
そのため最初はバックに甘んじてたが、徐々にキャラが立ってきて、  
見てくれだけだけどセンターポジション獲って、ファンも増えて…。  
 
無性に泣けてきた。  
と同時に、金と権力、もうおっさんだがもともとプレイボーイのかのうと、  
自分を比べてしまい、情けなくなった。  
 
かのうはそのまま腰を抱きかかえ立ち上がる。ゆゆは咄嗟に首に手を回した。  
抱っこのようなその格好でベッドに移動した。  
 
ここはベッドに近いので、息を潜めた。  
 
ドサッと押し倒すと、ピンクのシフォンワンピースがふわっとめくれた。  
薄桃色の下着が垣間見えたが、すかさずスカートで隠した。  
 
「照れるなんて、私も十七八の頃を思い出すよ」  
「嫌っ」  
「ははは」  
 
再びキスをする。耳に移り、首筋を舐め上げると、ひっ、とゆゆが鳴く。  
やがて触手はゆゆのからだに伸びた。胸をまさぐり、包むように下から強く揉み上げた。  
胸元のお洒落なポンポンが悲鳴をあげる。  
 
「あっ…、痛い…です」  
「ふふふ」  
 
俺が今ここで飛び出したら、どうなるんだろうか。  
テレビの向こうの、芸能人とはいえとても好きな女の子が、目の前で犯されようとしている。  
しかし既に身を委ねたゆゆには、俺は救世主とは映らないだろう。  
まして俺とどうにかなるなんてことはない。  
その上、かのうを怒らせ、ゆゆの話が白紙になり、俺は職を失う。  
 
「なんだ、これはどうやって脱がすんだ。悪いが体を起こして自分で脱いでくれないか」  
「その前に、明かりを消してください」  
「そうか、どれ」  
 
その隙に服を脱ぎ、女の子座りで脱いだ服を綺麗にまとめていた。  
 
「これじゃ、キミの真っ白い綺麗な体が堪能できないな」  
「そんなこと言わないでください」  
「うぶだねぇ。どれ、横になってごらん」  
 
上着を脱ぎ、上半身を露にしたかのうが横にはべる。  
年齢相応の緩んだ腹だが、日焼けの為か幾分ましに見える。  
ゆゆは顔を両手で覆っている。それを払いのけ再びキスをする。  
頬を思いっきり舐め上げる。  
 
「ひい」  
 
慣れた手つきでブラを外すと、小ぶりな乳房がさらけだした。  
 
「かわいいねぇ」  
 
アイドルの乳房を見てしまった。しかし今は複雑な感情が駆け巡るだけだった。  
 
揉みしだかれ、指でいじられ、乳首を吸われる。  
それを肩をこわばらせて堪えている。  
腹を撫でていた手が、下腹から秘部へ這う。  
下着越しにそこをさすると、あん、とゆゆが喘いだ。  
 
「やめへぇ」  
「呂律がおかしいねぇ。酔いが回ってきたかな」  
 
下着を脱がすと、ああ、ついにゆゆの大事な部分が、この男に見られてしまう。  
 
両手で懸命に隠している。そのまま膝を立て、Mの格好にされてしまった。  
それでも隠しているが最早意味はない。  
 
「なかなか毛深いじゃないか。肛門のほうまでびっしり」  
「嫌ぁ、見ないでぇ」  
「ここもかわいがってあげるよ」  
「せめて…、せめてシャワーを」  
「気にしないでいいんだよ。私はこのままのほうが好きなんでね」  
「やめて!あんっ!」  
 
かのうがゆゆの股にしゃぶりついた。  
びちゃびちゃ、しゅるしゅる、ぶぶぶぶなど卑猥な音を立てる。  
 
「うん、うまい。においもなかなかきつくてたまらん」  
「いやいやいやぁ!」  
「どれ、私のも、もう我慢できんらしい」  
 
ビキニパンツのふくらみは、既にはち切れんばかりだ。  
現れた陰茎は勢い良く屹立していた。  
日焼け部分と同じような浅黒い陰茎が、その年齢とは思えない脈動を繰り返している。  
 
「どうだい。これがおちんちんだよ」  
 
根元を押さえると、血管が更に浮き出てきた。上下に振る。  
 
「…」  
「やっぱり、初めてじゃないな」  
「…」  
「わかるんだよ。おちんちんを見るその反応。もっともまんこ舐めたら分かったが」  
 
ゆゆは顔に出る性質らしい。  
 
「それは地元でかい?それとも上京してから?」  
「答えたくありません」  
「話はなかったことにするよ」  
「そんな…、どうしてそんなこと…」  
「女を辱めるのが好きなんだよ。言いなさい」  
「………こっちに…、来てからです」  
「隅に置けないな。気持ち悪いファンに愛想つかして男に走ったか」  
「そんな言い方しないで」  
「ファンに笑顔を届けて、その足で男とセックス。  
 いいねぇ、それも青春。芸の肥やしってもんだ」  
 
ファンなら多分ぴんと来るはずだ。デビュー後一年くらいして、  
ゆゆのプライベートプリクラがネットに出回った。あの男だ…  
 
「続いてるの?」  
「…………いえ」  
「そりゃいい」  
 
プリクラ事件の後、プリクラ男と別れたらしい噂が流れたが、それはホントだったか。  
この状況ではもう何の慰めにもならないが…  
 
ああ、ゆゆが…  
 
テレビ画面では、  
夏祭りの浴衣のゆゆが、綿菓子を手に下駄を鳴らして、遅い〜、と、  
画面に向かって手を差し伸べている。  
 
「じゃあ、これの扱い方なんてもう知ってるね」  
「…」  
 
眼前の勃起した陰茎に戸惑う。  
 
「なんだ、できないのか」  
「そんなに近づけないで」  
「こうするんだよ」  
 
鼻を押さえ亀頭を唇につけた。  
 
「ほら口開けて。そら苦しくなっちゃうぞ」  
「うう」  
 
かのうの強引さか、ゆゆの妥協か、亀頭が唇を裂き、口内に吸い込まれていく。  
 
「歯を立てるなよ。下を絡めて」  
「うぉえ」  
「おいおい、そりゃないだろ」  
「うううっ」  
「他のモンで汚さんでくれよ。でもまあ、それもいいかな、それっ」  
 
頭を抑え一際大きく喉の奥に突いた。  
 
「おえ」  
 
思わず陰茎を吐き出す。酸味のありそうな液体が糸を引く。  
 
ゆゆの肩を小突き、乱暴に寝かせる。  
 
「さて、では頂くとしようか。ゆゆファン諸君、君らの女神のおまんこを私がいま、  
 このちんちんをもって味わってやる。せいぜい嘆くがいい。うはははは」  
 
顔が熱い。心臓が高鳴る。この想像したくない場面に、俺の股間は硬くなっていた。  
 
「やだ。やっぱり私やだ」  
「馬鹿言うんじゃないよ」  
 
起き上がるゆゆの首を押さえベッドに押し付ける。  
 
「ごほっ」  
「本当に世話が焼けるな。まんこ広げてそんな事言ってんじゃないよ、ええ!」  
「ごほっ、わかっ、わかりました。その代わりゴムしてくださぃ」  
「ゴム?スキンか。もう遅いんだよ!」  
「ひぃやぁっ!」  
 
ああ、ゆゆの膣内にかのうのペニスが…  
 
「おおぉぉぉっ」  
「あんっ」  
「締まる。久しぶりだ。気持ちいい。平成まんこだ。いいぞゆゆちゃん」  
「あんっ、あんっ、あんっ」  
 
リズミカルな腰付きに、結合部は突かれる度にぱちんぱちんと音を立て、ゆゆが喘ぐ。  
脇の下から手を肩に置き、密着し、抱きつき腰を振る。  
褐色と純白のコントラスト。  
肩越しに小さい顔が覗く。頬が紅潮している。  
 
「あんっ、あっ」  
「あ゜あ゜気持ちいい。おまんこ気持ちいい」  
「んっ、ん」  
「ゆゆちゃんも、おまんこ気持ちいい、と声に出してみるといい。興奮するぞ」  
「ん、んー!」  
「よし次は後ろからだ」  
 
肩を押し、顔をベッドに付けると、突き出された尻がやけに際立ち、  
かのうのペニスを迎える準備をしているよう。  
 
「肛門がひくひくしとるぞ」  
「見ないで」  
「よし、そらっ」  
「ああっん」  
 
挿ってる。かのうの勃起したペニスの出たり挿ったり、ああ…  
俺は股間に手が伸びていた。  
 
「おおおお、肛門がひくつく度に、まんこが締まるっ」  
「はあ、はあ、ひぃっ」  
「横を見てごらん」  
 
どきっとした。  
 
かのうはベッドに伏せたゆゆの頭を、俺のほうに向けたのだ。  
 
「ゆゆちゃん、鏡に映ってるよ。挿ってるところが良く分かるね」  
 
先端だけが挿っている状態で静止し、鏡に映ってるであろう姿に浸っている。  
 
「そして一気に、突く!」  
「いやっあ、もうはやく…もう、終わらせて」  
「まだまだ。終わらせたいなら自分で腰を振るんだな。そうすりゃ嫌でもイッちまう」  
「できない…」  
「じゃあずっとこのままだな。俺は動かなくても持続が半端ないぞ。  
 ましてちんちんを収めているのはゆゆちゃんのまんこだ。朝までこのままでもいい」  
 
かのうの言葉を鵜呑みにし、ゆゆは自らの下半身を振る。  
 
「伊達に女は抱いてないから、そう簡単にはイかんがね」  
「うぅ…」  
「しかしこの体勢ってのは、こうして見るとまるで動物か昆虫の交尾のようだな 。  
 そうだ私達は今交尾をしてるんだ」  
「そんなこと、言わないで…」  
「交尾交尾、邦夫とゆゆ…、いや茂と芳子の交尾!つまりこれは生殖だよ。  
 子を創る行為なんだ。今この瞬間芳子の身体を独占し、生殖活動をしている」  
「言わないで!」  
「本名だと本当の意味でモノにした気分だ。なあ芳子」  
「もういやぁ!」  
 
かのうの気持ち悪い講釈の言葉攻めを聞きながら、俺は陰茎をしごいていた。  
 
テレビ画面では、  
夕焼けの浜辺で、意味深な表情で、画面に向かって、“ス”“キ”の口をつくっている。  
 
それからバックのまま、側臥位に移る。片足を上げ、突かれる。陰嚢が揺れている。  
 
「もうイキそうだ。下になれ」  
「膣内には、射精さないで…、くだっ、さぃい」  
「無理だ。私も久しぶりに興奮して腰が止まらん」  
「いやいや!やめてぇ!」  
「ならば、  
 父親よりも年上の男の、生殖可能な硬く勃起した状態のおちんちんを、  
 芳子のとろりとしたおまんこから引き抜いてください。  
 そうしないと精子の詰まった精液が膣内に射精されて、  
 勝ち残った茂精子がいずれ芳子卵子と出会い受精してしまいます。  
 それを避けるため、おちんちんをおまんこから引き抜き、  
 顔なり口なり、おっぱい、お腹、なんならおまんこにかけてもいいので、  
 後生だからそうしてください。  
 と、噛まずに言いなさい。君は役者のはしくれでもあるんだろ」  
「そんなっ、ことぉ、あんっ、言えまっ、せっ、んんん!あっ」  
「今も刻一刻と射精が迫ってるんだよ。俺の腰はもう止まらんぞ」  
 
亀頭から滴る液体がペニスを覆い、俺の絶頂も近い。  
 
「ちっ、ちちおやのぉ、としうえのぉ、かたっ、かた、かたく、って…」  
「おい、何だそれは。台詞の稽古をつけてやる。父親よりも、ほら」  
「ちちおやよりも…」  
「年上の男の、」  
「としうえのおとこの…」  
「おちんちんを、」  
「おっ、…ちっ、あっ、おちっ、おちん…ちんを…」  
「芳子のおまんこに、」  
「よしこの…、お…ま、んこ…に」  
「いいぞ、ああ!はぁはぁはぁ」  
「んっ」  
 
腰突きが激しくなる。  
 
「ああ、もうダメだ!ううううう!イクぞっ!」  
「いやぁぁ!」  
「うっくっ!」  
「あんっ!あぁぁ」  
「はあ、はあ、はあ、はあ」  
 
かのうがゆゆの胸に臥せる。  
 
目の前ではクローゼットの扉に、白濁した液体が滴っていた。  
 
「ああぁぁぁ!」  
 
ゆゆが声を上げて泣き出した。  
かのうを突き飛ばし、濡れそぼった股ぐらを懸命に拭いている。  
とめどなく溢れる精液。  
 
かのうは何食わぬ顔で、煙草に火をつけた。  
 
「うっ、うっく…」  
「泣いてんじゃないよ。これがこの世界なんだよ」  
 
煙草をもみ消すと、ゆゆの肩を抱き、強引にキスをする。  
足を持ち、子供をおしっこさせるように持ち上げ、最上階テラスに出た。  
肌寒い空気が、室内に立ち込めた。  
 
「どうだ見えるか!このおまんこ。富田ゆゆのおまんこ!」  
 
海に向かって性器を晒し、かのうが叫んだ。  
 
きらきら光る放物線が漆黒の闇に消えていった。  
 
 
 
テレビ画面では、  
メイキングを語るゆゆが、それじゃまたね、と手を振っている。  
 
 
 
暗転  
 
 
 
〜Fin.〜  
 
 
 
 
(今のうちに逃げればよかった…)  
 

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