「ちょっと!  
 やめなさいよ!!こんなことして・・・ただじゃすまさないんだからぁっ!」  
「五月蝿いな。  
 少し黙ってくれ」  
 抗議の声ををあげるティアを無視し、少年は紙に何かをスラスラと書いていく。  
 ティアを残したメンバーはこの図書館の外、つまり館内の正しい廊下に戻されたと聞き少し安心した。  
(ソレイユ、大丈夫かな)  
 一瞬の不安を取り除き、早く脱出し仲間を助けなくてはならない。  
 しかし、ティアは得体の知れない生物に四肢を拘束されていた。  
 スライムくんは冷たく、ぬるぬるしており、体のほとんどがその中に入ってしまっている。  
 まるで、生クリームのような感触。  
 よく見れば、スライムは、牙も爪も持たず目も持っていない。少しブルーのかかった透き通った水のような体。  
 捕縛されているティアの白い衣服は水分(?)を吸って少し重くなっていた。  
 ちなみに放った弓はあとで悪魔に回収されている。  
 ティアを捕縛した二人組。  
 そのうち一人は紙にまだ何かを書き込んでいた。  
 線の細い身体、メガネをかけており、好き勝手に生えたブルーの髪を無造作にゴムで一つにくくっている少年だった。  
 ラーマス・リースフィアという魔術師の若い悪魔だ。若いといっても人間と違い魔術師という種族のため既に齢百は越えている。  
 書き終えたのか羽ペンを置き作ったばかりの魔術生命体―ネズミ捕り要らずのスライム―を見上げた。  
 時折他の魔術師がこの部屋…部屋というには巨大すぎる。スケールから言わせて貰えば館といってもかまわない、この図書室。  
 魔術師たちが追い求めて止まない知識のつまった本。それら全てを保管する不思議な図書館に侵入者が最近頻繁に現れていた。  
 この魔術図書館は館の中に納まっている。  
 何とも不思議なことだが、この館の主である吸血鬼は吸血鬼の常識を抜け出している。  
   
 嫡男テッドは時空間を操作だか、時空間魔術ができるらしい。らしいというのはそれを実際に見たことが無いからである。  
 もちろん妹もそうだ。残念ながら上の妹君はないらしいが、吸血鬼という種族を考えても常識外れの単純な力を持っている。  
 下の妹さまはアカシックレコードを閲覧するという。  
 以前に知識の衝動の赴くまま妹さまにアカシックレコードの閲覧を頼んだが、残念ながら閲覧できるのは彼女だけなのだ。  
 非常に残念だったのを覚えている。  
 さて、時空間を操るだのアカシックレコード閲覧だの怪しいことばかりだが、この大きな魔術図書館がまるまると館に入っているのだから間違いは無いのだろう。  
 
 最近の魔術図書館は問題を抱えていた。  
 ラーマス自身の師である魔術師に譲り受けたこの魔術図書館。ここへ勝手に進入する挙句、人が張った汚れ防止、無断持ち出し禁止の魔術を破壊するために魔術を使う、そして結果的に他の本を汚していく魔術士たちがいた。  
 魔術館はありとあらゆる世界の本を誘うせいか、いたる部分に入り口がある。そこから侵入しているのだろう。  
 本とは最高にして唯一無二の情報をまとめる存在だ。  
 その本を汚す痛めるなんて以ってのほかである。  
「こっちの準備も整ったぜ〜」  
 男のような口調でティアを捕らえた一人の少女が飛んでやってくる。  
 羊のように捻じ曲がった角と背中から生えた吸血鬼とは違った黒の翼。  
 赤い髪と金色の瞳をしているが、それらをのぞけば普通の少女と変わりない。  
 司書のような姿をしているが、服はノースリーブでミニスカートであった。  
 どこか、いやに、艶かしく、女性のティアですら身体の奥がむずかゆくなっていく。  
 ルヴィという名の永久召還された使い魔は、夢魔の一族である。  
 夢魔といえばパッと出ないだろうが、サキュバスといえばいいだろう。  
 男にもなれ、女にもなれ、気に入った人間の精を一つ残らず吸い尽くす悪魔。  
 吸血鬼よりよっぽど悪魔らしい。  
 
「ちょっと!聞いているの!  
 一体、私に何をする気!」  
 気丈にティアは二人に問いかけるが、二人は気にもせずにわからない単語を使い話している。  
 五分ほどだろうか、話が終わりルヴィがティアを見上げる。  
 自分が見下ろす立場のはずなのだが、何故かそれに恐怖する。  
 高いところから、見下ろすというのはある意味精神的優位を示しているようなものにも関らず、心の底から怯えた。  
「アンタは人間だ」  
「そうに決まっているじゃない!  
 私のどこをみて、アンタたちのような、悪魔にみえるっていうのよ!」  
「僕は人間そっくりだというのに…外見というのを怖がるのは人間の特徴?」  
 調べてみる価値がありそうだと言うとラーマスは別の紙に走り書く。次に忘れぬようにメモをしたということなのだろう。  
 ティアはそれに、かすかな絶望を感じる。次ということは、自分はもしかして使い捨てなのだろうか。  
 いや、そんなことはないと首をふり、その概念をどこかへと投げ捨てようとする。しかし、小さく小さくそれは残っているような気がした。  
 
「話を続けるぜ。  
 人間でありながら魔力をもっている。  
 少しでもあれば、媒体を通じて簡単な魔法を使えるだろうな」  
「簡単って…」  
 自分が精一杯使った魔法を『簡単な』と言われティアは憤慨する。  
「簡単さ。  
 アンタがつかった位の魔術。いや魔法か。  
 あんなのラーマスなんて指をピッピッと動かせば楽勝さ」  
 体調がよければね、とルヴィは付け足した。  
 ラーマス。魔術士のなかで最も知識と才能に恵まれた子と言われ、百二歳という魔術士の中では若い年齢で全ての属性を操る。  
 しかし、生まれつきなのか体が弱く、唱える術がかける体の負荷に耐えられない事が多い。  
 おかげで、中級魔術士と見たほうがいいくらだ。  
「さて、魔力を持っている。  
 そしてこの魔術図書館は知識の宝庫。全ての魔術士がこの宝を荒したがるんだぜ」  
「まったく、ちゃんと願い出れば僕は貸すよ。ちゃんと正式に願い出れば…ね」  
「そうだ、だが、そうじゃないんだよなぁ〜これが!」  
 魔術士はラーマスという魔術士を恐れる。見つかっても殺されるかもしれない、対峙した時に無事でいられるか?  
 生命の危険性ばかりを考え、借りるという方法をなくす。  
 まぁ、この悪魔の館にあるのだから仕方ないといえば、仕方ない。  
 ヘタに近付けば吸血鬼の使いに殺されるだろうという定着した概念は、魔術図書館にも根付いていた。  
 まったく別の入り口から魔術図書館のみに侵入するのだから、別の存在であるというのに。  
 
「彼らはこの本を荒す。  
 それを撃退しちまいたい。ラーマスは体調不良が多い。  
 さて? どうすると思う?」  
 ヘタに答えなかったらどうなるのだろう。  
 大人しくしておいたほうが身のためだし、この問いに深い意味はない。はずだ。  
 少し思案しティアがだした答えは簡単なものだった。  
 
「だれか…別の人を使う」  
「そうだ。  
 それが私。サキュバスにして魔術図書館唯一の司書ルヴィの役目」  
 自らの少ない胸に手を当て、ルヴィが話を進めていく。  
 この魔術図書館はその名の通りだ。魔術に関する本の館。  
 魔術の本は、書かれた文章だけで、魔力を持っている。  
 そんじゃそこらの低級悪魔が万が一だがこの魔術館へ入り込み、本を開けたとすれば、その本の魔力にあてられるだろう。  
 ヘタをすれば廃人とかすであろう。  
 幸いアンタは感性が鈍いとラーマスがボソリと呟いた。  
 失礼なと思うと同時に、ルヴィが怒りながら横槍を入れる事を禁止している。  
   
   
「ふぅ、まったく、困った召還主さまだぜ。  
 さて、続きだ。司書である以上仕事放棄ができない。この魔術館は勝手に本を誘うんだ」  
 知らない間に本が増えているなんてザラさといいながら、両手を上げ肩をすくめる。  
 お手上げだといいたいのだろうか。  
 そんなどうしようもない話をなぜ自分にするのか。  
 関係などまったくないと、思わずティアは叫んだ。  
 このスライムに捕らえられてからどうも胸騒ぎが止まらない。  
 そして、途中で別かれたソレイユの顔がなぜか何度も浮かんでは消えていった。  
 叫ぶティアにあっけに取られたのか、一瞬二人とも止まる。  
 とはいっても、ラーマスの方はずっと変わりがいない。まるで線で書いたような瞳でこちらを見ていた。  
 会話を長引かせすぎたと思ったのかルヴィは本題へと入っていく。  
「言ったろ、魔力さえなければってな。  
 魔力を奪うプラス捕縛する。  
 そういうアイテムを作り出したんだ。  
 だから、魔力をほとんどもっていなかったあの連中は邪魔だった」  
「ま、まさか」  
 
 
 アイテムではないが、アイテムともいえるんじゃないの?  
 この妙な胸騒ぎはコレが原因なの?  
 
 
「そう、お前を捕まえているドロドロした水のような生命体。  
 その名もスライムくんだ」  
 仲良くしてやってくれと無茶な注文をルヴィがすると、補足のようにラーマスが口を開いた。  
 たんたんとまるでくだらない事務のように。  
「今回のスライムくんは、性的興奮を変換能力を持っている。  
 変換することによって魔力吸収が高まるかどうかの実験だ。  
 捕縛点では、もはや追及の意味がない」  
 あまりにも当たり前のように淡々といわれ、ティアの脳内が真白となる。  
 いま、なんといった?  
「せいてきこうふん…え?  
 え?」  
 単語はわかるが、何を言っているのだ?  
 せいてきこうふん?なんのことなのという言葉がずっとティアの頭を埋め尽くす。  
 果てしなく長い時間がティアの中では流れた。  
 すかさず、ルヴィがトドメのように解りやすく言う。  
「言ったとおりだぜ。  
 エッチなことするぜ。スライムくんがな」  
「人間の欲求は、睡眠・食物摂取・性行為という。睡眠じゃあ逆に精神を殺してしまうだけだし、食物がなけれ餓死してしまった」  
「ンで今回、性行為にポイントを当てたワケだぜ」  
 どうしてこの二人は当たり前のようにこんなことを言うのだろうか。  
 四肢がガクガクと震え、腰が落ちそうになるがスライムくんのなかでは無意味なことであった。  
 
「それじゃあ、実験開始だ」  
 それが合図なのかスライムくんがぐにょりと動き出した。  
 実験しやすいようになのか、高く上がっていた体を下へとさげていく。全体を二人の実験者によくみせるように高さをあわせると、スライムくんは行動を開始した。  
 自由になるのは、頭と、手と、足首だけ。  
 他は全てスライムくんの体の中にいた。  
 スライムくんが生暖かい感触で体を揉みはじめる。  
 やんわりとしたものではあるが、得体の知れない、悪魔の作った生命体ということがティアの嫌悪感を大きくしていった。  
「いや!いや!!!」  
 髪が乱れるのもかまわず、ティアは頭をぶんぶんと振り回す。  
 こんな気持ち悪いものに触られる恐怖。  
 スライムくんは、自身の体内の一部を集めティアの胸へ侵入する。  
 着衣したままであったが、変形自在の体をもつスライムくんにはまったく関係のないことだ。  
 まるで大きな手を作り出し、その手を増減させていくことにより揉むような動きを見せる。  
 暫くそれが続くものもまったくティアの体に変化はおとずれなかった。  
 
「…ダメだなぁ、コイツ処女だぜ。  
 全然気持ちよくなってねぇみたいだぜ?」  
 サキュバス能力を駆使して、ティアの快楽を調べるものも、気持ち悪いという感情一色。  
 ここまで嫌がるものかねぇと呟くレヴィをよそに、ラーマスは指をつかい印を描き出した。  
 それを見てルヴィもなにかボソボソと呟き始めた。  
 すると、スライムくんの動きが変わった。  
 自身の体をツルのように伸ばし、ティアの鼻を塞ぐ。  
 鼻からの呼吸ができず、口での呼吸を体が試みる。が、腕一本はありそうな太さのツルが口へと侵入する。  
 必然的に呼吸が不可能になる。  
 口の中のスライムくんは更にからだを小さく分けていく。先端から小さなツルをまた作り出し、歯茎、舌の裏、歯をなぞっていく。  
 その気持ち悪さに吐き気を覚えるが、スライムくんは気にせず進めていく。  
 だんだんと、息苦しさを覚えていく。最後にはスライムくんのツルを噛み砕いてしまった。  
 まるでゼリーのような感触のソレを吐き出そうとするが、すぐさまスライムくんは体を伸ばし口を閉じ込めた。  
「んむぅーー!  
 むぅ、ぐぅぅ、ぅぅぅ。  
 んっ、んっくう!」  
 こらえきれず、口の中に入ったスライムくんを飲み干してしまう。  
 喉が鳴らせれるのを確認するとスライムくんは口を開放した。  
 飲み込ませることが目的だったのだろうか。一体何故?  
 先ほどとちがい動くことはないといえ、悪魔の作った生き物を呑んでしまったということがティアの涙腺を刺激していく。  
「う、うぅえ。  
 っくぅぅ」  
 ぽろぽろと涙が溢れ出す。  
 にも関らず、二人の観察者は冷静であった。  
 その温度差が余計にティアの心を暗くしていく。  
 
   
「人間という種族は外見に左右されやすい。っと…。  
 まったくもって理解不能だな。人間でなければ当たり前のように生物を殺していく。  
 にも関らず同属に関しては激しい反応をみせる」  
「それが、人間だぜ。最も欲望に忠実かつ欲望に抗おうとする。  
 サキュバスの意見だぜ」  
「それについても調べる価値はありそうだな」  
 
 
 どくん! どくん!  
 体の熱さと突然の動悸がティアの体を襲いはじめる。  
   
 (な、なに!?  
  なにこれー!?  
  あついよおぅ。あつい…)  
    
 
 効いてきたかとボソリとラーマスが呟いた。  
 スライムくんにかけた一つの魔術。  
 それはとても簡単なものである、スライムくんの動きの活性化と簡単な学習能力。  
 ルヴィがかけたのはサキュバスとしてできる当然の術。  
 内なる性を覚まし、快楽を与えるもの。直接触れるわけではないが、スライムくんはその術を簡単に吸収し、ティアへと送り込んだ。  
 今頃胃の中に入ったスライムくんは液体にもどり、体中を駆け巡り、性感帯を刺激し、脳の快楽を刺激しているだろう。  
 まったく害のない、それでいて害のあることをしてくれた。  
 徐々にスライムくんに対する嫌悪感が薄れていく。  
 それが嫌だというのに、体と脳はだんだんとろけていくような感覚。  
 そして、スライムくんの動きに体が反応を見せ始めた。  
 変わらずもまれる胸にピリッとした甘い刺激。  
 太ももをさする様な冷たい感触。  
「あっ…ぅつ!っやあ  
 ん、はぁぁぁあ、あ!?  
 い、いや」  
「え〜っと、反応は徐々に良好となっているぜ。  
 魔力吸収にはまだきてないってことは、もうちょっと時間がいるぜ」  
 レポートに長い文章を書くラーマスを補助するように、ルヴィだけがティアを見ていた。  
 涙が溢れてくる。  
 こんな得たいの知れない存在に屈してしまうのかと。  
 しかし、サキュバスの力は凄まじく思いとは裏腹に本格的な喘ぎを発していく。  
「んんんぅ、あっはぁ!  
 あ、ああんあぁ  
 あぁん、ああ」  
「へぇ、案外敏感じゃないか。  
 スライムくん」  
 
 ぐにょりとまたスライムくんが体を変形させる。  
 長いローブをまくしあげ、白い下着をあらわにした。  
「いぁやあ。あぁつ!」  
 
 つんつんと一部を硬くさせ、最も敏感な部分を突付き始める。  
 それだけなら、男性の愛撫と変わらない。しかしスライムくんは体すべてを使いうなじ、首筋、おなか、腋、足の間すべてをぬるぬると擦っていく。  
 おせじにも大きいといえない小さな未発達な胸の桜もつんつんと突付きながら、別のツルでなめとるようにこすりあげる。  
「ああ!あぁあ〜〜!  
 きも…きもちわるい!」  
 気持ちいと言いそうになった自分にショックを受け、叫べば消える。そう思い気持ち悪いと連呼するが、甘い声で言う言葉にはなんの説得力も鳴く。むしろ、求めているかのように思えた。  
 自分でも思うのだから、観察者はもっとそう思っているだろう。  
 ニヤニヤと笑っているのだ。  
 
 だが、それでも観測者はたんたんとした目でティアを見ていた。  
 私がただの実験台なのだと知ったとたん、支えていた糸のいくつかがピンッとちぎれた。  
「あ、あああはぁ!  
 あはああ」  
 スライムくんが、形を変えていく。  
 つんつんと突付いていたツルを膨張させ、男根のような形をとっていく。  
 下着をずり下ろすまでもなく、すべりこみ、女性部へ侵入すると同時に硬くした。  
 それは処女に一切の苦痛を与えず、快楽のみを与える。  
 ぬちょりぬちょりと響きわたるなか、全ての愛撫を止めず突き上げなで上げる。  
 自由自在の体を活かし、膣内でも小さな突起をつくる。  
 人間では決してできることのない男根にティアはあっけなく達してしまう。  
「あああああああああああああ!!!  
 !あ!?ああぁん!ああん!あっぁああ!」  
 しかし、スライムくんは人間ではない。  
 動きを止めず、そのままのペースで突き上げ、抜き、愛撫し、突起を回すように動かしていく。  
 その行いはティアの魔力が尽きるまで行われた。  
 
 
「実験成功だぜ。  
 なかなかの魔力吸収速度に加えて、性的興奮変換っつーのは効果があったようだな」  
「ああ、それにしても人間は快楽に弱いな」  
 スライムくんに捕らえられたまま、眠りうなだれるティアを見ながらラーマスは言う。  
 唾液ははしたなく溢れ、快楽の汗は髪を体に張り付かせ、下着はすでに透けとおっていた。  
「いや〜、あの突起はやめといたほうがいいぜ。  
 実際壊れるぜ。まぁ、侵入者に容赦はいらねぇけどな」  
「まぁいい、しばらく実験室で何度かパターンを変えてみよう。  
 適当に食事と風呂に入らせておいてくれ」  
 あいよ〜とルヴィは返事をすると、スライムくんを誘導させ実験室へとティアを運んでいった。  
 意識があるのかないのか解らない中、最後にティアはソレイユが心配だった。  
 しかし、これからその心配をする余裕すらなくなってしまうことを、今はまだしらない。  
 今だけは、安らかに眠りの世界に入ることを許されていた。  
 

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