最終下校時刻をとうに過ぎた深夜。  
とある学園の旧校舎の一角に、1人の少女の姿があった。  
学園指定のセーラー服に身を包んだ彼女――かれんがいるのは1階トイレの最も奥に存在する個室。  
ここは最近学園内で囁かれ始めた怪談の舞台となっている場所だった。  
その内容は、ある女生徒が部活終わりに用を足していた際に冷たい手で尻を撫でられたというもの。  
怪談としては極めて典型的なタイプの話ではある。  
だが最近になって流れ始めたという点がかれんの興味を引いたのだ。  
彼女の家は代々そういったものを祓うことを生業としており、彼女もまた幼い頃から厳しい修行を積んできていた。  
 
(火のないところに、とは言いますが、特に妙な気配は感じませんね……)  
 
トイレというものはその性質上よくない気がたまりやすく、心霊事件の舞台となりやすい。  
一方で内部では基本的に1人になる心細さなどもあって、誤認が多い事も確かだった。  
人が消えたとなればともかく、尻を撫でられた程度であればちょっとした空気の動きに過敏に反応してしまっただけという可能性も大いにある。  
かれんとしても、今回の調査はあくまでも念のためといったところだった。  
 
(やっぱり勘違いだったのでしょうか)  
 
わざわざ夜の学園に忍び込んだことは無駄足になってしまうが、それならそれに越したことはない。  
だが、ある可能性が残っているせいでかれんはすぐにトイレを後にすることができずにいた。  
 
(ですけど、活性化していないだけ、の可能性もあるんですよね)  
 
彼女が祓うべき悪霊の類には、ある条件が満たされた時だけ現れるものもいる。  
この怪談の主がそれであった場合、こうして見ているだけでは存在を感じ取れない可能性があるのだ。  
 
(もしそうなら、その条件は……)  
 
「しかた、ありませんよね……」  
 
自分に言い聞かせるように呟き、かれんは渋々下着を下ろして和式のトイレをまたいだのだった。  
 
(覚悟はしていましたけど、思った以上に恥ずかしいですね……)  
 
和式トイレに屈み込みながら、かれんは頬の火照りを感じていた。  
可能性としては低いとは思っているものの、このトイレには悪霊がいる可能性があるのだ。  
万が一本当にいるなら、自分は悪霊に対し無防備な股間を晒していることになってしまう。  
込み上げる羞恥に長いまつげを震わせながら待つこと数分、それでも薄暗いトイレに変化は訪れない。  
だが、そのことに安堵はできなかった。  
 
「やっぱり、やるしかないんですね……」  
 
諦めたようにため息をつくと、かれんは最後の条件を満たすために下腹部に力を込め始めた。  
 
「ん、んん……」  
 
他人に見られている可能性を認識しながらの排泄。  
息が詰まるほどの、それまで感じていたものを圧倒するほどの羞恥。  
 
「は、ぁ……」  
 
それを使命感で必死に押し殺し力を込め続けると、体の下からかすかな水音が聞こえ始める。  
直後、ついに変化が訪れた。  
 
「ひゃぅ!?」  
 
怪談の通り、冷たい手に尻を撫でられたかれんの口から甲高い声が漏れる。  
ある程度心構えをしていたとはいえ、氷そのもののような冷たさと、他人に尻を触られる嫌悪感は彼女の予想をはるかに超えていた。  
全身にぶわりと鳥肌が立つ感覚。  
できることならすぐさま立ち上がり祓ってしまいたい。  
だが、いまの彼女にそれはできない相談だった。  
意識を集中してみると、この悪霊の存在はひどく希薄で弱弱しいものだ。  
だがそれでも祓うとなると一瞬でとはいかない。  
排尿を途中で止めても、そこから我慢できる時間はそう長くない。  
万が一祓う途中で限界を超えてしまったときを考えると、かれんはその一か八かの賭けに乗ることはできなかったのだ。  
 
(は、はやく、終わって……んんっ!)  
 
顔が燃え上がるような錯覚の中、必死で下腹部に力を込め続けた。  
そんな彼女をあざ笑うように、数秒おきに2度3度と氷の手が第2次性徴を迎え肉付きを増し始めた尻肉を撫でさすっていく。  
羞恥と屈辱に塗れた時間は、普段の何倍にも長く感じられる時間だった。  
1秒でも早くそれが終わることを願い続けるかれんだったが、しばらくして明らかな異変に気がつくことになる。  
 
「ど、どうして……」  
 
いつまで経っても排尿が終わらないのだ。  
いくら時間が長く感じられるとはいえ、普通ならとっくに出し尽くしているはずだった。  
本来ならありえない現象。  
 
「ま、まさか、この悪霊が……あっ!?」  
 
この状況では原因など1つしか考えられなかった。  
 
(こうなったら、しかたありません)  
 
このまま待っていてもいつ終わるかわからない。  
やむを得ず無理やり止めて、1度は却下した一か八かの賭けに出ようとするかれん。  
 
「そんな……どう、して!?」  
 
懸命に止めようとしているのに、まるで力が入らず水音は止まるどころか衰える気配すらない。  
 
(金縛り? でも、どうして)  
 
少なくとも尿を出させ続けるなどという聞いた事もないものに比べれば、金縛り自体は悪霊の起こす現象としてはそう珍しくないもの。  
それでいてかれんがここまで戸惑っているのは、自分がそれに影響されているからだった。  
本来なら抵抗力のない一般人ならともかく、修行を積んだ彼女がこうも易々とかかるはずがない。  
 
(と、とにかく、今は金縛りをとかないと)  
 
いくら否定しても現実として体が動かないのは確かなこと。  
混乱しながらもかれんは悪霊の力を振り払うために自らの力を練り上げ始めた。  
時折来る手の感触は集中の邪魔だったが、それでも幼い頃から訓練したものを完全に阻害するほどではない。  
自らの体内で力が高まっていくのを感じるかれん。  
だがその表情がいきなり凍りついた。  
 
「そんな!?」  
 
この数分の間に、もはや何度目かわからない驚愕。  
だが今回のそれは今までで最も切実なものだった。  
確かに高まりつつあった力が、まるで風船に穴が開いたかのように失われていったのだ。  
それと呼応するように水音が大きくなる。  
そして――、  
 
「ひああああ!?」  
 
困惑が頂点に達したところへ、いきなり尻を鷲づかみにされる感触が襲ってきた。  
それまでは数秒に1度、一瞬だけ触れてきた手の感触。  
それが今や確かな存在感をもって左右の尻たぶを握りつぶすほどの握力で揉みこんでくるようになっていた。  
 
(ち、力が吸われてる、の……?)  
 
失われた力、勢いを増す排尿、存在感を増した悪霊。  
それらから導き出される結論はあまりに屈辱的なものだった。  
厳しい修行によって得た力を、よりにもよって尿として吸いだされるのだ。  
耐え難い屈辱に目に大粒の涙をためるかれん。  
それでも頭の中では懸命に打開策を探リ続ける。  
だが考えれば考えるほど状況は絶望的だった。  
体が動かず、力を練り上げても逆に相手を利するだけにしかならない。  
こうなってしまえば修行を積んだかれんといえど、ただの少女に過ぎなかった。  
むしろなまじ力を持っているだけに、より悪いとすら言える。  
意識して力を練らなくても、こうしている間も常に力を吸われ続けていることは間違いなかった  
その証拠に――、  
 
「ふ、くぅん……」  
 
傍若無人に少女の尻を揉み続けていた手の感触に更なる変化が訪れる。  
その手のひらに何か液体が滲み出し始めたのだ。  
最初は自分がかいた汗かとも思ったが、それはあまりにも量が多く、そして妙なぬめりを持っていた。  
そのぬめりが、彼女が感じる刺激の種類を一変させる。  
痛みを感じるほどだった握りこみが、ぬめりのおかげでくすぐったさに近いもの変化していた。  
粘液をたっぷりと塗された柔らかい尻肉が、指の隙間からむにゅりむにゅりと搾り出されるような感覚。  
 
「はぁ……んっ……なんですか、これぇ」  
 
初めての感覚に、それまでとは異なる困惑がかれんの心を汚染していく。  
他人に尻を良いようにされる嫌悪感はそのままに、それでいてじんじんとした熱い疼きがたまっていく。  
氷のように冷たい手に触れられ続けたせいで霜焼けになったのかもしれない。  
 
「ふあっ!」  
 
そんなこと考えているとその尻をぐいっと強く握られ、雷に撃たれたような痺れが背骨から脳まで駆け上がってくる。  
目の前が白く霞み、気がつくと口の端から熱い涎が零れ落ちていた。  
意思とは無関係に筋肉が痙攣しているのか、股間からの水音がブシュッブシュッと途切れがちになる。  
 
「あひぃん!?」  
 
(そんな、う、うそ!?)  
 
さらに力を蓄えたのだろう、左右の尻たぶを掴む2本の手にくわえ、3本目がかれんの体に襲い掛かる。  
その狙いは清純な少女が予想だにしない場所だった。  
好き勝手に弄ばれる尻の中央、ピンと立てられた指が不浄の穴へと突きつけられる。  
その指もまた謎の粘液をたっぷりとまとっていて、それにまかせてずぶりと挿入されてしまう。  
 
(お、お尻の中、なんてぇ……)  
 
氷柱で内臓を串刺しにされたような錯覚。  
ただしそれは氷柱と違い内部でぐねぐねと蠢くのだ。  
それがその存在感をより一層強固に主張する。  
ある意味自分の体の内で最も他人に晒したくない場所を蹂躙される恥ずかしさに頭の中が真っ白になる。  
 
「はぁっ……あぅ……とまって、とまってくださいぃ……」  
 
せめてもの抵抗とばかりに必死に尻穴を締め上げるかれん。  
だが指の構造上根元を締め付けたところで、先端の動きはなんら制限できるものではない。  
それどころか粘液のせいで前後のピストン運動すら止められなかった。  
そして少女の懸命の締め付けは、その前後運動の摩擦をより強く感じるだけの自爆行為となってしまう。  
蛇のような先端のうねりと前後運動の摩擦。  
そうかと思えば爪の先で腸内の一点をこりこりと引っかいてきたりもする。  
刻一刻と変化する刺激に対応しきれず翻弄されるだけのかれん。  
そして内部のそれに呼応するように、外の手による責め方も揉み込みと撫でさすりを取り混ぜたものへとシフトしていた。  
そちらもまた粘液のぬめりが痛みを緩和し、代わりに全く別の感覚を強調する。  
 
(そんな、どうして、こんなことで、ぇ……)  
 
ここまで来ると自分が感じているものが紛れもない快感だと否定できなくなっていた。  
尻を中と外から責めたてられ快感を得てしまう自分が信じられない。  
それでも、ともすればそのまま体を委ねてしまいたくなるこれは紛れもない快感だった。  
いつしか目尻は垂れ下がり、閉じられることのなくなった口から熱気のこもった吐息が絶えず漏れ出している。  
声の質も完全に艶を帯びたものになっていた。  
 
「ひあああ!?」  
 
1本目によって柔らかくほころびつつあった少女のつぼみは、もはや2本目の挿入に抵抗できなかった。  
太さを増した指によるピストンと、異なる場所を同時にひっかかれる肛虐。  
加えて1本の時にはなかったV字に広げられた指で皺が伸びきりまで穴を広げられる羞恥までもが少女の心を追いたてる。  
 
「……っ……ぁ……」  
 
相乗効果で2倍どころか数倍にも跳ね上がった肛悦に、かれんは金魚のように口をぱくぱくと開閉させ耐えるしかない。  
そんな中、未だに止まることなく薄黄色の液体を吐き出し続ける秘所からは、尿とは別の液体が滲み出し便器へと糸を引きながら垂れ落ちていく。  
その甘い蜜に誘われるように実体化した4本目の手が、すっかり充血して赤みを増した陰唇へと伸びていくことに、初めての肛悦に耐えることで精一杯のかれんは全く気づけなかった。  
その新たな手の親指と人差し指が、わずかに開いた陰唇の隙間で快感に震える淫核を左右から挟みこんでいく。  
そしてそのままねじるように捻り潰してくる。  
 
「――は、ああ、あああああああっ!!」  
 
その瞬間、股間で爆弾が破裂したような衝撃が全身を貫いていく。  
それまでの深く重い快感とは全く違う、あまりにも鋭い愉悦。  
そんなものを完全な不意打ちで叩き込まれ、性に疎い少女の心も体も耐え切れなかった。  
固くつぶったまぶたの裏に火花が飛び散り、全身を許容量をはるかに越えた媚電流が駆け巡る。  
 
「だめ、だめ、だめええええええ!」  
 
そして、かれんは払うべき悪霊の手によって人生で初めての絶頂へと追いやられてしまったのだった。  
 
 
「……ん、あっ……は、ぁ」  
 
トイレの個室に少女の艶めいた吐息が漏れる。  
その主はかれんだ。  
悪霊を祓うために夜の校舎に忍び込んだあの日から、もう1週間が経過していた。  
普通の男と異なり、射精という明確な終わりが存在しない悪霊の手によって一晩中嬲られ続けたかれん。  
彼女は翌朝出勤した教師によって気絶しているところを発見されることになった。  
発見した教師の呼びかけで意識こそ取り戻したものの朦朧としていた彼女は、その際の細かいやりとりは覚えていない。  
ただ彼女の体に外傷といえるものは見当たらず、公式には放課後にトイレに行った際に不幸にも貧血で意識を失ってしまったということで片付けられうことになった。  
だが一晩にわたる肛辱は間違いなく彼女の心と体に傷跡を刻み込んでいる。  
 
「また、わたし……」  
 
自然と涙交じりの呟きが漏れる。  
その原因は股間を拭いた際のぬめった感触。  
延々と排尿感と性感を同時に味合わされ続けた結果、かれんはあれ以来用を足すたびにこの時の快感がフラッシュバックし愛液を滲み出させてしまうのだった。  
しかもそれと同時に尻穴が疼き始め、何かを咥え込みたいとひくひくと細かい開閉を開始してしまう。  
だがここにはもうあの悪霊はいない。  
あるのはこの耐え難い疼きだけだ。  
自分の指を挿入し思い切り抉ったら、どれだけ気持ち良いだろう。  
一瞬脳裏をかすめるその甘い誘惑。  
そんなことを一瞬とはいえ思い浮かべてしまうこと自体、清純な少女にとっては堪え難い恥辱だった。  
 
「そんなこと……できるはずありません」  
 
自らの内から聞こえる誘惑の声を振り切るように勢いよく立ち上がり下着をはき直した。  
そうするといまだ未練がましく滲み出し続ける愛液を吸った布地の感触がべっとりと張り付いてきて気持ち悪い。  
当然彼女自身からは見えないが、その奥ではクリトリスが勃起を始めているはずだ。  
 
「う、うぅ……」  
 
排尿という日常的な行為だけで濡れそぼり疼き始める淫猥な体。  
望まずしてそんなものを持たされてしまった少女は目に大粒の涙をためながら、トイレの個室を後にしたのだった。  
 

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